転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0377話

 スライムが切り開いた道無き道は、街の数十m手前という辺りまで繋がっていた。さすがに街まで直接繋ぐと騒ぎになるので多少……本当に多少ではあるがジャングルを目眩まし代わりに使わせて貰ったのだ。

 とは言っても、ジャングルに慣れた奴なら少し見ただけで違和感に気が付く偽装だろうが。そして街に入った俺達の目に入って来たのは……

 

「へぇ、ここが魔法世界ねぇ」

 

 周囲に見えるのは石造りの建物やいかにも南国の木といった存在だ。

 

「た、確かにこれはファンタジーですわね」

 

 あやかの視線の先にあるのは尻尾があったり、角があったり、大きかったり、小さかったり、妖精だったり、獣人だったりとまさにファンタジーといった住人達。

 あの迷宮から出て木の上から見た時は人数的にそれ程大きな街ではないのかと思っていたのだが、実際に来て見ればそれなりに大きな街であるのが理解出来た。

 そんな住人の中でも通りすがりの牛の頭をした、どう見てもミノタウロスとしか思えない人物が俺達に気が付き声を掛けてくる。

 

「おう、どうした坊主に嬢ちゃん達ばかりで」

「いや、ちょっと道に迷ってたんだがようやくこの街に辿り着けたんでな。安心していた所だ」

 

 俺が話すとミノタウロスはキョトン、とした顔で一瞬俺を見る。そして次にあやか達へと視線を向けて、最後にまた俺へと視線を向ける。そして手を振り上げ……

 

「がーはっはっはっは! 坊主、そりゃ大変だったな。この周辺にあるジャングルには厄介な魔物も住み着いてるからな。けど嬢ちゃん達もこんな坊主に会話を任せないできちんと話さないと駄目だぞ」

 

 豪快に笑いながら、俺の肩をバンバンと力強く叩いてくる。

 あやか達も一瞬何を言われたのか理解不能という顔をしていたが、すぐに我に返る。

 

「あらあら、御免なさいね。私達は女の子なのでちょっと疲れてたんです。それで、申し訳ありませんがどこか宿を紹介してもらえませんか?」

 

 一番最初に我に返った千鶴が笑みを浮かべながらミノタウロスへと尋ねる。

 ……そうだよな。自分でも最近は意識してなかったが、俺の外見って10歳程度の子供なんだよな。他に年上のあやか達がいるのに、まるで俺が代表者のように振る舞っても違和感しかないか。

 ミノタウロスと千鶴のやり取りを見ながら、微妙に落ち込んでいると円が近寄り頭を撫でてくる。

 

「ほら、アクセル君も落ち込まない。普通はアクセル君の本当の姿が大人だなんて分からないんだから」

「そうですわ! そしてそんなアクセル君だからこそ私の愛は無限なのです!」

「……あやか、あんたね」

 

 そんなやり取りをしている間にも、千鶴が上手い具合に宿屋を紹介して貰ったらしくニコニコと笑いながら手を振ってミノタウロスと別れていた。

 

「皆、あの牛さんがいい宿を教えてくれたから今日はそこに泊まりましょうか」

「千鶴、その、泊まるのはいいんだけど……私達お金持って無いわよ?」

 

 円の言葉にピタリと俺達の動きが止まる。

 魔法世界との空港ともいえる場所で強制転移させられたのだから、当然向こうの金をこっちの金に換えてはいない。そしてリッチの迷宮にも特に金目のものは置いてなかった。

 いや、研究資料とかはそれなりに貴重だろうから売れば金になるのか? そう思って脳裏に空間倉庫のリストを展開して眺めていく。

 そして目に入ってきたのはそれなりの数の剣。

 そう言えばスケルトンやリビングアーマーから剣を奪って来たんだからこれを売れば取りあえず一晩程度の宿賃にはなるだろ。

 

「円、大丈夫だ。スケルトン達から奪った剣が大量に余ってるから、それを売れば今晩の宿代にはなるだろ」

「あ、そう言えばスケルトンから剣を奪ってたわね。アクセル君、ナイス」

 

 美砂が嬉しそうな笑みを浮かべて頭を撫でてくる。

 

「じゃあ、早速お金を作りに行きましょうか。牛のおじさんから聞いた話だと一人で一泊80ドラクマらしいわよ」

「ドラクマねぇ。具体的にどのくらいの価値があるのやら」

 

 さすがに魔法世界の通貨については詳しくないので、街で売ってる商品の相場とかを調べておいた方がいいだろう。

 

「おっと、そこの坊ちゃんと嬢ちゃん達。武器の売り先を探してるのかい?」

 

 そんな風に武器の売り先を考えている俺達へと再び掛けられる声。

 その声の主は背の高さは10歳の俺とそう大して変わらず、麦わら帽子のようなものを被って顔を隠している人物だった。麦わら帽子を突き出すようにして伸びているウサギのような耳が特徴的だ。ただ、その声は声変わり前まで戻った俺のような声ではなく、声変わりを経験したと思われる低い男の声だった。

 ……口調は微妙に軽い感じだが。

 まぁ、ミノタウロスやら獣人やらもいるんだから、こういう種族がいてもおかしくはないんだろう。

 

「ええ。どこかいい場所を知ってますか?」

「へへっ、お嬢ちゃんのような美人さんにそう言われちゃ張り切らねぇといけないな。俺が取っておきの場所を紹介してもいいぜ」

「本当ですか? 助かります」

「おう。ほら、こっちだこっち。坊ちゃんや嬢ちゃん達もはぐれないように付いてきな」

 

 そう言って先を歩いて行く男。だが、俺がその男の背へと向ける視線は自分でも分かる程に冷たくなっていた。

 

「アクセル君? どうしましたの? ほら、早く行きませんとはぐれてしまいますわよ」

 

 あやかが俺の手を握って男の後を付いていく。時折俺達がいるかどうかをチラリ、チラリと確認しながら進んで行くのを見ながら、あやかの背後へと移動して前を進む男の視線から隠れる。同時に空間倉庫からパクティオーカードを取り出しておでこへと持ってきて……

 

『念話』

 

 パクティオーカードの機能の1つである念話を使用してあやか達へと言葉を送る。

 

『全員、顔に出さないで聞いてくれ』

 

 そこまで告げチラリと周囲を見回すと、小さく頷くのが見える。

 茶々丸とは契約をしていないので念話は届かないが、それは後で説明するしかないだろう。

 

『俺達を案内してくれるというあの男だが、俺の勘によれば何か妙な事を企んでるような気がする』

 

 妙な事、という場面で全員が再び小さく頷く。

 

『ただ、これはある意味でチャンスでもある。何しろ後ろ暗い事をしてるとなると、何か事件があっても表沙汰には出来ないって事だからな。だから一応このまま信用した振りをして買い取りの取引を進めて、そのまま大人しく終わるようなら何も問題は無い。何か仕掛けて来るようならそいつらを襲って金を奪う』

 

 金を奪う、という事を言った時にあやかと千鶴が微かに眉を顰めたが、やむを得ないと判断したのだろう。特にそれ以上の反応は示さなかった。

 

「ほら、ここだよここ。ちょーっと見かけは悪いけど中にいる商人は良心的だし、俺の顔見知りでもあるから心配する必要は無いぜ。ほら、入った入った」

 

 男に案内され、辿り着いたのは1階建ての石造りの建物だった。壁に使われている石が所々欠けていたり、あるいは長い間掃除をしていないのだろう。壁には土埃が積み重なっている箇所もありそれが余計に男の言う通り多少の古さ……と言うか、ボロさを感じさせた。また寂れている一画らしく、周囲もどうやら空き家が殆どらしい。

 そして男の示す建物の中からは10数人の気配が感じ取れる。これが商人だったり客だったらいいんだが……

 

「ほらほら。さっさと入る入る」

 

 ここまで案内してきた男により、押し込まれるようにしてその建物の中に入ると……

 

「ようこそ」

 

 スキンヘッドにゴテゴテとした入れ墨を彫り込んだ頭をしている男が数人の部下を引き連れて俺達を待っていた。

 ご丁寧な事にその手には杖が握られており、背には『魔法の射手』なのだろう、石の矢が10本程待機しておりいつでも発射可能な態勢になっていた。

 

「……剣を買い取ってくれると聞いて来たのですが」

 

 冷静に男達を見据えながらあやかが口を開く。

 

「ああ、もちろん剣は買い取らせて貰うさ。ただ、他にも色々と売って欲しいものがあってね」

「それは何でしょう? 申し訳ありませんが、私達は他に売れるような物を特に持っていませんが」

「いやいや、謙遜は良く無いねぇ。十分に高く売れるお宝を持ってるじゃないか」

 

 スキンヘッドの男はそう言いながら千鶴の胸やあやかの脚といった箇所を舐めるように見る。

 

「……申し訳ありませんが、私達の身体は貴方達に売れる程安っぽい物ではありませんの」

 

 好色なその視線にも眉を顰めつつ毅然とした態度で拒絶するあやかだが、それでもスキンヘッドの男はニヤニヤと笑いながら首を振る。

 

「それは通らないな。ここに来た以上は当然全て売って貰おうか」

 

 やっぱりこうなったか。俺達を案内してきた男の俺やあやか達を見る目。最初のミノタウロスの男とは違って、どこか濁っているように感じられたのだ。だからこそ、前もって念話で警戒をしておいた。

 

「あやか、もういい」

「あん? 何だ、坊主は。今はこの嬢ちゃん達と話してるんだから邪魔しないで大人しくしておけ」

 

 そう言いつつ、背後に浮かんでいた石の矢を1つ、俺の足下へと撃ち込む。

 

「貴方っ、何を!?」

「あやか、いい。それよりも茶々丸。周辺に人影は?」

「大丈夫です、問題ありません。ここにいる人達で全員だと思われます」

 

 よし、取りあえず騒ぎになってもこいつら以外に迷惑を被る奴はいない、か。

 

「あん、坊主。何を考えてる?」

「さてな。取りあえずお前達にはもう用は無いから……」

 

 その言葉を最後まで喋らせる事もなく、石の矢を飛ばしてくる男。

 だが、速度も並以下。軌道も直線。フェイトの放ってきた石の槍と比べれば月とスッポン以上の差だ。そんな攻撃を防ぐのはそう難しい話ではない。

 

「な、何だと!?」

 

 ガシリ、と俺の腹に突き刺さる直前だった石の矢を素手で掴んだ俺に信じられない、といった視線を送ってくる男。

 そんな男達を白けた視線で眺める。こんな奴等は殺す価値もない、か。

 

「スライムッ!」

 

 空間倉庫から伸びたスライムが部屋の中にいた男達を1人以外殴りつけて気絶させていく。

 切り刻まなかったのは単純に騒ぎが大きくなって万が一にもフェイトに俺達がここにいるという事を知られない為だ。

 そして唯一まだ意識のある男。即ち、俺達をここへと案内してきた男へと視線を向ける。

 

「ひっ、ひぃっ!」

「……助かりたいか?」

「は、はい! もちろんです!」

「お前の心掛け次第では考えてやってもいい」

「何をすれば……」

 

 怯えた様子の男へと笑みを浮かべながら指示を出す。

 

「この建物にある有り金を全て持ってこい」

「……は?」

「聞こえなかったのか? この建物にある有り金を全て持ってこいと言ったんだ」

「はい、すぐに!」

 

 こうして俺は男に金を持ってこさせ、その後に事情を聞く。

 どうやらこの男達は非合法の奴隷を扱う業者らしい。……エヴァが魔法世界では奴隷制度が残ってるとは言ってたが……

 溜息を吐きつつも、ついでとばかりに意識のあった男も気絶させて金を回収してから建物を出るのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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