転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0407話

「結局今日で大河内達の解放は出来なかった……か」

 

 呟き、近くの屋台で購入したハンバーガーのようなファーストフードを口へと運ぶ。

 ハンバーガーに使うようなバンズで挟んであるのは同じだが、中に入っているのがハンバーグとかじゃなくてそのまま焼いた肉であるという所が違う。……何の肉なのかは知らないが、どこか羊の肉のような味と食感。羊の肉であるマトン同様、多少肉の味に癖があるが果物か何かの酸味の強いソースがその癖のある味によく合っている。

 取りあえず味は気に入ったので10個ほど購入して空間倉庫へと収納しておく。

 

「まぁ、せめてもの救いはネギの所属している拳闘団が奴隷に対してもそれなりに好待遇で迎えてるって事だな」

 

 奴隷というイメージから相当に酷い労働環境を予想していたのだが、ネギや長谷川の話を聞く限りではそうでも無いらしい。

 ……もっとも、昨日はオスティアに着いたばかりだったり宿の関係で、今日は今日で早速Aブロックの予選があった為に大河内達にはまだ会えてないんだが。どうせならこのまま会いに行ってみるか?

 そう思ったその瞬間。こちらへと向けられている鋭い視線を感じ取り、俺は反射的に振り向いていた。

 そこにいたのは、学生服を身に纏った人物。その白髪と無表情の顔を見ればそれが誰なのかというのは明らかだろう。

 

「……フェイト」

「やぁ、アクセル・アルマー。全く、最初にTVで君の姿を見た時は驚いたよ。人外の力を持つとは思っていたけど、いつの間に文字通りの意味で人外の存在になったんだい?」

「さて、いつだろうな。そもそも俺が魔族の血を引いているって可能性もあるぞ?」

「おかしいな。こっちの調べではそういう情報はなかったんだけど」

 

 相も変わらずの無表情。同じ無表情でも、こうして見ればリュボースの方には無表情なりの微妙な変化という物があるんだというのが分かる。

 

「で、何の用だ? こんな所でやり合うつもりか?」

 

 周囲には変わらずに大量の人が行き来している。ここで戦うというのは正直余り有り難くはない。

 俺とフェイトの戦闘になる以上は、恐らく……いや、確実に広域破壊魔法とかが乱れ飛ぶ戦闘風景になるだろうしな。

 だが、俺のそんな内心の考えを読んだかのようにフェイトは両手を上げて近付いてくる。

 

「安心していい。今日は君と戦いに来た訳ではないんだ。……正直、残念に思ってるんだけどね。今日の目的は……そう、会談と言ってもいいだろう」

「会談? 俺とお前がか?」

 

 そんな俺の疑問に、フェイトは首を振る。

 

「惜しいね。正確には僕と君。そしてもう1人……」

「もう1人?」

 

 これまでのフェイトの言動を鑑みると、そのもう1人というのが誰なのかというのは理解出来ない。あるいは、俺の知らない相手なんだろうか。

 

「とにかく今日は戦いに来た訳じゃない。君もこんな所で戦闘になるのは御免だろう? どうだい、折角の機会なんだ。一緒にコーヒーでも飲まないか?」

 

 ……さて、どうするか。この場で戦闘になるのを避けたいというのは事実。だからと言ってフェイトの誘いにあっさりと乗ってもいいものかどうか。いや、どのみちここで戦闘しない以上は相手の手に乗るしかない、か。向こう側の事情なんかにも探りを入れておきたい所だしな。

 そう判断し、小さく頷く。

 

「いいだろう。ただし、俺はコーヒーが苦手でな。紅茶にでもしてもらおう」

「コーヒーが飲めないなんて悲しい人だね。……まぁ、いい。じゃあ早速だから行こうか。紅茶はともかくそれなりに美味しいコーヒーを出す店があるんだ」

 

 そう言い、俺へと背を向けて先導するように歩いて行く。

 ……こうも明け透けに背を俺に向けるというのは俺を信頼しているとでもいうのか? それとももし何らかの攻撃を受けてもどうにか出来る自信があるのか……

 そんな風に思いつつ、俺はフェイトの後を付いていく。

 目的の店については、その場から歩いて数分もしない場所にあった。店の外にも席が用意されている、いわゆるオープンテラスという奴だ。

 席に座るなり店員が来る。

 

「僕にはお薦めのブレンドを。アクセル・アルマー。君も好きな物を頼むといい。僕が誘ったのだから奢らせて貰うよ」

「そうだな、ならオスティアンティーとスペシャルサンドイッチを貰おうか」

 

 店員は俺達の注文を聞き、そのまま去っていく。その後ろ姿を見送ってからフェイトへと視線を向ける。

 

「で、会談とか言ってたな。何が目的の会談だ?」

「君もせっかちだね。まだ注文も届いてないし、何よりもう1人ゲストがいると言っていただろう? それにここはコーヒーにしろ紅茶にしろ、評判の店なんだ。もう1人のゲストが来るまではお茶を楽しむとしようよ」

 

 そう言い、いつもの無表情の視線をオスティアの街並みへと向ける。それに釣られたように俺もまた街中へと視線を向けると、そこではオスティア祭を楽しむ者達の姿で溢れかえっていた。

 

「君はこの景色を見てどう思う?」

「どう、とは?」

「特に深い意味は無いさ。純粋に見たままの感想を言ってくれればいい」

 

 チラリとフェイトの方を見るが、その顔は相変わらずの無表情であり何を考えているのかというのは俺にはさっぱり読み取れなかった。

 

「そうだな。祭を楽しんでいて賑わっているな」

「ふふっ、確かにそれはそうだね。でも……いや、君の立場ならしょうがないか」

 

 何やら意味あり気に呟くフェイト。その態度を見ていて不愉快に思うのはしょうがないだろう。……でも、よく考えてみればスパロボOGsの世界でハガネやヒリュウ改の部隊にも俺は同じ事をやってたんだよな。

 そんな風に考えていると、店員がコーヒーと紅茶、そしてサンドイッチの乗った皿を持ってくる。

 

「お待たせしました。ブレンドとオスティアンティー、スペシャルサンドイッチです。では、ごゆっくりどうぞ」

 

 ペコリと頭を下げて店内へと戻っていく店員を見送り、まずは一口とオスティアンティーを口に運ぶ。

 

「へぇ」

 

 口に含んだ瞬間、広がった爽やかな香りに思わず感嘆の声を上げる。

 続けてスペシャルサンドイッチを口に運ぶが、こちらも美味い。一見すると普通のサンドイッチなのだが、微妙にパンを湿らせているおかげでしっとりとした口触りになっている。中の具も、ハムとレタス。卵、グリルされたチキンのような肉と定番だがどれも一手間加えてあるのが好印象だ。

 ……もっとも、この卵も恐らく俺の知ってる鶏の卵じゃないんだろうが。ハムやチキンっぽいのも同様に。

 

「どうやら喜んで貰えたようで何よりだよ。……ところで話は変わるんだけど、数週間前に君の身に何か起きなかったかな?」

「……数週間前?」

 

 そう言われて、思い浮かぶのは俺が人間から混沌精霊へと生まれ変わった一連の出来事。

 

「そう。実は数週間程前に、この魔法世界の中の魔力が急激に減った事があってね。もちろん魔法世界全体で見れば微々たる量ではあるんだけど、ちょっと気になって調べてるんだ」

 

 恐らく、フェイトの言っている減った魔力というのは俺が喰らって吸収した精霊達の事なんだろう。だが、まさかそれを馬鹿正直に言う訳にもいかないので誤魔化す事にする。

 

「さて、あいにくだけど俺には見当も付かないな」

「へぇ……こっちでは君達がキズクモを出発した日の確認は出来るんだけどね。その後半月程行方不明になっていた事も。……けどまぁ、君がそう言うのならそう言う事にしておこうか。……それよりほら、もう1人のゲストが来たよ。ただちょっと予定外の飛び入りも2人程いるみたいだけど」

 

 フェイトの視線を追うと、そこにはもう1人のフェイトの姿があった。俺の混沌精霊としての力が、あのフェイトが今まで幾度か見てきた水で作られた分身であると教えている。そしてその偽フェイトが案内しているのはネギ。そのネギを守るようにして神楽坂と桜咲2人の姿がある。

 

「なんだ、お前の狙いはまたネギなのか? 修学旅行の時といい今回といい、懲りないな」

「さて、別に僕にそんなつもりはないけどね」

 

 フェイトがそう言いながらコーヒーを口に運ぶのと。

 ネギ達を案内してきたフェイトが姿を崩して水へと戻り、地面を濡らすのは同時だった。

 

「アクセル君!?」

「アクセル!?」

「アクセルさん!?」

 

 そんな三者三様の声を、スペシャルサンドイッチを食い終わった俺はオスティアンティを飲みながら出迎えるのだった。

 そんな3人の声を聞きながら、空いている椅子へと目を向ける俺。

 

「俺もお前達同様にこいつに呼ばれただけだ。何やら話があるらしい」

「そうだね。それに間違いない。……もっとも、君とネギ君だけを招待するつもりだったからそっちの2人の席は用意出来ていないけど」

「ふんっ、私だって別にあんたと仲良くお茶をする気なんて無いんだから問題ないわよ」

「そうかい? じゃあとにかく……ネギ君、君も何か頼むといい。この場を用意したのは僕なんだから、当然奢らせて貰うよ」

「……いいよ、別に。僕が飲んだ分は僕が払うから」

 

 椅子へと座りながら、フェイトを睨みつけるネギ。

 まぁ、それも無理はない。修学旅行では何も出来ずに石化させられ、その後麻帆良に送られて来たヘルマンにはボコボコにされ、魔法世界へと移動したと思ったら強制転移させられて大河内達は奴隷にされたのだから。それだけやられて怒るなという方が無理だろう。

 やってきた店員に俺と同様のオスティアンティーを注文し、それが持ってこられた所で会談が始まる。

 まずは様子見のジャブとばかりに、フェイトがいつもの無表情で自分を睨んでいるネギへと声を掛けた。

 

「……おや? 随分と怒ってるらしいけどどうしたのかな?」

「それを僕に聞くの?」

「君の仲間達にしたことが原因かい? 同じような目に遭ってるアクセル・アルマーの方は特に気にしてはいないみたいだというのに……それでは程度が知れるよ?」

「……僕に喧嘩を売ってるの?」

「ふん、君程度に喧嘩を売る価値なんてあると思ってるのかい? そもそもミルクティーなんて紅茶の風味を壊すような飲み方をしておいて、勿体ないとは思わないのかな?」

「君こそ何を言ってるんだよ。ミルクティーは紅茶のパーフェクトな飲み方だって知らないのかな? 僕にしてみれば、コーヒーなんて泥水を好んで飲む方がどうにかしてると思うけどね」

「まさか味覚馬鹿の英国人に味についてご高説をされるとは思わなかったよ」

 

 ……会談って、紅茶とコーヒーに対するやり取りをしたかったのか?

 

「これ以上馬鹿らしい話を続けるようなら俺は帰らせて貰うが、構わないか? 少なくても俺に取っては紅茶だろうがコーヒーだろうが好きに飲めばいいとしか言えないからな。そんな話を聞く為にわざわざ招待された訳じゃない」

 

 コトン、と飲み干したオスティアンティーのカップをテーブルの上に戻しながらそう告げる。

 

「……それもそうだね。確かに君の言う通り子供を相手にムキになってもしょうがないか」

「君だって……」

 

 怒ってる時点でこの場の主導権はネギじゃなくてフェイトが握ってるようなものなんだが。

 

「ネギ、お前も落ち着け。ここで戦う訳に行かないのは周囲を見れば分かるだろう?」

「それはそうだけど……」

 

 俺とフェイトの戦いに、ネギまで混ざってくるとなると間違い無くこの辺一体は壊滅するだろう。そんな風にしない為には、ここでやるべきは戦闘ではなく交渉。もっと言えばフェイト達が何を企んでいるのかを聞き出す事だ。

 何しろこのゲートに対するテロをするわ、この魔法世界でも有数の大国でもあるMMと繋がってるわと、何か大がかりな事を企んでいるのは間違い無い。その一端、あるいはそれを行おうとしているフェイト達の組織に関してでも情報を入手出来ればいいんだが……

 周囲にいる面子を見る。神楽坂はバカレンジャーという時点で駄目だし、桜咲もバカレンジャー予備軍だから交渉には期待出来ない。3人の中ではネギが交渉には一番向いているんだろうが、見ての通り頭に血が昇っている。そして残るのはこの手の交渉が得意ではない俺だけ……か。

 正直、この会談という名目の交渉が上手く行くかと言われれば、殆ど絶望的だと思った俺は悪くないだろう。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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