転生とらぶる   作:青竹(移住)

475 / 4304
0441話

 目の前にあるのは間違い無く世界樹だ。あれだけの馬鹿でかい木がそうそうある筈も無いから見間違える事はないだろう。そして……なんだ、光っている? ついこの前の麻帆良祭で発光現象が起きたばかりだが……何故?

 一瞬だが上空に見えた麻帆良の様子に意識を集中したのが悪かったのだろう。気が抜けたその一瞬にフェイトが俺の背後へと回り込んで背中目掛けて肘打ちを……やばいっ!

 

「加速!」

 

 咄嗟に精神コマンドの加速を使い距離を取ろうとするが、既に放たれる寸前だったその一撃を完全に回避出来る筈も無く、フェイトの肘は俺の右肋骨を数本折って吹き飛ばす。

 

「ぐぅっ!」

 

 羽を使い空中で態勢を整えて地面へと着地。脇に走る鈍痛を堪えながら素早く魔力を循環させて肋骨を再生していく。

 

「よそ見をするとは随分と余裕があるね」

 

 そう俺に向かって話し掛けながら、チラリと上空に存在している麻帆良へと視線を向けるフェイト。

 

「ゲートを通じて魔法世界と現実世界が繋がったのは僕としても予想外だったけど、どのみちやるべき事は変わらない。僕と君。この勝負の行く末が両世界の命運を決めるのだから。……だからこそ、今は他の事に気を取られないで僕の相手をして欲しいものだね!」

 

 再び瞬動を使い懐に入るや否や、顎の先端を狙って拳を突き出すフェイト。素人に良くあるように大きく振りかぶるなんて真似をせず、構えた拳をただ一直線に最短距離で俺の顎を狙ってくる。

 

「燃えろ!」

 

 だが当然俺もその一撃をただ黙って貰う訳もなく、混沌精霊としての力でフェイトの顔面目掛けて炎を出現させる。

 

「っ!?」

 

 俺の言葉で狙いを悟ったのだろう、フェイトは咄嗟に身体をずらして炎の一撃を回避する。そうすると当然俺の顎を狙っていた一撃に関してもその軌道が変化する為にあっさりと空を貫く。

 そしてその伸びきった手首を掴み……

 バキィ! という音が周囲へと響き渡った。フェイトの手首を掴んだ瞬間、躊躇せずに骨を握り潰したのだ。だが、それにも関わらずフェイトは特に痛みを表情に表すでもなく大きく後退して俺との距離を取る。

 

「残念だったな。俺の身体能力は知ってた筈だが一撃入れて油断したか?」

「確かにそうかもしれないね。でも、君こそ油断をしてるんじゃないかい?」

「……何?」

 

 チラリと真上へと視線を向けるフェイト。その視線の先にあるのは麻帆良だけ……いや、違う!? 何か黒い柱のようなものがこの儀式場……というよりは俺に向かって降ってきている!?

 

「正気か!? この儀式場が潰れるぞ!」

「さて、本当にそうなると思うかい? 君ならどうとでも出来るというのに、みすみすこの儀式場を潰すと? そうした場合はもしかしたら儀式が暴走気味に発動してしまうかも知れないね」

「……なるほど、随分と悪知恵が働くようになったな。俺が止めるのを前提にしている訳か」

「何、強敵相手に作戦を考えるのは人間として当然の事だろう?」

「そんな所まで人間らしくならなくてもいいものを。だが、まぁいい。あの程度の柱ならどうとでもなるさ」

「そうだね、僕が何も手出しをしなかったらそうかもしれないね」

 

 言うや否や、瞬動を使って間合いを殺すフェイト。砕かれた右手は使えないが、その代わりに右肘、左腕、両足を使って俺へと途切れることなく連続攻撃を仕掛けて来る。

 左の掌底、左肘、右膝、しゃがんで足を刈るように回し蹴りを放ちつつ左手で地面に手を突きながら逆立ち気味に顎を狙って蹴りを放ってくる。

 そのことごとくを回避し、防ぎ、いなし、弾く。攻撃はせずに、防御に徹しながら降り注いでくる巨大な黒い柱へと視線を向ける。

 幸いなのはその柱が1本だけだという事だろう。これがもし数本一斉に降ってこられたら、それこそフェイトにダメージを受けるのを承知の上で迎撃に専念するしかなかった。

 

「ふっ!」

 

 顎を狙って放たれた蹴り足を掴み取り、そのまま空中へと向けて大きく放り投げる。同時に、もう10m程度の距離まで縮まった黒い柱へと視線を向ける。

 

『燃える天空』

 

 混沌精霊としての力でもある焔ノ宴。それを使い俺の使える魔法の中でも最大の威力を誇る『燃える天空』を放ち、黒い柱その物を一瞬で燃やし尽くす。

 

「……さすがだね。あの柱はそう簡単にどうこう出来る物じゃないんだけど」

 

 儀式場を形成していた石の残骸から身を起こしながらフェイトが言葉通りに感心したように呟く。その外見は度重なる戦闘で既にズタボロになっており、右手首の骨も砕かれているのだが……まだその動きにはどこかある程度の余裕があるように見える。

 

「本当にそう思っていたのなら、まだまだ俺を甘く見ていたって事だな」

「そうかもしれないね。けど、タイムリミットも近い。そろそろ決めさせて貰おうか」

 

 フェイトの言葉に、チラリと上空の麻帆良へと視線を向ける。確かにそこにはこの墓守人の宮殿から崩れ落ちていった残骸や、あるいは周辺に浮かんでいた岩塊といったものが麻帆良へと落下していき、それを魔法先生達が砕いて被害を防いでいるのが見える。そして……

 

「……何?」

 

 その瞬間、俺の視線に入って来たのは本来この世界にある筈がない物だった。麻帆良へと落下していっている巨大な岩塊へと突き刺さる赤いビーム。次の瞬間にはその岩塊は破壊されるどころかビームに飲み込まれて消滅する。そのビームが発射されたと思しき場所にいたのは、俺にとっても馴染み深い量産型ゲシュペンストMk-Ⅱだった。即ちシャドウミラーが以前主力機として使っていた機体だ。

 その近くではドーナツ状のレーザーが発射されて複数の岩塊を消滅させていく。あるいはそれが無理な大きさの岩塊に対しては、ドーナツ状のレーザーを放っていた虫型の機体であるメギロートがその複数の足を使い直接キャッチして建物や人のいない場所へと運んでいる。

 量産型ゲシュペンストMk-Ⅱにメギロート。その2つを俺が見間違える筈もないし、そもそもその2つの機体を運用していてこの世界に来るような者達の心当たりは1つしかない。

 

「ホワイトスターと繋がったか」

 

 その様子に軽く眉を顰めたフェイトへと自信を持って告げる。

 

「麻帆良の方を見てみろ、人型と虫型の機体があるだろう? あれが俺の組織、シャドウミラーの運用する機体だ。つまり、この世界と俺の本拠地であるホワイトスターが繋がったって事だよ。それは同時に俺が言っていたプランが実行可能になった事を意味している」

 

 俺の言葉に上空を見たフェイトは、そこで展開していた光景に珍しく驚きを露わにする。

 

「なるほど。正直君の話は話半分程度に聞いてたんだけど、あの光景を見たら信じざるを得ないね。……だがまぁ、僕達のやるべき事は変わらない。僕が勝ったら完全なる世界を。君が勝ったら君の計画を。……さぁ、先程も言ったがそろそろお互いにとっても時間が無い。ケリをつけようか」

「そうだな。俺にしてもこのまま麻帆良に落ちていくというのは勘弁して欲しいしな」

 

 お互いに向き合い、俺とフェイトの両方から溢れ出す殺気、闘気、魔力といった類のものが周囲をビリビリと覆っていく。

 

「この楽しい時間も終わりになるのは非常に悲しいよ。だけど、それもまた楽しいと感じるこの心の赴くままに……行くよ!」

「愛、直撃。……来い」

 

 瞬動を使い、もう残り少ないだろう魔力を拳に乗せて真っ直ぐに突き出すフェイト。俺もまた同様に、精神コマンドの愛と直撃を使い魔力を込めた右拳を突き出す。

 お互いに相手の顔面目掛けて伸びる拳。極限の集中により、まるでスローモーションでも見ているかのようにゆっくり、ゆっくりとフェイトの拳が俺の顔面目掛けて伸び、同時に俺の拳もフェイトの顔面目掛けて伸びていく。

 腕が交わり、お互いの拳がお互いの顔面へと突き刺さ……る前に、念動力を使って強引に自分の身体を少しだけ横に移動させる。……いや、ずらす。

 まるで氷の上を滑るかのように滑らかな動きで移動した俺に、ほんの一瞬だけ戸惑うフェイト。そしてそれが決定的な差となった。顔面に命中したのはほぼ同時。ただし、身体をずらしたことにより打点がずれたフェイトの一撃は威力を半分も出せずに俺の頬へと到達し、同時に俺の拳は人外の身体能力と精神コマンドの愛の効果によりフェイトの頬に当たった時点で最大の威力を発揮する。

 結果、起こったのは儀式場を横へと吹っ飛んで半ば横断したフェイトと、頬に薄すらと打撃の跡が残る俺だけだった。

 そしてその頬に関しても、魔力による回復で数秒後には痣が消え去る。

 

「フェイト様っ!?」

 

 リライトの儀式に集中していた調の声が周囲へと響くが、その声に反応したかのようにフェイトが吹き飛ばされた場所から声が響いてくる。

 

「……さすがだ、アクセル・アルマー。全力を出しても尚、君には届かないか」

 

 先程とは違い既に立ち上がる体力すらも残っていないのか、地面へと倒れ込んだままでそう言葉を紡ぐフェイト。だが、不思議とその表情には悔しさや無念さといったものは無く、ただひたすらに充実した表情を浮かべている。

 

「君が勝った以上は君のプランに協力しよう。少なくても僕はね。だが、この戦いが始まる前にも言ったようにそれはまだ魔法世界に余裕のあるうちだけだ。もし君が提案したテラフォーミングと魔法世界の寿命を伸ばすというのが出来なかった場合は即座に完全なる世界を発動させて貰う。問題は無いね?」

「ああ、好きにしろ。その時には俺も戦闘前に言ったようにMMの方は引き受けてもいい」

「その言葉、信じさせて貰おう。……調さん! 黄昏の姫巫女を儀式中枢から解放!」

「フェ、フェイト様? は、はい。ですがそれでは!」

 

 突然のフェイトの指示を聞き、何かを口にしようとした調だったが、フェイトは有無を言わさずに言葉を続ける。

 

「説明は後で! このままでは儀式が完了してしまう。今のうちに姫巫女の力で儀式を反転させるんだ。手遅れになる前に急いで!」

「わ、分かりました!」

 

 フェイトの指示に、調が慌てて儀式場の中央にいた神楽坂へと向かう。

 その様子を見ながら、ようやく溜息を吐く。

 何はともあれデュナミスが消え、墓所の主とやらも俺達に敵対する気はないらしい。これでフェイトとその従者達がこっちのプランに従事する以上は後の問題は……

 

「いや、まだいたな」

 

 そう、水と風のアーウェルンクスがいたな。火は石化してその辺に転がっているから問題は無いだろうが。あぁ、それと龍宮と戦っているだろうポヨか。

 月詠に関しては麻帆良に戻ったら関西呪術協会に送ればいいとして……

 

「ま、何とかなるだろう。……ほら、フェイト。いつまで寝転がっているつもりだ。そろそろ起き上がれ」

「……ふん。君が殴ったせいだというのに、全く自分勝手だね」

「良く言われるよ」

 

 苦笑を浮かべつつフェイトが立ち上がり……その瞬間、念動力による危機感が頭に鳴り響き、咄嗟に起き上がり掛けていたフェイトを突き飛ばす。

 そして次の瞬間、俺とフェイトの間を一筋の黒いビームのようなものが突き抜けていった。

 

「っ!?」

 

 今の光が飛んできた方へと視線を向けると、そこには全身を覆い隠すようなローブを身に纏った存在が今の魔法を放ったであろう右腕を俺達の方へと向けている。

 それが誰かを俺は知っていた。ラカンの映画にも出て来たのだから当然だ。

 即ち、本当の意味での完全なる世界のトップ。本来であれば20年前にナギ・スプリングフィールドによって倒されたはずの存在。

 俺の口からは自然とその存在の名前が紡がれていた。

 

「造物主」




名前:アクセル・アルマー
LV:39
PP:20
格闘:266
射撃:286
技量:276
防御:276
回避:306
命中:326
SP:470
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊

撃墜数:393

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。