転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0487話

 ホワイトスター。その言葉を聞いたムラタは数秒程何かを思い出すように考え……やがて、その単語が何を意味しているのか分かったのだろう。目を大きく見開き、その厳つい髭面に驚愕の視線を浮かべて俺へと向けてくる。

 

「ホワイトスター……だと?」

 

 掠れるようなその声に、小さく頷く。

 

「そうだ。L5戦役の時にエアロゲイターの本拠地として使われた衛星基地だ」

「その衛星基地が何故シャドウミラーの……っ!? もしやお前達シャドウミラーはエアロゲイターの手の者か!?」

「……」

 

 その発想は無かった。確かに俺達がホワイトスターを本拠地としている以上はそう判断されても仕方ないのか。だが、DC系列の組織に所属していた以上は俺がL5戦役中に現れたインビジブルマンだと知ってても良さそうなんだが……いや、戦いだけを求めるムラタの事だ。その辺の情報には疎くてもしょうがないか。

 こちらをじっと見つめてくるムラタに、小さく首を振る。

 

「俺は歴とした地球人だよ」

 

 ……混沌精霊へと進化した今は、かつては地球人だったと言うのが正確なんだろうが。

 

「では、何故ホワイトスターを?」

「インビジブルマン。ロレンツォに協力をしていたのなら、このコードネームを聞いた事がないか?」

「インビジブルマン? ……確か以前ロレンツォが何か言ってたような気もするが」

「だろうと思ったよ。お前も戦闘以外に興味を持て。インビジブルマン。正確には俺の機体のグロウセイヴァーがASRSを使った為に連邦軍からそういうコードネームがつけられたんだ。そして……」

 

 ムラタの方へと歩を進め……額から汗を滲ませているムラタの隣を通り過ぎ、無明の脚部へと触れる。

 

「収納」

 

 その一言が呟かれた次の瞬間、無明の姿は今までそこにあったのが嘘のように消え失せ、俺の空間倉庫の中へと収納されていた。

 

「なっ!?」

 

 驚くムラタの前で、今度はソルプレッサへと手を触れて再度呟く。

 

「収納」

 

 無明同様にその姿を消すソルプレッサ。

 唖然としてこちらを見ているムラタのその様子に、思わず笑みを浮かべながら説明を開始する。

 

「俺の持っている能力の1つ、空間倉庫という能力だ。これを使ってホワイトスターを奪い取った訳だ。お前の無明も今は俺の空間倉庫の中にある。ホワイトスターで必要になったら出してやるから心配するな」

 

 そう呟き、チラリと倉庫の中心にある機械の塊へと視線を向ける。

 

「で、あの機械が俺達シャドウミラーの技術班が開発した転移装置。通称ゲート。ほら、行くぞ。怖じ気づいた訳でもないだろう?」

 

 さすがに怖じ気づいたとまで言われたままでは剣鬼として生きてきたプライドが許さなかったのか、無言で1歩を踏み出して俺の後へと続く。

 

「お前達はそのまま警備を続けていろ」

「了解しました」

 

 量産型Wが敬礼するのを見ながら、ゲートへと移動して転移の操作を開始する。

 そんな俺の横にムラタが無言で並び……

 

「よし、転移するぞ」

「分かった」

 

 その言葉と共に転移フィールドが俺達を包み込み……次の瞬間には俺とムラタの姿はホワイトスターの転移区画にあった。

 

「ここが……ホワイトスター……」

 

 周囲の様子を窺っているムラタを横目に、量産型Wにエアカーを持ってこさせる。

 

「取りあえず乗れ。お前と戦う相手はもう暫くしないと来ないだろうからな」

 

 何しろ現在はまだ昼過ぎだ。桜咲には午後の授業があるので、放課後になるまではまだ暫く掛かる。

 そんな俺の言葉に、ここまで来たらジタバタしてもしょうがないと腹を括ったのか、ムラタは大人しくエアカーへと乗り込む。

 

「魔法球へ向かってくれ」

「分かりました」

 

 その言葉と共に動き出すエアカー。ムラタはムラタで周囲を珍しそうに眺めていた。

 ……まぁ、それはそうだろう。ホワイトスターの内部なんてOGsの世界に住んでいる者ならまず見る事は出来無いからな。

 そんな風なムラタを横目に、空間倉庫から携帯電話を取りだして登録してあるレモンの携帯へと連絡をする。

 

「……出ないな」

 

 やはり魔法球で新型機の設計をしているのだろう。となると次は桜咲か。まだ5時限目が始まってないといいんだが。

 そう思い、桜咲の携帯へと連絡をする。

 呼び出し音が数回鳴り……

 

『はいっ! もしもしっ! アクセル君!? ちょっと、こっちに帰ってきたのに私達に連絡しないってどう言う事!?』

『ちょっ! 柿崎さん、私の携帯……』

 

 ……桜咲の携帯に掛けたのに、何故か出たのは美砂だった。

 

「あー、すまないな。あっちの用事が終わって戻って来た訳じゃない。また明日にでもあっちの世界に行かなきゃいけないんだが」

 

 あっちの世界。その台詞に訝しげな顔をしているムラタがいたが……まぁ、それは後だろう。

 

「取りあえずちょっと桜咲に代わってくれないか? 剣術の稽古をつけて欲しい奴がいてな」

『剣術? アクセル君じゃなくて?』

「ああ。あっちの世界でシャドウミラーに新たに所属した男がいてな。そいつが……まぁ、お前達にも分かるように言うのなら月詠予備軍みたいな感じな訳だ」

『げっ!』

 

 今のげっ、というのは俺の声を聞いていたのだろうほぼ全員が一斉に洩らした声だな。いやまぁ、月詠の事を考えれば分からないでもないが。

 ちなみに魔法世界で捕らえた月詠に関しては、俺達がこっちに戻って来た一連の戦いの後で関東魔法協会を経由して関西呪術協会へと引き渡したらしい。その後どうなったのかは分からないが、恐らく禁固刑的な何かで罰を受けているんだろう。

 

『あの、アクセルさん。申し訳ありませんが月詠のような者の相手は……』

「心配するな。さすがにあそこまではいかない。ただ、人を斬るのが好きなだけの奴だ」

『だけと言われても……』

「実力的に考えればお前に遠く及ばないだろう。……駄目か?」

 

 その言葉にたっぷり1分程の沈黙の後……

 

『分かりました。アクセルさんには色々とお世話になっていますし、放課後ホワイトスターの方に窺わせて頂きます。ただ、おじょ……いえ、このちゃんをお連れしてもよろしいでしょうか? いざという時の為にも』

「ああ、そうしてくれると助かる。じゃあ、放課後に」

 

 そう言い、通話を切る。

 途中でこのちゃんと言い直していたのは、近くに近衛がいたからだろうな。

 そんな風に思っていると、ふと隣から視線を感じる。もちろん俺の隣にいるのはムラタ以外にはいない。

 

「どうした?」

「……今の声の持ち主がアクセルの言っていた凄腕の剣士か? まるで幼い少女の声に聞こえたが」

 

 訝しそうな視線を向けられるが、俺は問題無いとばかりに頷く。

 

「それで間違っていない。今の電話の相手は、お前にとっては子供と言ってもいいような年齢の相手だ。……ただし、その剣の腕は本物だぞ。俺の知ってる中でも、剣術に限定するのならトップクラスの実力を持っている。ゼンガーであろうとリシュウであろうと今の電話の相手には及ばないだろう。……剣以外は使うなと言われれば俺でも勝てるかどうか微妙な所だな」

 

 そもそも俺は剣術は本職じゃない上に、桜咲の使う神鳴流は混沌精霊である俺にしてみれば天敵だしな。

 

「アクセルでも勝てない、か。そうか。それならば俺もその少女とやり合うのを楽しみにしていよう」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、機嫌良さそうに周囲を見回すムラタ。

 ……ただ、こいつの場合『やり合う』というのは『殺り合う』に変換されてるんだよな。まぁ、桜咲相手には勝てないと思うが。

 いっそのこと小太郎辺りを……いや、駄目か。今のムラタの実力では相手にならないか。それなら手加減が出来る分、桜咲の方が安心だろう。

 そんな風に考えていると、ホワイトスターのとある一画へと辿り着く。

 その一画は転移区画のように巨大で、中央にはポツンと魔法球が置かれている。魔法区画だ。

 魔法球を中心とした魔法区画。何故ここが広く作られているかと言えば、理由は至極簡単だ。魔法球の中に技術班が研究に使う機体やら、自分専用のメギロートやら、機体やらを運び込んでいるからだ。何らかの実験の類も魔法球の中で行われていたりするし。

 だがそれを知らないムラタは、周囲を訝しげな視線で見つめている。

 

「ここは?」

「俺達シャドウミラーが秘している技術の1つだな」

「……秘している技術?」

「それに関しては、中に入ったら教えてやるよ。こっちだ」

 

 エアカーから降りて、量産型Wはそのまま魔法区画に待機させておき、ムラタと共に魔法球の方へと移動する。

 

「これは……ミニチュアか何かか?」

「答については実際に見てからのお楽しみだ。……ムラタ、俺の肩に触れろ」

「……こうか?」

「ああ。では、秘密の場所にご招待だ」

 

 ムラタが俺の肩に触れているのを確認し、魔法球へと触れる。すると次の瞬間には俺とムラタの姿は魔法球の中にあった。

 周囲に広がるのは自然溢れる島といった感じだ。SEED世界の無人島をそのまま取り込んだ影響で、無人島にいた動物や鳥の類も一緒にこの中にいる為に鳥の鳴き声なんかも聞こえてくる。

 そして島の中央付近には……

 

「また大きくなっているな」

 

 本来は別荘だけが建っていた筈が、いつの間にか科学の要塞! とでも言うような建物が追加されている。以前見た時はまだこれ程のものではなかったというのに。

 いやまぁ、技術班に魔法球を公開した時点でこうなるのは予想してたんだがな。

 

「これは……今のは転移か?」

 

 唖然とした表情で自然溢れる景色を眺めているムラタへと首を振る。

 

「いや、俺が触ったミニチュアっぽいのがあっただろう。あの中だ」

「……何?」

「あのミニチュアの中だと言ったんだ。正確にはダイオラマ魔法球というマジックアイテムだがな」

「……魔法?」

 

 その単語に引っ掛かり、口に出すムラタ。そんなムラタに、当然とばかりに頷いてやる。

 

「そうだ。魔法。さっき言った、シャドウミラーが秘している技術の1つ……だな」

 

 SEED世界に輸出したり、ミツコに教本を渡したりしている以上は秘しているとは言い過ぎかもしれないが。

 

「そんなものが本当にあると?」

 

 訝しげに俺を見てくるムラタに、肩を竦めながら周囲を見回す。

 

「論より証拠、百聞は一見にしかずとか言うが……実際に見ても信じられないというのはちょっと頭が固いぞ?」

「だが……」

「ムラタ、ここが何処だと思っている?」

「何処と言われても……ホワイトスターではないのか?」

「そう。ホワイトスターだ。そしてそのホワイトスターがあるのは、あらゆる世界と世界の間。次元の狭間とでも呼ぶべき場所なんだよ。そしてそこに俺達シャドウミラーは平行世界間を渡る技術を持っている。……故に、だ。『火よ灯れ』」

 

 いつものように、右人差し指を立てて『火よ灯れ』の魔法を使う。

 

「見てのように、魔法という存在が実在する世界とも繋がっている訳だ。そして俺がその世界で魔法を習得した」

「……」

 

 話の成り行きに付いていけないのだろう。本来は強面であるはずのムラタの顔が、いっそ笑える程に唖然としているのを眺める。

 

「今まであの世界で生きてきたお前が魔法という存在を信じられないと言うのも分かるが、俺の部下として……シャドウミラーとしてこれから生きていくのであれば受け入れ、消化し、取り込むんだな。そして、その時にこそお前はさらなる強さへと1歩を踏み出すことが出来る」

 

 右手を振って『火よ灯れ』の呪文を消し、近くに落ちている拳大の石を手に取って空中へと放り投げる。同時に……

 パチンッと指を鳴らした次の瞬間、俺の影から影槍が1本飛び出て石を切断する。

 

「影槍。見ての通り影の槍。まぁ、他にも色々と魔法はあるが……この類の力を身につけるか、あるいは目を背けるかはお前次第だ。この魔法球の中では、外の1時間が48時間になるという効果がある。その間に気持ちの整理をつけるんだな」

「あらあら、アクセルも無茶を言うわね。魔法の存在を知らないで育ってきた人が、そうそう簡単に受け入れられる訳がないでしょうに」

 

 俺の声に被せるかのようにそう告げたのは、いつもの露出の激しい格好の上から白衣を身に纏ったレモンだった。そのギャップ差の影響か、より妖艶な雰囲気を醸しだしている。その隣にはマリューの姿もあり、笑みを浮かべながら俺へと視線を向けていた。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:125
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:412

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