転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0421話

 ゲーデルとの騒動から逃げ出して30分程。俺達の姿はオスティアの端にあるあからさまに客の少ない安宿の中にあった。

 現在部屋にいるのは俺、ネギ、桜咲、近衛。そして煙幕を起こして俺達があの場から脱出出来る機会を作ったクレイグの5人のみだった。

 

「まぁ、ここならそうそう見つかる事もないだろう」

 

 ベッドへ腰を下ろしながらクレイグがそう言ってくる。

 

「いや、それは助かるんだがなんであそこに?」

「何、オスティア祭を見て回っていたらあの場面に出くわしてな。で、少し離れた場所にいたそっちのお嬢ちゃん2人を見つけて助太刀を頼んだ訳だ」

「あの煙幕は?」

「トレジャーハンターをやってるとああいうのも必要になるんだよ。さっきのおまえさん達のように敵に囲まれた時とか」

「そういうものか。……で、肝心の招待状だが」

 

 クレイグの言葉に頷き、ネギへと視線を向ける。

 そこには今の俺の言葉通りに手紙のような物を手に持っているネギの姿があった。

 あの戦闘のどこでそんな隙があったのかは分からないが、いつの間にかネギの上着へと忍び込ませていたのだ。

 

「招待状、ねぇ。あれだけあからさまに俺達に敵対しておいて、舞踏会に招待するとか。……じつは武道会だったりするオチか?」

「それだと洒落が効いてるなぁ」

「ちょっ、このちゃん!」

 

 俺の言葉に楽しそうな笑みを浮かべる近衛と、それに突っ込む桜咲。だが、あのゲーデルとかいう男の印象としてはそういう悪ふざけを仕掛けて来るような一面も感じられたんだよな。自分に協力すれば世界の半分をやろう、とか言ってくる相手だし。

 

「普通に罠とかじゃないのか?」

 

 招待状を日に透かしたりして色々と確かめているクレイグだったが特に何も見つからなかったのかネギへと返しながらそう言ってくる。

 

「その可能性は高いが……だからと言って俺達全員がその罠に飛び込む訳でもないだろう?」

「なら狙いは何だと思う?」

 

 クレイグの言葉に、ゲーデルとのやり取りを思い出す。

 基本的には巫山戯た口調であり、同時に挑発的な口調でもあった。ネギの母親を貶したのなんかその最たるものだろう。だが、同時にネギを味方に引き込みたいという確固たる意志も感じたのだ。それを考えると……

 

「意外に本気でネギを仲間に引き込もうとしてるとか?」

「アクセル君もそう思う?」

 

 どうやらネギも俺と同じ結論に辿り着いていたらしくこちらを見ている。

 

「うーん、でもなぁ。罠やとしてもそれなら無視すればええんちゃう?」

「でもこのちゃん、ここまで手の込んだ事をしてくるくらいなんだからきっと最終的には舞踏会に参加しないといけなくなると思いますよ?」

「……まぁ、とにかくだ。ここに桜咲がいてくれて良かったというべきだな」

「え?」

「はい、刹那さんがいてくれて助かりました」

「ネギ先生? アクセル君も……どうしたんですか?」

「いや、あのゲーデルとかいう男……」

 

 そこまで呟いた時、ふと覚えのある気配を感じ取る。

 その気配の持ち主は扉を開けて部屋へと入り……

 

「神鳴流を使ったんだろう?」

 

 そう言ったのだった。

 

「ラカンさん!? なんでここに?」

「こいつに呼ばれてな」

「ネギの兄貴とアクセルの兄貴、無事だったっすか?」

 

 ラカンの肩から顔を覗かせたのはエロオコジョの異名を持つカモだった。

 

「カモ君がラカンさんを!?」

「ああ。もっともちょっと遅かったようっすけどね」

「……で、あのゲーデルとかいう男は知り合いなのか?」

「ああ。あいつは詠春の弟子だ。その関係で恐らくネギの事も知ってたんだろうよ。色々と目端の利く奴だしな」

 

 なるほど、詠春の弟子となると神鳴流が使えても……

 

「待て。じゃあ、あのゲーデルとかいう奴はもしかして紅き翼のメンバーだったとかいうオチか?」

「さて、どうだろうな。それはともかくとしてその招待状、開けてみたらどうだ?」

 

 ラカンのその言葉に、ネギは小さく頷き招待状を開く。

 魔法使いの手紙というのは、ビデオメールのようなものが主らしい。それに違わず、今回も手紙を開けた途端ゲーデルの姿が浮かび上がった。

 

『やぁ、こんにちは。ネギ・スプリングフィールド君。君がこの手紙を見ているという事は恐らく私との交渉は決裂したのでしょう』

「ちっ、わざわざ嫌味ったらしい野郎だな」

 

 クレイグがボソリと呟くがゲーデルの話は続いていく。

 最初は他のメンバーも舞踏会に招待するという事や、同時にその舞踏会に参加する為のドレスを用意するという内容。そしてその話は徐々に確信へと迫っていく。

 即ち、舞踏会への招待に応じれば俺やネギのパーティメンバーには一切手出しをせず、尚且つオスティア総督の権限で俺達に恩赦を与えて指名手配を正式に取り消すと告げてくる。

 

「おいおい、これは……」

 

 その大盤振る舞いに思わず呟く。何故ここまでする? その疑問には、やはりゲーデルがどうしてもネギを取り込みたいのだろうという答えしか出なかった。

 ゲーデルの話はまだ続く。

 オスティアに降りる際には軍艦18隻を護衛に付け、同時にネギの持つどんな質問、疑問にも答えるという奥の手まで。ただし、招待に応じない場合はその軍艦が俺達を追う戦力になるとも明言している。

 ……これは決まったな。まさに形振り構わずにネギを取り込もうとしている。

 

『あぁ、そうそう。舞踏会に参加するのでしたらネギ君、小太郎君、アクセル君。3人とも全員年齢詐称薬を使った姿で来て下さいね。その方がご婦人達も喜びますし』

 

 そう締めくくり、ゲーデルからの紹介状は終了するのだった。

 

「これってどう見ても罠だろ。坊主、行く必要は……」

「そうです、ネギ先生。明日にはゲートポートで現実世界へ戻るのですから、わざわざ危険な場所に出掛ける必要はありません」

 

 クレイグと桜咲がそう告げるが、ネギの目はすでにどう答えるのかを決めていた。

 

「……決めました。舞踏会には僕が一人で行ってきます。皆さんは先に下に降りていて下さい。何かあったとしてもアクセル君がいれば問題はないでしょう」

 

 ……さて、どうするべきか。確かに安全第一なら俺が廃都へ、ネギが舞踏会へと向かうのが一番いいんだろう、それは分かる。だが、さっきから俺の中で念動力が五月蠅いくらいに強く警告を発しているのだ。念動力の警告なのであくまでも分かるのは感覚的なものであり、具体的に何が危険なのかというのは分からない。だが、それでもこれ程に危機を感じるのは珍しい。恐らくだがこのままここでネギの提案に乗って舞踏会と廃都に別れるというのが駄目なんだろう。そしてそれをどうにかするには……

 

「悪いが、俺も舞踏会に参加させてもらうぞ」

「え!? ちょっ、アクセル君!? 向こうが狙ってるのは僕なのに何でアクセル君まで!」

「ついでに、他の奴等も出来るだけ連れていった方がいいだろうな」

「アクセル君!?」

「……お前も知ってると思うが、俺には幾つか能力がある。それは俺の夢で見たな?」

 

 突然話を変えた俺に、不思議そうな顔で頷くネギ。

 その横ではネギと同様にあの夢で俺の人生を体験した近衛と桜咲も頷いている。

 ただ、この場にいるラカンとクレイグだけがそれぞれ面白そうな顔と、混乱してるような顔で俺の方を見ている。

 

「で、その中に念動力というのがあったな?」

 

 言いながら、部屋の中にあるテーブルを念動力を使って浮かび上げる。

 

「なるほど、これがあの時に何の前触れもなく俺の動きを止めた……」

 

 そう、ラカンの呟き通りにあの準決勝で勝負の行方を決めたのは念動力によるものだったな。あの戦いの最後の一撃を叩き込む隙を作りだした念動力。

 

「そしていわゆる、予知能力に近い性質を持つ事もあるというのも覚えてるな?」

「……うん」

「その念動力がネギの提案を聞いてからガンガンとまるで耳元で騒音でも鳴らすかのように警告してるんだよ。ここでネギの提案を受けたら致命的な何かが起きると」

「それは、本当に?」

「ああ。これ程の危機を教えてくるんだ。この舞踏会にはあのゲーデルとかいう奴だけじゃなくて完全なる世界も何らかのちょっかいを出してくるんだと思う」

「じゃあ、アクセル君はともかく他の人達を連れて行くのは止めた方がいいんじゃないの?」

「いや、別行動を取る方が危険だろうな」

 

 俺とネギの話にそう割り込んできたのはラカンだった。

 

「あの組織が動く、それもアクセル程の奴をそうまで慎重にさせるレベルの行動だ。恐らくかなり大規模な動きになるんだろう。そうなった時にお前達がバラバラになっていてどうする? 守るにしてもどう考えても戦力が足りないだろうし、そもそも戦力の分散自体この場合は愚策以外の何物でもない」

 

 ラカンのその指摘にはネギとしても頷くしか出来なかった。

 戦力を分散した結果、フェイト達に各個撃破されるというのはネギにとっては悪夢のような出来事だろう。

 

「ラカンの言葉ももっともだし、ここは全員で舞踏会に出向いた方がいいだろう?」

「……分かった。でも、安全第一だよ?」

 

 心配そうな顔をするネギに、苦笑を浮かべながらその頭の上へと手を載せる。

 

「心配するな。そもそもこの平和主義の化身と言われた俺が危険な真似をすると思うか?」

「……」

 

 俺がそう言った途端、部屋の中が沈黙に包まれる。

 近衛や桜咲、ネギ、カモだけではなくクレイグやラカンまでもが黙り込んだのだ。

 数秒してネギが口を開く。

 

「アクセル君、さすがにそれは無理があると思う」

 

 そして皆がその言葉に頷くのだった。

 

「さて、最後の最後で妙な空気になったがそろそろ奴、クルトの話をしておくか」

 

 妙な空気を振り払うかのように、ラカンが口を開く。

 

「話の流れから言って、ゲーデルとかいう奴の事か?」

「ああ。クルト・ゲーデル。このオスティアを取り仕切っている総督でいわゆる最高責任者って奴だな。……ちなみに詠春の弟子って所で想像出来た奴もいるかもしれないが、元紅き翼のメンバーだった事もある。ま、当時はまだまだガキで正確にはメンバーっていうより俺達に保護されてたって感じだがな。タカミチと同じく戦災孤児だったのを俺達が引き取った訳だ。魔法が使えないというハンデを背負ったタカミチとは違って、あいつはなんでも小器用にこなす要領の良さを持っていた。だが、何故か知らないが魔法とかじゃなくて詠春の神鳴流を学びたがってたよ。……詠春としても最初は教える気が無かったらしいが突き放しても見よう見真似で技を盗まれて、最終的には詠春も情が移ったのか神鳴流を教える事になった」

「それがあの斬魔剣、弐の太刀とかいう奴か」

「その辺は俺より嬢ちゃんの方が詳しいだろう?」

 

 ラカンの言葉に桜咲が頷き、口を開く。

 

「神鳴流奥義斬魔剣、弐の太刀。元々は悪霊に取り憑かれた狐憑きや悪魔憑きの悪霊といった実体を持たない相手を倒す為に作られた技です」

「……やっぱりな。混沌精霊の俺や闇の魔法で雷の精霊と化しているネギに取ってみれば正真正銘の天敵だな」

 

 俺のその言葉にラカンが頷く。

 

「だろうな。で、話を戻すとだ。クルトは戦後俺達紅き翼から離れていった。『貴方達のやり方では世界は救えない』と言い残してな。MMに渡って後援者を得て政治の道に入ったらしいが……まさかオスティアの総督になっているとは思わなかった。いや、クルトの場合はある意味当然と言うべきかもしれんが」

 

 最後の方だけを口の中で呟くラカン。ただ、他の者にはともかく文字通りに人外の感覚を持っている俺にははっきりと聞こえていた。

 オスティア総督になるのが当然? 何かオスティアに対して因縁があるのかもしれないな。

 

「もう10年以上顔を合わせていねぇ。クルトが今、何を考えているのかは分からないな。ただ折角の舞踏会への招待状だ、会いに行くのも悪くないんじゃねぇか? 少なくても俺より色々と裏事情やら何やらに詳しいようだしな」

 

 ラカンがそう話を締めくくり、結局はネギも折れて全員で舞踏会への招待に応じる事になったのだった。

 

 

 

 

 

 尚、その話し合いの後に桜咲がラカンに斬魔剣、弐の太刀を見せて貰っていたが……その名称が『今日はお嬢様と初チュー記念日の太刀』となっていたとだけ言っておく。近衛はどこか嬉しそうにしていたが。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

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