転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0436話

 墓守人の宮殿に突入した俺達。そこに現れたのはザジ・レイニーデイそっくりの人物……否、魔族であった。麻帆良の制服を着ており、ステータスで確認してもザジと同姓同名で通常ならザジとの見分けは付かなかっただろう。だが名前そのものは同じでも、さすがに各種能力値まで一緒に出来る訳もなく、その能力値は俺の知っているザジとは明らかに誤差の範囲を超えた数値を示していた。そこを見ただけでもその人物がザジ・レイニーデイではないというのは明らかであり、名前が一緒だと紛らわしいので語尾からとってポヨ・レイニーデイと命名したその直後。俺達の周囲は墓守人の宮殿から麻帆良へと姿を変えた。

 

「君達がここで手を引くのなら、すぐにでもこの安住の地でもある麻帆良へと帰してあげるポヨ」

 

 そこに広がっているのは確かに麻帆良だ。それに周囲に集まっている生徒達の視線もグレートパル様号や銃を構えている龍宮。そして何よりも異形化状態になっている俺の羽や角、尻尾に興味が集中しているのはさすが麻帆良と言うべきか。

 これは……ゲートを使わないで魔法世界から現実世界に転移した? いや、それは少なくてもこの世界の者達には不可能な筈だ。それが例え魔族であろうとも。

 

「……これは、麻帆良?」

 

 呆然と呟くネギ。その横へと移動しながら首を振る。

 

「いや、ゲートを使えない今は現実世界へと移動するというのは不可能な筈だ。恐らく幻術の類だろうな」

「アクセルの言う通りだ! 騙されるな先生!」

 

 ポヨに吹き飛ばされていた龍宮が跳躍し、俺を挟んでネギの隣へと着地してすぐさま銃を構える。その横には桜咲や神楽坂、あやか達の姿も見える。

 

「もう一度聞くポヨ。君達が選択しようとしている道は恐らく超鈴音が止めようとしていた未来へと繋がっているポヨが、それでもその道を選ぶポヨか?」

「ふん、未来が確定しているとどこで決まった? 少なくても俺は決まっていた筈の未来を幾度となく変えた事があるぞ」

 

 例えば本来の歴史であればシャドウミラーは壊滅し、俺はアルフィミィと融合する事により何とか生き残っていた。例えばSEED世界ではオーブは壊滅に近い状態に追い込まれ、戦争は地球とプラントの痛み分けという形で終わっていた。

 そして俺自身に知識は無いが、この世界が何らかのアニメや漫画の世界である以上はここでも色々と本来あるべき歴史から変えられている筈だ。

 

「……アクセル君の言う通り、僕達が進む道の方向性は確かに超さんの止めようとした未来と一緒かもしれません。でも、その未来を変えられる。その可能性もある筈です。だから……僕は進みます。父の跡を継いで」

「……そうポヨか。仕方ないポヨね」

 

 そう言い、取り出したのはパクティオーカード。

 

「ちぃっ、アーティファクトか!」

 

 どういうアーティファクトかは知らないが、それを出した所で潰す!

 一瞬だけ横を見ると、そこでは俺と同様の事を考えたのだろう。龍宮もまた銃で狙いを構え……

 

「幻灯のサーカス」

 

 アーティファクトを出すでもなく、パクティオーカードの状態のままでポヨがアーティファクトの能力を発動させたのだった。

 そんな真似が出来るのか!? いや、この場合は魔族だからこそと考えるべきか。

 そう思いつつも強烈な光が周囲を照らし……その瞬間、俺の心へと干渉してくる何かを感じ取る。無遠慮に心の中へと踏み込み、侵食していく何か。……何か、だと? それが何かなんて決まっている。ポヨのアーティファクト以外の何物でもない。だが俺の心に無遠慮に踏み込んでくるとは巫山戯た真似をする。

 一瞬のうちにどういう類のアーティファクトかを本能的に理解し、反射的に口を開く。

 

「直撃、『奈落の業火!』」

 

 その瞬間、俺の周囲を覆っていた光が次第にひび割れて黒い炎に燃やされて砕け散っていく。そしてその光が全て消え去った時、残っているのはグレートパル様号が突っ込んだ墓守人の宮殿最下層部と、ザジの関係者にはあるまじき唖然とした表情で俺を見ているポヨ。そして地面へと倒れこんでいるネギ達の姿だった。

 

「ポ、ポヨ!? そんな馬鹿な。私のアーティファクトの干渉を力尽くで破ったポヨか!? イ、イレギュラーにしても程があるポヨ!」

「う、うぅん……あれ? 父さん? お母さん……え? 確か麻帆良に父さんとお母さんが来てた筈じゃ……」

 

 ネギがそう呟きながら目を覚まし、同時に他の倒れている面々もまた同様に目を覚ましてくる。

 

「残念だったな、余程自信のあるアーティファクトだったようだが結果はご覧の通りだ」

「……アクセル・アルマー。君を甘く見てたのは確かのようだポヨ。しかし完全なる世界の計画を邪魔させる訳にはいかないので、ここからは実力行使と行かせてもらうポヨ」

 

 左右の手から爪を1m程も伸ばしつつ、俺へと視線を向けるポヨ。

 瞬動を使い、こちらの間合いに入り込みその鋭く伸びた爪を振るうが、影に干渉して現れた影槍がその爪を受け止める。

 

「確かにこの歴史は超の歴史へと続く道かもしれない。だが、その歴史には俺という存在がいなかったのは超自身が認めていた事だ。つまり、俺がここにいるという時点でその歴史は変わっている事になる」

「例え、そうだとしても……私はより確実性の高い完全なる世界の計画を重視するポヨ!」

 

 斬っ、とばかりにその爪は受け止めていた影槍を切り裂き、俺へと迫る。

 その一撃を後方へと跳躍して回避しながら会話を続ける。

 

「確実性が高い? 俺達の用意した案を聞きもしないでそう結論づけるのか?」

「私の試算によると、最短9年程度で魔法世界は崩壊するポヨ。それを何とか出来る方法があるとでも?」

「9年か。確かに今のままならそうだろう。だが、俺達が考えた計画では魔法世界の延命も可能となっている。それでも完全なる世界の計画に固執するのか?」

「……」

 

 俺の言葉が意外だったのだろう。動きの止まった一瞬を使い、ポヨの影に干渉して30本近くの影槍を伸ばす。

 

「っ!? 油断も隙も無いポヨ」

 

 背後からの影槍による攻撃を爪で切り裂いてこちらと距離を取るポヨ。その様子を見ながら、フェイトがこちらを何らかの手段で見ていると判断して大声で告げる。

 

「フェイト! 今の話を聞いていたな! 俺達にはこの魔法世界を何とかする為の計画がある! お前達の目的が本当に魔法世界を救うという事なら、俺に力を貸せ!」

 

 周囲一体へと響く俺の声。だが、それに対する反応は特になく声も徐々に消えていく。

 まぁ、だろうな。そもそもフェイトがそうはいはいとこちらの提案に乗ってくるとは思っていない。だがそれでも、こちらの意志を示すというのには意味がある。

 

「……確かに君達の意見は聞く価値があるかもしれないポヨ。だが、今の私は完全なる世界に協力をしている身。故に私が選ぶのは決まってるポヨ!」

 

 メキメキとその額からは2本の角が伸び、背後にはまるで高音の操る影人形をより強力にしたような存在が現れる。

 

「……それがお前の魔族としての力か」

「まるで私が魔族だと知ってたような口ぶりポヨね。ちなみに、私は魔族でもかなり偉い地位についてるポヨ。具体的に言えば普通のRPGではラスボスになる程度には」

「ラスボスか。今までもそういう奴等を相手にして倒してきたんだ。今更ラスボスの1体や2体どうって事はない」

「本当にイレギュラーポヨね。だが、この姿を見せたからには私も本気ポヨ!」

 

 背後に浮かんだ影人形のような者の口へ光が集まり……

 

「生命ノ宴」

 

 俺の右腕から獅子の炎獣が形成されてポヨへと襲い掛かっていく。

 

「GYAAAAAA!」

 

 獅子の炎獣と、ポヨの影人形から放たれた光が正面からぶつかり、周囲を強烈な閃光で満たす。

 

「……さすがポヨね」

 

 周囲を満たした光が消え、視界が戻った時。俺とポヨの中間に位置する場所は激しく破壊されていた。ポヨ側の床は半ば炭と化し、俺の方は一条のレーザーで切り取られたようになっている。

 

「今のが噂の炎獣ポヨか。あの一撃に耐えられるとは随分と厄介ポヨ」

「それはこっちの台詞だ。まさか俺の炎獣が一撃で消滅するとはな。……やはりお前は危険だな。ザジには悪いがここで消させて……」

 

 もらう、と言い切ろうとした所で肩へとポンと手を置かれる。その手の持ち主は……

 

「龍宮?」

「アクセル。君とネギ先生はこの中で最大の戦力だ。ここは私に任せて先に行け。……ふっ。この言い分だとまるで死亡フラグだな」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべる龍宮に、再度炎獣を放とうとしていた右手をそのまま下ろす。俺の横ではネギが心配そうに龍宮を見上げていた。

 

「龍宮さん、でもポヨさんの力は未知数です。仮にも自分でラスボス級と言い切る人なんですよ! ここは皆で力を合わせて!」

「ネギ先生、君達にはまだまだ戦う相手がいるだろう? デュナミス、墓所の主、フェイト、そしてその従者達。ここで力を消耗するというのは愚策以外の何物でもない。それに……」

 

 懐から取り出したスイッチを入れる龍宮。同時に瓦礫の中から数個の機械のようなものが跳ね上がり、魔法陣らしきものを展開してポヨを地面へと縫い止める。

 

「超特製の重力地雷だ。一瞬だが50倍の重力が掛かる」

 

 そう言いながら、取り出したライフルを使い連続で弾丸を発射。次の瞬間にはポヨ諸共に床が崩落していく。

 そしてライフルを持ちながら崩落した穴へと近付いていく龍宮。

 

「ネギ先生、幼馴染みを助けるんだろう? それにアクセル、君もやるべき事をやらないといけない筈だな。ここで私に構っている暇はないと思うが?」

「……そうだな。ネギ、あいつは龍宮に任せて俺達は先へ進むぞ。最優先の目的を忘れるな」

「でも!」

 

 たった今ポヨが見せた力をその目で確認しただけにネギとしても龍宮をここに置いていく訳にはいかないのだろう。だが。

 

「安心しろネギ。龍宮だって別に何の手段もなく俺達を先に行かせようとしている訳じゃないさ。だろう? 奥の手の1つや2つはあると考えていいんだよな?」

「……さて、いい女には秘密が付きものなのさ。そうほいほい秘密は言えない……としたい所なんだが、どういう訳かアクセルには知られているらしいな」

「まぁな。それこそどうやって知ったかは秘密だが」

 

 まさかステータス確認能力で半魔族というのを知ったなんて言ってもとても信じられるものではないだろう。

 

「ふっ、まぁいい。だが私の秘密を知った代金は高いぞ?」

「麻帆良に戻ったら餡蜜でも奢らせて貰うよ」

「その言葉、確かに聞いたよ。じゃあ……また後で会おう!」

 

 そう告げ、崩落した中へと飛び込む龍宮。

 その後ろ姿を見送り、それでもまだ心配そうな顔をしているネギの後頭部を平手で軽く叩く。……まぁ、それでも俺の力なのでパァンッ! という音が周囲へと響いたが。

 

「痛っ! ア、アクセル君?!」

「ほら、自称ラスボスを折角龍宮が引きつけてくれてるんだ。お前もしっかりしろ」

「う、うん。そうだね。僕は先生なんだから皆を信頼しなきゃ」

 

 ようやく我に返ったネギがグレートパル様号へと皆を集める。そしてそのブリッジで最終確認が行われた。

 

「1班のハルナさん、茶々丸さん、コレットさん、いいんちょさん、千鶴さん、釘宮さん、柿崎さん、アキラさん、まき絵さん、ゆーなさん、亜子さんの11人はグレートパル様号の修理と脱出路の確保をお願いします」

 

 本来であれば墓守人の宮殿にはあやか達を連れて行くつもりだったのだが、肝心の脱出手段が動かない状況だ。そこにある程度の戦闘が可能な俺の従者達や、戦闘訓練を受けてない者達を一纏めにしている。正直ここが敵の奇襲を受けるとかなりピンチだが、どのみち俺達が大きく暴れまくる事になって敵の目はこっちに向くだろう。

 

「2班の小太郎君、夏美さん、さよさん、朝倉さん、ベアトリクスさん、夕映さんの6人は人質のアーニャの救出をお願いします」

 

 こちらの班は基本隠密行動をして、アーニャと本物の神楽坂の救出を目的にしている班だ。

 

「そして、3班。僕、アクセル君、のどかさん、このかさん、刹那さん、千雨さん、古老師、楓さん、アスナさんの9人は造物主の掟、グレートグランドマスターキーの奪取を目的として敵主力との正面戦闘を目的としています」

 

 この班分けは完全に戦闘目的だな。戦闘要員ではない近衛は回復役、神楽坂はルーナとしての知識。……長谷川は何でだ? まぁ、恐らく一般人としての理性的な判断といった所か? その辺は近衛と一緒に長瀬の天狗之隠蓑に入っていれば問題は無いか。

 そして出発するという直前に、あやかが俺の従者を引き連れて近付いてくる。

 チラリとネギの方を見ると、早乙女となにやら念話で話しているらしいから多少の時間はある、か。

 

「アクセル君、残念ながら今回はご一緒できませんが……無事のご帰還をお祈りしています」

「ここに残った奴等の指揮を頼む。お前がここで指揮を取ってくれるからこそ俺は安心して行けるんだ」

 

 あやかに軽く抱きしめられ、次は千鶴が前へと出る。

 

「ここにいる皆は、私のアーティファクトで必ず守りきってみせるわ。だからアクセル君も怪我をしないように頑張ってね」

「ああ。俺の戻ってくる場所をそのアーティファクトで守ってくれ」

 

 千鶴に抱きしめられ、次は円が前へと出る。

 

「アクセル君、その……うん。麻帆良に戻ったらデートしようね! だから絶対に帰ってきてよ!」

「そうだな、それもいいかもな。お前の火力があれば、それこそその辺の敵はどうにでも出来るだろう。……頼んだぞ。無事守りきってくれたら円の言う通りに麻帆良に戻ったら2人でどこかに出掛けるか」

 

 円に抱きしめられ、次に美砂が前へと出る。

 

「アクセル君、ちゃっちゃと行ってパーッと魔法世界を救ってきてよ。私だけじゃなくて皆でアクセル君の帰りを待ってるからさ」

「任せろ。俺を誰だと思ってるんだ? 大魔王アクセル・アルマーだぞ? お前も俺の記憶を追体験したなら知ってると思うが、この程度の危機はこれまでに何度も乗り越えてきてるんだからな」

 

 美砂に抱きしめられ、最後に茶々丸が前へと出る。

 

「アクセルさん、ご武運を。戻ってきたらまたゼンマイをお願いします」

「そうだな、戻ってきたらまたゼンマイを巻かせて貰うよ。ここにいる面子の中では茶々丸が一番機械関係に詳しい。修理の方、頼んだぞ」

 

 何故か抱きしめられるのではなく頭を撫でられる。……身長的に茶々丸が背伸びをしてだが。

 何やら周囲が冷やかすような目で俺達の方を見てはいたが、それには構わずにここから出る面子と共に墓守人の宮殿の中へと足を踏み入れるのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:20
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:393

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