転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0373話

 千鶴と美砂との合流に成功し、さてあやかを探すぞ! と気合いを入れていたらこれから進もうと思っていた通路からスケルトンが吹っ飛んで来て、尚且つそこにこれでもかとばかりに炎、氷、雷の矢が連射されてスケルトンにトドメを刺した。

 これが俺達の目の前で起こった事だ。

 そしてそれを誰がやったのかと言うと……

 

「あぁ、アクセル君。無事で何よりですわ!」

 

 ギュウッとばかりに俺を強く抱きしめているあやかだった。

 

「目を覚ましたらこんな訳の分からない場所で、尚且つ私1人。アクセル君がいなくて凄く心配しましたのよ」

「……私達は?」

 

 美砂の呟きをスルーしながら俺の頭を撫でるあやか。

 

「アクセル君、怪我はありませんか? お腹は減ってませんか? 全く、あのスケルトン達が邪魔をしなければもっと早くに合流出来ていましたのに」

「と言うか、あやか。お前はお化けの類が苦手なんじゃなかったのか?」

 

 そう、確か麻帆良祭の準備中に相坂さよが姿を現した時には酷く怖がっていた覚えがある。だが、今のあやかはお化けの一種と言ってもいいスケルトン相手に無双してこの部屋まで辿り着いたのだ。

 そんな俺の疑問に、あやかは笑みを浮かべながら答える。

 

「そんなもの、アクセル君に対する愛の前には全くの無意味ですわ! そして私の愛はアクセル君を包み込み……その肉体で……っ!?」

「ちょっ、あやか? あやか!? そんなに鼻血吹き出して大丈夫なの!?」

 

 何を想像したのか、喋ってる途中で盛大に鼻血を吹き出すあやか。円が慌てて持っていたティッシュを差し出すのだった。

 

「……すいません。アクセニウム不足でつい」

「何よアクセニウムって……」

「私がアクセル君と接触した時に産みだされる物質ですわ。中毒性が高いので1日に何度か摂取しないといけないのです」

 

 ジト目の円と美砂にそう説明するあやか。

 と言うか、ソレだと俺がまるで麻薬の類のように聞こえて人聞きが悪いんだが。

 ちなみに千鶴はそんなあやかを見てニコニコと笑みを浮かべ、茶々丸は何故かアクセニウムとやらの説明にコクコクと頷いているのだった。

 

「あー、取りあえずあの強制転移で皆がここに飛ばされていたのは不幸中の幸いだな。となると、後はネギ達だが……」

 

 チラリと茶々丸の方へと視線を向けるが、無言で首を振る。

 

「強制転移が発動した時、ネギ先生達はバラバラになっていました。ただ、長谷川さんはネギ先生の近くにいたので上手く行けば私達と同じようにネギ先生の近くに転移させられたかもしれません」

「長谷川はエヴァの訓練は……」

 

 その質問に再度首を左右に振る茶々丸。

 

「いえ、長谷川さんはその手の訓練は一切受けておりません」

「なら長谷川がネギの側に転移した可能性が高いというのは不幸中の幸いか。ただ、そうなると」

 

 俺の脳裏に浮かんだのは、大河内、明石、和泉、佐々木の4人だった。魔法に関しては全く関係の無い一般人。当然長谷川と同じく訓練を受けている訳でもなく、そして長谷川と違い魔法に関しての知識が無いままに魔法世界へと飛ばされたのだ。

 

「大河内さん達ですか」

 

 鼻血から復活したあやかが心配そうに呟く。アクセニウムとやらを摂取して標準状態に戻ったのだろう。

 

「でも、なんであの場所にあの4人がいたのかしら。マクギネスさんは普通の人はまず辿り着けないって言ってたと思うんだけど」

「そう言えばそうだったな」

 

 千鶴の言葉に思わず頷く。確かにマクギネスは手順通りに儀式を進みながら進まないと数時間彷徨って村の入り口に戻るとか言っていたのだ。当然魔法について知らない大河内達がその儀式を知ってる筈も無く、普通ならゲートまで辿り着けないだろう。そうなると。

 

「誰かが裏で手を回した?」

「でも、誰が?」

 

 呟いた言葉に反応する美砂だが、確かに誰が何の為に手を貸すのかと言われれば首を傾げざるを得ない。

 

「無理矢理に考えればフェイト達がこっちの足枷用にという可能性は……無いか」

 

 そもそもフェイトの言葉を信じるのなら、あそこで俺達と遭遇したのはあくまでも偶然なのだ。もちろんその言葉をそのまま信じる訳にはいかないが、あの場面で嘘を吐いたとしても意味が無いというのも事実。

 そうなると偶然……待て、偶然?

 チラリと円の方を見ると、俺と同じ可能性に気が付いたのか頬が引き攣っている。

 

「なぁ、円。今、ふと思いついた仮説があるんだが」

「言わないで」

「誰かが手引きをした可能性が無い以上は、つまりあの4人は自分達でここまで来た訳だが……」

「アクセル君、お願いだから言わないで」

 

 頭を抱える円だが、それでもこれは言っておかないといけないだろう。

 

「どうしたんですの? 何か思いついたようですが」

「ああ。俺達は偶然の天才とでも呼ぶべき豪運の持ち主を知っているな? そしてその人物もイギリスに来ていた」

 

 そこまで呟いた時、美砂も俺が誰の事を言っているのか理解したのだろう。その名前を呟く。

 

「桜子!?」

 

 そう。椎名桜子。賭けたものが当たるとまで言われている豪運の持ち主であり、ギャンブラーとして成功する人生間違い無しの人物だ。

 

「……確かに椎名さんならあの霧を勘で抜けてくる可能性が無いとは言い切れませんわね」

 

 あやかもまた俺の推測に頷く。

 だが、その隣で何かを考えていた千鶴が小首を傾げながら口を開く。

 

「でも待って。魔法世界に来た中に桜子はいなかったわよ?」

「そう言えばそうだな」

 

 あの場にいたのは大河内達4人のみで桜子の姿はどこにも無かった。

 

「可能性としては2つだな。1つ、ゲート付近までは桜子も一緒に来たけど、何らかの理由で実際にゲートに来たのは大河内達だけだった。2つ、大河内達と一緒にゲートを通って魔法世界に来たけど、それがゲートの職員達に見つかるまでの間に大河内達からはぐれた」

「出来れば1つ目であってくれればいいんだけど」

「そう、ね」

 

 円と美砂がそう呟く。

 2人にしてみれば、同じ部屋で暮らしていて尚且つチアリーディング部での活動も一緒に行っているまさに親友なのだ。例え魔法に関わった為に以前より共に行動する機会が減ったとしても、2年以上に渡って共に築いてきた関係を大事にしているのは当然だろう。

 その2人の様子を見ながら、励ますという訳でもないが口を開く。

 

「大丈夫だろう。俺が自分で言っておいて何だが、恐らく桜子は魔法世界にはいないと見ていいと思う」

「……何で?」

「そもそも桜子だぞ? あの豪運の持ち主が運悪く俺達に巻き込まれて魔法世界に来てると思うか? 運がいいのならまず間違い無くあっちの世界に残ってるだろうさ」

「……確かにそうかも」

 

 論理立てている訳でも無い、根拠も殆ど無い説明だが、その対象があの桜子だとすると何故かすんなりと納得してしまうのはどうしてなんだろうな。

 

「とにかく、まず俺達の目標はここからの脱出。その後は大河内達4人を探しながらネギ達との合流を目指す。そんな所か」

「そうですね。それにネギ先生のパーティの人と接触出来れば白き翼のバッジで周囲にいる人達を探す事も可能です」

 

 俺の言葉に頷く茶々丸にあやかが不思議そうに尋ねる。

 

「白き翼、というのは何ですの?」

「ネギ先生達が作ったクラブの名前です。雪広さんが協力をしたと聞いてますが?」

「いえ、私が協力したのは英国文化研究会という、ネギ先生のお父様を捜すための隠れ蓑としての……あぁ、なるほど。その名前を考えたのはどなたでしょう? アスナさんのようなお猿さんには出て来そうに無い名前ですが」

「だよね。アスナなら『ネギま部』とか付けそうだし」

 

 美砂のそんな言葉に思わず周囲に笑い声が響いた。

 全く知らない未知の世界で、迷宮かどうかも分からないような場所に放り出されたというのに笑えるというのはある種の強さだよな。クヨクヨしてもしょうがないんだし。

 

「じゃあ、まずはこの迷宮を出る……前に。これでも食って休憩とするか」

 

 空間倉庫からサンドイッチやおにぎり、缶に入った紅茶、緑茶といった軽食や飲み物を取り出してそれぞれに配る。

 

「わっ、ありがと。ちょっと喉が渇いてたんだ」

「ちょっ、円。ツナサンドは私のって決まってるでしょ!」

「美砂さんも円さんも落ち着きなさいな。皆で分ければいいでしょうに」

「ほら、あやかも仲裁ばかりしてないできちんとお腹に入れておきなさい」

 

 それぞれがサンドイッチやおにぎりの包装を破って口に運んでいく。考えてみれば、朝にゲートで時間待ちをしている時に軽く食事をしてから何も食べてないんだよな。特に俺は念動力で嫌な予感があってそれもなかったし。

 

「ほら、茶々丸さんも食べなよ」

「いえ、私は物を食べるように作られてはいませんので。……その、申し訳ないですが食事の後でゼンマイを回して貰えれば」

 

 そう言えば茶々丸は魔力を込めたゼンマイで動いてるんだったか。

 

「分かった。なら今のうちに俺が回しておくよ」

「え? そ、その……」

 

 何故かオロオロしながらあやか達と俺を数度見比べる茶々丸。そして何らかの葛藤を乗り越えたのか懐から取り出したゼンマイを渡してくる。

 

「お、お願いします」

「ああ。魔力を込めればいいんだったか?」

「その、はい……」

 

 茶々丸からゼンマイを受け取り、ゼンマイを後頭部へと差し込む。

 

「あ……」

 

 微妙にゼンマイを差し込んだ瞬間に微かに声が聞こえたが、それに構わず軽く魔力を込めてゼンマイを回していく。

 

「あ……あ……」

「……ねぇ、ちょっと茶々丸さんが色っぽくない?」

「確かに。何と言うか、その……」

 

 円と美砂の会話を聞いていた茶々丸が申し訳なさそうに口を開く。

 

「その、アクセルさん。魔力は弱めにお願いします」

「ん? 痛いとかあったか?」

「いえ、これは魔力充填の儀式で、仮契約のような感じでちょっとその……気持ちよくて」

 

 気持ちいい、ねぇ。あやかや千鶴と仮契約を結んだ時は念動力が過敏に反応してそれどころじゃなかったし、円と美砂の時は宿全体をカバーした魔法陣だったから特に気持ちいいとかは感じなかったが……

 

「気持ちいいと拙いか?」

「え、それは、その……あの……」

「ちょっと、アクセル君。それはセクハラだよ!?」

「そうそう。女の子に気持ちいいかどうかを言わせるなんて、どんなセクハラプレイよ。あ、でもそういうのが好きだったら今度私がやって上げるからさ。初心な茶々丸さんは勘弁してあげなよ」

「美砂さん、あ、あ、あ、あ、貴方何を言ってるんですの!?」

 

 と、いつもの如くじゃれ合いが始まるのだった。

 それを横目で見ながら、取りあえず魔力を弱めに込めながらゼンマイを巻く俺だった。

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、ゼンマイを巻き終わった時には何故か茶々丸が耐えきった、とでもいうように満足気な表情をしていたのだが、何故だろうか。

 

 

 

 

 

「さて。じゃあメンバーも揃ったし、休憩も十分だ。そろそろ本格的にここを脱出するとしよう」

 

 食事も終わり、ゴミを袋に纏めて空間倉庫へと放り込んでからそう告げる。

 もちろん俺もきちんと食事は済ませてある。……腹4分って所だが。

 

「そうですわね。いつまでもここでこうしている訳にもいきませんし。それと、アクセル君。確かにここにいるのは私達だけかもしれませんが、万が一他の人達が転移させられているという可能性もあります。その辺にも十分注意して進みましょう」

「確かにそうかも。アクセル君の近くにいたからここに転移させられたんだとしても、他の人がここにいないって保証はないのよね」

 

 あやかの言葉に円が頷く。

 

「少なくても、一番奥に転移させられたと思われる俺達の近くには誰もいなかった。もしいるとしたらここから先だが……あやか、この先はお前が転移した場所の筈だがどんな具合だ?」

「罠が数ヶ所ありましたわね。ですがそれは破壊してあるので心配する必要はないと思います。それと、骨……いえ、スケルトンでしたか。それなりの頻度で見回りをしているようです。私が気が付いた部屋から出てすぐに道が2手に分かれてましたが、私は真っ直ぐこちらに向かって来たのでもう片方の道がどうなっているのかはちょっと分かりません」

 

 なるほど。俺と円のいた場所がリビングアーマーの管轄地域で、ここから先はスケルトンの管轄地域みたいな感じな訳か。

 頭の中でスケルトンとの戦闘を思い出す。確かに疲労はしない奴等だが、戦闘技術自体はそれ程高くなかった。数に関してもこっちの手に負えない程じゃない。考えてみればあやか達の実戦訓練には丁度いいんじゃないか?

 

「あやか」

「はい、何でしょうか?」

「これから通路を進むが、丁度いい機会だ。お前達で敵の相手をしろ。俺は基本的に手を出さないから」

「ちょっ、何で!? アクセル君の力があれば苦労しないで進めるのに」

 

 俺の言葉に美砂がそう言ってくるが、小さく首を振る。

 

「だからこそだ。ここは魔法世界だ。今回は俺が一緒だから良かったが、いつはぐれるかも分からないからな。俺がいない状態での戦闘に慣れておくのに越したことはない。一種の戦闘訓練だとでも思え」

 

 一瞬、あやか達に戦闘を任せている間にスライムでこの迷宮を探査しようかとも思ったが、ここがどういう場所かも分からない以上は俺の切り札とも言えるスライムを迂闊に使うのは危険と判断する。……まぁ、矢のトラップで一度使ってしまっているんだが。

 もし何らかの手段で誰かがこちらを覗いていたとしたら、こちらのカードを見せすぎるのは気が進まない。

 

「……確かにアクセル君の言ってる事には一理あります。皆さん、折角なのですからこの機会に私達も戦闘の経験を積むというのはどうでしょうか? 今でしたらいざという時にはアクセル君がいますし」

 

 あやかの言葉に数秒考えていた他の面々だったが、やがて頷いてそれを了承する。

 

「よし、じゃあそろそろ移動するとしよう。背後からの警戒だけは俺に任せてくれていい。お前達は前から来る敵を相手にしろ」

「分かりましたわ。茶々丸さんはどうするんですの?」

 

 チラリと一瞬アクセルへと視線を向けた茶々丸は小さく頷いて口を開く。

 

「罠の発見に関しては皆さんよりも私の方が得意分野だと思いますので、お任せ下さい」

 

 こうして、茶々丸とあやかを前衛として先頭に。防御と回復担当の千鶴、アーティファクトによる補助を担当の美砂を中衛に。空中を移動出来る円と後方の警戒を担当する俺が後衛になって通路を先へと進んでいくのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:710
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:391

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