転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0446話

 不老、という言葉を口にした途端リビングの中が静まり返る。

 沈黙したのはレモン、コーネリア、マリューの3人で、あやか達に関してはどこか納得したようにこちら……と言うよりもレモン達を見ていたが。

 そんな中、レモンが俺の頬を撫でながら口を開く。

 

「ねぇ、アクセル。不老になったというのは本当なのかしら?」

「それは間違い無いと思う」

「思う?」

「何しろ、混沌精霊なんて種族は俺くらいしかいないからな。普通の精霊は雷とか炎とか一種類を司るらしいし」

「じゃあなんで自分が不老になったって言い切れるの?」

「それに関しては俺が混沌精霊になったからとしか言えないな。ある程度の練習は必要になるにしろ鳥は誰に教えられる事も無く飛べるし、モグラも生まれた時から自分の爪で土を掘れると知っているだろう? そういう本能的な部分で俺は俺自身が不老だと理解している訳だ」

 

 その説明に納得したのか、小さく頷くレモン。だが、次の瞬間には俺の頬を撫でていた手が急に抓ってくる。

 

「……痛いんだが」

「そうね。痛くしてるんだから当然よ。でも私達の心の中はもっと痛いのよ」

「全くだ。特にゲートを設置していないと転移した場所とこのホワイトスターでは時差があるのはアクセルも知ってるだろう」

「そして私達が、いつアクセルが戻って来るのかを心配しているというのに……」

 

 レモンに続いてそう告げてきたコーネリアとマリュー。特にマリューが言いたかった言葉の続きは俺にも理解出来た。

 例えば俺がどこかの世界に行って、ゲートを設置してホワイトスターに戻ってきたら実はホワイトスター内では30年経ってましたとかになったら……と言いたいのだろう。

 俺もその辺は予想してこのマジックアイテムを入手しておいた訳だが。

 脳裏に空間倉庫のリストを展開し、時の指輪を取り出してレモンへと見せる。

 

「……何、その指輪は」

 

 頬を抓っていた手を離してそう尋ねてくるレモン。

 

「時の指輪、というマジックアイテムだ。これを嵌めたその瞬間から不老になるという効果を持つ」

「……1つだけ?」

 

 嬉しそうにしながらもコーネリアとマリューを気にして尋ねてくるレモン。

 

「いや、この他にも19個ある。ただしこのマジックアイテムを起動させるには莫大な魔力が必要でな。俺の殆どの魔力を使ってようやく1個起動出来るという代物だから、今手元にあるのは起動出来るかどうかを試したこの1個だけだ」

「なるほど。じゃあ早速後2つも起動させなさい」

 

 凍り付くような微笑を浮かべながらそう命じてくるレモンの迫力に頷きそうになりつつも、先程使った『火よ灯れ』の件を思い出す。

 本来SP的には1を消費するかどうかという初心者用の簡単な魔法でさえSPを40近く消費したのだ。それが魔法だけならともかく、もし魔力を込めるという作業にも影響するようなら……

 

「ちょっと今は無理だな」

「……なんですって?」

 

 凍れる微笑をさらに強めるレモンへと、魔法に使われる消費魔力とマジックアイテムを起動させるのに必要な魔力の件を説明する。

 

「なるほど、確かに世界が違うとそういう事もあるかもしれないわね。そもそもここは世界と世界の間にある次元の狭間なんだし。……分かったわ。でも、近い内に麻帆良に行って残り2個の時の指輪も起動させてきて頂戴。私の分もその時に2人と一緒で構わないわ」

「ああ、一度魔力を使ったら回復するのに結構な時間が掛かるけど2個程度ならどうとでもなるだろう。……しかし、そうなると他のマジックアイテムも使えるかどうか」

 

 呟きつつ、魔法球や転移札といった物を取り出していく。

 

「何かしら、それ」

 

 空間倉庫のリストを探して魔法発動体やら魔法の教本を取り出している俺に変わってあやかが説明を開始する。

 

「それはダイオラマ魔法球というマジックアイテムですわ。今はその魔法球の中には見ての通り小屋が1つ程度しかありませんが、外の空間からその場所を切り取るようにして入れ替える事が出来ますので普通は森や湖等を中に入れて使っているようです。例えば麻帆良でアクセル君と仲のいい、私達の魔法の師匠でもあるエヴァンジェリンさんという方は中世のお城や森、雪山、砂漠等々色々な物が入ってる魔法球を所持しております。そして特筆すべきは中と外では時差があり、例えばこの魔法球であれば外での1時間が最大48時間に変更可能となっております」

「なんて非科学的な……あぁ、そうね。魔法ですものね。エヴァンジェリンというのは、確かあの金髪のお嬢ちゃんよね。にしても……」

 

 チラリ、とどこか面白そうな顔であやか、千鶴、円、美砂の4人へと視線を向けるレモン。

 

「な、何ですの?」

「アクセルを君付けで呼ぶような人は初めて見たからつい……ね」

 

 微笑を浮かべるレモン。そしてそれはコーネリアやマリューも同様だった。

 

「何しろ私達の世界に来た時はどういう理由かは知りませんが、アクセル君は10歳程度の子供の姿になっていましたから」

 

 あやかに代わって千鶴がそう答える。

 

「10歳にねぇ……」

 

 レモン達3人の視線が俺に集中しているのを感じ、小さく溜息を吐いてから少し離れた所に移動して指をパチンと鳴らす。すると俺の全身が炎に包まれ、次の瞬間には10歳程のあやか達にも馴染み深い姿へと変わっていた。

 

「へぇ、確かにこのサイズのアクセルは可愛いじゃないの。ほら、ちょっとこっちにきて抱かせなさい」

 

 さすがに今回の件では3人に酷く心配を掛けていたと理解しているのでこの程度の頼みは断る訳にも行かず、そのままレモンの膝の上に持ち上げられる。

 

「この年代だからこそ女子寮に入り込んでたのね」

 

 フニフニと頬を軽く抓りながら告げてくるレモンの言葉に、思わず固まる。

 ……近右衛門、女子中に放り込んだだけじゃなくて女子寮の事もバラしたのか……

 いやまぁ、マーカーを頼りに麻帆良に転移したのなら自然とそのマーカーがある場所。即ちあやか達の部屋に辿り着いていただろうから早いか遅いかの違いでしかないんだが。

 

「あ、あのっ! アクセル君が私達の部屋に住むようになったのは私が強く学園長先生に言い張ったからですわ!」

「……ま、そういう事にしておきましょうか。良かったわね、彼女がいてくれて」

「レモン、私にもアクセルを貸してくれないか」

「あ、コーネリアずるい。私にもお願い」

 

 コーネリアとマリューの取り合いで3人の膝の上を行ったり来たりさせられる。

 そして最終的には幼児化を解除していつもの20代の姿に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「さて、ちょっと真面目な話をしましょうか。アクセル、この世界の火星をテラフォーミングするんですって?」

「成り行きでな。それで……」

 

 チラ、とあやかと千鶴の2人へと視線を向ける。

 

「あやか、千鶴。俺達が表舞台に出るのが良くないというのは分かるな?」

 

 その言葉に2人が頷く。何しろ科学技術だけで言えばこの世界とは数百年単位で隔絶してるのだ。そんな俺達が表舞台に出たりしたら、それこそ見苦しい権力闘争に巻き込まれたり、あるいは少しでも利権のおこぼれを貰おうと擦り寄ってくる輩が大量に湧いて出るというのは、家が財閥やら大会社の娘としてこれまで生活してきた以上は想像が付くのだろう。

 

「そこでだ。俺達のこの世界での表向きの顔として雪広財閥と那波重工の名前を借りたい。もちろん、それだけだとそっちに対して利益が多くないからある程度の技術は提供させて貰うつもりだ。……レモン、確かストライクダガーがかなりの数余っていた筈だな?」

「え? ええ。連合軍から鹵獲した奴でしょう? 一応オーブのゲートからホワイトスターに運び込んで今は使っていない区画に纏めて置いてある筈よ」

「あやか、千鶴。お前達2人はエヴァの魔法で俺の記憶を追体験した以上はストライクダガーという機体の事も覚えていると思うが」

「ええ。レモンさんも仰っていた連合軍……と言うか、大西洋連邦が開発したMSですわよね」

「でもアクセル君達には手も足も出なかったんじゃないかしら」

 

 俺の記憶で見た感想を言う2人に、今度はレモンが眉を顰める。

 

「ちょっと、アクセル。貴男、一体何を……」

「あー、その件は詳しくは後でだな。端的に言えば人の記憶を追体験出来る魔法ってのがあって、それを使ってここにいる4人やその他諸々が俺の記憶を追体験したんだ」

「……あぁ、だからか」

 

 俺の話を聞いていたコーネリアが納得がいったとでもいうように頷く。

 

「コーネリア?」

「レモン、それにマリュー。思い出せ。その4人が私達と初めて会った時にどこか納得した表情をしていたのを覚えてないか? その原因がその記憶を追体験出来るという魔法なのだろう。違うか?」

 

 そんなコーネリアの言葉に、あやか達4人全員が頷く。

 

「ええ。コーネリアさんの仰る通り、私達はアクセル君の記憶を追体験した事によって貴方達の存在を知っていました」

「……それでもアクセルに関する気持ちは変わらなかったと?」

「そうですわね。それこそ、もうレモンさん、コーネリアさん、マリューさんがいると知っても私の……」

 

 そこまで言い、チラリと千鶴、円、美砂の3人へと視線を向けるあやか。

 

「いえ、私達のアクセル君への想いはその程度で諦められる程に軽いものではなくなっていましたから。……それに」

「それに?」

 

 話の続きを促すコーネリアに、頬を赤く染めながら言葉を続けるあやか。

 

「その、いわゆるハーレム状態なら私達が入る事も出来るかもしれないという打算もありましたしね」

「はいはい、その話は終わったでしょう。あやか達4人は18歳になっても、まだアクセルを想い続けているのなら私達の仲間に引き入れるって。話がずれてるわよ。それでアクセル、ストライクダガーをあやかと千鶴の2人の会社に譲渡するって事でいいの?」

 

 自分達に準ずる存在と認識したのか、あやか、千鶴と2人を呼び捨てにしているレモンの言葉に頷く。

 

「ああ。俺達にしてみれば問題にもならない程度の機体だが、あやか達の世界でなら十分に他の企業や国よりも技術的なアドバンテージを取る事が出来るだろう。……ただし、一応やり過ぎも良くないから武器の類は全部外しての譲渡を考えているけどな。頭部のバルカンは外しようがないからそのままにするが。それに残っているストライクダガーに関しても、量産型Wに使わせてテラフォーミングの作業にメギロート共々採用するつもりだ。……何しろ数だけは余ってるしな」

「うーん……武器無しの機体だけなら私は構わないと思うわ。どうせ私達が持っていたとしても試作兵器の的くらいにしか使いようがないんだし。でも、メギロートをテラフォーミング用に使うのはちょっと危険じゃない? ストライクダガーに比べるとシャドウミラーの主力なだけに鹵獲とかされる可能性を考えると……」

 

 悩ましげに悩むレモンだったが、そこで円が口を開く。

 

「レモンさん、でも実際にメギロートがテラフォーミングをするのは火星なんですから鹵獲とかを考える必要はあまり無いと思いますよ?」

「そう言えばこの世界は魔法の為か科学力があまり発展してないのよね。それなら確かに心配はいらないかもしれないけど」

 

 納得したように頷くレモンだが、別に魔法があるから科学が発展しなかった訳じゃないんだがな。……まぁ、まだ数時間しかあの世界に滞在してないというのならそういう認識でもしょうがないか。

 

「そもそも幾ら雪広財閥と那波重工が大きくても、自分達だけで火星を開発します、何て言っても普通は笑われるだけだと思うけどね」

 

 美砂の言葉にあやかと千鶴が頷く。

 

「そうですわね。テラフォーミングをするにしたらどこかもっと大きい枠組みが必要だと思いますわ」

「その辺はこの世界に詳しい奴に任せるしかないが。今の条件で両親……というよりも財閥とか会社を実際に運営している者達を説得出来そうか?」

「確実に、とは言えませんが私の方は多分大丈夫かと。両親ともに機を見るに敏ですので、これ程の機会を見逃す事はないと思います。ただ、私はあくまでも雪広財閥の三女であり、決定権がある訳でもありませんので……出来れば一度関係者を集めて話を通した方がいいと思いますわ」

「そうね、私も那波重工の一人娘とは言っても所詮は中学生。話を持ちかけるくらいは出来るでしょうけど、あやかの言ってる通りに関係者を集めて説明するというのには賛成よ」

 

 関係者、ねぇ。魔法使い側からは近右衛門、ネギ、フェイト。表の世界からは雪広財閥、那波重工関係者。そしてシャドウミラーからは……

 

「レモン、うちから折衝を出すとしたら誰がいいと思う? まさか量産型Wを出す訳にも行かないだろうし……」

「それはそれで面白そうな事になりそうな気がするけどね」

 

 顔を機械で出来たヘルメットで覆われた量産型Wが折衝役になったとしたら向こうが混乱するだろうに。

 

「選択肢は1つしかないでしょ。私やマリューはアクセルの新機体の開発で忙しいし……あぁ、アクセル。後で新機体に関して意見を頂戴。コーネリアは折衝とかには向いてないだろうし。エキドナは今現在でも色々と動いて貰ってるからこれ以上はちょっと無理。ムウはシャドウミラーの実働部隊の隊長として外す訳にもいかないし、かと言ってイザークはコーネリア同様折衝や交渉には向いてないでしょうしね。レイは現在遺伝子の治療中で培養ポットの中だからもう暫くは目が覚めない。となると残ってるのはエザリアくらいでしょ」

「……だな。じゃあ明日にでもエザリアに話を通しておいてくれ。にしても部隊特性上仕方ないとは言っても、殆どが戦闘要員に技術者ってのはなぁ。もう少し文官の類はいた方がいいんだろうが……」

「ま、その辺は後で考えましょ。それよりもそろそろ遅くなってきたし、4人とも帰った方が良くないかしら」

 

 確かに時計を見ると、既に時刻はPM11時を過ぎている。ゲートを設置した以上は麻帆良との時差は無いので、幾ら女子寮に門限がないとは言っても明日からは2学期が始まるのだからそろそろ休んだ方がいい。何しろ今日1日はオスティアの舞踏会からこっち、色々な事がありすぎた。

 

「そうですわね。私達としても整理したい事がありますし。……アクセル君、明日は?」

「残念だが学校は欠席だ。と言うか、ホワイトスターと繋がった以上はもう行く必要が無いんだが……まぁ、それでも近右衛門との話し合いとかがあるから明日には顔を出すよ」

「そうですか……残念ですがしょうがないですわね」

 

 こうして、あやか達はレモンによって呼ばれた量産型Wに転移区画まで送られて行ったのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:120
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:411

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