転生とらぶる   作:青竹(移住)

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番外編019話 0385.5話

 その日、ネギと小太郎は闘技場にある食堂でTVを見ながら昼食を取っていた。

 インタビューでナギ・スプリングフィールドと名乗ってから数日。自分が父親の偽物だとか、本物が生き返ったとか色々と言われているのをネギは知っていたが、そのような事よりも心配なのは行方の分からない教え子達や、パーティの仲間。そして常に自分の前に立ち塞がっている壁のような存在であるアクセルやその従者達だった。

 

「ネギ、何しとんのや。さっさと食べて修行するんやろ?」

「あ、ごめん」

 

 脳裏で考えていた仲間や友人達の事は取りあえず置いといて食事へと集中するネギ。

 その時だった。食堂にあるTV画面が目に入ってきたのは。

 まず目に入ってきたのは多数の角だ。側頭部から2本、額から1本。そして後頭部から前へと伸びている2本。チラリと背中に見えたのは羽だろう。どこか見覚えがあるな? と思いつつ、何か気になったのでスープを飲みながらもその画面へと集中する。

 

『ん、あー……ナギ・スプリングフィールド、見ているか? いや、この放送を見ているのを前提として話させて貰う。俺はアクセル。アクセル・アルマーだ。この名前に聞き覚えがあるかどうかは知らないが、お前は強敵を待っているのでガンガン掛かって来いとこの前のインタビューで言っていたな? ならお望み通り俺がお前に敗北の土を付けてやろう。お前の父お……いや、お前の名前を冠したナギ・スプリングフィールド杯の本戦で俺はお前を待つ。お前と共に在る者達が現れるのをオスティアで待つとしよう。ちなみに俺も共に在る存在である鞭、虹、炎、歌がいる。あぁ、キリングドールの妹も俺と共にいるから5人だな。それ以外の4つのイレギュラーは俺の手元には存在しない。この意味が分かるな? ナギ・スプリングフィールド、繰り返すがアクセル・アルマーはオスティア終戦記念祭で行われるナギ・スプリングフィールド杯の本戦で待つ』

 

 ブーーーーーーッッッ!

 アクセル・アルマーという名前が出た瞬間、ネギの口から飲んでいたスープが綺麗に吹き出されて虹を作る。

 幸いなのは、小太郎もまたその画面に集中していたことだろう。その為にネギの口から吐き出されたスープを顔面で受けるという真似をしないで済んだのだから。

 

「げほっ、げほっ、ちょっ、ちょっとコタロー君!」

「ああ! やっぱりアレは……」

 

 驚きの余り咽せたネギと、当然とばかりに笑みを浮かべつつも嬉しそうに頷く小太郎。

 そう、身体の大きさは自分達の知っているアクセルとは違うが、あの姿は2人にとっても何度か見た覚えのある姿だったので見間違いという事はないだろう。

 何しろ、あんな頭に角が4本も5本も生えてるような大魔王染みた存在が他にそうそういる筈もないのだから。

 

「外見はきっと僕達と同じだよね」

 

 年齢詐称薬、という言葉を出さずに小太郎へと尋ねるネギ。

 

「そやろな。まぁ、俺等も同じ事しとるんやしアクセルも同じなんやろ。けどここで話をするのはあかん。部屋に戻ろか」

「……だね」

 

 チラリ、チラリと自分達へと視線が向けられているのを感じ、素早く料金を支払って部屋へと向かう。

 

 

 

 

 

「あの放送で言ってた鞭、虹、炎、歌ってのはあやかねーちゃんや千鶴ねーちゃん達、アクセルの従者やろな」

 

 部屋でベッドへ腰を下ろしながら小太郎が呟く。

 

「うん。それとキリングドールの妹ってのは茶々丸さんで間違いないと思う」

「じゃあ、イレギュラーってのは? 夏美ねーちゃん達の事なら5人って言うやろ?」

「それは、ほら。僕達も夏美さんがこの魔法世界にいるって知ったのはここに来てからだったでしょ。ゲートから強制転移させられたアクセル君達が知らなくても無理はないよ」

 

 呟きながら、ネギはこの街にいる大河内アキラ、和泉亜子、村上夏美の3人の姿を脳裏に浮かべる。

 強制転移させられ、何らかの病に掛かった所を薬の料金と引き替えに奴隷にされた3人。そもそも自分達が拳闘士として大会に出ているのはその賞金で3人を奴隷から解放する為なのだ。

 そこまで考え、ネギはタラリと冷や汗を流す。

 

「ね、ねぇ、コタロー君」

「ん? なんや?」

「あの3人を奴隷から解放する為には、ナギ・スプリングフィールド杯で優勝しないといけないんだよね?」

「そりゃそうやろ。でないと奴隷解放の為の金なんかあらへんやん」

「じゃあ、つまりだよ? 僕達はその大会でアクセル君に勝たないといけないって事になるんだけど……それも麻帆良武道会の時とは違って、異形化とかスライムとか空間倉庫とかなんでもありな状態のアクセル君に」

「……」

 

 小太郎もようやくネギの言いたい事を理解したのか、タラリと冷や汗を浮かべる。

 

「ま、まぁ。きっとあれや! アクセルが優勝しても奴隷解放の為の資金は出してくれるやろ。あやかねーちゃんや千鶴ねーちゃんが付いてるんやし」

「そ、そうだよね! いいんちょさんや那波さんならきっと!」

 

 この辺、既に自分達が優勝する可能性を真っ先に消してしまっているのはこの2人がアクセルをどう思っているのかの証明だったのだろう。

 その後、ネギ達と同じ映像を見たメンバーが部屋に飛び込んできて喜びの声を上げるのは別の話。

 ……さらに、アクセルが突然変異のグリフィンドラゴンを召喚している戦闘シーンを見てネギと小太郎の頬を引き攣らせるのもまた別の話だった。


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