転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0506話

 俺がペレグリン級で提供された自室に戻ってから30分程。部屋の中で空間倉庫から出した雑誌を読んでいると、部屋の扉がノックされる。

 ……今まで俺が雑誌を読んでいると大抵敵襲とかに遭ったんだが、幸い今回は違ったらしい。まぁ、ソーディアンなんて代物が出て来ている以上はこれ以上何かが出てこられても困るんだが。

 

「アクセル、スレイだ。呼んでいると聞いたが?」

「ああ、入ってくれ」

 

 雑誌を閉じてスレイ達を出迎える。

 まず最初に入って来たのは堂々とした態度のスレイ。そしてその後にどこか困った表情を浮かべているフィリオに、最後が不安そうなオウカだった。

 

「よく来てくれたな」

「……別に僕は自分の意志で来たんじゃないけどね。それで、アクセル・アルマー。君が僕を連れてくるようにスレイに言ったのかい?」

「俺の指示って訳じゃないな。ただ、その理由を与えたのは俺だが」

「思わせぶりなのは好きじゃないな。きっちりと説明して貰えないかな?」

 

 先程までのどこか困ったような様子は鳴りを潜め、嘘を言ったら許さないとばかりに俺へと視線を向けてくるフィリオ。この辺の強気な所はさすがにスレイの兄といったところか。

 

「あの、アクセル大尉。私……」

 

 俺とフィリオが沈黙していると、オウカがそう声を発する。

 

「悪いな、オウカ。お前との話はもうちょっと待ってくれ。その前にこっちの話を付けておきたい」

「あ、はい。分かりました」

 

 怒られるとでも思っていたのか、若干安堵の表情を浮かべつつ1歩後ろへと下がって俺とフィリオのやり取りを黙って聞く。

 そんなオウカへと一度視線を向け、改めてフィリオへと視線を向ける。

 

「あぁ、取りあえずその椅子にでも座ってくれ。お前の体調じゃずっと立ったままってのもキツイだろ?」

「っ!? ……やはり、僕の病気の件を?」

「そうだな。そしてそれがスレイがお前を半ば強引に連れてきた理由だよ」

「……それは、どういう意味かな?」

 

 こちらの真意を確かめるような目でじっと視線を向けてくるフィリオ。

 

「さて、まず何から話すべきか。……そうだな。最初に結論から言おう。俺はスレイと1つの取引をした」

「……取引?」

 

 フィリオが俺の言葉を繰り返し、スレイの方へと視線を向ける。

 フィリオに対して無言で小さく頷くスレイ。その態度からは少なくても俺に脅されて取引をしたなんて風には見えないだろう。

 

「そうだ。取引内容は単純明快。フィリオ・プレスティ。お前が侵されている不治の病。それを治療する代償としてスレイとフィリオ。お前達2人がシャドウミラーに所属するというものだ」

「っ!? 馬鹿な!? 僕のこの病気はもう……」

 

 自分達がどう手を尽くしても治療出来なかった病気。それをあっさりと治療可能だと言われて唖然とするフィリオ。だが俺は笑みを浮かべつつ、口を開く。

 

「治療は可能だ。イスルギ重工に頼んでお前のカルテを手に入れて貰った。それをレモンに見せればまず間違い無いだろう。……カルテはまだスレイが持ったままだがな」

「……ふぅ。すまない、取り乱した。カルテを見てもいないのに、僕の病気を治療可能だと言える根拠は?」

 

 大きく深呼吸をして、動揺を沈めてから尋ねてくるフィリオ。

 

「ラミアの身体の件は知ってるな? レモンというのはシャドウミラーの技術班を率いる女で、ラミアのようなWナンバーズという人造人間を作り出す技術がある。そして、さらに俺達の本拠地にはこの世界の何処よりも高度な技術を持った治療器具がある」

 

 それにもし万が一にもレモンの技術やホワイトスターの治療機器で治療が無理だとしたら、最悪魔法に頼るという手段もある。手軽な所では近衛の回復魔法、あるいはアーティファクト。それで駄目だとしたら魔法界に行って大河内達が奴隷になる原因となったエリクシールを買うという手段もある。何しろ100万ドラクマ程度ならまだまだあっちで稼いだ金に余裕があるからな。

 

「……スレイ、彼の言っていることは本当かい?」

「ああ、兄様。アクセルの言っている内容は全て事実だ。私自身が直接シャドウミラーの本拠地である……」

「スレイ」

 

 ホワイトスターという名称を出そうとしたスレイの言葉を遮る。

 まだフィリオがこちらに所属するのを承諾していない以上は、さすがにホワイトスターの名前を出すのは時期尚早だ。

 

「……すまん。急ぎすぎたな。現状では色々と言えない事はあるが、実際に本拠地に行って確認したのは事実だ。シャドウミラーは今まで見た事も無い程に高度な医療機器を持っている。そこに……」

 

 懐から取り出したデータディスクを俺とフィリオが向かい合って座っているテーブルの上に置く。

 

「この兄様のカルテがあれば、治療は可能だと思う」

 

 そのデータディスクをじっと見つめるフィリオ。イスルギ重工で受け取った書類のままだと持ち運びに不便なのでデータディスクに収めたのだろう。そのまま数分も沈黙が続いただろうか。やがて考えを纏めるかのように口を開く。

 

「確かに治療出来ると言うのは非常に魅力的だ。僕だってこのまま死にたい訳じゃないし、プロジェクトTDの行く末を見てみたいという願望もある。だが、だからと言って君達シャドウミラーに所属して望みもしない兵器開発をさせられるというのは御免だ」

「……その割にはアステリオンAX、フェアリオン、そしてカリオン。どれもお前の作った機体は武装されているが?」

「……それは……」

 

 何かに耐えるような表情のフィリオ。やはり個人としては兵器開発はしたくなかったが、時代がそれを許さなかったと言う所か。

 

「それに勘違いしているようだが、俺は今の所お前に兵器開発をしてもらうつもりはない」

「え?」

「正確に言えば兵器になるのかもしれないが、まず最初にお前にやって貰うのは宇宙艦に使う為のテスラ・ドライブの開発だ」

「……宇宙戦艦は十分兵器だと思うけど?」

 

 尋ねてきたフィリオの言葉に首を振る。

 

「間違えるな。宇宙戦艦じゃない、宇宙艦だ。もちろん武装はしているが、それにしてもデブリを破壊する為の最低限の武装でしかない」

「宇宙艦? そんな物を作ってどうしようと言うんだい?」

「もちろん宇宙を飛ぶ為だ。正確には色々と理由はあるんだが、詳しい内容についてはシャドウミラーに所属すると決まってからだな。だが、安心しろ。この宇宙艦については戦争の類に使う物ではないというのは俺がシャドウミラーを率いる者として約束しよう」

「……」

 

 つい数秒前までは俺を疑うような視線だったが、戦闘艦ではない宇宙艦に使うテスラ・ドライブというのがプロジェクトTDを推進してきたフィリオの琴線に触れたのだろう。多少ではあるがその目には好奇心が宿り始めている。

 

「それとお前にやって貰いたいのはもう1つ。こっちは悪いが純粋に戦闘用として考えてくれ。コストを度外視して構わないから、現時点で最高性能のテスラ・ドライブの設計と開発だ」

「……結局は兵器になる、か」

「そうだな。だが、今の所俺がお前に求めているのは兵器の開発や設計じゃない。純粋にテスラ・ドライブ開発としては第一人者であるフィリオ・プレスティだ。その辺は勘違いしないでくれ」

「それでも、僕の開発したテスラ・ドライブは結局兵器に搭載されるんだろう?」

「ああ。だが、今までの歴史を考えれば良く分かると思うが、何であろうと兵器に転用しようと思えばされるものだ。それは俺よりも研究者であるお前の方が良く分かってる筈だ」

「……」

 

 その言葉が図星だったのか、黙り込むフィリオ。

 

「さて、どうする? スレイがここまで引っ張ってきておいて何だが、お前がどうしても嫌だと。シャドウミラーに所属するのは我慢ならないというのなら、俺としてもお前をこのまま俺達の本拠地に連れて行く訳にはいかない。何しろ俺達の情報が漏れる可能性があるからな」

「……僕がこのままここから戻ったりしたら、スレイはどうなるんだい?」

「スレイに関しては、既にシャドウミラーの一員として考えている」

 

 チラリ、とスレイの方へと視線を向けると小さく頷いてくる。

 

「ああ。実際、私や兄様の為にここまで骨を折って貰ったのだ。この男の性格はともかく、恩には報いたいと思う」

「……おい、性格はともかくってのはなんだ?」

「言わせる気か? この女好きが。あ、あんなシーンを私に見せつけておいて……」

「いや、そもそもお前が不用意にだな」

「……君達は一体何を……」

「アクセル大尉? 一体彼女に何をしたのか詳しく聞かせて欲しいのですが」

 

 フィリオが何かを言いかけた所で、今まで黙って聞いていたオウカが1歩前に出てその言葉を遮った。

 顔には笑みを浮かべており言葉遣いも丁寧なのだが、どこか背筋にひやりとした物を感じさせる。フィリオとしても危険を感じ取ったのか、言葉を遮られてもそのまま何も言わずに大人しく後ろへと下がっていた。

 

「あー、いや。まぁ、気にするな。オウカも大人になれば分かるからな」

「……私は十分大人のつもりなのですが」

「とは言っても、お前はまだ17歳だろう? 俺にしてみれば子供だよ」

「むぅ」

 

 普段はクールビューティなオウカだが、こうやって頬を膨らまして拗ねているとやっぱり年相応だな。

 そんな風に思いながら、改めてフィリオの方へと視線を向ける。

 

「まぁ、それはともかくだ。何しろお前のこれからの事だ。すぐに決断しろとは言わない。少しは考える時間をやろう。……ただし、地球に戻るまでだ。それまでに決めてくれ」

「……分かった。ちなみに、もしシャドウミラーに所属するとしたらそれはずっとになるのかな?」

「さて、どうだろうな。俺としてはお前のように優秀な開発者には組織に残ってくれると嬉しいが、無理は言えない。それでも最低限先に言った宇宙艦用とコスト度外視の最高性能のテスラ・ドライブに関してはやって貰うが、治療の対価としてはそれで十分だと思っている。……ただし、もしシャドウミラーを抜ける場合には絶対に俺達に付いての情報を第3者に渡さないようにしてもらうだろう」

 

 その場合は恐らく鵬法璽を使う事になるだろうな。まさかロゴスの面々のように監視目的で量産型Wを派遣する訳にもいかないし。

 

「分かった。その手段がどんなものかは分からないが、シャドウミラーに所属するかどうかも含めて検討させて貰うよ」

「そうしてくれ。スレイ、フィリオをどこか空いている個室にでも案内してやれ」

「あ、ああ。だが、その……」

 

 チラチラと俺とオウカへと視線を向けて困った表情をするスレイ。

 ……どうしたんだ?

 

「何かあったか?」

「いや、オウカ・ナギサとか言ったか。彼女をお前のようなケダモノと一緒に部屋で2人きりにしてもいいものかと思ってな」

「お前は俺を……いや、いい。お前が俺をどう思っているのかは大体分かった。安心しろ。オウカとは前々からの知り合いだしな。それになによりまだ17歳の子供だ。手を出すような真似は……」

 

 ゾクリ。

 何故か背筋に悪寒が走り、咄嗟にオウカの方へと視線を向ける。

 だが、そこではいつも通り穏やかに微笑んでいるオウカの姿があるだけだった。

 

「どうかしましたか、アクセル大尉?」

「い、いや、何でも無い」

 

 今の悪寒は気のせいか? もしかして念動力が何らかの危機を察知したとか? となると、修羅の襲撃とかも一応視野に入れておいた方がいいんだろうか。

 

「まぁ、いいだろう。では私はこれで失礼する。くれぐれもケダモノにはならないようにな」

「しつこいぞ。お前はお兄ちゃんにでも甘えてこい」

「なっ!?」

 

 唖然とした表情をしたスレイを追い出し、椅子に座って改めてオウカの方へと視線を向ける。

 

「立ったままする話でもないだろう。取りあえず座れ」

「はい、失礼します」

 

 淑やかに一礼し、フィリオがいなくなった椅子へと座るオウカ。

 そのまま黙って俺の方へと視線を向けてくる。

 そんな沈黙の中、最初に口を開いたのは当然の如く俺だった。

 

「全く……ようやく妹や弟と一緒に暮らせるようになったんだろうに。何でまた脱走なんて真似をしたんだ?」

「確かに私はアラドやゼオラ、ラト達と暮らしていました。ですが、その全てを用意してくれたのはアクセル大尉です」

「勘違いするな。俺はただお前達を利用しただけだ」

「それでも! ……それでも、アクセル大尉が私やゼオラをセトメ博士の洗脳から解放してくれなければ、恐らく私達はアラドやラトと戦う事になっていたでしょう。その結果がどうなっていたのかは分かりません。私達が勝ってアラド達が死んでいたか、あるいはその逆か。ですが、どんな結果になったとしても私達は心に傷を負っていたはずです。それを救ってくれたアクセル大尉に対して恩を返さないというのは、不義理でしかありません」

 

 濡れたような瞳、とでも表現するかのように俺へと視線を向けるオウカ。

 

「……その代償として再びゼオラ達と離れる事になってもか?」

「はい。私がスレイさんと脱出してくる前にゼオラ、アラド、ラト。そしてクエルボ博士には相談してきました。皆、私の思うようにと。もう自分達の姉としての責任に縛られる事はないと言って送り出してくれました」

 

「最後の確認だ。さっきフィリオに話した内容を聞いていたな? シャドウミラーに所属するとなれば色々と不自由な思いをする可能性もあるし、色々と後ろ暗い行為をする事もある。最悪、ヒリュウ改やハガネ、クロガネと戦闘になる可能性すらもある。……それでもシャドウミラーに来ると言うのか?」

「はい」

 

 そんな、最後の確認を込めた俺の問いにオウカは一瞬の迷いすらも見せず即座に頷く。

 

「……はぁ、好きにしろ。何だってそんなに義理堅いかね。折角自由になったんだから好きに生きればいいものを」

「これが私が自由に生きたいと思った結果です。……いつまでも、貴方の側にいる事こそが」

「ん? 何か言ったか?」

 

 最後に口の中で何か呟いたように聞こえたが、本当に小さい声だったのか俺の聴覚でも聞き取る事が出来無かった。

 

「い、いえ! 何でもありません! その、アクセル大尉に恩を返せて嬉しいと」

「そうか? まぁ、いいが。……あぁ、そうそう。今の俺はシャドウミラーを率いている身だからな。大尉という階級は忘れてくれ」

「じゃあ、何と呼べば?」

「アクセルでもなんでも好きに呼べ」

「じゃ、じゃあ……ア、ア、……アクセル、さん」

「おう」

 

 何やら噛み締めるように呟くオウカに、多少首を傾げつつも返事を返す。

 俺の返事に、どこか照れたように頬を赤く染めながら俯くオウカ。

 こうして、オウカはシャドウミラーに所属する事になったのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:300
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:447

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