転生とらぶる   作:青竹(移住)

459 / 4298
0427話

 先程の崩壊した通路から影のゲートを使い、余裕を持って転移可能な場所へと出る。一応集合場所である地下貨物搬入口へと直通のシャフトの側にある広場だ。

 ネギの容態に関しても多少は落ち着いたのか、古菲の手助けが無くても一人で歩く程度は問題無く出来るようになっている。

 

「さて、後はこの先にある地下貨物搬入口で皆と合流するだけだが……ネギ、具合は?」

「さっきよりは大分良くなってきてるよ」

「そうか。だが、お前の身体は大分闇の魔法に影響を受けている。それは理解しているか?」

「うん、半ば暴走みたいになってたし……」

「それはさっきも聞いたな。だが、良く自我を取り戻せたな」

 

 そう尋ねた俺の顔は、恐らく酷く奇妙な表情を浮かべていた事だろう。唖然、疑問、感心、そんな色が混ざっていた筈だ。

 少なくても俺が暴走をした時には数万、数十万という精霊を喰らい尽くし、その上であやか達によるパクティオーカードの呼びかけやPPのほぼ全てを使い切ってようやく混沌精霊へと昇華したのだ。そして目が覚めるまで2週間も掛かった。それをネギはこの短時間でこなしたというのか?

 そう思ってじっくりとネギを観察するが、別に俺と同じような異形の存在になっている様子は無い。

 

「あ、大丈夫だよ。完全に暴走する前にのどかさんや千雨さん達が戻してくれたから」

「なるほど。……それは良かったな」

「うん、あの2人のような友達がいてくれて……」

「いや。そうじゃない。そこで踏み留まらなければ、お前は今頃魔物と化して意識も知性も無い状態のまま暴れ回っていただろうな。どのくらいでネギとしての意識を取り戻せたかは分からないが、少なくてもこの騒ぎの最中にってのは難しかったと思うぞ」

「うっ……」

「これまでにも何度か言ったが、闇の魔法には相応のリスクが伴う。俺のように人外になりたくないのなら闇の魔法を使うのを控えるか、あるいはその侵食をどうにかするんだな」

「……うん。この場を切り抜けられたら巻物の方のマスターに相談してみるよ」

 

 真剣な表情で頷くネギ。

 個人的にネギの才能というのは十分評価してるが、それだけにこの状況で魔物化されたりしたら手に負えないんだよな。

 そんな風に考えていると、ふと長谷川が眉を顰めながら何かの本のような物を読んでいるのに気が付く。

 

「長谷川?」

「あぁ、アクセル。ちょっと待ってくれ。……ネギ先生、これを読んでみてくれ」

「え? それってのどかさんのいどのえにっきですよね? 確かゲーデル総督に読心術を掛けてましたが……」

「ああ。……とにかく読んでみてくれ。ただし心を強く持ってな」

 

 まるで押しつけるようにいどのえにっきをネギへと手渡す長谷川。その様子から見て、何か面白くない事が書かれているのは確実だろう。

 そして実際にいどのえにっきを読んでいるネギの表情は強張っていく。どうやら余程の内容が書かれているらしい。

 

「そんな……これは……」

 

 信じられない、信じたくない。そんな思いが込められた呻き声。

 

「ネギ。どんな内容が書かれているのかは知らないが、まずは合流地点に……ちぃっ! さっそくおでましか!?」

 

 ガガガガガガ! という何らかの衝撃音が聞こえ、その音で我に返ったのだろう。ネギが長谷川を庇うようにして後ろへと下がり、その何かを迎撃すべく俺と古菲が前に出る。

 

「アクセル坊主との共闘というのはあの精霊の一件以来アルね」

「そうだな。だが今回重要なのは敵を倒す事じゃない。いかに素早くここを切り抜けて他の奴等との合流地点に向かうかだ」

「当然アルね」

 

 古菲がその手に持ったアーティファクト、神珍鉄自在棍を手に小さく頷く。

 そして……まるでガラスが割れるようなパリィィィンッという音が周囲に響き渡り、空間を破壊するようにして飛び出してきたのは……ラカン!?

 横倒しになったラカンが地面を削るかのようにしてその動きを止める。

 今の様子を見る限りでは、ラカン特有の無茶苦茶技で別空間からここに辿り着いたとかそういうのではなく、どちらかと言えばまるで誰かと交戦していて攻撃を受けた衝撃で吹き飛ばされたように見える。と言うか、そういう風にしか見えない。

 ラカンもまた、俺達に気が付いたのだろう。苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「よう、アクセル。ネギに千雨嬢ちゃんとカンフー嬢ちゃんも一緒か。みっともない所を見せちまったな。最後にお前さん達に会えたのは幸運って奴なのかもな」

「最後?」

 

 これまでのラカンと言えば防具の類は装備するというイメージが無かったのだが、今のラカンはその四肢に鎧を身に纏っている。……鎧だというのに、何故肝心の胴体はスーツのままなのかはともかく。

 そして何よりもこの存在感の薄さはどういう事だ? まるでそこにいるのにいないとでもいうような矛盾を感じさせるその薄い気配。

 ネギもまたその異常に気が付いているのだろう。眉を顰めながらラカンの姿を視界に入れている。

 そして再び先程同様のガラスを割るような音が周囲へと響き渡り新たな人物が姿を現す。その人物は周囲へと巨大な黒い針のような物を幾つも浮かべ、そして同様にその側に巨大な鍵、あるいは杖のような物を浮かべている。

 その鍵を見た瞬間、俺の中に眠る念動力が警報を発してくる。これは……なんだ? この感覚から考えると、俺自身の危機に直結するような知らせではない。だが、あの鍵が文字通りの意味でキーアイテムだというのを知らせてくるような……

 そしてその針と鍵を従えている人物は意外そうに俺達……否、俺へと視線を向ける。

 

「アクセル・アルマー。そしてネギ・スプリングフィールド……か。ここに空間を開いたのはジャック・ラカン、君の意志かな?」

「……フェイト・アーウェルンクス」

 

 一人言のように呟いたその人物の名を、俺も思わず口に出す。

 そう、目の前にいるのはフェイトで間違い無いだろう。ただし、俺の知ってるフェイトに比べると随分とその身長が伸びている。まるで異形化を使っている俺や、年齢詐称薬を飲んでいるネギと同様の20代程度に見える。

 

「ん? その目は……あぁ、この姿かい? 折角だし君達に合わせてみたんだけどね。似合っているかな? ……それで隙を突いたつもりかな?」

 

 俺達と会話をしつつ、ラカンが放ったアーティファクト、千の顔を持つ英雄で放たれた無数の剣へとチラリと視線を向けながら手を差し出す。すると、それだけで放たれた大量の剣はその全てがまるで熱したフライパンに溶けるバターのように跡形もなく溶けて消えていく。

 

「何をしたんだ? ネギ、分かるか?」

「ううん、僕にもさっぱり。ただ、やっぱりあの鍵に何か秘密があると思うんだけど」

 

 ネギもまた俺と同様にあの鍵に何らかの違和感を覚えたらしく、そう呟く。

 

「だろうな。俺の念動力もあの鍵が何かヤバい代物だってさっきからしつこいくらいに警鐘を鳴らしているよ」

 

 そんな風に言いつつも、ラカンとフェイトの戦いに介入する機会を窺う。

 

「斬艦剣!」

 

 ナギ・スプリングフィールド杯でも俺に使われたその巨大な剣を振るうラカンだが、それも先程同様に呆気なく溶けて消えていく。

 

「全てが無意味だと知っているだろうに、まだ抗うのかい?」

 

 呟きながらラカンを睨みつけるフェイト。その瞬間ラカンが横へと素早く移動してその鎧の右肩の部分が消滅していく。

 ……あの鎧は、既に四肢が消滅している代わりか!?

 ラカン程の存在が文字通りに手も足も出ない状態のこの状況だが、そこにあるのは違和感だけだ。フェイトという存在と幾度となく戦ってきた身としては、ラカンとの実力差は殆ど無い。あるいはラカンの方が若干上という印象だ。それなのに現実はこの有様。……やはりあの鍵か。

 どういう性能のマジックアイテム、あるいはアーティファクトなのかは知らないが、あの鍵がそれ程の性能を持っているというのなら俺としても迂闊に手を出すのは危険か。

 そう判断しつつも、さすがにラカンが死ぬのをこのまま黙って見ている訳にもいかずにジリジリとネギの隣まで後退する。

 

「アクセル君?」

「ちょっとそのままでいろ。フェイトに見つかりたくない」

「え?」

 

 不思議そうなネギをそのままに、右脚をネギでフェイトから隠す。

 

「生命ノ宴」

 

 呟き、リスや鳥、虫といった小さめの炎獣を10匹程作りだして解き放つ。

 

「あ、なるほど」

 

 ようやく俺の意図に気が付いたのか納得したように頷くネギへと声を潜めて告げる。

 

「いいか、ラカンがやばくなったら一気に仕掛ける」

「うん、分かった。僕も行けるよ」

「違う。今のお前は戦力にならないだろうからここで大人しくしていろ」

「でも!」

 

 俺の言葉にそう言い募ってくるネギだが、そのネギの腰の辺りを長谷川が軽く殴りつける。

 

「自分の今の状態を考えてみろ。そんな状態でこいつら見たいな化け物同士の戦いに参加したら、あんた本当に闇の魔法を暴走させるぞ」

「う……」

 

 俺とネギが相談をしている間にも、フェイトとラカンの戦闘は続く。

 右腕を失ったラカンが、再度千の顔を持つ英雄を使い巨大な……それこそまるでMSやPTのような腕を召喚する。

 

「帝国九七式破城槌型魔導鉄甲だ。これを食らってもその涼しい顔をしていられるか?」

「ジャック・ラカン、貴方に似合わない無様な武器だ。……何故貴方はそんな顔で戦える? 全てが無意味だと知っているというのに。いや、貴方は20年前のあの日から既に知っている筈だ。MM上層部がひた隠しにするこの世界の秘密……否、この世界の無慈悲な真実を。なのに何故その絶望を感じながらもこの世界を歩き続けられる?」

 

 フェイトの言葉に、面白そうな笑みを浮かべるラカン。

 しかし、無慈悲な真実? この魔法世界が火星に創られた異界だという以外にも何かあるのか?

 ふと隣を見れば、ネギと長谷川が強張った顔付きで2人の話を聞いている。

 なるほど、その答えが宮崎のいどのえにっきに書かれていた内容な訳か。

 

「真実? 意味? そんな言葉、俺の生には何の関係もないのさ」

「ッ! ……ならばその真実に灼かれて人形よ、消え去れ!」

 

 その言葉と同時に放たれた無数の黒い針。それは全方位に放たれ、当然こちらへと向かって来る。

 

「ちぃっ、古菲、長谷川、ネギ。俺の側に集まれ!」

 

 叫び、魔法障壁を展開。こちらへと飛んできた針の攻撃を無効化する。

 そしてラカンはと言えば、瞬動を使いフェイトの後ろへと回り込み拳を叩き込み……最後にその右手の破城槌を叩き込む!

 

「おいっ、あのおっさんやったんじゃねぇか!?」

 

 長谷川の喜色に満ちた声が周囲に響き……そして、ラカンの身体がまるで霞のように徐々に、徐々に消え去っていく。

 

「え? あれ? おい、おっさん!?」

「……はっ、どうやら俺はここまでのようだな。……ネギ」

「ラ、ラカンさん!?」

「悪い、俺達の世代の置き土産はきちんと片付けてやりたかったんだが……どうやらお前達に押しつける事になってしまったらしい」

 

 そう告げている間にも、ラカンの身体は次第に崩れて光の粒のようになり消え去っていく。

 

「アクセル、悪いがネギの事を手伝ってやってくれ。お前がいれば少しは安心出来らぁ」

「……ふん。俺がいて少しだと? 見くびって貰っては困るな。俺がいる限りは空中要塞にでも籠もった気になって安心して逝け」

「くっくっく、空中要塞か。さすがに大魔王だな。ああ、お前とネギの2人がいれば俺は安心して逝けるな。……じゃあな、ナギ・スプリングフィールド杯でのお前との戦闘は楽しかったぜ。それこそまるであの馬鹿とやり合っているみたい……だった……な」

 

 最後にそう呟き、男臭い笑みを浮かべたのを最後にラカンの姿は完全に崩れ去るのだった。

 

「ラカンさん……ラカンさぁーーーーんっ!」

「おい、おっさん。嘘だろ!?」

「……」

 

 ネギが叫び、長谷川が信じられないとばかりに混乱し、古菲は黙祷を捧げる。そんな中聞こえてきた1つの声。

 

「最後まで分からない男だった……」

 

 そう呟いて姿を現したのは殆ど無傷と言ってもいいフェイトの姿だった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:15
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:392

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。