転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0387話

 レイジング魔法店でダイオラマ魔法球を買って、その日の買い物と気分転換的な意味での外出は終了した。さすがに残り15万ドラクマまで減ってしまった軍資金を鑑みて、その後はどこに寄るでもなく宿屋へと戻ったのだ。

 そして現在は例の如く俺の部屋に集まって早速買ってきた魔法球を眺めている。

 一応あやか達が買ってきた物は既に空間倉庫から出してあるのだが、それらは自分達の部屋に置いてきてまたすぐに俺の部屋に集合していたりする。何だかんだ言ってもやっぱり魔法球に興味津々なんだろう。

 

「これがエヴァンジェリンさんの持っている魔法球よりも性能が高いという……」

 

 テーブルの上に置いてある魔法球を見ながらあやかが呟くと、その隣で美砂が苦笑を浮かべる。

 

「でも、あの店主の人が言ってた通り中がちょっとエヴァちゃんのに比べるとショボイと言うか」

「まぁ、小屋が1つだけだしね」

 

 円が頷いて美砂に同意する。

 

「でも、説明書によるとエヴァンジェリンさんの持っている魔法球よりも色々と機能が増えているらしいわよ?」

 

 取説を読んでいた千鶴がそう告げる。

 確かに千鶴の読んでいた取説によるとエヴァの持っている物よりも色々とグレードアップしているのは事実のようだ。例えば、エヴァの持っている魔法球は一端起動させるとその近くに近付いたり魔法球に触ったりすれば無条件でその人物を魔法球の中へ入れる。だが、俺が買った魔法球は直接触って魔力を一定値以上の強さで流す事により中へと入れるようになっている。魔力の無い一般人にしても、魔力を持っている人物と手を繋ぐなり服を握っているなりしていれば中に入る事は可能だ。

 この点、エヴァの無条件で中に入れるというのよりも防犯意識がはっきりしていると言えるだろう。それに個別に設定すればその設定した人物以外は中に入れられないようにするというのも可能となっている。

 そして何と言っても、その最大の売りは最大48時間まで時間の流れをコントロール出来るという所だろう。エヴァの24時間の倍、外の1時間が中では2日間となっている。

 その他にもエヴァの魔法球だと内部で24時間経ってからじゃないと外に出られなかったのだが、俺が買った奴はいつでも自由に出入りが可能となっている。

 確かに性能……と言うか、機能の面では35万ドラクマの価値はあるんだよな。

 もっとも、おかげでこっちの軍資金の残りは約15万ドラクマ。なるべく早いうちに金を増やさないといけないが。

 ……やっぱり賭けが一番手っ取り早いか。

 幸い、明日はナギ・スプリングフィールド杯の3回戦だ。気は進まないが、また闘技場に直接出向いて俺に賭けて貰うとしよう。 レイジングに頼むのもいいかもしれないと思ったが、賭ける金額が金額なだけに妙な奴等に絡まれた場合の対応を考えると魔法屋の店主ではあっても一般人に近いレイジングよりも戦闘能力が高いあやか達に軍配が上がる。

 あるいは俺の空間倉庫に入っている金塊とかを売ってもいいのだが、当然きちんとした場所で売るというのは賞金首の俺達には無理だし、かと言って裏ルートのような場所は探すのも大変だし、何より足下を見られて格安で買い取りされるのは確実だ。それに万が一俺達の正体がバレたりなんかしたら、それこそ喜んでその場で賞金稼ぎに変身しそうな気もするしな。

 なので、結局はあやか達が俺の試合に賭けるというのが一番簡単で尚且つ安心な訳だ。

 小さく溜息を吐き、あやかの方へと向き直る。

 

「あやか、悪いが……」

 

 それだけで俺が何を言いたいのかが分かったのだろう。笑顔を浮かべて頷く。

 この辺はさすがに俺の一番最初の従者と言ってもいいのかも知れない。

 

「ええ。分かってますわ。明日の試合でまた闘技場に出向いてアクセル君に賭ければいいんですのね」

「頼む。本当ならお前達に危険な真似はさせたくないんだが……」

「気になさらないで下さいまし。私としましてもアクセル君の試合をTVではなく直接この目で見られるというのは大歓迎ですわ。……ここが現実世界であるのなら、アクセル君に拳闘士なんて野蛮な真似をさせなくても済むのですが……口惜しいです」

「ほら、気にするなって。どのみち金を稼ぐ稼がないに限らずにネギ達や大河内達を探す為にはしょうがなかったんだから」

 

 がっくりと肩を落としたあやかを、ひょいっと持ち上げて膝の上に乗せてから頭を撫でてやる。

 

「あ、その、アクセル君……ちょっと困りますわ。あぁ、でもこんな強引なアクセル君も素敵です」

 

 撫でているうちに何故か力が抜けてぐったりと俺に寄り掛かってくるあやか。

 さすがに大人顔負けのスタイルをしている元のあやかならともかく、こんなに小さくなってるあやかだと何も感じないな。

 そんな風に思いつつもその金色の髪を撫でていると、両横からニョキッとばかりに現れた円と美砂があやかの両腕をがっちりと捕まえて俺の膝の上から連行していく。

 

「ちょっ、ちょっと。円さんに美砂さん!? 折角の桃源郷を……」

「ほらほら。あんまりあやかがアクセル君に甘えると円が嫉妬するから気をつけようね」

「ちょっ、美砂!? あんた1人だけ!」

「あらあら、ウフフフ。皆元気ねぇ」

「そうですね。皆さんが元気で何よりです」

 

 そんな3人の横では千鶴がニコニコと、茶々丸が微かに笑みを浮かべて微笑ましそうにしていた。

 その後、何だかんだであやかの暗い雰囲気は吹っ飛んでいつも通りのあやかとなっていた。この辺は円と美砂に感謝だな。

 そう思いつつ、TVのスイッチを入れると……

 

「あら、ネギ君」

 

 千鶴の声が周囲へと響いて皆の注目がTVに映っているネギへと集中する。

 

『いやぁ、デビュー以来まさに破竹の快進撃ですね。今日もまた見事に勝ちました』

『ええ、ありがとうございます。これも皆さんの応援があっての事です』

 

 勝利者インタビューなのだろう。ネギが何らかの亜人と思われる女のインタビュアーからマイクを向けられている。

 

「こうして見ると、やっぱりネギ君って美形なのよね。……あ、もちろんアクセル君は別格だけど」

「まぁ、美砂の意見にも頷けるものはあるかな。ただ、ネギ君は美形は美形でもちょっと完璧すぎて一緒にいたら疲れてしまいそうな感じかな。やっぱり私はアクセル君と一緒にいられればそれでいいや」

「円、さりげなくアピールとは腕を上げたわね」

 

 そんな美砂と円がいつものやり取りをしている間にもインタビューは続いていき……

 

『では、ナギさん。最後に一言お願いします』

『はい。では、えーっと、キズクモにいるアクセル・アルマー選手に。貴方の挑戦、きちんと受け取りました。僕もオスティアで会えるのを楽しみにしています。僕と共に在るのは幽霊とその保護者。それと君の左斜め前の人です。それ以外はまだ僕の下にはいません。それとイレギュラーについてですが、そっちでは知らないかも知れませんが全部で5つとなっています。僕の側に存在するイレギュラーは人魚、サッカー、そして虹の妹となっています。他2つのイレギュラーは不明なのでそちらで把握出来るのならお願いします』

『おやおや? 何やら意味ありげなメッセージですが……アクセル・アルマー選手というのは確かナギ選手も仰っていたようにキズクモで現在行われているナギ・スプリングフィールド杯の予選に参加している選手で、ナギ選手の挑戦を真っ先に受けた……』

『はい、僕も彼とは是非オスティアで戦ってみたいと思っています』

 

 その言葉を最後にネギのインタビューは終わった。

 そして残っているのはシン、と静まりかえった部屋の空気のみ。

 

「千鶴さん」

 

 あやかが固まっている千鶴へと声を掛ける。

 それはそうだろう。ネギがインタビューで言っていた虹の妹。そう言われてパッと思いつくのは当然夏美の事だ。次点で鳴滝姉妹だろうが、その場合は妹達と表現するだろう。

 

「夏美もこっちに来てたんだ……」

「でも、フェイトが襲ってきた時にはあそこにいなかったわよ?」

「何らかの理由であの場にいなかったんだと思う」

「あ、でもネギ先生の側にいるのなら何も知らないでこの魔法世界に放り出されるよりはマシじゃない?」

 

 円のその言葉に、固まっていた千鶴がピクリと反応する。

 

「そう、そうよね。ごめんなさい。いきなりの事だったからちょっと驚いてしまったわ。そうね、確かにネギ先生の側にいるんだから夏美ちゃんに関してはそれ程心配する必要はないわよね。小太郎君もいるだろうし」

 

 確かにインタビューに答えていたのはネギだったが、その後ろには小太郎の姿も映っていた。3-Aの魔法に関わるメンバーの中でも一番夏美と親しいのは小太郎だろう。何しろヘルマンに追われて道端で倒れているところを助けて貰ったのだから、その恩というのもある。

 さすが犬。3日経てば飼われた恩は忘れない、か。

 

「では、夏美さんについてはこれでいいとして、他の方々に関する情報ですが」

 

 チラリ、と一瞬だけ千鶴の方へと気遣わしげな視線を送りつつもあやかは話を続ける。

 円と美砂、茶々丸にしてもそんなあやかの気持ちが分かったのか、そのまま話を続けていく。

 

「まず、幽霊とその保護者というのは……」

「さよちゃんに朝倉でしょうね」

「私もそう思う」

 

 美砂の言葉に円が同意する。

 俺にしても、あの場で幽霊と保護者とくれば相坂と朝倉しか思いつかないのでそれで合っているだろう。

 

「次が、君という表現でしたが文脈から考えてアクセル君の左斜め前の人という事だと思いますが」

「席という表現を使っているという事はやっぱり教室だろう。で、俺の左斜め前となると……長谷川だな」

「となると、長谷川さんもネギ先生の側にいると」

「で、人魚ってのはアキラの事で間違い無いでしょ。サッカーというのはどう考えても亜子だろうし。そうなると、まだ行方の分かっていないのは裕奈とまき絵の2人か」

 

 円の言葉に頷く。

 

「そうなるだろうな。せめて明石と佐々木の2人が一塊になっていてくれればいいんだが……」

 

 明石はともかく、佐々木がバカレンジャーの1人だけあってどうにも不安が拭えない。

 

「ほら、アクセル君。私が言うのもなんだけど元気を出していきましょう。前向きに考えれば情報収集する相手が6人減ったって事なんだし。……相坂さんは幽霊だから元々情報を集めるのは難しかったでしょうけど」

 

 千鶴の言葉に小さく頷く。

 

「確かにそうだな。まぁ、残りの情報についても資金調達にしても、とにかく明日だ。今日は……そうだな、取りあえず折角だからこの魔法球の中にでも入ってみるか?」

 

 テーブルの上に置かれている魔法球へと視線を向ける。

 確かに中身は小屋が1軒だけのしょぼいものだが、エヴァの持っている別荘と具体的にどう違うのかをその身で感じてみるというのもいいだろう。

 幸いにも、ここにはエヴァの従者でもある茶々丸がいるんだし。

 そんな俺の案に皆が賛成し、早速魔法球の中へと入る事になる。

 俺と茶々丸以外の4人は魔法球へと触って魔力を流してすぐに中へと入っていく。それを見届けた後、俺は茶々丸へと手を伸ばした。

 

「茶々丸、手を」

「はい……」

 

 そっと伸ばされた手を握り、反対の手を魔法球へと伸ばして魔力を流す。

 すると次の瞬間にはだだっ広い、荒野としか言えない空間に俺と茶々丸の姿はあった。

 周囲には当然あやか達の姿もある。

 

「へぇ、これが魔法球の中か。……エヴァのとはさすがに随分と違うな」

 

 見る限りが荒野で、少しは慣れたところにはポツンと小さな小屋が。

 

「あ、アクセル君」

 

 呟いた声でようやく俺の存在に気が付いたのか、円と美砂が揃ってこっちへと振り向いてくる。

 

「凄いね」

 

 一見、どこまでも広がっているような荒野。……まぁ、実際は魔法球の中なんだからある程度の距離までしかないんだろうが。

 

「茶々丸さん、エヴァンジェリンさんのと比べて広さはどうですの?」

「……サーチ完了。マスターのダイオラマ魔法球と比べた場合は2.5倍程の広さがあるようです」

「魔法球自体の大きさはエヴァンジェリンさんの魔法球の半分程度なのに、大きさは約2倍以上なんですのね。この辺が技術の進歩なのでしょうか」

 

 確かにこの魔法球はエヴァの持っていた半分程度の大きさしかない。……まぁ、エヴァは魔法球自体を複数持っていてそれを接続しているが。

 

「とにかく、今日はここで目一杯身体を動かすわよ!」

 

 美砂がそう宣言すると、半ば訓練、半ば遊びのように騒ぐのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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