転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0516話

 イスルギ重工に転移札とハロウィン・プランのデータを渡してから数日。俺の姿はホワイトスターにあるレモンの研究室にあった。魔法球の中にある研究室ではなく、バルシェムの生成チャンバーがある方の研究室だ。

 

「ありがとう御座います。これで俺も未来に希望を持てます」

 

 そう言って笑みを浮かべながら頭を下げてくる金髪の子供はレイ・ザ・バレル。そう、レイのテロメアに関する治療が今日正式に完了したのだ。

 

「ああ、そうしてくれると治療した側としても助かるな。……取りあえずお前はシャドウミラー所属という事になってはいるが、年齢が年齢だ。暫くは候補生的な扱いになると思う。それにお前が育って来たのはあくまでもプラントである以上、シャドウミラーと関係の深いオーブの常識を学んでくれ」

「任せておけって。俺が引き取った以上はきちんと育ててみせるさ。なぁ?」

 

 チラリと自分の隣にいるナタルへと視線を向けるムウ。

 ナタルはその視線を受け、どこか照れくさそうに頬を赤く染めながら頷く。

 

「ああ。ムウと私が育てる以上は立派な人間にしてみせる。……アクセル・アルマー。レイの治療をしてくれて感謝する」

 

 小さく頭を下げるナタル。それを見たレイもまた再び頭を下げ、ムウは苦笑しながらそれに続く。

 

「どーでもいいけどさぁ。そっちのレイとかいうのはともかく、俺達はどうなるのさ?」

「おい、アウル!」

 

 レイの近くにいた3人のうちの1人、青い髪をしているアウルがどこか拗ねたように口を開き、それを見た黄緑の髪をした少し落ち着いた子供が窘める。エクステンデッドのリーダー格であるスティングだ。尚、その隣では金髪のステラが物珍しそうに周囲を見回している。……あ、生成チェンバーで病気を治療しているフィリオに興味が引かれたのかチェンバーの表面をツンツンと突つき始めた。

 

「貴方達3人のお迎えもそろそろ来る筈なんだけど……」

 

 レモンがそう言った時、研究室の扉が開いて2人の人物が姿を現す。

 

「済まない、フェイトとの協議が少し長引いて遅れてしまった」

 

 そう言って謝ってくるのはエザリア・ジュール。その隣にいるのは当然の如く息子のイザークだ。

 

「謝る事はありません、母上。そもそもブルーマーズ計画の交渉を母上に任せたのはアクセルなのですから、このくらいの遅刻は大目に見るべきです」

「イザーク、そうは言っても遅刻は遅刻です」

 

 そんないつものやり取りを眺めつつ、エクステンデッド達――否、治療が完了した以上は元エクステンデッドと言うべきか――へと声を掛ける。

 

「女の方がエザリア・ジュール。その隣にいるのがイザーク・ジュールだ。今日からお前達3人の面倒を見る。……とは言っても、お前達もレイと同様、いやブルーコスモスの研究所で育って来た分余計に世の中の常識を知らないからな。レイと一緒にオーブの学校に通って貰う」

「えー、学校とか面倒だなぁ。ほら、俺ってば射撃上手いからこのままシャドウミラーでパイロットにしてくれない?」

「……アウル、貴方達3人は確かに他の一般人よりも戦闘に向いているとは言えるわ。けど、その戦闘力を発揮する上でかなりの要素を占めていた薬に関しては既にその身体から抜かれているし、人工的に……と言うか、強引なやり方で強化した部分も可能な限り元に戻しているのよ。今の貴方は純粋な戦闘力と言う意味ではシャドウミラーの兵士でもある量産型Wよりも下でしかないわ」

「なっ……」

 

 レモンの言葉に一瞬息を呑んだアウルだったが、すぐに溜息を吐く。本人も分かっているのだ。今の自分の肉体がごく普通のナチュラルと同程度だと言うのは。何しろ治療前にレモンはきちんとその説明をしたらしいしな。

 それでもシャドウミラーのパイロットになりたいと希望したのは、それこそ一般的な生活をしてこなかった為に他にやるべき事や、やりたい事を知らないからなのだろう。何しろ物心が付くかどうかの頃からコーディネーター憎しの教育……否、洗脳を受けてきたのだから。

 薬品を使っての洗脳だったおかげで今はコーディネーターに対してそれ程憎しみを持ってはいないが、もし治療前ならイザークやエザリアを見た瞬間に襲い掛かっていただろう。

 

「わーったよ。けど、量産型Wよりも腕が上になったらきちんとシャドウミラーに参加させてもらうからな」

 

 俺の方を見ながらそう宣言してくるアウルへと頷く。

 

「そうだな。学校を卒業して、その時にまだシャドウミラーに参加する気があるのなら、それもまたいいだろう」

「絶対だからな! 約束したぞ!」

「全く、アウル。少しは遠慮ってものをだな」

 

 強気な表情で告げるアウルに、スティングが窘めるように言葉を掛けるが……

 

「何だよ。じゃあスティングはシャドウミラーに入らないんだな?」

「いや、そりゃあ俺だって出来れば……」

「ほら見ろ。1人だけ良い子ぶってさ」

「別に俺は」

「2人共喧嘩しちゃ駄目」

 

 フィリオの入ってる生成チェンバーを興味深く観察したり指先で突いていたりしたステラだったが、アウルとスティングの間に険悪な空気が流れるや否やそう言って2人の間に割り込む。

 そしてそんな3人をいつもの強気な表情を消し、どこか母性を感じさせる雰囲気を出しながら眺めているエザリア。

 

「母上、そろそろ時間が。今日は午後からオーブのウズミ代表と会合があると言ってましたから、早めに食事を……」

「そうね。じゃ、アウル、スティング、ステラ。早速だけどこれから暮らすお家に案内するわね。ついてきてちょうだい。アクセル、レモン。私達はこれで失礼するわね」

「アクセル・アルマー、お前はこのシャドウミラーの最大戦力でもあるんだから、怠けて腕を鈍らせるような真似をするなよ。遊んでる暇があったら実働班の模擬戦にでも参加しろ。そして俺と戦え。いいな!?」

 

 最後にイザークがいつものように挑戦状を叩き付け、エクステンデッドの3人と共に研究室から出て行くのだった。

 

「やれやれ、若いってのはいいねぇ」

 

 その後ろ姿を見送り、思わず呟くムウ。隣ではナタルが何処か棘のある視線をムウに向けていた。

 あの様子からすると、自分『達』は若くないのかとでも言いたげだな。

 確か俺よりも年上だった気がするが、まだ20代半ばくらいだったと思うが。

 

「さて、じゃあ俺達も一端オーブにある家に行くか。……レイ、これからよろしくな」

「……はい!」

「……はぁ」

 

 自分の視線に気が付かないムウに溜息を吐き、3人もまた研究所から出て行く。

 そして最後に俺とレモンのみが研究室に残るのだった。

 いや、治療中のフィリオもいるか。

 そのフィリオへと視線を向け。レモンへと声を掛ける。

 

「で、フィリオの方はどんな具合だ? 確か1週間程度で完治が可能だとか言ってたけど」

「思ったよりも経過はいいようね。当初の予定だと完治まで1週間程度を予想していたんだけど、この調子なら3日程度といった所かしら」

「……不治の病が3日で完治、か。さすがだな」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、この研究室みたいに施設が充実しているからこそよ」

「とは言っても、施設だけあってもどうにもならないだろう? それを解析し、理解し、使えるようにしたのはレモンの手柄だし、なによりもWシリーズで積み重ねてきた技術的な蓄積があってこそだ。レモンがいなければ恐らくこのホワイトスターの施設稼働率は、良くて今の半分程度だったと思うぞ」

 

 シャドウミラーは確かに他の組織に比べて圧倒的な技術を持っているが、それはレモンという天才、それもその辺に良くいる一山幾らの天才ではなく正真正銘数百年、下手をしたら千年に1人と言ってもいいかもしれないレモンがいてこそなのだ。

 もちろん技術班がシャドウミラーにどれ程貢献しているのかというのは理解している。それこそ言葉は悪いが、技術班のメンバーは揃いも揃って一山幾らの天才達の集まりと言ってもいいのだから。だが能力の高い者達が集まっている分、性格に癖の強い者が多い――と言うか全員――のも事実だ。そんな個性的過ぎる技術班がバラバラにならないでやっていけているのは、レモンという存在がいればこそだろう。誤解を承知の上で言わせて貰えれば、レモンという太陽を中心にして技術班達が惑星のように纏まっている。俺はそんなイメージを抱いていた。

 まぁ、最近は隕石の如くやって来て調子に乗っている惑星へと文字通りに天の鉄槌を下すエキドナも技術班の引き締めに一役買ってはいるんだろうけどな。

 そんな俺の説明を聞くと、次第に頬を赤く染めていくレモン。どうやら珍しく照れているらしい。

 

「……ありがと」

 

 ぎゅっと俺の右腕を抱きしめ、身体を寄り掛からせてくる。

 右腕に圧倒的な質量と柔らかさを誇る双丘を感じながら、俺とレモンの唇が近付いていき……

 

「アクセル、ここにいるのか!」

 

 唇が触れるその一瞬前に、そんな声と共に誰かが研究室へとノックも無しに入って来たのだった。

 その人物は一見すると金髪の幼女であり、その実600年以上を生きた真祖の吸血鬼だ。……もっとも、吸血鬼と化した時に精神的な年齢も止まってるようだが。

 そんなエヴァが研究室に突入してきて、俺とレモンを見るとニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「どうやら邪魔をしたみたいだな。2時間程時間を開けるか?」

「マスター、ここは不純異性交遊を怒るべきかと」

「いや、アクセルはもう麻帆良の生徒じゃないんだし不純異性交遊とか言ってもしょうがないだろう」

「……そう言えばそうでしたね」

 

 表情は殆ど変えずに、それでもどこか落ち込んだ雰囲気を出す茶々丸。相変わらず妙な所で心配性な奴だ。

 

「ふふっ、この続きはまた今夜ベッドでね」

 

 耳元で甘く囁き、エヴァへと向き直るレモン。

 

「それで人がオフィスラブをしている時にいきなり飛び込んできて何の用事?」

「ああ、それだそれ。魔法球の件、いけるぞ」

「魔法球の件って……時の指輪を組み込んで魔法球の中に入っている間だけ疑似的に不老にするって言う?」

「うむ、それだ。さすがにマジックアイテム同士を組み合わせるというのは結構難易度が高かったが、ぼーや達からの協力で何とか目処が立った。いつでも可能だぞ」

 

 どうだ、凄いだろう! とばかりに無い胸を張るエヴァ。

 だがまぁ、実際この短期間でそんな真似が出来るようになるとは思ってなかったので確かに凄い。

 

「うーん、そうなると今から早速……いや、無理だな」

「そうね」

 

 思わず今からやってくれと言おうかとも思ったのだが、何しろマジックアイテムを組み合わせる。つまりは一種の融合とも言ってもいいような感じに仕上げるのだ。中にどんな影響があるか分からない以上は、現在魔法球の中にある俺の新型機のパーツにどんな影響が出るか分からないからな。念の為に内部の物を空間倉庫辺りに避難させておきたい。

 

「それで、生物的な影響はどうなるの? 人間が疑似的に不老になると言うのは分かったけど、他の生物。例えばアクセルが無人島をそのまま収納した事により現在魔法球の中にいる野生動物とかだけど」

「その辺は心配するな。一応人間以外の生命体に影響は無いようにしてある。……ただし、今回のようなのは初めてだから100%安全を保証は出来ないがな」

「とは言っても、さすがに魔法球の中にいる野生動物を全て出す訳にもいかないぞ? 俺の空間倉庫にしても知っての通り生き物は収納出来ないし」

「……そうね、その辺はもし何かあったとしてもしょうがないと諦めるべきでしょうね」

 

 何しろ大きめの無人島そのものを丸々魔法球の中に収納した為に、野生動物の類は内部にかなり存在している。しかも魔法球の中は外の1時間が48時間な訳で……このままいけばガラパゴスのように独自の生態系が作り出される可能性も高いかもしれないな。

 いや、いっそのこと魔法世界から生き物を……あぁ、無理だったな。俺が召喚魔法で契約しているグリフィンドラゴンのグリにしろ、俺との契約で血を与えてようやくこちらの世界に出てこられるようになったんだし。

 

「まぁ、野生動物に関してはなるようになると思うしかないな。それで実際にその組み込みをするのは明日の放課後という事でいいか? エヴァは登校地獄のせいでサボるなんて真似は出来ないし」

 

 俺のその言葉に数秒程何かを考えていたレモンが小さく頷く。

 

「そう、ね。明日の日中にでも魔法球の中にあるパーツ等を避難させておけば問題無いでしょう。技術班としては問題無いわ。……ちなみにエヴァ。その組み合わせる作業自体はどのくらい掛かるの?」

「うーん……正確には分からんが、何しろ内部での作業になるからな。外では1時間程度で済むはずだ」

「内部って……」

 

 呟き、魔法球の中にある時間設定等を変更する為の場所を思い出す。恐らくあそこの事だろう。

 

「よし、話は決まったな。じゃあ明日の放課後にまた来るから準備はしっかりとしておけよ。……出来ればオーブから和菓子か何かを用意しておくようにな」

 

 そう言い、成功報酬としてオーブにある高級和菓子店の和菓子セットを提供する事を約束させられるのだった。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:300
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:447

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