転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0392話

 ナギ・スプリングフィールド杯のキズクモ代表決定戦準決勝の翌日。俺は既に愛用と言ってもいいローブを纏って街中を歩いていた。

 ちなみに、あやか達の姿は無い。リュボースとの取引でも言われたように色々と脇が甘かったのは事実なので、今日の所は魔法球の中で模擬戦をしている。時間の流れは一番倍率の低い3時間だから俺が宿に戻る頃には模擬戦も一段落しているだろう。

 あやか達が訓練をしている中、何で俺がわざわざ賞金首や拳闘士のアクセルだという正体がバレる可能性を承知の上で外出しているのかというと、レイジング魔法店に用があったからだ。

 

「……あったからなんだが……」

 

 傍目にも見える程に賑わっているレイジング魔法店。中に客が入りきらないのか、外で行列を作っている者達までいる始末だ。

 

「あんたもここに用?」

 

 行列の一番最後に並んでいた男が俺を見つけてそう尋ねてくる。

 

「ああ。そのつもりだったんだが……この行列はレイジング魔法店の?」

「そ。あのアクセルが贔屓にしている店って事で昨日から洒落にならないくらい流行ってるらしいよ? 今日なんかまだここまでだけど、昨日なんかもの凄かったって話だし」

「……へぇ」

 

 俺に出来るのは、ただ相づちを打つだけだった。

 と言うか、俺の一言でここまで人が集まるとはさすがに思わなかった。

 

「って訳で、はいこれ」

 

 男に渡されたのは『レイジング魔法店行列最後尾』と書かれた看板だった。

 

「あー、ああ」

 

 さすがにここで前の方に割り込むのも問題あるし、あるいは俺がアクセルだと知られればもの凄い騒ぎになりそうな予感もある以上は大人しく自分の順番が来るのを待つというのがベストの手段だろう。

 

「でもさ、さすがアクセルだよな。俺も色々とマニアックなマジックアイテムを集めているんだけど、ここに店があるなんて知らなかったんだよ」

 

 看板を俺に渡した男が気安げにそう言ってくる。

 ……すまん、俺がこの店の存在を知ったのも思い切り偶然と言うか成り行き以外のなにものでもなかったりする。

 

「マジックアイテムの収集が趣味なのか?」

「そ。これでも結構ギャンブルは得意でね。今行われている大会でもアクセルに賭けて稼ぎまくってるし。その金で色々とマジックアイテムを集めてるんだ」

 

 話を聞く限りでは、どうやら道楽者と言うか、一流のギャンブラーと言うか、まぁ、そんな感じらしい。言うなれば劣化版桜子か?

 そんな風に他愛もない話をしながら待っていると、次第に行列が前へ前へと進んで行く。同時に、俺の持っていた看板も既に遥か後方へと移動していた。

 

「じゃ、お先に」

 

 軽く手を振ってレイジング魔法店へと入っていく男を見送り、自分の意外な影響力について考える。

 そもそもナギの血筋だというのがあからさまに分かるネギ……が扮しているナギならともかく、まさか俺の一言でここまで影響が出るとは思わなかった。

 いや、元々正義のヒーローじゃなくて敵対組織や、あるいは脇役に人気が集中するという現象に覚えがある以上は、魔法世界の住人にとっては主人公的扱いのネギのライバル役である俺にある程度の人気が集まるというのも分からなくはない……のか?

 そんな風に考えていると、レイジング魔法店から数人の客が出て来るのが見えた。その手には紙袋が握られており、中で何らかの買い物をしたのが窺い知れる。

 ……扱っている物がマジックアイテムなんだから基本的に高価な物が多いだろうに。まぁ、年齢詐称薬を1粒とかなら日本円にして数千円単位の買い物だから手が出ない事もないんだろうが。

 店から出て来た客を見送り、レイジング魔法店の中へと入る。

 そこには客がギッシリと詰まっており、バーゲンセール状態や、あるいはすし詰め状態とでも表現出来そうな感じだ。

 

「いらっしゃ……あ」

 

 カウンターから聞こえてきた疲労困憊といった声。その声の発生源であるレイジングは俺を見るとその動きを止めて、手でこっちに来いとばかりに手招きをしている。

 前回もこのローブ姿で来たので、俺が誰かというのはすぐに分かったのだろう。そのままカウンターの方へと近付いていく。

 

「良く来てくれた……って言いたい所だけど、ご覧の有様でな」

「言っておくが、俺は約束した通りに宣伝しただけだぞ」

「分かってるよ。ただ、アク……もとい、お前さんの相手をするのはちょっと時間をくれ。こいつ等を何とかしないと」

 

 さすがにこの中で俺の名前を呼ぶというのは危険だと気が付いたらしい。誤魔化しつつカウンターの中へと俺を招き入れる。

 

「疲れてるようだな」

 

 この前来た時に比べるとその顔はやつれているように見える。店に入ってきた時も思ったが、こうして近くで見るとレイジングの顔にはより顕著に疲労の色を感じ取れる。

 

「あー、おかげさんでな。何しろ昨日からひっきりなしだ。店が暇な時には忙しくなって欲しいと思っていたが、実際にそうなるとたまったもんじゃないな。……信じられるか? 昨日ひいこら言いながら何とか客を捌いたと思ったら、今朝の開店時間になった時にはまた行列が出来てたんだぜ?」

 

 ゲッソリ、という表情がこれ程合う表情もないだろう。そう思っていると、カウンターの方へと客が来る。

 

「すいません、これ幾らですか?」

「あー、そうですね。それは200ドラクマになります」

「うーん、こっちとこれも買うからもう少しまからない?」

「あー……じゃあ、その3つで500ドラクマって事で」

 

 こうして値引き交渉をしながらも、客とのやり取りは続き……1時間程経って、安めのマジックアイテムが品切れになりようやく一息吐く事が出来たのだった。

 フラフラとした足取りで閉店の看板をドアへと掛け、鍵を閉めて溜息一つ。

 

「あー、こんな事なら店の宣伝なんて頼むんじゃなかった」

「けど、売り上げはかなりのものになったんだろう?」

「そりゃあ確かに店を開いてから最高の値段……いや、それはお前に魔法球を売った時だな。まぁ、トップクラスの売り上げであるのは間違い無いが……それに比例するようにして俺の疲れも急激に溜まっていってるよ」

 

 カウンターに上半身を倒しながら呟く。

 

「どのみち俺の言葉だけで来てる客なんて一過性だ。すぐにまた来なくなる」

「それはそれで困るんだけどな。……よしっ、充電完了! で、今日は何の用があってきたんだ? まさか魔法球に不具合が出たとかか?」

「いや、ちょっと見て欲しい物があってな」

「見て欲しい物?」

「ああ、マジックアイテムに関しては趣味人と言ってもいいお前に是非」

「……へぇ。いいぜ、見せてみろよ」

 

 レイジングの言葉を聞き、空間倉庫から時の指輪が入っているケースを取り出す。

 

「これだ。ちょっとした遺跡……迷宮か? まぁ、取りあえずそんな所で手に入れたマジックアイテムなんだが……」

「が?」

「効果は分かってるんだが、具体的な使い方や欠点があるかどうかを調べて欲しい」

 

 ケースを開けて、20個の指輪をレイジングへと見せる。

 

「これは……」

 

 小さく呟き、指輪を手に取ってそっと表面を撫でながら何かを確認するように調べる。

 

「アクセル、これの効果は?」

「その指輪を付けた者を不老にするらしい。ただし、あくまでも不老であって不老不死じゃないらしいけどな」

「不老……不老!?」

 

 興味深そうに指輪を調べていたレイジングが、もの凄い勢いで視線を俺へと向けてくる。

 

「それは本当なのか!?」

 

 その食いつき方に若干引きながらも、頷いてみせる。

 

「ああ、少なくてもその指輪が置いてあった場所にはそう書かれていた」

「不老か……また、やばい代物を持ち込んでくれたな」

「やばい?」

「ああ。よく考えてみろ、不老不死――まぁ、お前の話を信じるならこの指輪の効果は不老のみなんだろうが――だぞ? ある程度の権力がある人間ならどう考えてもこれを欲しがるに決まってるだろうが」

「例えばMMの政治家とかか?」

「……まぁ、そうだろうな。どこが、と言われればMMが一番怪しいだろう。何せヘラスは亜人の国だ。人より長い寿命を持った種族なんてそこら中にいる。アリアドネーに関しても亜人がかなりの数を占めてる……いや、アリアドネーなら自分が使うんじゃなくて研究目的でこの指輪を欲するかもな」

 

 これを欲する目的は違えど、MMとアリアドネーは要注意だな。

 

「つーか、どこでこんなもんを手に入れたんだよ? そんじょそこらの迷宮に置いてある代物じゃないぞ? それも20個も」

「それに関しては、置いてあった……いや、迷宮の奥に隠されていたとしか言えないな」

 

 正確に言えばリッチが雇った傭兵か何かがどこかの誰かを襲撃して奪って来た物らしいが、わざわざそれを口に出す必要はないだろう。

 

「しかし、不老になる効果を持つ指輪が20個……とんでもないお宝だな」

「そのお宝の使い方の調査方法や欠点の調査を頼む。お前の持ってる指輪は預けておくから」

「……いいのか? 俺にこんな代物を預けて。もしかしたら持ち逃げするかもしれないぞ?」

「へぇ、持ち逃げするのか?」

「もしも、の話をしている。大体俺とお前はそう長い付き合いという訳でもない。それなのに信頼してもいいのか?」

 

 持ち逃げするような奴はそういう風に口には出さないと思うが……まぁ、それでも持ち逃げを実行したとしたら。

 

「そうだな、持ち逃げしたり誰かに盗まれた場合は俺が伊達にナギ・スプリングフィールド杯の予選で決勝戦まで残ってる訳じゃないってのをこの世の最後に教えてやるさ。ちなみに、グリフィンドラゴンもいるから、追跡もそう難しくないしな」

 

 異形化の影響で、若干だが鋭くなった爪をこれ見よがしにカチカチと鳴らし、額から生えている深紅の角の能力で一瞬だけ空中に炎を出現させる。

 

「……分かった。くれぐれも持ち逃げはしないと約束するし、誰か他の奴等に奪われないようにするよ」

 

 苦笑しながら頷くレイジングだった。

 

「ナギ・スプリングフィールド杯の本戦はオスティアでやるらしいからな。出来れば決勝が終わった後でオスティアに行くまでに頼む」

「優勝したつもりになるのはちょっと早くないか? 決勝の相手もアクセルと同じく個人出場の選手でここまで勝ち残ってきたんだろう?」

「ああ。確かに奴等は強い。強いが……俺にも理由がある以上は負ける訳にはいかないさ」

 

 ネギ達と合流するという目的は別に優勝しなくても既に居場所が判明した以上は何とかなりそうだが、リュボースとの契約の件もあるしな。

 

「ふーむ、じゃあやっぱり決勝もアクセルに賭けた方がいいのか?」

「まぁ、そうだろうな。この期に及んで負けるつもりは当然ないから賭けるなら俺にしておいた方がいいぞ。色々と隠し球もあるしな」

 

 魔法球を手に入れてから出来るようになった修行。その成果を見せるのには決勝戦というのはいい舞台だろう。

 

「なるほど。……まぁ、残念ながら俺はオスティアまでは行けないからアクセルに賭ける事が出来るのは次の決勝戦が最後になるんだよな。そうだな、ならいっそ今までの賭けで勝った金額を全部パーッと賭けてみるのもいいかもしれないな」

「おいおい、幾ら俺に賭けろって言ってもそこまでしていいのか?」

 

 呆れた様子で呟く俺に、ニヤリとした笑みを口元に浮かべるレイジング。

 

「今も言ったように、賭けるのはどうせこの大会でお前に稼がせて貰った金だけだ。お前を知ってる分、負ける確率は少ないと思ってるしな。それにもし負けたとしても俺に取ってはお前にこの店の宣伝をして貰った時点で総合的に見るとプラス収支だよ」

「まぁ、お前の金なんだ。好きにしろ。それよりも、指輪の件はくれぐれも頼んだぞ」

「お前の優勝祝いにピッタリの報告をさせてもらうさ。お前も決勝頑張れよ」

 

 そう言い、お互いに小さく頷くとレイジングは時の指輪の解析に。俺は魔法球での修行の為に店を出るのだった。

 余計な先入観を与えない為に、指輪の名前や大雑把な使用方法――起動に莫大な魔力が必要――というのは教えてないが、レイジングなら自力で辿り着いてくれるだろう。それに、あの指輪が時の指輪だというのはあくまでもリッチの日記に書いてあった情報が正しいというのが前提なだけに、もしかしたら違っている可能性も無いとは言えないのだから。

 

 

 

 

 そして、この日。俺はついにその境地へと至る事になる。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:715
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    異形化

撃墜数:392

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