転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0382話

 グリフィンドラゴンと契約した翌日。俺の姿は街の中心部にある闘技場の選手控え室の中にあった。ナギ・スプリングフィールド杯の予選……に出る為の予選に参加する為にだ。

 部屋の中には俺の他にも12人がそれぞれ自分の相棒と会話をしたり準備運動をしたりしている。そんな中で、俺は1人。どうしても目立つのだった。

 

「おい、お前さんのパートナーはどこだ?」

 

 試合が始まるのを待っていた俺へと虎の顔をした獣人が話し掛けてくる。その隣には鳥の顔をした獣人……鳥人? もいる。どこか修学旅行で戦った烏族を思い出すな。

 そんな風に思いつつ、首を横に振る。

 

「俺は個人出場だ」

「……何?」

「本気かね?」

 

 俺の言葉に、驚いた顔をする虎の獣人と心配そうに尋ねてくる鳥の獣人。拳闘士という事で荒っぽい奴等ばかりかと思っていたのだが、少なくてもこの2人はそれなりに親切らしい。

 

「ああ。拳闘士団に入るのは気が進まないし、ツレはいるがまだまだ未熟だからな」

 

 あやか達に聞かれたら怒られそうな気もするが、取りあえずはそういう事にしておいた方がいいだろう。

 

「その外見から推測するには魔族か半魔族なんだろうが……それでも1人でナギ・スプリングフィールド杯に参加するというのは無謀じゃないか?」

「まぁ、そうかもしれないが、こっちにも色々と事情があってな」

「……そうか。拳闘士には色々と事情のある者も多いからこれ以上は聞かないが、俺達にしてもナギ・スプリングフィールド杯はチャンスなんだ。戦いで当たったら手加減はしないからな」

 

 ニッと男臭い笑いを浮かべる虎の獣人に俺はニヤリとした笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「個人でこの大会に出るって事はそれだけ腕に自信があるって証拠だ。もし俺と戦う機会があったらそれを証明してやるよ」

「はっはっは。結構結構。やはり若者はそれくらい強気でないとね」

 

 鳥の獣人が笑いながらそう言ってくる。

 ……虎にしろ鳥にしろ、顔を見ただけでは年齢が分かりづらいな。

 そんな風に思っていると、控え室へと1人の男が入ってくる。一瞬俺と同じく個人で参加する物好きか? とも思ったのだが、腕章を見る限りでは闘技場のスタッフらしい。

 

「それではこれより予選を始める。組み合わせに関してはこちらで決めさせて貰った。尚、この中から本戦の予選に出るのは3組のみとなっている。なので1回戦って勝てばそれで本戦の予選に参加可能だ」

 

 なるほど。さすがに麻帆良武道会の様にバトルロイヤルにはしないか。

 

「では時間も無いので早速始めさせて貰う。1回戦はアクセルとニュグス、リュキオのペアだ。闘技場へ行ってくれ。続いて2回戦は……」

 

 スタッフがまだ喋っているのを聞きながら、扉へと向かう。

 チラリ、と先程の虎と鳥の獣人コンビの様子を見ると真剣な表情でスタッフの話に耳を傾けている。そして中年の男と若い男の2人組が俺と同じく扉から出ようとしている。

 どうやらこの2人が俺の相手らしい。パターンで言えば先程の獣人2人組が来るかと思ったんだが。

 

「おい。さっきあの獣人達との話を聞いてたんだが、お前は個人で出場するんだってな。あまりナギ・スプリングフィールド杯を甘く見るなよ? 俺が現実を教えてやるからよ」

 

 若い方の男がそう言って俺へと強い視線を送ってくる。

 ……ただ、それでも不快な感じを受けないのは、男の顔に浮かんでいるのが俺への侮りや嘲弄といったものではなく、純粋な憤りや怒りの類だからだろう。

 恐らくこの男はナギ・スプリングフィールド杯に真摯な態度で挑んでいる。それなのに俺が不利なのを承知で個人参加している事が許せない、そんな所か。

 

「ニュグス、落ち着け」

「リュキオ、けど!」

「いいから落ち着け。試合前に相手に絡むなんてのは2流、3流の拳闘士のやることだぞ。お前はそんな拳闘士としてナギ・スプリングフィールド杯に参加したいのか?」

「……いや」

「それでいい。アクセルとか言ったか。俺の相棒が失礼したな」

「気にするな。俺がどのくらいの腕でこの大会に参加したのかは、試合で見せるからな」

「ああ。楽しみにしている。行くぞ、ニュグス」

 

 ニュグスと呼ばれた若い方の男を連れて、リュキオと呼ばれた中年の男は扉を出て行く。俺も試合なんだから向かう場所は一緒なんだが……ここは空気を読んで少し時間を置いてから行くとしようか。

 

 

 

 

 

「では、これよりナギ・スプリングフィールド杯のキズクモ代表決定戦に出場する為の予選参加者を決める試合を行う」

 

 闘技場の中、拳闘士達が戦いをする場所で俺とニュグス、リュキオの2人は向き合っている。一応この試合も公開はしているのだが、本戦のように賭けが行われてる訳でも無く予選の予選という戦いの関係上観客はポツポツといるだけだ。

 そんな中であやか達5人が固まっているのは正直非常に目立つ。それも全員が全員子供の姿となれば尚更だ。

 

「アクセル君、頑張って下さいましー」

 

 そんなあやかの声が聞こえて来るが、目の前にいる対戦相手の2人は表情を崩す事も無く俺へと視線を向けている。

 

「ルールはナギ・スプリングフィールド杯に準じるもので武器や魔法の使用は自由。相手がギブアップか戦闘不能になった時点で勝負ありだ。では、開始!」

 

 審判役のスタッフがそう告げ、戦闘に巻き込まれないように後ろへと下がっていく。それを見送るまでもなく、瞬動を使って俺の懐に飛び込んできた若い方の男――ニュグス――が拳をボクシングで言うジャブのように連続して放ち、動きを止める。なるほど、確かに言うだけの事はあり、その拳は素早く的確にこちらコメカミや顎、あるいは口と鼻の間にある人中という急所を狙ってきている。そしてその拳は素早いだけではなく、空気を切るその音から相応の威力も併せ持っているらしく、確かに普通の拳闘士ならこの威力の拳を連打で食らえばすぐに気絶して戦闘不能になるだろう。同時に、リュキオもいつでもニュグスをフォロー出来るように20本近い『魔法の射手』を展開している。

 だが普通の拳闘士なら対処出来ないかもしれないが、俺自身はとても普通のと表現出来るような実力ではない。故に。

 

「ちぃっ、ちょこまかと!」

 

 苛立ったように吐き捨てるニュグス。

 連続して放たれる拳の全てを回避され続けているのだからそれもしょうがないか。

 

「さて、じゃあこっちからもそろそろ行くぞ」

 

 顎の先端を狙って放たれた拳を回避し、そのままニュグスの右腕を掴み……地面へと叩き付ける!

 

「ぐはっ!」

「ニュグス!」

 

 相棒の名を呼ぶのと同時に、『魔法の射手』を放ってくるリュキオ。だが、ニュグスを地面に叩き付けた勢いのままに再度腕力で強引にニュグスを持ち上げ、俺へと向かって来る『魔法の射手』の盾とする。

 

「ちぃっ!」

 

 舌打ちをしながら『魔法の射手』の軌道を変更するリュキオ。それを確認してから、地面へと背中を強打した為に呼吸が上手く出来ずに咳き込んでいるニュグスの鳩尾へと拳を埋めて気絶させる。

 

「さて、これで1対1だな」

「……なるほど、ニュグスを歯牙にも掛けないか。それ程の腕があるのなら個人出場に踏み切るのも分かるな。……さすが魔族、という所か」

「さて、どうだろうな。続きはどうする? 降参するのなら止めないが」

「まさか。折角お前のような腕利きと手合わせ出来るんだ。もう少し付き合って貰おう」

 

 獰猛な笑みを浮かべつつ『戦いの歌』を無詠唱で使うリュキオ。その様子を見ながら、俺もまた『戦いの歌』を無詠唱で使う。

 

「行くぞ!」

 

 短く叫び、突っ込んでくるリュキオ。俺の頭を狙って放たれる蹴りを、後ろへと跳んで回避。地面に着地した瞬間に瞬動を使いリュキオの真横へ。同時に空中で虚空瞬動を使い、三角跳びの要領でリュキオの背後へと回り込む。

 

「何っ!?」

 

 小さく叫んだリュキオだったが、後ろを振り向くというような真似をせずに前へと出る。その判断の早さはさすがベテランの拳闘士と言ってもいいものだった。

 首筋を狙って放たれた手刀は空を切り、安心したのかこちらと距離を取って振り向こうとするリュキオ。だが、その動きは途中で止まる。

 

「何だ……影!?」

 

 そう、異形化の特殊能力である影を自由に操る漆黒の角。それを使い、リュキオの影を操ってその四肢を縛り上げたのだ。

 

「残念だったな」

 

 呟き、動きの取れないリュキオへと向かい無言で歩を進めていく。

 

「……参った。降参だ。この状態から逆転出来る手段が無い」

「そこまで、勝者アクセル! 勝者は東の扉から、敗者は西の扉から出るように」

 

 リュキオのギブアップ宣言を聞いたスタッフが俺の勝利を宣言する。

 それを確認してから指をパチンと鳴らして四肢を拘束していた影精を解く。

 

「アクセル、と言ったな」

「ああ」

「お前は強かった。それにまだ全力を出していないだろう?」

「さて、どうだろうな」

 

 苦笑を浮かべながらニュグスをひょい、と担ぎ上げるリュキオ。

 

「ま、それでもお前みたいな強い相手と戦えて良かったし、ニュグスにしてもいい経験になっただろう。俺達に勝ったお前が個人でどこまで上に行けるのか楽しみにしてるよ」

「ああ、了解だ。ちなみに大会が始まったら俺に賭けると大儲け出来るからお薦めだ」

「くくっ、是非賭けさせて貰おうか」

 

 そう言い、西の扉へと入っていくリュキオ。それを見送ってから、俺もまた東の扉へと入っていく。

 

「本戦出場おめでとうございます」

 

 東の扉から伸びている通路。その脇に1人の女が椅子と机を用意して座っていた。

 

「お前は?」

「闘技場のスタッフです。予選の予選を勝ち抜いた選手に連絡事項の書かれた紙を渡すように言われまして。どうぞ」

 

 渡された紙にはナギ・スプリングフィールド杯の日程が書かれている。

 と言うか、本戦が明日ってのは聞いてないんだが。ポスターにも書かれてなかったし。

 

「ちょっと急じゃないか? 俺達に少し厳しすぎるような気もするが」

 

 例えば、ボクシングなんかは1試合が終わったら数ヶ月は次の試合を組まないというのが普通だ。そこまで見習えとまでは言わないが、せめて数日程度の休日はあってもいいだろう。

 だが、紙を俺に渡した女のは自分の持っていた本へと視線を向けて素っ気無く返す。

 

「拳闘士団に登録しないで参加すると、それ等の選手達よりも待遇は悪くなると登録時に聞かされていませんか?」

「いや、それは聞いてるが……わざわざ本戦の前日に予選をやらなくてもいいだろうに」

「闘技場の方としては、拳闘士団で参加するよう勧めています。何しろ選手達の纏め役も兼ねてますので。それをしないで参加するというのですから、余り我が儘を言われても困ります。……何でしたら、今からでもどこかの拳闘士団に登録しますか?」

 

 チラリ、と一瞬だけ俺の方へと視線を向けながらそう尋ねてくるが、さすがに賞金首になっている今の俺が拳闘士団に所属するというのは色々と問題がある。

 

「いや、こっちにも事情があってな。それは出来ない」

「そうですか。それでは諦めて下さい。と言うか、街中で話を聞いていれば本戦の開始日が明日だというのは十分耳に入る時間があったと思うのですが」

「……」

 

 さすがのその問いには無言で返すしか出来なかった。

 何しろ、年齢詐称薬を使ってるとは言ってもどこから賞金首だというのが知られるか分からない。それに、子供というのが逆に人掠いなんかを引き寄せる可能性もあるので、俺達は基本的には宿に引き籠もっているのだから街中の情報が耳に入る筈も無い。

 唯一の情報源は宿屋の女将だけだが、そっちからも話は聞いてないしな。

 

「……ご理解頂けたら、どうぞお帰り下さい。今は少しでも休んで明日に向けて体力回復をする事をお勧めします」

「分かったよ」

 

 こうして、予選の予選は突破したものの、翌日には本戦という多少厳しいスケジュールを迎える事になるのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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