転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0496話

「さて、と。これからの予定だが……」

 

 月にあるセレヴィス・シティ。そのホテルに部屋を取った俺とスレイ、ムラタの3人は現在俺の部屋へと集まっていた。

 

「マオ社に用事があるという事だったが?」

 

 ホテルのルームサービスで頼んだケーキを口に運びながらスレイが尋ねる。

 

「ああ。俺の新型機に使う動力炉の設計図をちょっと無断で借りにな」

 

 ピタリ、とケーキを口へと運ぶフォークの動きを止めるスレイ。

 

「それは、正確には盗み出すと言うんじゃないのか?」

「まぁ、そうとも言う。だがまぁ、今までシャドウミラーが殆ど手を出してこなかった類の技術を入手する為だからな。多少の無茶はしょうがない」

 

 ブラックホールエンジンを始めとした重力関係の技術については、テスラ・ドライブくらいか。後はオルレアン研究所から盗み出したグラビトン・ランチャーやヒュッケバインMK-Ⅲに搭載されているグラビコンシステムの解析が進んでいればそれなりに研究も進展しているだろうが。

 何しろ魔法球をフル活用しているからな。ホワイトスターに戻った時に、実はもう独自にブラックホールエンジンを作りあげましたとか言われてもそれ程驚きはしない。……その場合、俺がマオ社に忍び込むのは全くの無意味になるが……

 

「なるほど、オルレアン研究所の時のようなものか」

 

 フランスまで付き合った経験を思い出しているのだろう、ムラタが溜息を吐きながら頷く。

 

「そうなると、俺とこの娘は今回もここで待機になるのか?」

「そうなるな。悪いが、お前達2人に潜入工作とかは無理だろう」

 

 そもそも魔法を使っての潜入工作だ。それこそ長瀬並の能力がないと俺に付いてくるのは難しい。ムラタ自身は桜咲との戦いで自分の理解の外にある技術、魔法や気の類を多少ではあるが経験しているので俺のその説明に納得したが……スレイの方は違っていた。生半可に高い能力があるだけに、一種の足手纏いと言われて納得出来なかったのだろう。

 

「アクセル、それは私を侮辱しているのか?」

 

 睨むような鋭い視線を俺へと向けながら尋ねるスレイ。

 

「侮辱ではないな。悪いが、今俺が言ったのは純然たる事実だ。……ムラタ、お前はどう思う? 俺の言葉を聞いて」

「アクセルがそう言うのなら事実なのだろう。……だが」

「だが?」

「俺もそうだが、実際に一度経験をしないと納得出来ないだろうよ。少なくても俺は言葉だけで納得したかと言われれば否と答える」

 

 ふむ……そうなると。

 

「スレイ、一度俺と生身で模擬戦でもしてみるか? そうすれば俺とお前の純粋な肉体性能差が分かると思うが」

 

 潜入するのに能力が足りないと言っているのに、模擬戦もどうかと思うが……手っ取り早く肉体の性能差を示すと考えるとそれ程間違ってはいないだろう。まぁ、一番ベストなのは一緒にどこか別の場所に潜入すればいいんだろうが、そもそも俺の侵入方法で使われるのは魔法である影のゲートだ。シャドウミラーに所属するというのを承知したとは言っても、フィリオ次第ではどうなるか分からない現状では俺達の最重要機密と言ってもいい魔法に関しての情報を開示する事も出来無いしな。

 

「……いいだろう。私としてもお前とは一度本気で戦ってみたいと思っていたからな」

 

 ケーキの最後の一口を紅茶で流し込み、椅子から立ち上がるスレイ。

 その後を追い……ふと椅子に座ったままのムラタへと視線を向ける。

 

「お前は来ないのか?」

「当然だ。ああは言ったものの、結果が見えている勝負を見て何が面白い?」

 

 事も無げに呟くムラタ。

 まぁ、純粋な生身の能力で考えればムラタの方がスレイよりも上なのは事実であり、そのムラタが今の俺には手も足も出ない程の実力差があるのだからそれも当然か。

 

「分かった。まぁ、お前はゆっくりとしていろ。どこかで剣の腕を磨くのもよし、身体を休めるのもよし」

「承知した」

 

 頷くムラタをその場に残し、部屋を出て行く。

 一応ここは俺の部屋であって、ムラタは別に自分の部屋があるんだが……休むならせめて自分の部屋で休んだ方がいいんじゃないのか?

 そんな風に思いつつも特に気にせずにフロントへと降りていくと、そこでは既にスレイが待ち受けていた。

 

「遅い! ホテルの方に頼んで運動場を借りて貰ったぞ」

 

 それだけを言うと、付いて来いとばかりにホテルの運動場があるだろう場所へと向かっていく。

 頭を下げて見送っているホテルの従業員へと視線を向け、スレイの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 運動場と言うだけあって、スレイが俺を連れて向かったのはそれなりに広い場所だった。バスケットボール用のコートが2面あるが、俺達以外には誰もいない。スレイが言った、借りたというのもあるのだろうが……それ以前にバルトール事件の真っ最中である以上は元々の利用客が少ないというのが最大の原因だろう。

 そんな運動場の中、俺とスレイは3m程離れて向かい合っている。

 

「いいか、私がアクセルに勝つ事が出来たら以後はきちんと私の力を認めると約束しろ」

「そうだな。もしそうなったら確かにお前の力を認めてもいいだろう。しかし、そう言う注文を付けると言う事は、俺が勝った場合に何か条件を付けてもいいんだな?」

「……好きにしろ」

「例えば、それが……お前が以前言ったように俺に抱かれろとかそんな条件でもか?」

 

 さて、どうする? これで怖じ気づくようなら期待外れだが……

 そんな俺の考えを読んだわけでも無いだろうが、数秒程呆気に取られた表情を浮かべたスレイは、小さく深呼吸をして口を開く。

 

「私に勝てたとしたら、抱くなりなんなり……好きにしろ!」

 

 羞恥、あるいは怒りで顔を赤くしながらもそう断言する。

 

「……訂正だ。もちろん俺はこんな事でお前を抱こうだなんて考えてはいない。だが、そうだな。自分が負けた時にどんな目に遭うのかを承知の上で俺に挑んだ、そのお前の気持ちは最大限に尊重しよう。……来い。俺の力の一端を見せてやる」

「はぁっ!」

 

 俺の来い、という言葉と同時に地を蹴るスレイ。キュッという床を擦るような音が聞こえるとその姿は既に俺の間合いへと入ろうとしているところだった。

 確かにこの世界の人間としては身体能力が高い方だろう。さすがにプロジェクトTDのNo.1と言っているだけの事はある。だが……

 

「どうした? その程度なのか?」

 

 俺の顔面を狙い振り抜かれたその拳を、右手であっさりと掴み止める。

 

「なっ!」

「この程度で……あっさりと気を失うなよ?」

 

 掴み取っているスレイの右拳。その右拳をそのまま握りしめて投げ飛ばす。

 

「キャアアアアアッ!」

 

 悲鳴を上げながら真横にそのまま飛んでいくスレイ。その様子を見ながら、1歩ずつ歩を進める。

 

「がっ!?」

 

 俺の腕力だけで真横に10m近くも吹き飛ばされ、それでも尚受け身を取りながら衝撃を最小限に殺したのはさすがと言うべきだろう。だが受け身を取ったとしてもスレイが受けた衝撃は凄まじかったらしく、ヨロヨロと立ち上がって俺へと視線を向けてくる。

 身体のダメージは大きいのだが、それでもその目はまだ死んではいなかった。この辺はある意味でムラタと似ているのかもしれないな。違いと言えばムラタは己の闘争心故に折れず、スレイは己自身を俺に認めさせたいが為に折れない……と言ったところか。

 

「くっ、まだだ!」

 

 再度床を蹴り、俺へと殴り掛かってくるスレイ。その拳が突き出されて俺の頬へと向かい……次の瞬間には空気を貫いていた。

 

「何!?」

 

 慌てて周囲を見回すスレイ。その視線が俺を改めて捉えたのは、瞬動で移動した俺がバスケットゴールのポールへと寄り掛かっている時だった。

 

「どうした? 幻覚でも見たような顔をして」

「……幻覚、だと?」

 

 唖然とした表情をしているスレイへと向かい、距離を縮めていく。

 

「そんな、馬鹿な筈は……」

 

 今の一幕が余程信じられなかったのだろう。先程投げ付けられた背や腰、脚へと触れてダメージが残っているのを確認して投げられたのが幻覚の類ではなく実際の出来事だったと理解する。

 

「アクセル、何をした?」

 

 自分の目で見たものを信じられなかったのだろう。唖然とした目で俺へと視線を向けてくるスレイ。その視線を真っ向から受け止め、何でも無いとばかりに肩を竦める。

 

「さて、俺は特に何をした覚えもないがな。ただ単純に拳を回避してここまで移動してきただけだ」

「ふざけるな! ここからそこまでを、ほんの一瞬で移動出来る訳が無いだろう!」

「なら俺がどうやってここまで移動したと? それこそ幻覚でも見ていたとでも言うのか?」

「ぐっ、そ、それは……」

 

 俺の言葉に思わず詰まるスレイ。

 まぁ、このスパロボOGsの世界で生きてきた人間が瞬動なんて技術を知ってる筈も無いのだから、しょうがないと言えばしょうがない。

 

「そろそろこっちから行くぞ?」

「こ、来い」

 

 スレイが叫んだ瞬間、再び瞬動を使用。スレイの横3m程の位置まで移動し、同時に虚空瞬動を使用して空を蹴り、スレイの真後ろへと移動する。

 

「俺はここにいるんだが、どこを見ているんだ?」

 

 一瞬で俺の姿を見失ったスレイ。そのスレイの背後でそっと呟く。

 

「っ!?」

 

 その声を聞いた瞬間、咄嗟に身体を捻り真後ろにいる俺へと向かって裏拳を繰り出すが……

 

「そんな反射的な攻撃が俺に効くとでも?」

 

 身体を半回転させながら振られた右拳を左手で受け止めてスレイの動きを止め、そのまま力尽くでスレイをさらに半回転させてやる。そして強制的に後ろへと振り向かされたスレイの目の前には殆ど密着した状態の俺の姿が。

 

「なっ!」

 

 唖然としているスレイへと顔を近づけ、その耳元で囁く。

 

「どうだ? 俺とお前の根本的な力の差が分かったか? 確かにお前はプロジェクトTDのNo.1を任された人物だ。パイロットとしての技量も、生身での運動能力に関してもそれ相応の物を持っているのだろう。だが、今回忍び込むのは天下のマオ社だ。あくまでも普通レベルの身体能力では足手纏いにしかならないんだよ」

「……」

 

 俺の言葉に、顔を赤くしながら睨みつけてくるスレイ。

 

「私では……お前に力を認めさせられないと、そう言いたいのか?」

「ある意味でそれは正解だ。……だが、安心しろ。お前がその気ならホワイトスターに帰還した後で相応の訓練を受けさせてやるさ。お前ならもしかしたらそれなりに実力をものに出来るかもしれないしな」

 

 忍者やら剣士やらじゃなく、純粋に身体能力を上げるのを考えると、パッと思いつくのは古菲辺りか。いっそ小太郎に任せてみるのも面白いかもしれないが。

 

「……分かった。分かったから少し離れろ」

 

 プイッとそっぽを向きながら小さく呟くスレイ。

 

「全く、お前はイスルギ重工の受付でもこういう体勢に持っていったが……3人も恋人がいるというのに、本当に私に気があるんじゃないだろうな?」

「さてな。まぁ、お前がいい女だと言うのは認めてやるよ」

 

 悪戯っぽく尋ねてきたスレイに、こちらも同様に返してやる。

 すると再びその顔を真っ赤に染めながら、俺の足の甲を踏みつけようとその鍛えられた足を持ち上げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:195
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:426

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