転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0390話

 ナギ・スプリングフィールド杯の予選3回戦が終了し、以前のように顔や身体全体を隠せるローブを身に纏って闘技場の入り口であやか達を待っていたのだが……

 

「遅いな」

 

 呟き、周囲を見回す。

 本来であればもうとっくに合流出来ていてもいい筈なのだが、あやか達がまだ闘技場から出て来る様子が無い。

 そんな時。

 

『アクセル君、ちょっといい?』

 

 脳裏に響く声。パクティオーカードの機能の1つである念話だ。

 円からの念話を受け取り、俺もまた空間倉庫からマスターカードを取り出して額へと接触させて『念話』と唱える。

 

「どうした? 随分遅れてるようだが……」

『その、私達が大勝ちしてたのを見ていた柄の悪い人達にちょっと絡まれてて……』

「あー、やっぱりそうなったか」

 

 一応警備兵がいるとは言っても、ここはファンタジー世界。奴隷やら賞金首やらがまだまだ存在している世界なのだ。そんな中で、年齢詐称薬で幼児化している5人が賭けの勝ち札を大量に持っているのを見たら、2流、3流のチンピラならまず間違い無く絡んでそれを奪おうとするだろう。

 

『どうする? 私達で追い払ってもいいけど、それだと目立つ事になりそうだし……』

「分かった、すぐに行く。場所はどこだ?」

『闘技場の中の、賭け札とかを現金に交換して貰う所の近くにある柱の裏、かな』

 

 円から場所の説明を聞きながら、ローブを身に纏ったままで闘技場の客席側の方から中へと入っていく。

 早足で進む事、数分。ギャーギャーと騒いでいるような声が聞こえて来る。

 

「だから、その賭け札を俺達に渡せばいいんだよ。痛い目には遭いたくないだろう?」

「お断りですわ。自分達が賭けに負けたからと言って、私達に絡むというのは筋違いです。賭け事とは大人が自分の余裕のある分のお金で遊ぶものです。貴方達のような人はギャンブルで身の破滅をする前に大人しく手を引く事ですわ」

「んだとこの餓鬼っ! 人が優しくしていればいい気になりやがって」

「誰が優しくですの? 最初から高圧的だったじゃありませんか」

「大体、その勝ち札はアクセル・アルマーが勝ったからこそのものだろ?」

「そうそう、ならそのアクセル・アルマーの友達である俺達にちょっと融通してくれてもいいと思うんだがな」

 

 あやか達へと絡んでいるのは10代後半から20代前半とみられる3人のチンピラだ。人間が1人に亜人が2人。

 その3人の中でも亜人の1人が放った言葉に、近寄りかけた俺の足がピタリと止まる。

 一応確認の為にその3人の顔を確認するが、当然俺に見覚えがある訳もない。

 まぁ、チンピラに良くあるハッタリって奴か。

 

「へぇ、貴方達アクセルく……もとい、アクセル選手のお知り合いですの?」

 

 笑顔を浮かべつつ3人へと尋ねるあやか。……まぁ、口元は笑ってるが目が一切笑っていないという非常に怖い笑顔なのだが。

 怖い、何だか分からないが、背筋がゾクゾク来る怖さを感じる。おまけに他の4人を確認すると、その4人が4人ともあやかと同じような笑顔を浮かべているのだから余計にだ。

 だが、チンピラ達にとっては自らに近づいて来ている破滅を理解していないらしく調子に乗って言葉を並べ立てている。

 

「そうそう。お嬢ちゃん達には分からないかもしれないが、俺達とアクセルはそれはもう深い友情で結ばれてるのさ」

「……不快な友情、ではなくて?」

「あ? 何か言ったか?」

 

 ボソッと呟いたあやかの言葉はチンピラ共には聞こえていなかったようだが、俺の耳にはしっかりと届いていた。

 

「いえ、何でもありませんわ。でも、アクセル選手と友達だと仰るのなら何故アクセル選手じゃなくて対戦相手に賭けてらしたんですの?」

 

 痛いところを突かれたのだろう。チンピラ達が眉を顰める。

 

「まぁ、こっちにも色々と事情があるんだよ。さぁ、分かったらお嬢ちゃん達が持ってる賭け札を渡して貰えないか?」

「当然……お断りしますわ」

「っ、このクソガキ共が! いいから優しくしているうちにそれを寄こせって言ってんだよ!」

 

 怒鳴った亜人の男があやかへと手を伸ばし……

 

「はい、そこまでだ」

 

 俺がその伸ばされた手をガシリと掴む。

 

「あぁ!? 何だ手前は?」

「その5人の保護……いや、知り合いだよ」

 

 保護者と言おうとした瞬間、5人の笑っていない笑顔が俺へと向けられた為に慌てて言い直す。

 

「へぇ、知り合いねぇ……ならこいつらがした不始末分を俺達に払って貰えないか?」

「不始末?」

「ああ。俺達がアクセル・アルマーの知り合いだと言ってるのにそれを信用しようともしないでこっちの頼みを断るのさ。おかげで俺達の繊細な心は傷ついたからな。その傷を癒す為の費用を負担して欲しいんだよ」

「アクセル・アルマーの知り合い……ねぇ。一応聞いておくが、どこで知り合ったんだ?」

「それは……わざわざお前に言う必要は無いだろう? それよりも慰謝料だよ、慰謝料」

 

 これ以上突っ込まれるのを避けたのか、そう怒鳴ってくる人間の男。亜人2人はその隣で俺を睨みつけている。

 

「……最後にもう1度聞いておくが、本当にアクセル・アルマーの知り合いなんだな?」

「しつこいぞ! そうだって言ってるだろうが!」

 

 その言葉を聞き、大きく溜息を吐いてから顔を覆っていたローブをまくり上げる。

 

「奇遇だな。俺の名前もアクセル・アルマーと言って、ナギ・スプリングフィールド杯の予選に参加してるんだがお前達と知り合った覚えも、友達になった覚えもないぞ?」

『……』

 

 俺の顔を見た3人が硬直しているのを見ながら、先程まで威勢の良かった人間の男の首へとそっと手を寄せる。

 

「ひぃっ!」

 

 悲鳴を上げつつ後退ろうとするが、既にその喉は俺の手でがっしりと押さえられているので当然下がるに下がれない。

 

「なぁ、教えてくれないか? いつ俺がお前の友達になったのか」

「そ、その……」

 

 緊張させないように、意図的に優しい声を出して尋ねるのだが男は額から冷や汗をダラダラ流しながら言葉に詰まる。

 ジワジワと殺気を発しながら喉を掴んでいる右手へと力を入れていく。

 

「ひ、ひぃっ!」

 

 俺が喉を掴んでいる男の両隣にいた亜人の男達が、悲鳴を上げながら腰を抜かして地面へと座り込み、少しでも俺から遠ざかろうと地面を這って後退る。

 そして床へと広がる染みとアンモニア臭が周囲へと広まり……

 微かに眉を顰め、男の首を突き放して床へと転がす。

 

「もういい、行け。ただし、次にお前達の顔を見た時には……そうだな、グリフィンドラゴンの餌にでもしてやるから覚えておけ」

「わ、分かりましたぁっ!」

 

 その言葉で俺がグリフィンドラゴンを召喚出来るというのを思い出したのだろう。人間の男が慌てて腰を抜かした亜人の男2人を抱えてそのまま走り去る。

 ……2人を抱えてあの速度で走り去る事が可能というのは、意外に体力があるな。もしかしたら拳闘士になればそれなりにいけるんじゃないか?

 幸い、ここが柱の裏で人目の付かない場所だったというのもあり他の客達からの注目は集まっていない。騒ぎになる前にローブで顔を隠す。

 

「……アクセル君、ご迷惑をお掛けしました」

「何、気にするな。それより俺はここで待ってるから早く換金して来い」

 

 ペコリと頭を下げたあやかへと告げ、その場で柱へと寄り掛かる。

 

「はい。では行きましょう」

「そうね。ここにアクセル君がいるからもう絡まれても心配ないしね」

「ちょっと、絡まれるのが前提なの? それはちょっと嫌だなぁ」

「あらあら、ウフフ。皆元気ねぇ」

「そうですね。皆さん現実世界にいた時に比べると随分と精神的に強くなっているようです」

「ほらほら、話は後でも出来ますのでさっさと換金してきますわよ」

 

 パンパンと手を叩いたあやかが皆を引き連れて換金所へと向かっていく。

 その後ろ姿を見送りながら、確かに随分と図太く……もとい、精神的に強くなっているという茶々丸の意見に内心で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 換金も無事に済み、あれ以来は変な奴等に絡まれる事もなく無事に宿へと戻って来た。

 いつものように女将に挨拶をしながら部屋へと向かい、これまたいつもの如く俺の部屋へと皆が集まる。

 

「さて、そういう訳で無事アクセル君の賭け試合に勝った訳だけど……あやか、今の私達の軍資金は?」

「28万ドラクマ、と言った所ですわね」

 

 28万ドラクマ。日本円にして約1700万円か。

 

「予想より増えたわね。アクセル君は最近注目されているからオッズはそんなに高くないと思ってたんだけど」

 

 意外、という表情をする円。それに答えたのは皆に紅茶を配っていた茶々丸だった。

 

「どうやら、アクセルさんが今日戦った対戦相手がこのキズクモの中でもかなり強いコンビだったのが影響しているようですね」

「つまり、ポッと出のアクセル君よりもこれまでの実績がある分あの……エルフっぽいのとゴツイのに人気が集まった訳?」

「そうらしいです」

「うーん、そう言われると納得出来なくもないんだけど……ちょっと腹立つなぁ」

 

 微かに眉を顰めている円の頭をポンポンと軽く叩く。

 

「円、気にするな。それに、そのおかげで軍資金をたっぷりと用意出来たんだからな」

「アクセル君……」

 

 微かに頬を赤くしながらも、不承不承頷く。

 それを見てから、俺も皆へと向かって口を開く。

 

「さて、俺からも報告がある。まず第一に……俺達の正体がとある人物にバレた」

『……ええ!?』

 

 一瞬の静寂後、すぐに驚きの声が上がる。

 まぁ、それはしょうがないと言えばしょうがない。何しろ、賞金首だというのが知られてしまったという事なのだから。

 

「ちょっ、アクセル君。何を落ち着いてるの。早く逃げ出す準備をしなきゃ!」

 

 美砂の言葉に、他の面々も同様だとばかりに頷く。

 

「あぁ、その辺は問題無い。向こうと取引をしてきたからな」

「取引、ですの?」

 

 不思議そうな顔をするあやか達へとリュボースとのやり取りを教えると何故か微妙に不機嫌になる。

 

「どうした?」

「いえ、取引自体には問題ないと思います。ナギ・スプリングフィールド杯の行われるオスティアへと向かうというのは私達の目的と合致していますし。……ですがその、リュボースさんでしたか? その方はもしかして……」

 

 そこまで話して何故か言い淀むあやか。それを聞いていた美砂が後を引き継ぐように話し出す。

 

「いい、アクセル君。そのリュボースって女の人なんだよね?」

「ああ」

「つまり……ぶっちゃけると、その人って実はアクセル君の事が好きだったりしない?」

 

 美砂のその台詞に、皆が頷く。

 

「あー、いや。それはないと思う」

「何でそう言い切れるの?」

「いや、本人に聞いてみたからな。確かに俺に興味はあるけど、それは純粋に拳闘士としてって事らしい」

 

 俺の言葉を聞いた茶々丸を含む皆が部屋の隅へと移動する。

 

「ねぇ、どう思う?」

「うーん。確かにあの話を聞いた限りだと、ネギ君のいる都市へのライバル意識があるのは間違い無いんだけど……」

「問題は以前覗いた記憶のように、無意識に堕としてないかどうかですわね」

「あらあら、あやかったら随分とアグレッシブになったわね」

「……牝狐?」

「ちょっ、茶々丸さん。どこでそんな言葉を!」

「明石さんから教わりました」

「裕奈か……」

 

 いや、部屋の隅で話していても俺には丸聞こえなんだけどな。

 こうして、色々と揉めはしたが最終的には既に俺がリュボースと契約を結んでいる事もあり、皆渋々だが納得してくれたので何よりだ。

 その後は未だにガールズトークを続けているあやか達をその場に残し、魔法球の内部時間を最大まで引き延ばしての修行を開始するのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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