転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0408話

 ネギの殺気……というよりは怒気がピリピリと周囲に発せられている中、俺は2杯目のオスティアンティーをケーキと一緒に頼む。どうせここの払いはフェイトの奢りなんだから一番値段の高いケーキを注文し、紅茶とケーキが届いたところで口を開く。

 

「さて、このまま睨み合っていてもしょうがないだろう。そろそろ話を進めないか?」

「……フェイト。君はかつてこの魔法世界で暗躍し、大戦と呼ばれる戦争を引き起こした組織に所属している。そして今もまた。その目的はこの世界の破滅」

 

 ネギの言葉に、コーヒーを一口飲みながら鼻で笑うフェイト。

 無表情故に、心底馬鹿にしているというのが良く分かる。

 

「所詮君が理解しているのはその程度か。浅はかだね。そもそも君が僕と敵対する理由は何だい? 君の生徒達をこの世界の揉め事に巻き込んだから?」

「それもある」

「じゃあ、他の理由は? まさか自分の父親が僕達と敵対していたからなんて理由じゃないよね?」

「君達が世界を破滅させようとしているのなら止めなきゃいけない」

「まだ修行中の見習い魔法使いでしかない君がかい?」

「この世界には僕が守るべき人達が多くいる。その人達を守るのに、見習いも何も関係は無い」

 

 言葉が進んで行くごとに周囲の緊張感が高まっていく。

 

「でも、君の今の肩書きはあくまでも教師だろう? そんな君が生徒を巻き込んで戦闘を繰り広げても構わないのかな?」

「ぐっ……」

「そこで取引だ。君達がこのままあちらの世界へと帰るというのなら、僕達が送り届けよう。その見返りに……」

 

 再びコーヒーを一口飲み、チラリと神楽坂と桜咲の方へと視線を向けるフェイト。

 

「お姫様を渡して貰う。……どうだい?」

「お姫様?」

 

 フェイトの言葉に、思わず聞き返す。今のフェイトの様子を見る限りでは、まるで桜咲か神楽坂がそのお姫様のように聞こえるが……

 

「おや、アクセル・アルマー。君は知らされていないのか。まぁ、それも無理はないか。何しろ麻帆良で8年間も掛けてまで本来の人格に被せるようにして偽りの人格を産み出したのだから。そこまで徹底していたからこそこれまで気が付かれなかったんだろうね。けど、所詮偽りの人格は偽物でしかない。その人形のよ……」

 

 轟っ!

 フェイトが最後まで言葉を口にする事は出来無かった。座っていたネギがテーブルを空高く蹴り飛ばしたのだ。

 そして同時に顔へと叩き込まれようとした拳を受け止めるフェイト。

 

「その口を閉じろ、フェイト・アーウェルンクス」

「随分と喧嘩っ早いね、ネギ・スプリングフィールド。それでこういう態度を取るという事は、返事の方は……」

「当然答えはNoだ」

「やっぱりお姫様を渡す気は無い、か。まぁ、僕に入っている情報でも君は正義感が強いとなっていたからね。そういう反応をするという可能性も十分に予想していた」

 

 そこまで言った時、ネギが蹴り上げたテーブルが落ちてくる。

 溜息を吐きながら、それを尻尾で受け止めて元の位置へと戻す。

 その様子を見ていたフェイトが頷きながら口を開く。

 

「おや、器用だね。その尻尾はかなり便利そうだ。でも、いいのかい? 君はこのオスティアではそれなりに有名人なんだろう?」

 

 フェイトの言葉通り、尻尾を使う為に正体を隠す為に着ていたローブを脱いだ俺の姿は丸見えになっている。そして当然これだけの人数がいればナギ・スプリングフィールド杯に出ている俺を知ってる奴もいる訳で、何人かが指さしているのを感じる。

 このままここにいれば騒ぎ云々じゃない、か。

 

「元々お前達が騒がなければ問題が無かったんだろうに。ただ、まぁ、しょうがない。俺がこのままここにいれば色々と面倒臭そうな事態になりそうだからここで消えさせて貰うよ。お前達は好きにしろ」

「ああ。君と話が出来た分、有益な時間だった。またこういう機会を持ちたいものだね」

「……さて、どうだろうな。ネギ、今いった通りに俺はこの辺で消える。後はお前が……ん?」

 

 ふと感じた戦闘の気配。それもここからそう遠くない位置でだ。

 

「アクセル君?」

 

 これは……なるほど。会談や取引とかいうのはあくまでもフェイク。目眩ましでしかない、か。

 

「いや、何でも無い。じゃあ、俺はこの辺で失礼させて貰うとするよ」

「……まぁ、いいか。あの子達もアクセル・アルマーという存在を知っておくべき時期だろうしね」

 

 背後からそういう呟きが聞こえてきたが、そのまま店の裏へと移動して影のゲートへとその身を潜らせる。

 

 

 

 

 

 そしてそのまま覚えのある気配の場所まで移動して顔を出す。

 最初に目に入ってきたのは、長谷川、早乙女、宮崎の3人。それに対するかのように角の生えた女がバイオリンのような物を持って構えている。場所は路地裏と言った所か。

 

「さて、どうやら丁度いいタイミングだったらしいが……」

 

 そう言いつつ、3人の前へと姿を現す。

 

『アクセル君!?』

 

 突然姿を現した俺に驚いたのだろう。3人の驚愕の声が路地裏へと響き渡る。もっとも、長谷川は君付けじゃなかったが。

 そして。

 

「アクセル? そう、貴方がアクセル・アルマーですか」

「そういうお前はフェイトのお仲間、か」

「ご名答。……まさかここに現れるとは思いませんでしたが、良い機会です。フェイト様があれ程に拘る貴方の実力、見せて貰いましょう」

 

 そう言いながら、俺を見ながらバイオリオンを引く女。それを見た瞬間、猛烈に嫌な予感が脳裏を過ぎる。咄嗟に魔法障壁へと魔力を込めた次の瞬間、バイオリンから強烈な超音波攻撃とでも呼ぶべきものが放たれた。

 

「ちょっ、ちょっと待てぇっ!」

 

 ギャギャギャギャッ、というまるで何かを引っ掻いたような音が周囲へと響き渡り、それを聞いた長谷川達が悲鳴を上げながら路地裏から逃げ出そうと動きだし……

 

「動かれると守りにくい。そこでじっとしていろ」

 

 影に干渉して3人の足に影槍を巻き付けてその場で動きを止める。

 

「おいっ、お前どっちの味方だよっ!」

 

 長谷川のそんな声が響き渡るが、何しろ目の前の女の攻撃は音を使った攻撃だ。好きなように散らばって逃げられると守ろうとしても守りきれなくなる。

 

「こいつの攻撃範囲は広いからな。下手に動かれるとそっちまで防ぎきれないんだよ。さて、それよりもこいつの相手は俺がするからお前達は行っていいぞ」

「え?」

 

 俺の言葉に宮崎が不思議そうな表情を向けてくる。

 何だ、もしかして4人で力を合わせてこいつと戦うとでも思ってたのか?

 

「あー、何と言ったか。そうそう。ここは俺に任せて先に行け! とかいう場面か?」

「死亡フラグ立てんじゃねぇっ! まぁ、いい。確かにアクセルならこいつを相手にしても問題無いだろう。じゃあ、ここは任せるぞ。早乙女、宮崎。私達はネギ先生の方に」

「そうだね。じゃあ、アクセル君。ここは任せた」

「お願いします!」

 

 3人がそう言い、路地裏から表通りへと走っていく。

 それを見た角の女が再びバイオリンを構えて……

 

「逃がしません。私がフェイト様に命じられたのは貴方達の足止めなのですから」

「さて、俺を無視してあいつ等を追うとかそんな事をさせると思うのか?」

 

 混沌精霊としての力で影を操り、影槍を10本程牽制の為に発射する。

 

「やらせません!」

 

 女がそう呟いたその瞬間、地面から樹の根が現れて女を守るように囲い込む。

 なるほど。確かキズクモの準決勝でシルとラナが戦っていたのがこういうタイプだったな。

 

「植物使い、か」

「……アクセル・アルマー。貴方と出会ってからフェイト様は変わってしまわれた。そして貴方が存在している限りフェイト様に影響を与え続けるでしょう。故に、フェイト様の従者であるこの私、調がここで貴方という存在の時を終わりにしてみせます」

「フェイトに影響ねぇ。……いつも無表情だからどう変化したのかは分からないが、それでも俺とやり合うつもりなら覚悟を決めるんだな。俺はネギと違って敵対相手が女子供でも容赦はしないぞ?」

「望む所。こちらとて容赦はしません」

 

 そもそも、長谷川達3人をどうにかするのが目的だったと思うんだが……まぁ、俺としてはあの3人を逃せればいいんだし特に問題は無いんだが。

 

「行きます!」

 

 そう叫び、バイオリンを弾く女。……調とか言ったか。

 だが、そのバイオリンから流れてくるのはギギギギ、というとても音楽とは思えないようなものだった。

 

「バイオリンを武器にしている癖に音楽は苦手なのか?」

 

 そう呟いた時。唐突に俺へと強烈な衝撃が襲い掛かってくるが……

 

「……何故ですか?」

 

 唖然とした様子で調が呟く。

 それもそうだろう。何しろ、自慢の攻撃を俺が食らったにも関わらず無傷でその場に立っていたのだから。

 

「何がだ?」

「何故、私の狂気の提琴の攻撃を食らって無傷なのですか? フェイト様との契約で手に入れたこのアーティファクト、狂気の提琴は対象を容易く破壊する能力を持っています。それなのに、何故貴方は無傷なのですか?」

「さて、自分の能力をそう簡単にひけらかすような真似はアマチュアでもしないと思うがな」

 

 そう言いつつも、長谷川達3人を逃しておいて正解だったとつくづく思う。

 俺自身は混沌精霊となった影響で魔力や気の籠もっていない純粋な物理攻撃に関しては一切無効化する体質を手に入れている。だが、長谷川達3人は普通の人間なのだ。もし今の攻撃を食らっていたとしたら文字通りに粉々になっていた事だろう。

 

「……やはり、貴方は危険です。こうなったら意地でも私がここで倒して見せましょう」

 

 そう小声で呟き、再びバイオリンを構える調。

 その様子を、俺は苦笑を浮かべて眺める。

 

「だが、どうする気だ? お前の攻撃が俺に通用しないというのは今の一連の出来事で明らかだろうに」

「確かに狂気の提琴は効果が無いようですが、私の攻撃手段はそれだけではありません」

 

 調が呟いた瞬間、俺の足下から急激に植物が伸びて俺の身体を絡め取る。

 

「その植物は魔法世界でも特殊なもので、魔力を吸収するという性質を持っています。幾らアクセル・アルマーと言えども魔力その物がなければどうにもならないでしょう」

 

 ニコリ、と満足そうな笑みを浮かべる調。だが。

 

「確かに魔力を全て吸収されたら手も足も出ないかも知れないな。けど、ならその前に対応すればいいだけの話だ」

 

 額の深紅の角を使ったように見せかけ、混沌精霊としての力を使い植物を瞬時に燃やし尽くす。

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 その様子に、調は唖然とした表情で俺の方を見ている。

 ……何を驚いているんだ?

 

「フェイトから俺の情報は聞いてるんだろう? なら俺が炎の魔法を得意としているというのも知ってる筈だろうに」

「そうじゃありません! いえ、確かにそれもありますが、その植物は吸い取った魔力を使って自己を強化する性質を持っているのです。当然、植物最大の弱点でもある炎に対する耐性も。それをあっさりと燃やし尽くすなんて……それに、貴方は今呪文を唱えずに……まさか、焔と同じ能力?」

 

 なるほど。焔とかいう奴も仲間にいて俺と同様に炎の魔法を得意としている、と。

 取りあえず今の騒ぎで人も集まってくるだろうし今のうちに退くとするか。……お土産を持ってな。

 唖然としている調の隙を突くかのように瞬動を使用。その首筋へと手刀を叩き込み意識を奪う。そのまま影のゲートを作りだして2人一緒に沈んでいくのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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