転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0482話

 Eフィールドをシシオウブレードにより斬り裂かれて装甲へとダメージを受けているクロガネが去り、その姿が見えなくなった。同時にレーダーの索敵可能範囲からも反応が消えたのを確認してから改めてDC残党部隊をモニタで確認する。

 そこに映し出されているのは、既に残り3機まで減ったリオンタイプVの姿。それ以外の機体は全てがクロガネの部隊に撃破されていた。

 当然コックピットの撃破を免れたおかげでまだ生きている者もいるだろうが、逆にコックピットを貫通されて死んでいる者も多数いるだろう。最初にクロガネへと向けて先制攻撃を仕掛けた部隊で生き残ったのは、例のリーダー格の乗っているリオンタイプVが1機のみだ。残り2機のリオンタイプVはムラタと共に潜んでいた機体であるのを思えば、どれ程の被害が出たかは容易に想像がつくだろう。

 

「……悪いが、俺はムラタと話がある。生き残りの救助に関してはそっちに任せてもいいか?」

 

 リーダー格のリオンタイプVへと通信を送ると、通信モニタに沈んだ顔をした男が映し出される。

 

「ああ。……こっちは俺達に任せてくれて構わない。そっちはそっちで好きにやってくれ」

 

 どこか投げやりに呟かれたその言葉に、思わず溜息を吐く。

 まぁ、この男にしてみれば長年の部下……否、仲間を一瞬にして失ってしまったのだから無理もないと言うべきか。ましてや、その理由が最大戦力でもあるムラタが作戦通りに動かなかった為ともなれば無念さも理解出来ないでもない。

 

「……行くぞ、付いて来い」

「ふん」

 

 ミロンガのテスラ・ドライブを使い空中へと浮かび上がる。同時に、ムラタの無明もまた同様に空中に浮かび上がった。クロガネとの戦闘があった場所から離れつつ、ムラタへと通信を送る。

 

「ここで戦闘が起こったことは連邦軍に察知された可能性もある」

「だからどうした? 向かって来る者は皆斬り捨ててやればいい」

 

 不敵な笑みを口に浮かべ、その目には我慢しきれないとばかりに闘志を滾らせているムラタに溜息を吐く。

 

「俺との戦いの途中で邪魔が入っても構わないと? それとも、何か? まともに俺とやり合っては勝ち目が無いから連邦軍に乱入して貰って有耶無耶にしたいとでも言うのか?」

「ふざけるな。誰がそんな事を望むか。貴様とはきちんと勝負をつけなければ気が済まんからな」

 

 侮辱されたと思ったのだろう。目の光に闘志だけではなく殺意と怒気が滲む。

 

「なら分かるだろう。邪魔の入らない所でお前の気が済むまで戦ってやるよ。生身だろうと機体を使った戦いだろうと……お前は俺には勝てないと、その身にこれ以上ない程に染みこませてやる」

 

 この男、腕自体は凄腕と言ってもいいのだ。この世界の出身故にネギま世界の者達に比べると生身の戦いに関しては特に見るべき所は無い。だが本人が言っているように、ことPTやAMのような人型機動兵器のパイロットとしてはこの世界でも上位に位置する腕を持っているだろう。だが、今回のように己の闘争本能に忠実すぎるのが問題な訳だが……その分しっかりと上下関係を教えてやれば、この上なく使える駒にはなる。

 

「さて、そろそろいいだろう」

「ようやくか、待ちくたびれたぞ」

 

 クロガネとの戦いのあった場所から10分程。時間を聞けばそれ程離れているようには思えないが、テスラ・ドライブを使っての10分だ。ここで戦闘が起きたとしても、そうそう連邦軍に嗅ぎつけられる心配はまず無い。

 周囲に広がっているのは一面の荒野であり、地理的に考えればシシオウブレードを使うガーリオンにとって有利だろう。だがその状態で勝ってこそ、どちらが上の存在かをその身に思い知らせる事が出来るのだ。

 地面へと着地し、200m程の距離を空けてお互いに向かい合う。

 

「昨日のお前が本気でなかったと言うのなら……今回の戦いではそんな言い訳が出来ないように本気を出して見せろ」

「言われるまでもない。……行くぞぉっ!」

 

 通常のガーリオン・カスタムに比べ、両肩に増設された大型ブースターを全開にしながら急速に間合いを縮めてくる無明。その手には既に左の腰からシシオウブレードが抜き放たれており、近付いてくる間にも俺に少しでも隙を作ろうと言うのか、その胸からマシンキャノンを放っている。

 

「集中」

 

 精神コマンドの集中を使い、ミロンガのスラスターを細かく制御しつつマシンキャノンの弾丸を回避し、同時にシシオウブレードを振りかぶりながらこちらに近付いてくる無明を待ち受ける。

 

「獅子王の牙を受けてみよ!」

 

 まさに咆吼ともいえる声を上げ、気合いを込めて振り下ろされるシシオウブレード。

 確かにその一撃は素早く、鋭い。クロガネの装甲をEフィールド諸共に斬り裂いたのも納得の一撃だろう。だが……

 

「その程度か?」

 

 大きさで言えばガーリオンよりも若干大きいミロンガ。そのミロンガを唐竹割りにせんとばかりに一直線に振り下ろされたシシオウブレードを、スラスターを噴射させて回避しつつ無明の右隣を通り過ぎながら通信を入れる。

 

「上手く避けろよ?」

 

 通信の後にスラスターの右側を停止させ、左側だけを全開にしてそのままクルリとばかりに急激な方向転換。普通の人間であれば本来は耐えられないGを感じつつも、口元に笑みすら浮かべながら急激な方向転換故にバランスを崩そうとしているミロンガの各所に設置された姿勢制御用のスラスターを小刻みに噴射して体勢を整える。コンマ数秒で崩れそうだった体勢を整えたミロンガ。数秒前と比べると無明とミロンガの位置がそっくりそのまま入れ替わり、目の前のモニタに表示されているのはシシオウブレードを振り下ろして無防備に背中を晒す無明の姿だった。

 そしてその無防備な背へと向かい、ミロンガのバインダー内からマイクロ・ミサイルを発射する。

 

「ぐぅおっ!」

 

 無数の小型ミサイルが無明の無防備な背中へと命中する寸前、ムラタの呻き声と共にその肩に増設された大型ブースターを全開にしてこちらとの距離を取るムラタ。同時に、ブースターが噴射した影響で巻き上がった石や土といったものにマイクロ・ミサイルが反応して誘爆を巻き起こす。

 

「ほう、なかなかやるな。てっきり今のやり取りで勝負が付くと思ってたんだが」

 

 ミロンガ特有の運動性でマイクロ・ミサイルの爆発から距離を取り、感心したように通信を送る。

 

「この程度でやれるとでも思っているのか!」

 

 再びの咆吼。だがその咆吼と共に放たれたのは無明らしいシシオウブレードの一撃……ではなく、左手に握られたバースト・レールガンの一撃だった。

 

「元々近接戦闘に特化したお前の、そんな攻撃が今更俺に通じるとでも思っているのか?」

 

 無明から放たれた弾丸を、スラスターを噴射させつつ大きく飛び退いて回避する。だがそれがムラタの狙いだったのだろう。

 

「はああああぁぁぁぁぁあっっっっ!」

 

 雄叫びと共に肩の大型ブースターを全開にしてミロンガとの距離を縮めてくる無明。その右手にはシシオウブレードが握られており、同時に左手には小太刀の姿が。

 なるほど、同じような攻撃は仕掛けてこないか。

 雄叫びと共に振り下ろされたシシオウブレード。その一撃を回避したその瞬間、左手に握られていた小太刀が勢いよく突き出される。確かに小太刀は太刀であるシシオウブレードよりも取り回しがしやすく、重量が少ない分一撃の速度も上だろう。だが……

 

「加速、集中」

 

 再度精神コマンドを使用。加速と集中の2つを使用したミロンガにとっては、小太刀の速度もシシオウブレードの速度もそう大差ない速度でしかない。

 

「ぐぅっ、おのれぇぇぇっっ!」

 

 突き、突き、突き、突き、突き。

 連続して放たれたその突きの全てを小刻みに噴射したスラスターで回避し続け、こちらの体勢が崩れた瞬間を逃さないように横薙ぎに払われるシシオウブレードの一撃。だがその一撃もまた、ミロンガを沈み込ませてトサカのような部品の上を通り過ぎる。

 

「どうした、人機斬りとしての腕はどうとか言っていたがその程度か?」

 

 挑発しつつも内心では感嘆する。確かにムラタは自分で言っていたように、その戦闘スタイルは生身で戦うよりもAMやPTに乗っての戦いに最適化されているのだろう。縦横無尽に振るわれるシシオウブレードと小太刀の連続攻撃は言うだけの事はあった。

 だが……

 横薙ぎ、突き、袈裟懸け、逆袈裟。ミロンガの脚部を狙った一撃、腕を切断しようと振り下ろされた一撃、そこから斬り上げの一撃。

 その全てを俺はその場から殆ど動かずに最低限の動きで回避する。

 回避、回避、回避。剣撃の嵐とでも言うような攻撃を、ただひたすら回避し続ける。そうしてからどのくらいの時間が経っただろうか。5分? 10分? いや、最低でも30分は経っているだろう。

 

「があああぁぁぁぁっっ!」

 

 渾身の一撃とでも言うようなシシオウブレードの振り下ろし。確かにまともに当たればミロンガも唐竹割になってしまうだろうその一撃だったが、ミロンガのスラスターを制御して機体をその場でクルリと1回転する事により回避する。

 そして回転しながら大地へと突き刺さったシシオウブレードをモニタで一瞬確認し、武器ラックからストレイト・マシンガンを取り出しながら回転の勢いを利用して銃口を無明のコックピットへと突きつける。

 

「ぐっ……」

 

 その光景を見て、呻くようなムラタの声。

 

「……どうした? もう終わりか?」

「まだ……まだだぁっ!」

 

 ふむ、折れるまではもう少しか。いいだろう、存分に付き合ってやるとしよう。

 武器ラックにストレイト・マシンガンを戻して無明を待ち受ける。

 そこから再度始まったのは先程と同様の……否、それ以上の速度で放たれる斬撃の嵐だ。シシオウブレードと小太刀。その2本を使って執拗にミロンガへと攻撃を放ってくる無明だが、その先で行われているのは先程までの焼き直しでしかなかった。あらゆる箇所から狙いを定めて振られるその2刀。その全てを俺は細かいスラスター調整と機体制御、そして幾度か使い直した精神コマンドで回避し続けたのだ。

 だがこのままでは折れるのにまだ掛かるか。そうなると少しムラタに与える精神的なダメージを上げるとしよう。

 そう判断し、再度武器ラックからストレイト・マシンガンを取り出す。

 振り下ろされたシシオウブレードを回避して、銃口をコックピットへ。

 横薙ぎにされた一閃をギリギリの見切りで後方へと下がって回避して、刀身が目の前を通り過ぎた直後に前へと機体を動かして、銃口をコックピットへ。

 袈裟懸けに振り下ろされた一撃を機体を半回転させて回避し、銃口をコックピットへ。

 逆袈裟に振り下ろされた一撃を先の一撃と同様に半回転して回避し、銃口をコックピットへ。

 小太刀による連続突きは回避する度に銃口をコックピットへと突きつける。

 そんな、ムラタにとっては絶望しか感じられないだろう行為を続ける事20分程。

 

「があああぁぁぁぁぁっっっ!」

 

 力の限りを尽くした雄叫びと共に振るわれたシシオウブレードの一撃をギリギリの見切りで回避して、再びコックピットへと銃口を突きつける。

 その状態のまま動きを止める無明。そして次の瞬間……

 ガランッ、と音を立ててシシオウブレードが地面へと放り出される。

 

「どうした? もう終わりか?」

 

 自らの魂の象徴とも言えるシシオウブレードを地面へと放り出したムラタへと通信を送る。

 

「……好きにしろ」

「ん? どうしたって?」

「俺を好きにしろと言っている。お前のような若造に、文字通りに手も足も出ないままに翻弄されて……俺のこれまでの人生は……修羅道は……一体何だったんだ」

 

 数時間前までは闘志に満ちあふれていたムラタとは思えない程に力の抜けた声。そしてそのまま無明のコックピットから乗降ワイヤーを使って地面へと降り立……たずに、地面へとそのまま腰を下ろす。

 身体から力は抜け、闘気も覇気も。そして生気すらも感じられない程に脱力している。

 ……ちょっとやり過ぎたか? そうも思うが、闘争本能の塊であるムラタの心を折る為にはここまでやって丁度よかったんだろう。

 そんな風に思いつつ、ムラタの後を追うように俺もまたミロンガのコックピットから乗降ワイヤーを使って地面へと降りる。

 

「……俺は、弱いのか?」

 

 ポツリ、と呟かれたその言葉。声には力無く、例えるのなら迷子の子供のような不安に満ちた呟きだ。

 

「そうだな。少なくても俺にしてみれば弱かったな」

「何故だ……何故お前はそこまで強い? どうやってその強さを手に入れた?」

「さてな。だが、少なくても人機斬りなんて真似をして強くなった訳じゃないのは事実だ」

 

 元々生まれ持ったアクセルとしての能力もある。転生特典で得た能力もある。努力して鍛え上げた能力もある。その全てが結びついているのが今の俺なのだ。

 

「……強くなりたいか?」

 

 その一言はただひたすらに強さを求め、その為に師を裏切り、人を斬り、機体を斬り続けてきたムラタにとっては甘い……そう、甘すぎる一言だっただろう。倒れていた状態から上半身だけを起こして口を開く。

 

「俺もお前みたいに……強く、なれると言うのか?」

「さて、どうだろうな。だが、俺の今の強さは俺自身が今まで歩んできた結果身に付いたものだ。お前が俺に従って、俺の下で共に歩むと言うのなら……もしかしたら俺と同じような強さが手に入る可能性はあるかもしれない」

 

 そう告げたその時、一瞬前まで完全に力を失っていたムラタの瞳に徐々にだが力が戻って来る。

 

「お前と共に行けば……俺はより強くなれる可能性がある、と?」

「それはお前次第だ。だが……俺と共に来るというのなら、金輪際二度と勝手な真似は許さん。もし俺の意志に反するような行動をした場合は……」

 

 目に力が戻り始めているムラタの、その鍛え上げられた四肢の筋肉へと視線を向ける。同時に地面へと落ちていた拳大の石を掴み上げ……次の瞬間にはムラタに見えるようにして握り砕く。

 

「お前の存在意義とも言える力の全てを奪い取り、四肢を引き千切って放逐する。そこまでの覚悟を持って俺に従うか?」

「…………」

 

 迷ったのは数秒。だがやがて小さく、しかし力強く頷く。

 

「ああ。俺はこれからお前……いや、ムウ。あんたの力に従おう」

 

 頷き、まるで侍……否、騎士が忠誠を誓うかのように俺の前に跪くムラタ。

 こうして、本来であれば人斬りの狂気に魅入られた筈の男を旗下へと加える事に成功したのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:125
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:412

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