転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0429話

「ふぅ……」

 

 グレートパル様号が無事に貨物搬入口へと停泊しているのと、誰がやってくれたのかは分からないが搬入口の入り口が閉まっているのを見て、思わず安堵の息を吐く。あれだけの質量を誇る飛行魚を影槍を組み合わせて作りだしたバリアーネットで受け止めたのだからSPの消費も相当な物であり、実際にステータスを表示してSPを見ると100近くも減っているのが分かる。……まぁ、SPブーストの効果で急速に回復してはいるのだが。

 近くの窓から貨物搬入口の外へと視線を向けると、どういう手段を使ってかは知らないが追っていた獲物の姿が消えたのに気が付いた触手が引き上げていくのが見える。

 あやか達の集中攻撃を受けていたにも関わらず損傷した場所はもう殆ど修復されている所を見るに、ちょっとやそっとのダメージを与えてもすぐに再生されてしまって殆ど意味がないな。やるなら再生出来ない程のダメージを瞬間的に与えるしかない。

 

「アクセルさん、皆さんも。ご無事で何よりです」

 

 そんな風に思っていると、グレートパル様号の甲板から茶々丸が飛び降りてこちらへと歩いて来る。表情自体は殆ど変わらないのだが、発している雰囲気でこちらを酷く心配していたというのは何となく感じ取れた。

 

「茶々丸も無事で何よりだ」

「はい。……でも、アクセルさん。幾ら操影術の扱いが上手だとは言っても余り無茶はしないで欲しいです。アクセルさんが1人でこのグレートパル様号を影槍で受け止めたのを見た時には凄く驚きましたので」

「だが、ああするしか無かったのも事実だろう? あのままの速度でここに突っ込んで来てたら幾ら何でも無事では済まなかっただろうしな」

「……なるほど。諸悪の根源は早乙女さんな訳ですね」

「ちょっとぉっ! 茶々丸さん、黒い! 黒いよ! あの速度で逃げなきゃ触手に捕まってたのは分かるでしょ!」

 

 茶々丸の後に続いて降りてきた早乙女の声が搬入口へと響き渡るのだった。

 

「ふむ、どうやら皆無事のようでござるな」

 

 長瀬もまた避難していた場所から戻り、天狗之隠蓑を展開して中に入っていたメンバー達も姿を現す。

 

「さて、早乙女のお仕置きはまた後に取っておくとしてだ」

「アクセルくーーーーんっっ!」

 

 そんな早乙女の叫びを無視しながらこれからどうするべきかを考える。

 本来ならこのままフェイト達のアジトから捕まっているメンバーを救出してゲートポートから現実世界へと戻る予定だったんだが……

 

「あの巨大召喚魔を何とかしないとここから脱出するのは難しいわね。かと言ってこのままここにいて襲われでもしたら逃げる場所はないし……」

 

 円の言葉が俺の考えを代弁したかのように周囲へと響く。

 そう。今回はあの触手は運良くこちらを見逃してくれたが何かの理由、あるいは気紛れでまたこちらを襲ってこないとは限らないのだ。そもそもあれを召喚したのはフェイト達完全なる世界の……なるほど。それならそれで手はあるか。

 

「聞いてくれ、このままここにいると危険だってのはお前達も理解出来るな?」

「けど、フェイトやデュナミスとかいう奴等は逃げたんやろ? なら外にいる奴等もそのうち消えるんやないか?」

 

 俺の言葉に小太郎がそう言ってくるが、その疑問に答えたのは俺ではなく龍宮だった。

 

「それはちょっと甘いな。奴等が撤退したのは事実かも知れないが、捨て駒や消耗品として召喚された奴等をご丁寧に片付けていってくれると思うか?」

「む、それは確かにそうかもしれへんな」

「まぁ、その辺は龍宮の言う通りだと俺も思う。つまり俺達の安全を確保するにはここから離れないといけない訳なんだが……」

「アクセル君の影のゲートで皆一緒にってのは?」

 

 円の言葉に首を振る。

 

「あいにく俺の影のゲートは転移可能距離がそこまで広くはない。ここから無理に転移するとしたら、現在オスティア周辺に展開している軍艦とかの中が精一杯だろうな」

「ちょっと! こんなゴタゴタの中でお尋ね者の私達が軍艦の中に現れたら!」

「そう、神楽坂の言う通り混乱が広まるだけだ。つまりは……」

 

 チラリと停泊しているグレートパル様号へと視線を向ける。

 

「これで脱出するしか無い訳だ。あの触手を操っている怪獣をなんとかしてな」

「でも、敵はすっごく大きいんですけどー」

 

 朝倉の肩の上に腰を掛けながら相坂がそう言う。

 グレートパル様号に乗っていた相坂だからこそ、敵がどれくらいの規模か理解しているのだろう。

 

「そこで俺が提示出来る手段は2つだ。1つ目はこれ」

 

 空間倉庫からフェイトから奪い取ったグランドマスターキーを取り出す。

 

「あ、それ!」

 

 思わず口にしたのは宮崎だ。

 

「フェイトから奪って来た物だ。名前はグランドマスターキーと言うらしいな。どうやら完全なる世界の最終兵器や秘密兵器的なアイテムらしいが、これを使えばどうにかなる可能性もある。……ただし、これを手に入れたのはいいんだが使い方がさっぱり分からないのが問題だ。俺達がここに到着した時の感じからしてそれなりに使い方を分かってるようだが?」

「だ、大体の使い方は分かりますが……私が使ったのもあくまでも殆ど成り行きだったのでもう1回使えと言われても難しいです。特にそれを人に教えてすぐに使えるようにするというのは……」

 

 自信なさそうに返事をする宮崎を見ながら、グランドマスターキーを空間倉庫へと収納する。

 

「だろうな。俺にしても手にいれたばかりで性能も確認していないマジックアイテムを使う気にはなれない。もし使うとしたら十分に使いこなす訓練をしてからだろうが、そんな時間も無いしな」

 

 一応空間倉庫の中には俺が買った魔法球もあるにはあるのだが、いつあの触手やら大怪獣やら闇の人形やらが襲ってこないとも限らない現状で魔法球の中に籠もるというのはちょっと危なすぎるのでやめておく。魔法球の中で修行を完了して出て来たらフェイト達に捕らえられてましたとかじゃ洒落にもならないし。

 

「じゃ、じゃあどうやってここを突破するの?」

「何、そこで2つ目の案だ。こっちは特に難しくも何とも無い。単純に力押しであの怪獣を倒してしまうというだけだからな」

「ちょっと、さよちゃんの話を聞いたでしょ!? あんな大きい奴相手にどうするって言うのよ」

 

 がーっと怒鳴りつけてきた神楽坂に対して、ニヤリとした笑みを浮かべてやる。

 

「おいおい、神楽坂。俺を誰だと思ってるんだ? 魔法世界の英雄でもある紅き翼のジャック・ラカンを相手に勝利した男だぞ? そんな俺が怪獣如きを相手にどうにか出来ないと本気で思っているのか?」

 

 ……まぁ、俺の計算通りに行くとしたら成功しても俺の消耗は半端じゃないレベルになるだろうが。

 そんな俺の決意が伝わったのだろう。どこか呆れたように神楽坂は肩を竦めるのだった。

 

「そう言えばそうね。あんたは大魔王なんだし、怪獣くらいはどうにか出来ない方がおかしいか」

「ふん、今だけはその大魔王という称号を大人しく受け取っておいてやるよ」

「……あんた、実は散々大魔王大魔王言われ続けてきて、ちょっと気に入ってきてるでしょ」

「かもな。さて、怪獣への攻撃に関しては当然俺だけじゃなくて他の奴等にも参加して貰うぞ。参加メンバーは攻撃役として俺、あやか、円、茶々丸、桜咲、龍宮って所か。そして補助として美砂と千鶴だな。千鶴はいざという時は守護領域も期待するが、基本的にはこちらの魔法攻撃の効果を増す青の領域を展開してくれ」

「私は駄目アルか?」

「拙者も以下同文でござる」

 

 古菲と長瀬の言葉に首を振る。

 

「今回行われるのはさっきの触手を相手にした時よりも遠距離からの、言わば砲撃戦だ。近接戦闘が主体の古菲に、遠距離用としては巨大手裏剣がメインの長瀬だとちょっと荷が重いだろう。同様の理由で射程距離がそれ程長くない小太郎も今回は外させて貰う」

 

 自分達でも遠距離戦闘が苦手だというのは理解していたのだろう。それ以上言い募る事も無く黙って引き下がる。

 小太郎も詰まらなそうな表情をしているが自分が無理に付いていっても足を引っ張るだけだと理解しているのだろう、大人しく引き下がる。

 

「ねぇ、じゃあ相手を石化させる奴は出来ないの?」

 

 円のその言葉に、俺が出す完全石化光線を知ってる者達の期待の視線が集まるが首を小さく振る。

 

「確かに効果はあるだろうが、何しろ射程がそれ程長くない為に射程範囲まで触手の攻撃をかいくぐって近付かないといけないから無理だろうな」

 

 一撃必殺とも言える完全石化光線を使えないと知り多少残念そうな声が上がったが、それこそあの大量の触手を潜り抜けるというのは早乙女には無理だろうから諦めて貰うしかない。

 俺が混沌精霊としての力を使って飛んで行くにしても、もしそれが失敗したらそれこそグレートパル様号が殆ど手も足も出ない状態で捕獲される可能性が高いしな。

 

「よし。……まずはあやか、鮮血の鞭を」

「はい、どうぞ」

 

 あやかから受け取った鮮血の鞭の剣先9つ全てへと、俺が使える広域破壊魔法で最大の威力を誇る『燃える天空』を封じ込めていく。かなりのSPを消費したこの燃える天空9発があれば、それこそ普通の街くらいなら丸ごと焼き滅ぼす事も不可能ではないだろう。

 その後は先程のように戦闘能力の無いメンバーや気絶したままのネギを再度長瀬の天狗之隠蓑へと収納して貰う。

 同時に多少の休憩時間を取りSPが最大値まで回復するのを待ち……出撃の準備は完了する。

 

「アクセル君、準備OKよ!」

 

 早乙女の声を聞き、貨物搬入口の扉を開くようにスイッチを入れる。同時に、空を飛びグレートパル様号の甲板へと着地する。

 甲板には先程俺が指名したメンバーが勢揃いしており、それぞれの武器やアーティファクトを構えていた。

 そして、搬入口が徐々に開いていき……グレートパル様号が大空へと進み出る。

 その瞬間、まず目に入ったのはヘラス帝国の帝都守護聖獣である龍樹の姿だ。

 

「ちょっ、アレ何アレ! 龍!? 竜!? 樹!?」

 

 いきなり目に入ってきたその光景に、円が半ばテンパってそう騒ぐ。そして……

 

「ちょっ、円、あっちあっち! ほら、例の巨大召喚魔もいる!」

 

 美砂もまた同様に、フェイト達が召喚したと思われる触手の怪獣を見てそう騒ぐ。

 

「落ち着きなさい! アクセル君の従者として恥ずかしい姿を見せる事は私が許しません!」

 

 そんな2人へとあやかの叱咤の声が掛けられた。

 

「あ、御免。でもさすがにいきなりあんなのを見せられたらさぁ」

「そうそう。あやかは良く平気だよね。っていうか、元々こっちの世界の住人だった桜咲さんや龍宮さんはともかく、千鶴も平常心のままってのはどうなのよ」

 

 落ち着きを取り戻した2人に、龍宮、桜咲は苦笑を浮かべる。そして千鶴はこの場に及んでもニコニコとした笑みを浮かべていた。

 

「確かにちょっと驚いたけど、オスティアに向かってる時に見た精霊の群れや暴走したアクセル君を見た後だとさすがに驚かないわよ」

「……なるほど、そう言われれば確かにそうね」

「うんうん。正直あの時は本気で死ぬかと思ったし。あの時のアクセル君に比べたらどっちもどうという事も無い感じね」

 

 妙に納得したように頷く円と美砂に、何故か龍宮と桜咲の2人は唖然とした表情を俺へと向ける。……いや、俺を見られてもな。暴走中の事は余り覚えてないし。

 そんな風に思った時だった。巨大召喚魔が放った拳の一撃が龍樹へと命中したかと思うと、次の瞬間には拳の命中した場所から霞のように龍樹の身体が崩れていくのだった。それはまさにラカンの消えた時の状況と一緒だ。となると、恐らくあの巨大召喚魔はグランドマスターキーとやらの影響か何かを受けているのは確実だろう。

 

「ふぅ、さて。始めるぞ。美砂、千鶴」

「任せて」

「アクセル君を中心に半径1mに領域を指定。青の石よ、その力を示せ」

 

 美砂がセイレーンの瞳を握りしめながら戦意を鼓舞するような勇猛な歌を歌い、千鶴の虹色領域の腕輪によって俺を中心として青色のドーム状の領域が形成される。そして俺の側にはこの中で唯一魔法を使う予定の鮮血の鞭を構えたあやかの姿が。円もまた、純炎の涙をその四肢に展開して既に空中へと浮いている。龍宮と茶々丸は己のもつ狙撃銃で狙いを付け、桜咲が太刀を構える。

 

「……早乙女、聞こえているか?」

『はいはい、何?』

「通信をこの周辺にいる艦艇全てに流せるか?」

『当然出来るけど、どうするの?』

「俺達の攻撃で被害を受けないように一応忠告しておく。あぁ、映像はいらない。音声のみでいいぞ」

『えーっと……はい、OK。アクセル君の声をこの周辺全域に流せるよ』

 

 早乙女の声が響き、周囲が黙る中で俺は口を開く。

 

「この通信を聞いている者に告げる。これから俺達白き翼はあの巨大な召喚魔に攻撃するが、その範囲は広範囲に渡るだろう。故に告げる。命が惜しい者はこの飛行魚とあの巨大召喚魔から距離を取れ。巻き添えを食らってもこちらは責任を持てん。……以上だ。各艦の賢明な判断を期待する」

『通信終了っと。でも良かったの? 白き翼の名前を出して』

「何か名前があった方がハッタリを効かせやすいのは間違い無いからな。それにネギの事を知ってる奴なら、白き翼という単語で俺達がネギの関係者だというのを察してくれる筈だ。それに実際白き翼がこの飛行魚に乗っているし、この場にも桜咲がいるんだからあながち完全な嘘って訳じゃないしな」

「ちょっ、アクセルさん!?」

 

 桜咲の悲鳴を聞きながらもそれをスルーして魔力を集中していく。

 

「よし。……行くぞ! 俺に合わせろ!」

 

 宣言し、混沌精霊の能力の1つである焔ノ宴により無詠唱で魔法を発動させる。

 

『燃える天空』『燃える天空』『燃える天空』『燃える天空』『燃える天空』『燃える天空』

 

 現れたのはまさに灼熱の業火が荒れ狂う地獄。千鶴の青の領域と美砂の歌により威力を増加させた『燃える天空』の6連続発動により、まさに周辺一帯の温度は数十度単位で上がっていく。だが……

 

「威力をかなり減衰されてるな。何らかの障壁でも展開しているのか? あやか」

「はい!」

 

 俺の言葉に、あやかが鮮血の鞭を振るい9つの剣先に封じられていた『燃える天空』を全て解き放つ。そこに現れたのは、先程よりも多い『燃える天空』の9連続発動。そして円もまた極限まで炎を凝縮して放ち続けている。同時に茶々丸と龍宮から狙い澄まされたような銃弾が急所と思われる場所へと向かって放たれ、桜咲の斬撃も容赦無くその身を斬り裂いてく。

 あやかもまた、鮮血の鞭に封じられていた『燃える天空』を全て使い切った後は青の領域と美砂の歌により威力を増した風の魔法を放ち続けている。

 あの巨大召喚魔が張っていたシールドは徐々に削られていき、今では殆ど剥き出しの状態となって本体にダメージを蓄積していってはいるのだが、傷つく先から再生を繰り返している。

 そんな状態がどれ程続いたか。魔法を放っている身としては10分程にも感じるが、実際にはまだ数分といった所だろう。そして、障壁が削りきられた今が最大の勝機!

 

「愛、直撃」

 

 精神コマンドを使用し、残るSPの全てを次の魔法へと注ぎ込んでいく。まさに極限まで込められた俺のSPは数値にして300近くになるだろう。まさに俺の出せる最大の一撃。即ち……

 

『燃える天空』

 

 これまで放たれた『燃える天空』の全てを合わせたものの数倍、あるいは数十倍はあろうという巨大な灼熱地獄が巨大召喚魔を中心にして作りあげられ、再生する端から蒸発していきやがて再生も追いつかなくなり……巨大召喚魔はその存在全てを燃やし尽くされるのだった。

 

「ぐっ!」

 

 SPを急激に消費した影響か、巨大召喚魔の姿が燃え尽きたのを確認した俺は意識が闇へと飲み込まれていくのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:20
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:393

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