転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0374話

「来ました。前方からスケルトン。数は6体です」

 

 迷宮を進んでいく俺達の先頭、前衛を務める茶々丸が告げる。

 この隊形を取ってあやかが来た方へと進み始めてから1時間程。既にスケルトンとの戦闘を数度経験していたあやか達は茶々丸の言葉に各々の武器を構える。

 俺の隣にいる円も純炎の涙の効果で宙に浮き、いつでも炎を放てるように戦闘準備を整えている。

 あやかは鮮血の鞭を。美砂はいつでも補助効果のある歌を歌えるように精神を集中し、その美砂と自分を守る守護領域を展開する千鶴。

 尚、本来スケルトン相手なら千鶴のアーティファクトである虹色領域の腕輪の魔力を吸収する黄の領域が天敵状態なのだが、今回の戦闘は経験を積ませる為のものなので黄の領域は使わないように言ってある。

 それぞれが戦闘準備を整え終えた頃、ガシャ、ガシャ、とスケルトンの歩く音が聞こえてきた。その数は茶々丸からの報告通り6体。こちらと同じく前衛・中衛・後衛がそれぞれ2体ずつの隊形を取っている。

 

「仕掛けますわ! 円さん、茶々丸さん、合わせて!」

 

 あやかが鮮血の鞭を振るい、魔力によって操られた鞭がスケルトンの先頭を歩いている2体へ5本と4本に分散してその身を絡め取る。

 その後ろでは千鶴の守護領域に守られた美砂が敵の動きが鈍くなる歌を歌っており、その効果でスケルトンの動きは一挙動ずつが先程までよりも目に見えて遅くなっていた。

 

「茶々丸さん!」

「はい」

 

 円が空中に浮かびながら大きく手を振るうと、その軌跡に沿って炎の線が描かれスケルトンへと向かう。同時に茶々丸の目からビームが発射され、鞭で拘束されている後方のスケルトンを破壊した。

 

『風の精霊6柱、縛鎖となりて敵を捕まえろ……魔法の射手、戒めの風矢』

 

 続いて千鶴がアーティファクトを使いながら放った魔法の射手が円の炎で焼き尽くされた事により前進を始めていた後続のスケルトン達へと命中してその場で動きを止める。

 

「はぁっ!」

 

 そこに振るわれるのは、先程までスケルトンを拘束していたあやかの放つ鮮血の鞭。魔力によって自由自在に動かせるその鞭は先端に付いている鋭い剣先で動けないスケルトンを切り刻んでいく。

 

「大きいの、行くわよ!」

 

 トドメ、とばかりに円から放たれた直径1mはあろうかという巨大な炎が残りのスケルトンを纏めて消滅……いや、焼滅させる。

 

「他に敵性反応はありません。戦闘終了と判断します」

 

 茶々丸の言葉に、安堵の溜息を吐くあやか達。

 その様子を見ながら、今の戦闘の感想を口に出す。

 

「動きを止めて撃破していくという基本的な戦術は悪くないと思う。ただ、千鶴の魔法の射手を放つタイミングがちょっと遅いように感じられたが」

「うーん、でも私の『戒めの風矢』は拘束時間が5秒といった所だから、あまり早くに出すとまだ前衛の2体があやかに止められている間に効果が切れてしまうのよね」

 

 俺の言葉に告げる千鶴。

 

「なるほど、5秒程度か。それなら今の手順で良かったな」

 

 スケルトンと遭遇する度に、色々な戦術を試しているあやか達。まぁ、究極的には今の応用で前列2体を鮮血の鞭で、中列2体を千鶴の魔法で足止めしてから円の最後に使った巨大な炎で一網打尽にするという手段が手っ取り早いんだけどな。前方4体が動きを止められていれば後列は前に出にくくなるし。

 

「そろそろ次の部屋が見えてきてもいいと思うんですが……」

 

 先頭でシーフ的な役割を果たしている茶々丸が呟く。

 ちなみに、あやかが転移させられた部屋は30分程前に通り過ぎている。一応中を軽く調べてみたが、俺と茶々丸が転移させられた部屋と殆ど同じ作りでヒントとなるようなものは何も無かった。

 

「さて、じゃあもう少し頑張るか」

 

 俺の声に皆で頷き、通路を先へ先へと進んでいく。

 

「皆さん、止まって下さい」

「敵ですの?」

「いえ、トラップです。少々お待ち下さい」

 

 あやかの質問にそう返し、一人だけ前へと進み出る茶々丸。この通路はそれなりの頻度で罠が仕掛けられているのだが、何故か魔力感知により生物にのみ発動するようになっている。なので茶々丸が罠を見つけては破壊していくのだ。

 

「破壊完了です。先に進みましょう」

 

 そう言って茶々丸が道を進み……それから10分程。いかにも意味ありげな扉が嵌っている部屋へと辿り着く。

 扉の大きさは高さ7m、幅4mといった所か。巨大、と言ってもいいだろう。

 ある意味時代錯誤的な両開き式の扉だ。

 

「どう見てもこの部屋ってラスボスとかが待ち受けてそうな部屋よね」

 

 ポツリ、と呟いた美砂の声が周囲へと響く。

 だが、扉に刻まれている蛇の模様や骸骨の模様なんかを見ると確かにラスボスとかが待ち受けていそうな部屋ではある。

 

「けど、開けるしかないだろう?」

 

 俺の転移させられた部屋からここまでは一本道だった。そして脱出の手掛かりとかは無かった。つまりはこの部屋に入るしかない訳だが……俺の念動力がこの中が危険だとこれでもかとばかりにがなりたてている。

 さすがにこの部屋にあやか達を戦闘で突っ込ませるのは危険すぎる、か。

 

「戦闘の練習はここまでだ。どうやらこの中は危険らしいから俺に任せて貰おうか」

「……アクセル君、気をつけて下さいまし」

「無理はしないようにね」

 

 あやかと千鶴がそう声を掛け、他の面々も気をつけるようにと注意してくる。

 それに頷きながら、扉に手を当てて軽く押す。

 

「固いな。と言うか、この大きさだし重いのか」

 

 徐々に力を入れていき、軽自動車程度なら動かせる程度の力を込めてようやく扉が割れるように開く。

 部屋の中から感じたのは冷たい空気。少なくても人の気配といったものは感じられない。

 

「様子を見てくるから少し外で待っててくれ」

 

 先頭にいるあやかへと声を掛け、扉の隙間にその身を滑らせる。

 まず目に入ってきたのは床に描かれた巨大な魔法陣と、其処此処にへばりついているように見える大量の赤黒い染みだ。

 ……どう見ても血だよな。

 だが、血の乾き具合から見てここで実際に血が流されたのは数日とかそんなものじゃない。下手をしたら数年単位だろう。

 そしてもう1つ奇妙な事に、血の流れた痕跡はあるというのにその血を流した死体は見つからない。そこら中にある血の染みを見る限りでは、普通の人間なら失血死していてもおかしくない量だ。そうなると、この部屋の主と血を流した人物は違うという事か?

 警戒しつつ、魔法陣以外の周囲の様子を見る。

 巨大な部屋の壁際には机や本棚、あるいは何らかの実験用の道具らしき物もある。

 

『誰だ』

「っ!?」

 

 唐突に頭の中へと響いた声に、咄嗟に後ずさり部屋の外へと……

 

『逃がさん』

 

 出る前に、その巨大な扉が重さを感じさせない速度で閉まる。

 ったく、血の跡が残る部屋でポルターガイストとかどこのホラーだ。……いや、相坂がいたか。

 

「……お前こそ誰だ?」

 

 内心で考えていた馬鹿な事を消し去り、いつでも戦闘が可能な態勢を取り口を開く。

 

『お前は私の研究成果を盗みにきた輩だな』

 

 研究成果? つまりこの声の主はここで何らかの研究をしていた魔法使いか何かか?

 

「違う。強制転移でここに飛ばされただけだ」

『そう、お前の魔力。その巨大な魔力があれば私は正真正銘の不老不死に……』

 

 不老不死? ピクリとその単語に反応する。

 そもそも俺が魔法世界に来ようと思った理由は、魔法世界にあるという不老になると言われているマジックアイテムを求めてだ。この声の主がその研究をしていたというのなら、是非その研究内容を教えて貰いたい所だが、さっきから妙に話が通じていないと言うか、すれ違っていると言うか。

 

『何故だ。何故その魔力を持っているのが私ではないのだ。そう、本来なら私が……私がぁぁぁっ!』

 

 ……研究内容を聞くのはまず無理だな。と言うか、さっきからどこにいるんだ?

 部屋の中を見回しても声の主らしき人物は存在しない。声に関しても念話によるものだ。

 

『アクセル君、アクセル君!? どうしましたの!』

 

 頭の中に響くあやかの声。これもまたパクティオーカードの機能を使った念話だ。

 いつ襲われてもいいように警戒しながらパクティオーカードを額にあてて『念話』と唱える。

 

『この迷宮……いや、研究所なのか? まぁ、とにかくここの責任者らしい奴がさっきから念話で話し掛けてきてるんだが、どうも要領を得ないと言うか……』

『そう、魔力さえあれば私は……不完全…完全なる……お前のその魔力があれば、あれば……あればあぁっ!』

 

 声の主が大きく叫んだかと思うと床に書かれていた巨大な魔法陣が光り、1体のスケルトンが姿を現す。……なるほど。俺達が倒したスケルトンやリビングアーマーもこうして呼び出されていた訳か。

 

『戦闘になりそうだ。終わったら連絡するからそこで待っててくれ』

『はい、分かりましたわ。お気を付けて。皆も心配してますので』

 

 念話を終えて、パクティオーカードを懐へと戻す。

 

「スケルトン如きで俺をどうにか出来ると思われるというのは……心外だな!」

 

 ガシャガシャと足音を立てて近付いてくるスケルトン。その手には当然のように長剣と盾を持っていた。

 

「死んだら……そのまま眠ってろ!」

 

 振り下ろされた剣を回避し、跳躍して影を纏った脚で蹴りを入れて頭蓋骨を吹き飛ばす。同時に背骨を握ってそのまま砕く!

 身体を支える背骨を砕かれたからだろう。スケルトンはそのまま身体中の骨が崩れ落ちていった。

 

「どうした、これで終わりか?」

『ふざけるな。お前の魔力は私の物だ。なのに何故抵抗する。私が永遠の生命を得る為にその身を捧げるのは当然だろうに』

 

 話が通じた、と思いつつも自分勝手な理由をほざいてくるこの建物の主。

 

「残念だがお前の研究の成果とやらは俺が貰っていくぞ」

 

 自分の研究の成果とやらに固執しているようだったので、わざと挑発する。

 スケルトンでは俺を止められないというのは今のを見ていれば理解しているだろう。そうなると当然……

 

『ふざけるな。やはりお前も私の研究を狙った輩か。MMの手先か? それともアリアドネーか? あるいはヘラスの手の者か? だが、渡さん、絶対に私の研究成果は渡さんぞ!』

 

 挑発をするという意味では正解だったのだが、薬が効きすぎたのかまるで部屋全体に薄い霧のようなものが充満し、床に描かれた魔法陣を中心として集まっていく。そして……

 

「……マジか」

 

 現れた存在に、思わず呟く。

 外見として見るのなら、ローブを纏った骸骨が身の丈程もある杖を手にしているといった所か。そのような存在を何と呼ぶのか俺は知っていた。即ち……

 

「リッチ」

『私の正体を知ったからと言って……いや、知ったからこそ余計にここから出す訳には行かなくなったな。その魔力、私の為に役立てて貰おう』

 

 リッチの身体が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間にはその光りは魔法陣へと伝わり、魔法陣そのものが光りを放ち……

 

「ぐぅっ!」

 

 同時に身体から急激に力が抜けていくのが分かる。

 

『ははは。この部屋に入った以上、私の餌となる運命は決まっていた。この魔法陣には人間の魔力と体力を吸収し続け、それを私へと供給する効果がある。お前の莫大な魔力は私が貰い受ける』

『5の影槍!』

 

 始動キーを省略して影槍を発動する。だが、魔法は発動せずに魔力だけを消耗した感触があった。

 

『無駄だ。この部屋の中で人間が魔法を使ったとしても、魔法は発動されずにその消費した魔力は私へと流れ込む』

 

 急激に身体から力が抜けていくこの感覚。このままでは本気でやばい。

 だが、どうする? ここから脱出しようにも扉は閉まっている。このままではただ目の前の存在に餌にされるだけだ。ゲートでも……ゲート? そうか、この魔法陣が魔力や体力を吸収するのは人間からのみ。となると、それに対抗する手段を俺は持っている。

 

「異形化」

 

 魔法陣の中心に存在しているリッチを見据えたまま、そのスキルを発動させる。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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