転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0484話

「……始まった、か」

 

 ミロンガのモニタを使い、バルトールのTV中継が途切れたのを見て呟く。

 そう、晴海で開かれているバルトールの披露式典の中継が途切れた。つまりはバルトール事件がいよいよ始まったのだ。

 

「ムウ・ラ・フラガ、こちらは後20分程で行動を開始する。それに合わせるというのなら遅れないようにしろ」

 

 カイルの不機嫌そうな声で通信が入ってくる。

 まぁ、今回のテスラ研襲撃はバルトールに……否、ODEシステムにとっては大いなる進捗の1歩であると言ってもいいのに、その作戦の中で自分の自由にならない戦力が好き勝手に動いているのはやはり気に入らないんだろう。

 自分の元恋人を工作員として潜入させ、テスラ研の防衛機構を麻痺させ、敵味方識別機能付きのMAPWを持つヴァルシオーネにも細工を施し。本来であればテスラ研の頭脳は全てODEシステムの糧となる筈だったのだ。

 

「だが、その計画も破綻する」

 

 ミロンガのコックピットから乗降ワイヤーで降りながら呟く。

 そう。元恋人の裏切りとサイバスターという援軍によって。

 そしてそのサイバスターをこのテスラ研へと向かわせたのがシュウ・シラカワだ。正直、今のヴォルクルスに操られているシュウとは接触したくはないが……いずれ接触せざるを得なくなるような気がするんだよな。念動力の感じ的に。

 

『戦士の歌』

 

 無詠唱で魔法を使い、そのまま森の中を突っ切って行く。すると10分も走らないうちに森の中を抜け、目の前に現れたのは川だった。そしてその向こう側には研究所とは思えない程の規模と防壁を持った建物が、テスラ研が存在していた。

 

「……懐かしいな」

 

 俺の元々の世界では、レモンがアギュイエウスやリュケイオスの開発者として出向していた関係で幾度となく訪れた研究所だ。こちらの世界のテスラ研に来たのは初めてだが。

 川の近くにある木に隠れ、空間倉庫からレモン特製のバイザーを取り出してスイッチを入れる。するとやはりと言うべきか、研究所の裏側には赤外線を含めて侵入者探知用の仕掛けが大量に張り巡らされていた。

 確かにこの状態なら普通の軍人では研究所の中に侵入するのは不可能だろう。だが……

 

「俺のような存在を想定していないというのは甘かったな」

 

 影のゲートを足下に展開し、その身を沈めていく。

 幾ら赤外線やら監視カメラやらを張り巡らせていようと、影のゲートを使った侵入に対してはどうにもならないだろう。

 ……俺みたいなのを想定しろと言うのが無理なのか? いや、アインストや鋳人なんて存在がいる以上は……あぁ、鋳人に関してはOG外伝だからまだテスラ研を襲撃していないのか。

 影のゲートを潜り抜け、俺が姿を現した場所は既にテスラ研内部の通路だ。自販機の影へと身を隠し、脳裏にステータスを表示すると既に200近いSPを消耗している。幸いなのはSPブーストのおかげでSPが自然回復している事だが……SPの消耗具合を見る限りでは認識阻害は使わない方がいいな。いざという時に影のゲートを使用出来なくなったりしたら困るし。

 

「スライム」

 

 呟き空間倉庫からスライムを出し、数mm程度の細さにして通路の先を偵察させる。

 

「……防犯カメラは廊下の隅とその少し先の天井。それと通路の曲がり角にも1つ、か」

 

 さすがに研究員が歩き回る通路に赤外線やら何やらは設置していないらしい。となれば話は簡単だ。そのままスライムを糸のように伸ばしてコンピュータのある空き部屋を探し出す。……あった。

 5分程もスライムを操作しただろうか。人の声や体温が感じられないで、尚且つコンピュータの動作音がしている部屋を発見する。ただ問題もある。部屋の出入り口付近に防犯カメラが設置してあり、出入りする人物を録画しているのだ。

 いや、防犯カメラがあるだけで録画しているかどうかは不明だが、何しろテスラ研だ。その程度はしているだろう。

 

「となると……」

 

 カイルの襲撃を利用させて貰うか。

 そのままスライムを操作し、防犯カメラへとスライムを巻き付ける。そしてそのまま10分程待ち……やがて待っていたその瞬間がやってくる。

 遠くの方で聞こえた爆発音と共に微かにだが研究所が揺れたのだ。

 

「今だ!」

 

 その衝撃を感知した瞬間にスライムを操作。防犯カメラを破壊する。同時に俺の潜んでいる場所からその部屋に繋がっている防犯カメラも全てスライムを使って破壊する。本来であれば影のゲートで移動すればいいのだろうが、脱出時のSPを考えるとちょっと不安が残る為にこう言う手段を取らざるを得なかったのだ。

 こんな真似をすれば、恐らく防犯のレベルがより高くなるだろうが……まぁ、ここに現在お目当てのヒュッケバインMk-Ⅲがあったらそれをそのままゲットして、もうここには来ないだろうし。かと言って無ければミツコの情報にあったオルレアン研究所の方に出向くだけだ。

 通路に仕掛けられている防犯カメラの全てを破壊したのをスライムを使って確認。そのままスライムを空間倉庫へと収納してから自販機の裏から飛び出す。

 そのまま通路を走り抜け、1分も掛からずに目的の部屋へと到着する。

 既にその部屋の入り口は扉を含めてスライムによって大きく斬り裂かれており、同時にその出入り口へと向けられている防犯カメラもまた同様だ。

 そのまま部屋の中へと入り、念の為に誰もいないのを確認。起動しているコンピュータへと近付いていく。

 

「確か……あぁ、これだな」

 

 脳裏の空間倉庫から1枚のデータディスクを取り出して、コンピュータに読み込ませる。……懐かしいな。確か元々の世界でマフィアの事務所に侵入した時にもこれを使ってコンピュータを起動させたんだったか。

 そう思っている間に技術班謹製の……しかも以前使った時よりも数段、いや数十段程性能のアップしたハッキングプログラムが読み込まれ、起動パスワードやら何やらを省略してスリープ状態から復帰する。

 

「えーっと、現在テスラ研にある機体は……多いな」

 

 さすがテスラ研と言うべきか、あるいは研究者達の趣味もあるのか。今現在テスラ研にある機体の数と種類は膨大なものがある。

 となると……

 

「検索、ヒュッケバインMk-Ⅲ」

 

 数秒程コンピュータが内部の情報を検索し、モニタへと結果を表示する。

 

「……ちっ」

 

 その結果に思わず舌打ち1つ。

 何故ならそこに表示されていたのは検索結果が0だったからだ。

 いや、もちろん整備記録のようなものは何個かあったし、簡単ながら設計図の類もある。だがその設計図にしてもトロニウム・エンジンについてはブラックボックス化されているかのように黒く塗りつぶされており、俺の目的に使えるような物では無い。

 

「となると、ミツコの方の情報が正しかった訳か」

 

 目当ての物がテスラ研に存在しない以上は、既にここにいる意味は無い。後はムラタと合流して退くべきだな。

 

「骨折り損のくたびれもうけって奴か。……まぁ、しょうがない。テスラ研のデータを貰って行くか?」

 

 一瞬そう考えたが、そう言えば現在のテスラ研はカイルによって忍び込まされたセルシア・ファームの手によってウィルスに感染していた筈だ。迂闊にデータやらコンピュータの記憶装置を持っていくのは止めた方がいい、か。

 このデータを通してホワイトスターにある技術班のコンピュータがウィルスに感染したらどんな目に遭わされる事か。

 ……アステリオン関係のデータは若干惜しいが。

 アステリオンAXに関しては、フィリオとスレイに期待だな。

 そんな風に考えている間にもテスラ研の近くで戦闘は続いているらしく、幾度も爆発音が聞こえてくる。揺れの類も同様にだ。

 

「ま、長くここにいてムラタをサイバスターとぶつける訳にもいかないしな」

 

 脳裏にステータスを表示し、SPブーストの効果で現在SPがほぼ全快しているのを確認。影のゲートを作り出してその身を沈めていく。

 

 

 

 

 

 そして再び影のゲートを開き、姿を現したのはテスラ研の裏に流れている川の近くにある木の影だ。一応戦闘中という事もあり、テスラ研の警戒も厳しくなっているから侵入時のようにギリギリまで……とはいかないのが理由だな。出来ればミロンガのある位置まで影のゲートで転移したかったのだが、残念ながら残りSPを考えるとちょっと無理だった。

 とは言っても、影のゲートのような大規模魔法を使わないのなら問題無い程度のSPは残っているので『戦士の歌』を使って身体能力を強化。ミロンガを隠してある森の中へと向かって走り出す。

 そうしている間にも背後のテスラ研では幾度となく爆発音が繰り返し聞こえてきているが……時間的に考えて、リューネのヴァルシオーネRがサイコブラスターを使えない状態って頃か?

 いや、あるいは既にリシュウがグルンガスト零式で出ている可能性もあるか。となると、ムラタが闘争心を暴走させないかどうかが不安だな。

 

「っと、見えた」

 

 考え事をしつつも森の中で木々を避けながら走っていた俺の視界に、見覚えのある機体が視界に入ってくる。まるでガンダムSEEDのシグーを黒くしたようなその機体。俺の現在の乗機であるミロンガだ。

 そのまま混沌精霊としての力で空を飛び、コックピットへと収まってミロンガを起動させる。テスラ・ドライブにより空中へと浮遊してテスラ研の前、激しい戦場になっている場所へと向かう。

 そこで見たのは……

 

「ほう、なかなかやるな」

 

 リシュウが操っているであろうグルンガスト零式。その機体が振るう斬艦刀を、ガーリオンの持つシシオウブレードは尽く弾き返していたのだ。

 そう。無明の倍以上の大きさを誇るグルンガスト零式が振るう斬艦刀を、だ。

 斬艦刀の大きさだけでも優に無明を越えている。その大きさを持つ斬艦刀を、無明はシシオウブレードを使い互角に渡り合っている。

 

「リシュウが相手という事で暴走するかとも思ったが……」

 

 一度ムラタの根幹でもある強さというものをへし折ったおかげか、闘争心に流されずに冷静にシシオウブレードで斬艦刀を防いでいる。

 しかも、驚くべき事にムラタが斬艦刀をいなしているのは俺がムラタに対して使った技術も幾つか織り交ぜられていた。

 

「……っと、このまま見ててもいいんだがそのうちサイバスターがやってくるか」

 

 呟き、ミロンガを戦場へと突っ込ませる。

 新たな敵機である俺に気が付いたのか、ヴァルシオーネが俺へと向かって銃口を向け、ハイパー・ビームキャノンを放つ。

 

「甘いな」

 

 ひょいっとばかりにそれを回避しつつ、そのまま戦場との距離を詰める。

 そしてアステリオンAXからもまた、マイクロミサイルがこれでもかとばかりに絨毯爆撃のようにして放たれた。

 

「集中」

 

 一応念の為に精神コマンドの集中を使用し、バレルロール回転を行いつつビームソードを抜き放ち、通り抜け様にマイクロミサイルへと斬撃を放っていく。

 そしてミサイルの雨とでも表現出来るような空間を無傷でミロンガが抜けた後には、マイクロミサイルの爆発光が俺の周囲で激しく咲いていた。

 

「な、何アレ!?」

 

 驚きの為だろう。オープンチャンネルで唖然とするアイビスの声が聞こえて来る。

 精神コマンドの集中の効果により、マイクロミサイル程度は殆ど止まって見えるのだ。それを斬り裂くのはそれ程難しくはない。

 オープンチャンネルで何かを言ってやりたい所ではあるが、俺の正体が知られるのはまだ早い。今知られると色々と面倒な事になりそうだしな。……ケネス・ギャレットとか。

 そのまま無明と斬り合っているグルンガスト零式へと向けてストレイト・マシンガンを放ち牽制する。とは言っても、運動性や機動性重視のミロンガは武器の威力自体は大した事がないので、堅牢な装甲を持っているグルンガスト零式には殆どダメージを与えられない為に顔面へと目掛けてストレイト・マシンガンの弾を集中させる。もちろん背後からミサイルやらビームやらを放ってきているヴァルシオーネとアステリオンAXの攻撃をバーニアを使って小刻みに回避しながらだ。

 

「そんなっ、トライアルで戦った時よりもさらに動きが鋭くなってる!?」

 

 ミロンガと戦った経験のあるアイビスの悲鳴のような声を聞きつつも、ミロンガとしての特性である運動性能を存分に発揮して空中を舞い踊りながらストレイト・マシンガンの弾丸をグルンガスト零式の頭部へと集中させる。

 

「くそっ、リシュウ先生ばっかり狙って。あたしたちは相手にする価値もないってのかいっ! 答えなよ!」

 

 リューネの悔しげな声がオープンチャンネルで響き渡るが、俺はそれに応えずに邪魔だとばかりにマイクロ・ミサイルとTBGミサイルを背後へとバラ撒き、さらにグルンガスト零式の頭部へとストレイト・マシンガンを撃ち込む。

 幾らミロンガの持っている武器の威力が低いとは言ってもこうも連続で、尚且つ同一箇所へと攻撃を集中すればさすがに効果はあったらしく……やがてグルンガスト零式の頭部にある目の部分が破壊され、頭部から黒煙が上がる。

 

「……ムウ・ラ・フラガ。さすがと言うべきだな」

 

 まるでタイミングを計っていたかのように――いや、実際に計っていたのだろうが――送られて来た通信。同時にテスラ研の北部に複数のミロンガ部隊が姿を現す。

 

「やけに遅い登場だな」

 

 既にムラタと共に出撃したリオンタイプVやミロンガは全機が撃墜されている。今のムラタの腕なら3機を相手にしても一方的にやられるような事はなかっただろうが、それでも捨て石的な扱いをされるのはいい気分がしない。

 

「こちらにも色々と都合があってな」

「そうか。だが、その都合とやらも片付いたらしいな。なら俺とムラタはここで引かせて貰うが、構わないな?」

「……ふんっ、好きにしろ」

 

 吐き捨てるように呟いたその言葉に、カイルの狙いを薄々察する。恐らくはムラタも……そして、あるいは俺も含めてODEシステムの糧としたかったのだろう。もちろんそれに関してはテスラ研のメンバーは優先で、俺達に関してはあわよくばといった所だろうが。

 

「聞いていたな、ムラタ」

「ああ。退くのだな」

「そうだ。俺の用事も済んだし、約束通りにある程度は敵の相手もした。ならこれ以上ここに用事はないだろう」

「承知した」

 

 ムラタの乗る無明がテスラ・ドライブで空を飛んで俺のミロンガの隣へと移動し、それと入れ替わるようにカイル率いるミロンガ部隊がヴァルシオーネ、アステリオンAX、グルンガスト零式へと襲い掛かる。

 

「ムラタ、待て! 待たんか!」

 

 リシュウの声がオープンチャンネルで響き渡る中、俺とムラタは共にテスラ研で行われている戦闘から離脱するのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:125
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:412

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