転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0375話

「異形化」

 

 そのスキルを発動させた途端に身体中へと力が漲り、同時に俺の肉体をスキル名通りの異形へと変えていく。

 額からは深紅の角が伸び、左右の側頭部からは天を突くかのような漆黒の角が2本。同時に後頭部からも漆黒の角が伸び、側頭部の角の下を通って前へと伸びていく。

 また、背にも魔力が物質化した蝙蝠のような羽が形成される。

 鬼神と呼ばれる存在と、爵位持ちの上級悪魔を吸収して得たスキル。それがこの異形化だ。

 

『馬鹿な、何だ、何なんだ貴様は。私に流れ込む魔力が止まったという事は、今の貴様は人間では無いという事になる』

 

 先程までの俺への呼びかけはお前だったのが、いつの間にか貴様へと変わっている。それはこの目の前にいるリッチが体裁を取り繕う余裕が無くなってきた、という事なのだろう。

 

「さて、俺が何であってもお前の運命がここで終わるのは間違い無い」

『巫山戯るな! 私は永遠を生きる者。いずれその高みに届く者。こんな所で終わっていい筈が無い!』

 

 叫ぶと同時に、リッチの背後へと数十……いや、数百とも言える程の魔法の矢が出現する。

 

『幾ら貴様が化け物だとしても、この数の魔法の射手を受け止められるか? まずは小手調べだ、食らえ』

 

 確かに無詠唱でこの数の魔法の矢を制御出来るというのは凄い。少なくても俺は出来ないし、ネギにも無理だろう。……エヴァなら出来るか? このリッチが相当高レベルの魔法使いであるというのは間違いない事実ではある。

 俺へと向かって降り注ぐ魔法の射手。その様はまさに雨と言ってもいい程の射撃密度を備えていた。だが……

 

「真っ正直に対抗する訳もないだろうに」

 

 異形化によって使えるようになった影のゲートへと潜り込み、部屋の本棚の影から再び身を現す。俺が消えた事により発射された魔法の射手は部屋の巨大な扉へと次々に着弾している。それでも損傷が見えないのは恐らく何らかの魔法の効果か何かなのだろう。そんな様子を見ながら呪文の詠唱を始める。

 

『アリアンロッド 来たれ深淵の闇、燃え盛る大剣、闇と影と憎悪と破壊、復讐の大焔。我を焼け、彼を焼け、そはただ焼き尽くす者……奈落の業火! ……固定、掌握! 術式兵装獄炎煉我!』

 

 俺の手の中へと現れた黒い闇の炎を握りつぶし、霊体と融合。次の瞬間には俺の身体から黒い炎が吹き上がる。

 外見が既に人間離れしている俺のこの状態で、さらに漆黒の炎が吹き上がっているのだ。端から見れば俺もまた、目の前に存在するリッチと同じようなモンスターにしか見えないだろう。

 

『馬鹿な。闇の魔法だと? それは本来私が極めるはずの……貴様ぁっ!』

 

 俺が獄炎煉我状態になった様子を見たリッチが怒りにまかせて叫ぶ。

 闇の魔法を知っている? エヴァが作りあげたマイナーどころではないこの技法。エヴァ自身も吸血鬼として、また魔法使いとしての実力を上げていった結果殆ど使われなくなった技法だ。それを知っているとなると……

 

「お前、もしかしてフェイトの同類か?」

『貴様が何故その技法を使えるのかは知らんが、その魔力共々私の物になってもらうぞ』

 

 ……また話が通じなくなっている、か。

 

『来れ虚空の雷、薙ぎ払え……雷の斧!』

 

 ちぃっ、呪文の短い雷系の呪文か。

 薙ぎ払えという呪文とは裏腹に、俺の脳天を目掛けて振り下ろされる雷。

 

「はぁっ!」

 

 その雷を睨み、額から生えている深紅の角を使って炎を発生させ、雷を燃やし尽くす。

 

『馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!』

 

 膨大な魔力がリッチへと集まり、それを碌に制御すらしないで全てを魔法の射手として発動させる。そこにあるのは、先程と同じく……いや、より数の増したあらゆる属性の入り交じった魔法の射手だった。

 

『貴様如きがその力を持っていても意味が無い。大人しく私に差し出せ』

 

 手に持っていた杖を俺目掛けて振り下ろすリッチ。同時にその背に浮かんでいた魔法の射手もまた、俺へと向かって来る。だが……

 

「量と速度は違っても、同じ攻撃じゃ意味がないだろうに」

 

 迫ってくる魔法の射手を睨みつけながら、喉に魔力を溜めていく。

 そして無数の矢が俺へと届くその瞬間、口を開いて喉に溜め込んだ魔力を使って光線を放つ。ヘルマンが使っていた、光線に触れただけで永久石化の効果を持つ物騒な攻撃手段だ。一度石化したら術者が死んだとしてもその効果は途切れず、またその名前通りに並大抵の回復魔法を使ったとしても石化の解除は不可能だ。

 それはネギの故郷の村の住人がヘルマンが死んだ後も尚石化したままだというのが証明している。

 ……もっとも、ネギの記憶を見た限りではサウザンドマスターはその石化の進行を止める術を持っていたようだが。

 ともかく、生半可な術者では石化を解除出来無いその光線は俺へと迫ってきている魔法の射手の全てを石化させ、同時に光線の圧力に耐えきれないかのように破壊されていく。

 

『馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!』

 

 自分の魔力のかなりの量を消費して放たれた魔法の射手、それをあっさりと無効化されたのが余程腹に据えかねたのだろう。俺を睨みながら何とかの一つ覚えのように呟いている。

 

「さて、馬鹿はどっちかな」

 

 口元に笑みを浮かべながら、自分の影へとその身を沈めていく。影のゲートが繋がっている先は……リッチの足下だ。

 ぬうっとばかりに影から手を伸ばしてリッチの足首を掴む。同時に獄炎煉我の効果としてリッチからの魔力が俺へと流れ込んでくる。

 

『な、何だ。何が起きている!?』

 

 混乱するリッチだが、その足首を掴んだまま影のゲートから身を乗り出して片手で吊し上げ……振りかぶってからそのまま床へと叩き付ける!

 

『ぐはぁっ。き、貴様。私に何をした』

「簡単な事だよ。俺から奪った魔力を返して貰ってるだけだ」

『馬鹿な。そんな真似をすれば私の命は……』

「知るか」

 

 未だ掴んでいた足首を勢いよく振り上げ、再度床へと叩き付ける。

 

『がっ!?』

「そもそもこっちを殺そうとして襲い掛かってきた以上、逆襲される可能性は当然考えていたんだろう? 撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ、という言葉を贈ろうか」

 

 こうして話している間にも、黒い炎がリッチから魔力を吸収している。その効果が出ているのだろう、床に叩き付けられるよりも魔力を吸収されている方がこいつには堪えているらしい。

 そのまま、1回、2回、3回と繰り返し繰り返しリッチから魔力を吸収しながら床へと叩き付けていく。

 その数が30回を越え、まさに虫の息といった感じで身動きが出来なくなったのを確認してからようやく魔法陣が描かれていない床へと放り投げた。

 

『ぐっ!』

 

 小さく呻くが、それ以上は特に何もする事無くその場に横たわっている。

 さて、どうしたものか。確実性を求めるのならスライムによる吸収なんだが、ヘルマンの時の例もある。またあの激痛を味わうのは正直御免だし、何よりこんな何処とも知れない場所で数日も気を失うのは自殺行為に等しいだろう。

 となるとこの手段しかない、か。

 動かないリッチへと視線を向けながら喉へと魔力を集中する。

 そう、永久石化の光線だ。これならリッチと言えども効果はあるだろうし、何よりも石化した相手は空間倉庫に収納可能というのは京都で既に経験済みだ。例えリッチ特有のスキルとかがあったとしても空間倉庫の中は時間の流れが止まっている。それなら復活はまず有り得ないだろう。

 喉に魔力が十分溜まったのを確認し……

 

「がぁっ!」

 

 声と共に、石化の光線を吐き出す。

 俺の口から放たれたその光線は、一直線にリッチへと命中して数秒も経たないうちにその姿を石像へと変えていく。

 完全に石化したのを確認し、そのままその石像へと触れて空間倉庫に収納する。

 脳裏のリストにはきちんと『リッチの石像』と表示されていた。

 リッチがいなくなった為なのか、床に描かれている魔法陣もその効果を止めている。

 これであやか達をここに入れても大丈夫だろう。

 そう判断し、獄炎煉我を解除し……

 ドクンッ!

 

「……ぐっ!」

 

 一瞬。そう、ほんの一瞬だけ何かが俺の内側で脈動したような感じがした。

 だがそれもすぐに収まり、今の感覚が嘘だったとでも言うように身体の異常は何も感じない。

 ……この部屋の魔法陣の影響か何かか?

 そう思いつつも、次に異形化を解除する。

 角と羽がまるで溶けるように消えていく。以前にも思ったんだが異形化を使った時、羽はともかく角は俺の頭から生えてくるのに異形化を解除すると消えるってどうなってるんだろうな。

 

「ふぅ」

 

 異形化の解除も終了し、魔力や体力といったものが吸収されていないのを確認してから扉を開ける。すると、次の瞬間には僅かな隙間からあやかがこの部屋に入った時の俺のように身を滑らせて入ってくる。

 

「アクセル君、怪我は……怪我は大丈夫ですの!?」

 

 そう言いつつ、俺の身体をペタペタと触って確かめていく。

 

「アクセル君、無事で良かったわ」

「全く、あまり心配掛けさせないでよね」

「円、デレた後にツンするのはツンデレじゃなくてデレツンとでも呼ぶんじゃないかしら」

「ちょっ、美砂!?」

「アクセルさん、ご無事で何よりです」

 

 そんないつもと変わらぬやり取りをした後に、早速皆で散らばってこの広い部屋の中を調べる事にする。

 とは言っても、大きさ的に体育館と大して変わらないのでその作業は途中で俺の空間倉庫から食事を出しつつ数時間にも及んだのだが。

 そして……

 

「成る程、日記か」

「はい。本棚の奥に隠されていました」

 

 茶々丸が発見した日記。言うまでもなくここを脱出する手段にしろ、あのリッチの詳細にしろ色々と手掛かりがあるのは間違い無いだろう。

 そう判断して早速日記を読み進める。

 

○月×日

 アリアドネーからの脱出に成功。これで禁忌の研究やら何やらと詮索されないで済む。研究の拠点には、以前情報屋から買った情報を頼りに発見した所を使う。話によると元々は何かの拍子で見つかった場所らしいが、詳細は不明。ただし隠れ家としては文句無しらしいので問題は無い。

 

○月×日

 私の研究、即ち不老不死を人間のままで成し遂げるという目標を理解しようともしないアリアドネー上層部め。どうやら私を賞金首としたらしい。いつものように情報屋と接触した時に賞金稼ぎやマギステル・マギに注意するよう言われる。

 

○月×日

 情報屋を通して最近どこかの遺跡で見つかったばかりだという『時の指輪』を奪う為に汚い仕事も請け負う傭兵を雇って目的の物を持っているトレジャーハンター共へと襲撃を行う。傭兵に支払った金額でアリアドネーで稼いだ額が8割程消えた。ただし、私の研究にはどうしても必要な代物なので必要経費だと割り切る事にする。情報屋を通じて受け取ったのは20個程の時の指輪。これ程の数があるとはさすがに驚いた。

 

○月×日

 くそっ、何でだ! 時の指輪を私が使えない事が判明。理由としては単純で、最初に起動させる際の莫大な魔力を私が持っていないからだ。単純に不老となるだけで何故これ程の莫大な魔力が必要なのだ。不死に手が届くにはまだまだ遠いらしい。

 

○月×日

 この隠れ家に侵入者が現れる。黒い猟犬とかいう賞金稼ぎらしい。私の得意とする多数の属性が入り交じった魔法の射手で一掃。その死体を見てつくづく思う。やはり人間のまま不老不死になるというのはやはり厳しいのだろうか。噂では人間を真祖の吸血鬼に転生させる儀式があるらしい。かの闇の福音もその儀式で人間から吸血鬼に生まれ変わったという噂もある。それを知る事が出来れば。尚、地上からの侵入者対策として地上への出入り口に関しては本棚で封じる事にした。私以外の魔力には反応しないように術式を弄ったので生活物資を運んでくれる情報屋との連絡は密にしなければ。

 

○月×日

 人間のままの不老不死は今のままでは無理だと判断し、アンデッドの研究に移る、真祖の吸血鬼は無理でも他のアンデッドなら……

 

○月×日

 スケルトンとリビングアーマーの召喚に成功。ただし、個体差が酷い。ある個体は私の命令を素直に聞くが、ある個体は私の姿を見た途端襲い掛かってくる。恐らく取り憑かせた魂や生き霊の質の問題と思われる。

 

○月×日

 個体差の違いが大きすぎるので、生き霊や魂といったものをそのまま取り憑かせるのではなく魔法の術式で反応するようにする。アンデッドの研究としては進んだのかどうか分からないが、まずはよく知る事だ。

 

○月×日

 おかしい、ここ数日身体の様子が変だ。アンデッドに対する術式をミスしてしまったのか? いや、私がそんな単純なミスをする筈がない。私はいずれ真祖の吸血鬼に生まれ変わるのだから。

 

 そこで日記は終わっていた。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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