転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0405話

 早乙女の飛行魚でオスティアへと到着すると、リュボースはナギ・スプリングフィールド杯の参加登録の為に早速闘技場へと向かっていった。その後ろ姿を見送りながら、ネギと神楽坂の言い合いへと目を映す。

 

「ちょっと、何であんたまでアクセルの使ってる闇の魔法を使ってるのよ」

「その、皆を守る為には力が必要だったんです。なので……それに、アクセル君が使っているという事で、いざとなったらアドバイスも貰えるかなって思ったので……」

「駄目よ、駄目。禁止禁止禁止! 闇の魔法よ、闇の魔法。どう見ても絶対に何か悪い事がありそうじゃない」

 

 ……いや、その闇の魔法を使ってる俺の前で言う事じゃないと思うが……

 思わず苦笑を浮かべていると、ふと視線を感じる。

 その視線の先を辿ると、そこには色黒のかなりでかい男の姿があった。

 そして俺と視線が重なると、ニヤリとした笑みを浮かべながら近付いてくる。

 

「へぇ、お前が坊主の言ってたアクセルか。……なるほど。お前、壁を越えたな?」

「……お前は?」

「何? 俺の事を知らないのか? 一応有名人なんだがなぁ……」

 

 どこかショックを受けた様子の男だったが、その隣からヒョッコリと1人の幼女が姿を現す。

 

「おい、アクセル。こいつはジャック・ラカンと言って、ネギ先生の父親の同類だよ」

「ネギの父さんの同類……あぁ、そう言えば京都で見た写真で」

 

 そう、修学旅行最終日に詠春に案内されたナギ・スプリングフィールドの別荘。そこにある写真に写っていた人物の1人だ。

 

「……で、お前は?」

 

 ラカンの隣にいた幼女へと問いかけると、どこか得意気に胸を張って口を開く。

 

「何だ、分からないのか? 千雨だよ、長谷川千雨。この姿は年齢詐称薬の効果だ」

「あぁ、なるほど」

 

 確かに言われてみれば、どこか面影がある。

 そんな風に納得していると、再びラカンがこちらへと鋭い視線を向けてくる。

 

「で、だ。話を戻すが。……お前、壁を越えたな? もちろん俺の言ってる意味は分かるよな? 何しろあっちの坊主に闇の魔法を教えたのは俺なんだから」

「あぁ、そう言えばエヴァが闇の魔法習得の為の巻物を騙し取られたとか言ってたが……あれはお前の事か」

「騙し取ったってのは人聞きが悪いな。きちんとした交渉の結果だぞ?」

「……お前のおかげで俺はプロトタイプの方を使う羽目になって苦労したんだがな」

 

 ボソッと呟いた俺の言葉に、長谷川が驚きの目を向けてくる。

 

「ちょっと待て。今の話を整理すると、お前もネギ先生の取得した闇の魔法を使えるって事なのか?」

「そうだな。普通の魔法に関して言えばネギの方が俺よりも経験豊富だが、闇の魔法に限って言えば俺の方が先に習得している」

「で、壁を越えた……と」

「おい、おっさん。さっきから壁を越えた壁を越えたって妙に意味深に繰り返してるけど、なんの事だよ」

「さて、どうだろうな。情報料は20万ドラクマだ」

「おいっ!」

 

 どこからともなく取り出したハリセンでラカンの頭へスパーンッと突っ込みを入れる長谷川。

 ……3-Aの面々はハリセン突っ込みが標準装備なのか?

 

「おい、アクセル。壁を越えたってのはどういう意味だ?」

 

 長谷川のその質問にチラリとラカンの方へと視線を向けると、黙ったまま首を左右に振る。言うなって事か。そうなると、どうやって誤魔化すかだが……

 

「壁ってのはいわゆる、強さの壁だよ。闇の魔法を使いこなすと術式兵装ってのを使えるようになるんだがな。それの事だ」

「……本当か?」

 

 神楽坂とまだギャーギャー言い合っているネギへと視線を向けながら疑わしげな目でこっちを見てくる長谷川。

 

「何だ、随分とネギを気にするようになったじゃないか。ネギとこの魔法世界で一ヶ月以上行動を共にして情でも湧いたのか?」

 

 このまま追及されるのは面白く無いので、取りあえずその件を誤魔化すべく煽るように長谷川を挑発する。

 すると案の定、顔を真っ赤に……真っ赤に? おい、まさか嘘からでた実って奴か?

 

「ばっ、そ、そんな訳ねーだろーが。釘宮達だってお前と行動してても別にそういう関係じゃないんだろ!? それと同じだよ同じ! ……いや待て。そう言えば釘宮達は修学旅行でこいつと確か仮契約を……」

 

 その叫びが聞こえたのだろう。ネギと神楽坂のやり取りを面白そうに眺めていた円と美砂がこっちへと近付いてくる。

 

「何か私達の事呼んでたみたいだけど、どうしたの?」

「なんでもねーよ。いやこの際だ、ちょっと聞かせて貰おうか」

「え? 何を?」

「お前等とアクセルの関係をだ。修学旅行の時のキスはオコジョが仮契約を狙って仕掛けたんだよな? つまり別にお前等がこんなガキに本気で惚れてる……と……か……」

 

 長谷川が最後まで自分の言葉を言えなかった理由。それは、円の顔が急激に赤くなっていったからだ。

 

「おい、釘宮。まさかお前こんなガキに本気で……?」

「あ、御免。私も本気だよ。こんな風に……ねっ!」

 

 美砂もまた、いつものように俺へと後ろから抱きついてくる。

 

「お前等……3-Aでは数少ない常識人だとばかり思ってたのに……いつの間にいいんちょの同類になってたんだよ……」

「ん? あやかの同類? あ、そっか。長谷川はまだアクセル君の事を知らなかったんだっけ?」

「何の事だ?」

「ま、とにかく私と円が自分の気持ちをはっきりと自覚したのは修学旅行の時で間違いないわよ。それに……ねぇ、アクセル君。ちょっと10代バージョンになってよ」

 

 ぎゅうっと力をいれて抱きしめながらそう告げてくる美砂に、苦笑を浮かべながらも全身を炎で包み込む。

 

「おわっ!? アクセル!?」

 

 驚愕の声を上げる長谷川だったが、その炎が消え去った次の瞬間には中学生か高校生くらいの身長にまで成長した俺の姿があった。

 

「は? いや、ちょっと待て。どうなってるんだ? 私みたいに年齢詐称薬を飲んでたんじゃないのか?」

「……アクセル?」

 

 いつの間にか闇の魔法についての話は終わっていたのだろう。神楽坂が唖然とした表情でこちらを見ている。それは他の面々も同様で、キズクモ組以外は全員が驚きを顔に表していた。……古菲はいつもと変わらずだが。

 

「ほう、坊主もモテモテだな。どれ、ちょっとその辺の事について話をしようか」

 

 突然俺の首へと腕を回したラカンが、そのまま俺を引っ張っていく。

 

「ちょっ、アクセル君をどこに連れていくのよーっ!」

 

 そんな円の声も聞こえてきたが、ネギや長谷川がなんとか押さえこむ事に成功していた。

 

 

 

 

 

「よし、ここまで来ればいいだろ」

 

 オスティアの外縁部まで来て、地上が見える位置で俺を解放するラカン。

 

「わざわざ理由を付けて俺をこんな所まで連れてきて、何の話だ?」

 

 しかもご丁寧な事に、ネギがこっそりと後を付けてきているのを承知の上で。

 俺の視線の意味が分かったのだろう。ラカンはニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「何、聞きたいのはさっきと同じだよ。お前、壁を越えたな?」

「壁、ねぇ。言い得て妙な例えだな。闇の魔法を使い、人間としての壁を越えてより上位の生物へと転生をする、か。そういう意味だろう?」

「へっ、やっぱり分かってるじゃねぇか。ただ、坊主に聞いた話だとお前が闇の魔法を習得してからまだ数ヶ月程度だろう? それが何故だ? いや、坊主の例もあるから闇の魔法に対して適性があるというのはいいだろう。だが、壁を越える……すなわち、上位生物への転生をしたとしても最低でも数年。下手をすれば十数年は人としての意識が無いままに魔物として本能の赴くままに行動する筈だ。それが何故お前はもう意識を取り戻している? あの馬鹿よりも莫大な魔力のおかげか?」

 

 あの馬鹿。その言葉に込められているのはエヴァがナギを呼ぶ時と同じような感情だった。

 闇の魔法のリスクか。ネギもこっちに隠れてこっそりと聞いてる事だし話しておくのも悪くは無い、か。

 

「まぁ、そうだな。正直、俺にもどうしてこうなったのかという正確な所は分からない。元々ここ最近は闇の魔法を使った後に脈動のようなものを感じていたのは事実だが……飛行魚でオスティアに向かう途中で精霊の群れに襲われてな」

「精霊の群れ?」

「ああ。それこそ数十匹、数百匹程度じゃない。数万、数十万って数の精霊だ。で、それに対抗する為に闇の魔法を使った所で……限界を超えた」

 

 脳裏を過ぎるのは、途切れ途切れの記憶。その中で俺はまさに魔物、あるいは魔神とでも呼ぶべき姿になって精霊の殆どを文字通りに貪り喰らっていた。

 

「で、魔物へと姿を変えた俺は文字通りに理性も知性も無しに……いや、飛行魚を襲わないで精霊へと襲い掛かったんだから最低限の理性はあったのかもしれないな。とにかく襲ってきた精霊を撃退したまでは良かったんだが、敵がいなくなったら今度は飛行魚へと襲い掛かろうとして、同乗していたあやか達従者に何とか止めて貰った訳だ」

「そこだ。普通暴走しているような魔物をそう簡単に止められる筈もないんだがな」

「何、そう難しい話でも無いさ。パクティオーカードを使った『念話』で呼びかけて貰った訳だ。ここからは恐らく予想だが、その声を元にして闇の中に沈んでいた俺の意識が戻ったんだと思う。それこそ、俺の魔力の大部分を消費してな」

 

 ……正確には魔力の他にもPPのほぼ全てを消費して、なんだが。おまけに混沌精霊として身体を再構築するのに、喰らった精霊の魔力をほぼ全て使ったらしいし。PPと精霊の魔力。その2つが揃わなければ、恐らく俺は魔神状態のままだっただろうというのは簡単に予想出来る。本当に偶然に偶然を重ねた結果が今の俺であり、同じ事をもう1度やれと言われても絶対に無理だし、絶対にお断りだ。

 

「……なるほど。確かにお前さんの魔力を考えればその可能性はあるかもしれないな。けど、そうなると……」

「ああ。ネギがいざそういう風になったら俺と同じ方法で乗り切るというのは難しいかもしれないな。それに俺と同じ方法で乗り切るって事は即ち人外の生物になるって事だしな」

 

 そこまで言って、ネギが隠れている岩陰へと視線を向ける。

 

「分かったな、ネギ。闇の魔法のリスクが」

「……気が付いてたんだ」

 

 そう言いながら、ネギが姿を現す。その瞳には困惑の色が浮かんでいた。

 

「ねぇ、アクセル君。今の話は……」

「紛れも無い事実だ」

「じゃあ、アクセル君ってもう人間じゃないの?」

「そうなるな。今の俺の正確な種族は……そうだな、混沌精霊とでも名乗っておくか」

「くっくっく。混沌とかまるっきり悪役みたいな名前じゃねーか」

 

 俺の名乗りを聞いたラカンが面白そうに笑みを浮かべる。

 

「アクセル君はその、人間じゃなくなっても気にしないの?」

「そうだな。……確か、ネギは俺の記憶を見たよな?」

「え? うん」

「あれで見ても分かるように、俺は本来いるべき場所とそうでない場所を行ったり来たりしている。そしてそれには向こうとの時差がある。それを考えると、俺が人外になるというのはそう悪くない選択肢なんだよ。しっかりと調べてみないと確定は出来ないが、俺の感覚的にこの身は正真正銘の不老になっているようだしな。……不死ではないというのが多少残念だが、まぁ、それは望み過ぎか」

 

 俺の言葉に、信じられないといった表情を浮かべているネギの肩を軽く叩いてやる。

 

「さて、俺の話はこれで終わりだ。闇の魔法のリスクは十分承知したな? お前がそれを承知の上でこれからも闇の魔法を使っていくというのなら、俺からはもう何も言う事は無い。好きにすればいいさ。だが、くれぐれも後悔だけはしないようにな」

 

 それだけ言って、その場にネギとラカンの2人を残してオスティアの街中へと戻っていくのだった。

 ……あ、そう言えば泊まる宿を聞いてなかったな。リュボースなりあやかなりに連絡を取らなきゃな。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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