転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0566話

「マリュー、スレイ機と向こうのアステリオンAXが小破から中破程度のダメージを受けた。これ以上の戦闘は危険だから、一度シロガネの格納庫に収容する。受け入れ態勢の準備を頼む!」

 

 既に戦闘能力の殆どを消失しているアステリオンAXとエルアインスをグレイプニルの糸で牽引しつつ、シロガネへと通信を送る。

 その2機はまだ何か通信で話していたようだが、それに関しては俺が口を出す必要は無いだろう。プロジェクトTD組での話だ。

 

『艦首魚雷、ホーミングミサイル、狙いはダークブレインの右手よ。撃てぇっ! ……了解したわ。すぐに量産型Wに受け入れの準備をさせるけど、怪我は?』

 

 ブリッジ要員へと指示を出しつつ尋ねてくるマリュー。

 その間にもシロガネから放たれたミサイルや魚雷がダークブレインへと向かって行く。そもそも水中用の装備である魚雷は、あくまでもヒョロヒョロした軌道を描きつつ、その後ろから飛んで行くミサイルを隠すような軌道を描いていた。

 

「アステリオンAXのパイロットが怪我をしているから一応治療の用意を頼む。サブパイロットの方は……」

 

 チラリとモニタに視線を向けると、そこにいるのは気絶しているツグミの姿。

 さすがにパイロットとしての訓練を受けている訳では無いツグミに、あの機動やダメージは堪えたらしい。

 

「気絶しているが、見た限りだと怪我は無い。けど念の為に医務室へと運んでおいた方がいいだろう」

 

 ダークブレインの振るう尾が魚雷を破壊し、次の瞬間にはその尾へとホーミングミサイルが次々に着弾する。だが、さすがにその再生能力は強大であり、尾の先端が消滅したかと思った数秒後には既に元に戻っていた。

 ライン・ヴァイスリッターやビルトファルケンを始めとする射撃戦を得意とする機体の放つビームが幾筋も放たれ、その後を追うかのようにミサイルもまた同様に放たれる。それが着弾する様子をモニタで確認しながら、俺はニーズヘッグを格納庫へと着艦させる。

 格納庫へと到着するや否や、グレイプニルの糸を解除してアステリオンAXとエルアインスを床へと降ろす。

 

「スレイ、聞こえているな。お前は暫くここで待機だ」

「待て! エルアインスの予備機に乗り換えれば私はすぐに再出撃出来る!」

 

 一応、格納庫にはエルアインスが数機程予備機として残されている。スレイが言っているのはそれだろう。

 だが、俺はスレイのそんな言葉に小さく首を振る。

 

「迷いを抱いたままで戦場に出て来ても戦力にはならない」

「私は別に迷いなど!?」

「……本当にそうか?」

 

 通信モニタ越しに、スレイの切れ長な目へとじっと視線を向ける。

 

「と、当然だ。私はこの程度で迷いを持つ程に弱くない!」

「お前自身がそう思うのなら、本当に迷いを抱いてないというのなら好きにするといい。だが自分の状態をきちんと把握出来ずに、味方の足を引っ張るような奴はシャドウミラーにとって必要無い存在だというのも覚えておくんだな」

「ちょっと待って、アクセルさん! 何もそんな言い方をしなくても!」

 

 俺とスレイの会話を聞いていたのだろう。アイビスがそう言って来るが、それに耳を貸さずにニーズヘッグをカタパルトデッキへと向かわせ、再び戦場へと舞い戻るのだった。

 

「一進一退ってところか」

「おや、お早いお戻りですね。もういいのですか?」

 

 そう言いながら、シュウのグランゾンがニーズヘッグの隣へと移動してくる。

 

「そうだな。後はスレイ自身の問題だろう」

「なるほど。……まあ、それはともかくとして。ダークブレインの様子をどう見ます?」

「どう見る、とは?」

「正直に言って、このままで勝ち目があると思いますか?」

「さて、どうだろうな。何よりも厄介なのはあの再生速度だが……それにしても飽和攻撃と言ってもいいような総攻撃でどうにか押さえ込んで……なるほど」

 

 最後の呟きに、シュウが微かに反応する。

 

「どうやら分かったようですね」

「ああ。つまり、現状のように飽和攻撃を仕掛けて一進一退。そして飽和攻撃という以上は、こちらの攻撃に関してもいつまでも続く訳ではないという事か」

 

 考えてみれば当然なのだが、弾丸やらエネルギー消費やらが激しくなれば当然その機体は同じ攻撃を続けられなくなる。ニーズヘッグに関しては永久機関に近いうえに、武器の殆どがエネルギー消費式だから問題ないが、そんな特殊な機体はヒリュウ改やハガネにもそう多くはないだろう。スパロボのシステム的に言えば、EN回復を持っている機体……それも小や中ではなく大の機能を持っている機体だ。パッと思いつく限りではエクサランス2機に、ペルゼイン・リヒカイト、ヤルダバオト、マルディクトの5機程度か。EN回復(小)なら、グランゾンも確か持っていた筈だが。

 

「私としても、まさかここまでの再生能力を持っているとは思ってもいませんでしたからね。意表を突かれましたよ。それに……」

 

 チラリと、ダークブレインへと視線を向けるシュウ。

 

「私の予想では、まだ何か奥の手を隠していそうですし」

 

 ……鋭いな。さすがシュウ・シラカワと言うべきか。

 確かに現状でダークブレインが使っている攻撃方法は、四肢や尾、羽を使った物理攻撃に、端末を出してのエネルギー波。あるいは、エネルギー波を転移させて上空から降らせたり、手足からエネルギー波を放つといったものだ。だが俺の知ってる限りでは、今のパワーアップしたダークブレインには相手を異空間へと引きずり込んでから無茶苦茶をする攻撃方法があった筈だ。それを使ってこないのは、まだそこまで追い詰められてないのか……はたまたこちらの攻撃が途切れる事が無い為に、その隙を見いだせないのか。願わくば、後者であって欲しいところだが。

 

「……そうだな。確かにあの様子だとまだ何かありそうだ。特に俺の念動力も、T-LINKシステムを通して奴の危険性に関してこれでもかと言わんばかりに警鐘を鳴らしているしな」

「なるほど、念動力……ですか」

 

 言葉を途切らせ、底の知れないような目で何かを探るようにじっと俺へと視線を向けてくるシュウ。だがそれもほんの数秒で終わり、すぐにその視線を再び他の機体から大量の攻撃を受けているダークブレインへと向ける。

 

「ダークブレインを倒すためには、まずあの再生能力をどうにかしなければなりません。そして、見たところその再生能力に関しては向こうの意志の力があってこそのようです。つまりは、その意志をへし折れば……」

「再生能力をどうにか出来る、と?」

「まぁ、恐らくですけどね。ですが、可能性は高いと思いますよ。さて、どうします? 貴方がやると言うのなら手をお貸ししますが」

 

 手を貸す? 俺に? 一体どういうつもりだ? 一瞬そんな風に思ったが、ふとその答えに辿り着く。俺がシュウのグランゾンを消耗させようとしたように、向こうも俺を消耗させようと考えていたら? それはつまり、この戦闘が終わった後に戦うべき戦力を少しでも少なくしている……あるいは分析している。そう考える事も出来るんじゃないのか?

 いやまぁ、どのみちダークブレインを倒してしまわないとどうにもならないか。

 

「それで、手を貸すというのはどうするんだ?」

「何、それ程難しい事ではありません。ダークブレインが最後の手段を使わなければならない程に追い詰めればいいのです。そう、今の姿に変身する前に私達がやったようにね。そうすれば、もしダークブレインに奥の手とでも呼ぶべきものがあったとしたら、それを使わざるを得ないでしょう」

「……それは、今までの行動とどこが違うんだ?」

 

 つまり、ダークブレインを追い詰める。シュウが言っているのは極論すればそういう事なのだろう。だが、それは今までもヒリュウ改やハガネ、そしてシャドウミラーの面子でやってきた事なのだ。

 

「ですから、私のグランゾンが本気でダークブレインへと攻撃を仕掛けるという事です」

「……本気で?」

 

 シュウのその言葉に、一瞬この場でネオ・グランゾンになるのかと思った俺は悪くない筈だ。だが、生憎とシュウの提案はそんな物騒なものではなかった。……いや、正直に言えば今すぐにネオ・グランゾンになってくれた方が良かったんだけどな。

 

「ええ。グランゾンの本気を出させて貰います。今の集中攻撃をされているダークブレインに、ブラックホールクラスターを使えば恐らくは……」

「……なるほど」

 

 確かにグランゾン最強の武器であるブラックホールクラスターは強力無比な一撃であるのは間違い無い。ネオ・グランゾンではなく、通常のグランゾンである以上は純粋に武器の威力だけならそれに匹敵する攻撃方法を持つ機体はそれなりに存在しているが、攻撃の威力というのは武器の攻撃力だけで決まるものではない。攻撃するタイミング、攻撃を命中させる場所、敵の動きの見切り等々、その他のパイロット技能を付加してこそだ。そして、シュウはそのパイロットとしての技量だけで考えれば、恐らくこの戦場でPPの恩恵がある俺を抜かせば最も高い。

 

「分かった。任せる」

「ええ、任せて貰いましょう。ですが、敵が奥の手を出してきたとしたら、それを破ってその精神を打ち負かすのは貴方の役目ですよ?」

「……いいだろう、その役目引き受けた」

 

 確かに恐らくこの戦場でもっとも機体に余裕があるのは、反則的な動力炉を3つも内蔵しているニーズヘッグだろう。機体のダメージも無いし、コンディションも良好。そしてなによりもシュウ自身は知らないだろうが、俺には精神コマンドというものが存在している。俺以外に精神コマンドが無い以上は、純粋に一撃の威力で最も高いダメージを出せるのはニーズヘッグなのだ。

 

「いいでしょう。では……いきますよ?」

 

 シュウの言葉に頷き、全機へオープンチャンネルで通信を送る。

 

「全機、グランゾンが最大級の攻撃を仕掛ける! 巻き込まれないように注意しろ! そしてダークブレインを追い詰めるために、その一瞬に全力の攻撃を集中しろ!」

 

 それだけ命じ、俺はダークブレインへと意識を集中させる、俺の言葉で他の者が動くかどうかは、正直五分五分だろう。シャドウミラーは間違い無く動くだろうが。

 だが、あの幾ら攻撃しても片っ端から再生してしまう、馬鹿げた再生能力を持つダークブレインをどうにかするには中途半端な一撃では駄目だというのは、ヒリュウ改やハガネの者達なら言わなくても分かるだろう。

 

「さぁ、闇黒の叡知を司る者よ。今こそ、それを示すべき時です」

 

 そう告げるや否や、グランゾンの胸部装甲が展開されてブラックホールが生成される。それを両手に発生した重力波フィールドで持ち上げ、次の瞬間にはまるでグランゾンそのものを飲み込む程の大きさにまで肥大化する。そしてその肥大化したブラックホールはグランゾンによって投擲され……周囲を圧倒的な超重力で包み込む、結界とも呼べるドームを作り出す。

 

『こ、これは……』

 

 そのドームから聞こえて来るダークブレインの戸惑った様な呻き声。周囲を圧倒的な破壊の空間に満たされながらも、未だに声を出せる……いや、出す余裕があるのがダークブレインの圧倒的な再生力を示している。恐らく、今あの漆黒のドームの中ではダークブレインが破壊され、同時に再生をするという行為を休むことなく繰り返し続けているのだろう。それこそ、こちらの狙いの1つでもあるかのような性急な進化をもたらすかの如く。

 そしてその黒いドームへと俺以外のシャドウミラー各機の攻撃が一斉に叩き込まれる。O.O.ランチャー、O.O.ライフル、ハルバート・ランチャー、グラビトン・ライフル、Gインパクト・キャノン、ゼネラル・ブラスター、地斬疾空刀、そして最も後方にいるシロガネからの連装衝撃砲等々。

 

『っ!? 全機、シャドウミラー隊の攻撃に続いて下さい!』

 

 ブラックホールクラスターの威力に驚いていたのか、シャドウミラー隊の攻撃から一瞬遅れてレフィーナの指示が下される。そしてヒリュウ改やハガネの各機からの攻撃や、戦艦2隻からも同様に攻撃が放たれる。

 これまでの攻撃と違うのは、この後の事を考えずに現在出来る最大級の攻撃を連続で放っている事だ。ビーム、レーザー、エネルギー波、弾丸、重力波砲、その他諸々の攻撃がブラックホールクラスターで作りあげられた漆黒のドームへと吸い込まれていく。

 そして数分後、ようやくブラックホールクラスターで作られた漆黒のドームが消え去り、中の様子が確認出来るようになる。

 

「うわぁ……」

 

 そう呟いたのは一体誰だっただろうか。だが、ダークブレインの姿はそう呟きたくなるのも分かる程に損傷を受けていた。羽、尾は当然として、四肢のうちでまだ何とか残っていると言ってもいいのは左脚のみ。それも、左膝から先は消滅している。

 まるで鎧のように身体の所々を覆っていた白い装甲も、その殆ど全てが消え去っている。胴体に関しても強力な一撃を食らった影響なのか幾つもの穴が貫通しており、そのダメージの深さが窺える。そして何よりもダークブレインという名の象徴でもあるだろう、頭部。肝心の脳髄と思われる部分はまだ何とか無事だったのだが、顔は焼け爛れ、あるいは弾痕の後が残っていた。

 恐らく、体積で言えば万全の状態から半分近くになっているだろう。それ程の大きなダメージを与えた一撃だった。

 だが……そう、だが。これまでに幾つもの世界を滅ぼしてきた存在が、この程度で終わる筈も無かった。

 ピクリ。右肩から先を失った肩の部分が動いたその瞬間。反射的に叫ぶ。

 

「気を付けろっ! まだだ!」

 

 そう注意しながら、ツイン・ドライブを使いながらダークブレインの前へと進み出るニーズヘッグ。

 

「アクセル・アルマー! 一体何を!?」

 

 誰よりも早くそう叫んだのは、ゼンガーだった。だが俺はそれを無視するようにして瀕死の状態にしか見えないダークブレインに近付いていく。

 

「アクセルさん! 危ないから下がって下さい!」

「フィオナの言う通りだ! アクセルさん!」

 

 フィオナとラウルの悲痛な叫び声。

 だが、それに言葉を返したのは俺ではなくシュウだった。

 

「これでいいのです。最初の計画通りなのですから」

「おい、シュウッ! てめえ、アクセルを見殺しにする気か!?」

 

 マサキが叫ぶが、シュウは笑みを滲ませた声で口を開く。

 

「言ったでしょう? 最初からの計画通りだと。アクセルも元から承知の上です。それに……シャドウミラーの方々は特に異論が無いようですよ?」

 

 今の俺は、ダークブレインの少しの動きも見逃さないようにして集中しているが、恐らくマサキに説明しているシュウの口元にはいつもの謎めいた笑みが浮かんでいるのだろう。

 そしてシャドウミラーの面々は俺の戦闘力を信じている。信じているからこそ、黙って俺の行動を見守っているのだろう。そして……

 

『ぐおおぉぉぉっ!』

 

 ダークブレインが大きく吠え、同時にその雄叫びと共に急速に身体中が再生していく。無くなった手足はまるで植物の生長を早送りにしているかのように生え、攻撃で貫通していた身体の各所は急速に塞がれ、焼け焦げていた鎧はその色を取り戻し、羽や尾も同様に再生していく。

 さらに異変は続く。雄叫びと共に、周囲の空間がひび割れ始めたのだ。そして、まるで当然の出来事であるかのように、俺はそのひび割れた空間の中へとダークブレインと共に放り込まれる。

 異空間へと急速に引き寄せられ、バランスを崩しているニーズヘッグの体勢をヒュドラのスラスターで立て直す。同時に一時的にではあるが、元いた俺の空間とは完全に隔離された。……どうやら、幸いな事にこの異空間に引きずり込まれたのは俺だけだったらしい。

 この異空間の中で、これまで幾多もの世界を滅ぼしてきたダークブレインと俺の最後の戦いが始まる。




アクセル・アルマー
LV:40
PP:600
格闘:270
射撃:290
技量:280
防御:280
回避:310
命中:330
SP:478
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:507

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