転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0034話

 恐らくこの部屋はマフィアの中でもそれなりの地位にいる男の部屋なのだろう。

 高級家具と思われるソファやらデスクが置かれている。

 ……いや、バイザーの暗視装置越しなので絶対に高級品かと言われれば断言は出来ないが。

 壁に掛かっている絵だって俺の知識じゃ本物か偽物かの判別は出来ない。

 もっとも、この絵は10中8、9贋作だとは思う。理由として、この絵が掛かっている後ろの壁に隠し金庫らしきものが埋め込まれているからだ。

 隠し金庫を使うたびに触る所に、まさか名画は飾らないだろう。

 にしても、特脳研の所長といい、ここの事務所といい。壁に隠し金庫を埋め込むのが流行ってるのか?

 壁に掛かっている絵画を外し、スライムでなるべく鋭く隠し金庫のある壁を斬り裂く。スッパリと綺麗に切断されたその壁は、元の位置にピッタリと戻せば傍目には斬られたとは分からないだろう。

 実際に触ればバレるかもしれないが、その辺の時間との勝負はヴィンデルに任せておくしかない。

 金庫の中から取りだした書類をバイザーの録画機能で次々に保存していく。

 アルバート・グレイとのやりとりに使う裏帳簿や、武器に関する売買の契約書、中にはPTやAMの売買契約書もあった。

 後は債権やら株券やらその辺だが、一応念の為にそれらも記録しておく。

 数分後、一通りの記録が終わり書類を隠し金庫の中へと戻し、切断した壁を嵌め込み、絵をかけてカモフラージュ完了っと。

 隠し金庫の方が一段落したら、次はコンピュータだ。

 一応起動させる前に通信ケーブルを引っこ抜いておく。

 コンピュータ起動時に自動でネットに繋がって、それが原因で侵入がバレたりしたら洒落にならん。

 空間倉庫から技術班謹製のハッキングツールが入っているディスクを取り出し、起動時に読み込ませる。

 これを行う事で、これから行われる操作の一切のログがコンピュータ側には残らないという優れものだ。ちなみにこれはバイザーと違い、レモンではなくて技術班員達の作品だったりする。

 OSが立ち上がり、パスワードを要求されるがツールの方で自動的に解除してくれる。

 画面に操作準備OKの文字が出たのを確認してからツールの入っているディスクをデータ保存用のディスクへと交換し、コンピュータの中身を丸ごとコピー。

 にしても、ディスク1枚でまるごとコピー出来るコンピュータの容量ってどうなんだ? いや、この場合はコンピュータのデータを丸ごと保存できるディスクの性能に驚くべきか。

 

「コピーに掛かる時間は大体30分か」

 

 30分間特に何もする事がないので、暇つぶしにコンピュータの中身を見てみる事にする。

 もっとも仕事用のコンピュータらしく、特にゲームやらなにやら面白いものが入っている訳では無いのだが。

 

「見ていても、特に面白いものは……あ、メールでも見てみるか」

 

 ふと思いつき、メーラーを起動。受信メールを表示させる。

 そこに並ぶメールのタイトル一覧を上から順に見ていきつつ、面白そうなメールを読んでみる。

 内容的にはアルバート・グレイからの依頼……いや、違う?

 

「おいおいおいおい」

 

 メールの本文を見るに、依頼というよりは命令といった方が正しいような書き方だ。

 例えばどこそこにある店で暴れて評判を落とせという内容や、特定の政治家の集会に参加して野次を飛ばして荒れさせろ、その他にもそれ系がずらりと並んでいる。

 もしかして俺は勘違いをしていたのか? ここのマフィアはアルバート・グレイと協力関係にあるんじゃなくて、アルバート・グレイ本人が汚い仕事を任せる為に作ったんじゃないのか?

 そんな風に考ながらメールを順番に見ていると、その内容が目に入ってきた。

 特定の個人を殺すように命令するものだ。

 内容的にはそれ程珍しいものではない。今見てきたメールには何回か同じような命令が出ている。

 だが、その対象の名前が『ロム・モントーヤ』となると話は別だ。

 ラージから聞いたモントーヤ博士の死因は事故。車の運転中に操作を誤り海に突っ込んでしまい亡くなった筈だ。少なくてもラージはそう信じている。

 

「それが、暗殺だった?」

 

 だが、原因は何だ? 俺は原作知識があるので永久機関の時流エンジンを知っていたからその業績の大きさが分かるが、普通のこの時代の人にとってはモントーヤ博士は殺さなきゃいけない程の重要人物ではない筈だ。

 

「いや、待てよ?」

 

 時流エンジン。それがモントーヤ博士を暗殺する原因になったとは考えられないか? 例えば、このマフィアはPTやAMなんかの兵器の裏取引もやっている。そこに永久機関の可能性を持つ時流エンジンを開発しているという人物がいると知ったとしたら?

 学会での時流エンジンの扱いは物笑いの種でしかないが、現実に利益になる可能性を考えた場合アルバート・グレイのような奴は即物的な手段を取ろうとしても不思議は無い。そしてそれをモントーヤ博士が断ったとしたら?

 

「ヴィンデルに相談する必要があるな」

 

 ピコ、という電子音が聞こえてふと我に返る。

 モニタにはコピーが終了したと表示されている。 どうやらそれなりに長い時間考え込んでいたらしい。

 データをコピーしたディスクを空間倉庫の中へと入れ、誰かがここにいた痕跡がない事を確認し部屋から出る。

 取りあえず、これで任務は完了だ。後は結果をヴィンデルに報告するのみ。

 スライムで周囲を探索しつつ、誰にも見つからないようにして事務所から脱出した。

 

 

 

 

 

「ヴィンデル、これがコンピュータのデータだ。それとこっちのディスクに裏帳簿やら何やらを撮ってきた映像が入ってる」

 

 ニューヨークから無事ラングレー基地まで戻った俺は、ヴィンデルへと2枚のディスクを渡す。

 

「ご苦労だった」

 

 ヴィンデルはそのディスクを受け取り、早速自分のコンピュータで確認を始める。

 

「そのデータを見てれば分かると思うが、今回忍び込んだマフィアはアルバート・グレイと協力関係にあるんじゃなくて、多分自分の汚れ仕事をやらせる為にアルバート・グレイ本人が作ったものだ」

「本当か?」

「それだけじゃない。データの中のメールを見てくれ」

 

 ヴィンデルが俺の言葉を聞き、データの中からモニタにメールの一覧を表示させる。

 

「上の方の……そう、それだ。ちょっと読んでみてくれ」

 

 そのメールは、モントーヤ博士の暗殺を命令するものだ。

 さすがにヴィンデルもそのメールを読んで驚きの表情を浮かべる。

 

「これは」

「アルバート・グレイってのは三流の政治屋なんだろう? そいつが時流エンジンの事を知ったらどうなると思う?」

「なるほど、確かモントーヤ博士は事故で死亡だったな?」

「ああ、恐らく車に細工か何かしたんだろうな。で、警察なんかは政治家としての権力で黙らせたって所だろう」

「そう、か。そこまで」

 

 数秒黙っていたヴィンデルだったが、突然デスクへとその拳を叩きつける。

 ガンッという音が部屋に響き、それがヴィンデルの内心を表しているように思えた。

 

「アクセル、この事は」

「ラージ達にか? 言えない。言える訳がない」

 

 モントーヤ博士に時流エンジンを動力源に人型兵器を作るようアドバイスしたのは俺だ。つまり、モントーヤ博士が死んだ理由の何割かは俺にある。

 例え俺が接触しなくてもいずれエクサランスを作る事にはなっていただろう。そうも思うが、胸の中にある不快感は消えてはくれない。

 

「分かった。この証拠は私が有用に使わせてもらう。絶対にこのままにはさせないから安心してくれ」

「ああ、頼んだ。俺はあいにくそっち方面の才能はないんでな。その辺はヴィンデルに任せる」

 

 ヴィンデルと互いに頷き、そのまま部屋を出ようとする俺に再度声が掛けられた。

 

「アクセル、言い忘れていたが以前言っていたシャドウミラー専用の基地が後少し、恐らく3ヶ月程で完成する。完成したらそっちに移る事になるから、その辺は気をつけておいてくれ」

 

 そういえば、この基地に来た当初にそんな事を言っていたな。

 

「場所は?」

「南米のエクアドルだ」

 

 エクアドル、確かアマゾン川やガラパゴス諸島が近くにある所だったか?

 イメージ的には自然豊かな場所ではあるが、連邦軍の特殊部隊の基地というのとはちょっとイメージと合わないな。

 地理的には、コロンビアとペルーに挟まれている小国だ。

 

「また、なんでそんな辺鄙な所に」

「誰も興味を持たないような所だからこそ、私達シャドウミラーのような特殊部隊の基地として丁度いい」

 

 そんなものか、と頷き納得する。

 

「分かった、3ヶ月だな。一応準備はしておく。特殊処理班として持って行くものは機体くらいしかないけどな」

「それもしょうがない。元々ここは仮初めの宿だ。持ちきれない程の荷物があっても困る」

 

 持ちきれない程の荷物、ねぇ。

 

「レモンの技術班はそうなりそうな気がするけどな」

「ああ、確かに。レモンの研究室自体がかなりの荷物だからな」

 

 ヴィンデルの言う通り、Wシリーズの研究もしているレモンは人間大のシリンダーを多数所持しているし、その中身が入っていたりするものがある。

 この様子ではヴィンデルもWナンバーズの事を知っているのだろう。

 

「あぁ、そうだ。レモンの事で思い出した。アクセル、お前は明日から3日程休暇をやるからレモンのいるテスラ研まで行ってきてくれ」

「休暇? いや、嬉しいがなんでまた俺がテスラ研に?」

 

 ここの所、任務やら訓練でそれなりに忙しい日々が続いていたし、今回判明したモントーヤ博士の事もある。骨休みしたかったのは事実だが、急にテスラ研に行けと言われても困る。

 

「レモンから転移装置の件でお前にも意見を聞きたいと言ってきてな」

「いや、意見って。本職のレモンが全くの部外者である俺にか?」

「どちらかと言うと、時流エンジンの研究者と親交の深いアクセルの意見を聞いてみたいらしい」

 

 時流エンジンの研究者と親交の深い、ね。俺がレモンをテスラ研に出張させる時に使った転移装置と時流エンジンが似ているというのを覚えていたのか?

 まぁ、実際にテスラ研には1度行ってみたいと思ってた所だし丁度いいと言えば丁度いいんだが。

 

「了解。出発は明日であっちに1泊して戻ってくる感じか?」

「ああ、それで頼む」

 

 こうして、休暇に託けたテスラ研への短期出張が決まったのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:12
PP:60
格闘:154
射撃:172
技量:164
防御:161
回避:189
命中:211
SP:238
エースボーナス:不明
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:B
宇:A
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
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   ???

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.7
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撃墜数:18

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