転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0047話

 12機のファントムの攻撃を回避に専念する事で殆どダメージを受ける事なくやり過ごしているキロノ大尉ともう2機のエルアインス。

 エルアインス1機につき4機のファントムが四方八方から攻撃しているというのに、細かいダメージはともかく致命的なダメージは1つも受けていない。

 

「なら、こっちだ」

 

 空中で姿勢制御をしながらビームガトリング砲の砲身を伸ばし、ファントムの攻撃に専念しているエルアインスへと狙いを定め……トリガーを引く。

 トリガーに指をかけていたのは数秒間だけだったが、ファントムに意識を集中していた、いや集中しすぎていたキロノ大尉以外のエルアインス2機は下半身を砕かれ、そのまま地上へと落下していく。

 

「2機、3機。これで終わりだ」

 

 元々キロノ大尉を攻撃していた4機のファントムと、撃破したエルアインス2機を攻撃していたファントム8機の合計12機によるオールレンジ攻撃を仕掛けようとしようとした時、エキドナからの通信が入ってくる。

 

「隊長、申し訳ありません。W1とW2がガーリオン隊を撃ち漏らしました。2機のガーリオンがそちらに向かっています」

 

 その台詞と同時に、最後の1機になっていたエルアインスを守るかのように2機のガーリオンがそれぞれ両肩からT・ドットアレイを応用したソニック・ブレイカーを展開しながら突っ込んでくる。

 余程俺の運が悪いのか、はたまたガーリオンのパイロット達の腕が良いのか。ソニック・ブレイカーで展開されたエネルギーフィールドがエルアインスを攻撃しようとしていたファントムを全て弾き飛ばす。

 急いで弾き飛ばされたファントムを操作しようとするが、ソニック・ブレイカーの威力により多かれ少なかれ損傷を負っている事をT-LINKシステムが教えてくる。

 この状態のファントムを動かすのは危険と判断し、そのまま地面へと軟着陸。

 何せ補給が渋られている現在、直せる可能性があるものはなるべく節約しなければいけないので無理も出来ない。

 

「残りのファントムは16機か」

 

 こうして見た感じでは、キロノ大尉以外のエルアインスに乗っていたパイロットよりも、ガーリオンに乗っているパイロットの方が腕利きな印象を受ける。

 

「だが、グロウセイヴァーを甘く見てもらっては困るな。加速・集中・直撃」

 

 努力以外の使える精神コマンドを全て使用し、ビームガトリング砲の砲身を折りたたみ、クロノスの追加ブースターを全開にする。

 急激に近づいてくるガーリオン2機とエルアインスを見ながらアダマン・ハルパーを起動し、空間倉庫からスライムを流し込む。

 ガーリオンがグロウセイヴァーが近づいてくるのを察知した時、既に俺はアダマン・ハルパーを振りかぶっていた。そして振り下ろす直前にスライムはまさにデス・サイズと呼ぶにふさわしい大鎌へと姿を変え、そのまま振り下ろす。

 

「うわぁっ」

 

 アダマン・ハルパーがガーリオンを真っ二つ――と言ってもパイロットを殺さないように頭からではなく右肩から真下にだが――するとそんな声が聞こえてくる。

 どうやら唐竹割にしたガーリオンパイロットの悲鳴が接触回線で聞こえてきたらしい。

 

「追加だ、喰らえ!」

 

 そのまま続けて、アダマン・ハルパーをスライムモードへと変え、すぐ近くで呆然としているガーリオンへとオールレンジ攻撃を仕掛ける。

 大鎌の形が崩れ、5本の鞭と化したスライムが四肢と頭を切断し、こちらは悲鳴を上げる暇もなく地上へと落下していく。

 

「次!」

 

 ついでにキロノ大尉の機体も行動不能にしようと再度アダマン・ハルパーを振りかぶろうとするが、T-LINKシステムが何かを感じ取る。

 

「っ、念動フィールド、全開!」

 

 その何かを避ける為、反射的にT-LINKシステムによる念動フィールドを全力で展開した。

 

 ガッ

 

 聞こえたのは、何かが念動フィールドを削り取るような音。

 グロウセイヴァーのモニタに映し出されているのはネオ・プラズマカッターを振り下ろし、そのまま下から切り上げようとしているキロノ大尉のエルアインスの姿だった。

 

「ちぃっ」

 

 切り上げられるネオ・プラズマカッターを右方向へと追加ブースターを噴射する事で回避しながら、アダマン・ハルパーを5つの鞭へと変化させ切り裂こうとする。

 が、まるでそれを見越していたかのように後方へと下がり、俺と距離を取るキロノ大尉。

 エルアインスは近接武装を持っていないものだとばかり思っていたのだが。……原作でも武器を自由に装備できるシステムがあったんだし、装備を変更していても不思議ではない。と言うか、これまでの行動を見る限り古強者と言ってもいいキロノ大尉が近接用の武装を1つも持っていないと考える方がおかしいか。

 

「やるな、さすが特殊部隊と言うべきか」

 

 向かい合って数秒、キロノ大尉から通信が送られてくる。

 その言葉はこちらを賞賛するものだが、獰猛な顔を見る限りまだ降参する気はないようだ。

 

「そっちこそ。まさかアダマン・ハルパーによる攻撃を見透かすように躱すとは予想外だった」

「アダマン・ハルパー? 先程の妙な近接武装か?」

「妙な、とは酷いな。テスラ研の最新鋭機、グルンガスト参式の武装に使われている技術を流用したものなんだが」

「ほう、テスラ研と繋がりがあるのか。なら見た事の無い武装や機体を持っている事もそれ程不思議ではないな」

「うちの技術班からテスラ研に技術協力しているのがいてな。その見返りみたいなものだ」

 

 言うまでもなくレモンの事だが、アギュイエウスの安定簡易版とも言えるリュケイオスの開発はどうなっているのだろうか。

 そんな事を思いつつ、クロノスから伸びているリニアレールガンの砲身を伸ばす。

 

「そんな長物をわざわざ撃たせると思うか?」

「さて、それはどうかな? ファントムッ」

 

 俺の叫びと共に、残り16機のうち12機を射出する。4機はいざという時の保険として取っておきたいので、自由に使えるファントムは正真正銘これで全てだ。

 だが、さすがと言うべきかキロノ大尉は回避や防御に徹してファントムからのダメージを最低限に抑え、なおかつこちらへの注意も怠っていない。

 

「けど、これでも回避しきれるか?」

 

 呟き、リニアレールガン……ではなく、クロノスの武器ラックから取り出したガン・レイピアで狙いをつけ、トリガーを引く。

 ガン・レイピアから発射される数条のビーム弾。それを装甲を削られながらもそれでも直撃は避けるキロノ大尉。

 だが……

 

「本命はこっちなんでね」

 

 砲身を展開していたリニアレールガンのトリガーを引く。

 他の武器に比べると驚く程低い発射音をたてながら、電磁力により飛ばされた弾丸は目標へと向かう。キロノ大尉のエルアインス……では無く、エキドナが相手をしている量産型ゲシュペンストMk-Ⅱへと。

 最初の弾丸が量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの下半身を砕き、地面へと墜落するのを確認しつつ、続けざまにリニアレールガンを発射。

 

「ちぃっ、そっちが狙いか! ファルコン隊、気をつけろ! こちらから狙われているぞ!」

 

 慌てたキロノ大尉からの通信が響くが、既に量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの数は2機にまで減っている。

 そしてその2機もすぐにエキドナの乗るランドグリーズから放たれたリニアカノンと量産型Wのネオ・プラズマカッターで行動不能になってしまう。

 

「俺を攻撃すると見せかけて仲間の援護か。なかなかに強かじゃないか」

「お褒めにあずかり恐悦至極……とでも言えばいいか? 残るはキロノ大尉のエルアインス1機にガーリオンが2機だけ。そろそろ降参してもいいと思うが?」

 

 ガーリオン隊を担当していた量産型Wだが、2機をこちらに逃がしてしまったものの、残り3機のうち、既に1機を行動不能にする事に成功していた。

 エキドナに比べるとペースが遅いが、そこは量産型WとWナンバーズの能力の違いなのだろう。それに相手が元々空戦を想定して作られたガーリオンというのもあるかもしれない。

 どのみち残るガーリオンは2機。エキドナと量産型W3人ならまず問題は無い。

 

「それでも、それでも俺達はあの腐った基地司令の命を受けたお前達に負ける訳にはいかんのだ!」

 

 心の底からの絶叫、というのはこういうのを言うのかもしれない。

 そんな風に考えつつ、連続で撃ち込まれるG・リボルヴァーの弾丸をグロウセイヴァーの機動力を活かし回避する。

 

「なるほど、なら嫌でもこちらの命令を聞いてもらうしかないな」

 

 射出していた12機のファントムを一時後退させ、グロウセイヴァーの後方で待機させた。

 ついでに最後の保険として残しておいた4機のファントムも射出。これで計16機のファントムでの攻撃が可能になる。

 リニアレールガンの砲身を折りたたみ、高速機動を可能に。アダマン・ハルパーを大鎌状態で固定し、全ての準備は完了した。

 

「キロノ大尉、今回は色々と勉強をさせてもらった。これ程腕の立つパイロットとやりあったのは久しぶりだ。なかなかに楽しい一時でもあった。だが、それもそろそろ終わりにしよう」

「……いいだろう。俺に勝ってまだ尚この命がある時には中尉に大人しく投降してもいい」

「その言葉、忘れるなよ。加速、集中、直撃」

 

 最後の精神コマンドを使用する所だけは口の中で呟くだけにする。

 

「では、行くぞ!」

「来い!」

 

 精神コマンドの加速を使用し、クロノスに装備されている追加ブースターも全開にしてキロノ大尉へと猛スピードで迫る。

 対するキロノ大尉は右手にネオ・プラズマカッターを持ち、左手にはG・リボルヴァーでこちらを迎え撃つ態勢だ。

 牽制の意味も込めて撃ち込まれたエルアインスの両肩に装備されたツイン・ビームカノン。それを機体をロールさせる事で回避し、さらに接近する。

 グロウセイヴァーの手を伸ばせば触れる距離まで近づき、アダマン・ハルパーを振りかぶり……集中を使った効果で違和感を覚え、咄嗟にエルアインスの足下を潜るようにブースターを噴射する。同時につい一瞬前まで俺がいた場所をG・レールガンの弾丸が貫いていく。ネオ・プラズマカッターとG・リボルヴァーで両手が塞がっている状態でどうやって撃ったのかは分からないが、間一髪それを回避する事に成功した。

 渾身の一撃を放った後の隙を突き、そのままエルアインスの下半身をアダマン・ハルパーで斬り落とす……つもりだったのだが、咄嗟の回避で右脚を斬り落としただけに留まった。

 こちらの攻撃をなんとかやり過ごしたエルアインスが、その勢いを利用してネオ・プラズマカッターで斬りかかってくる。

 

「念動フィールド、全開!」

 

 ギャリッと、何かを擦るような音が響くが念動フィールドは切り裂かれる事なく健在だ。そして念動フィールドに攻撃した事によって動きを止めたキロノ大尉。

 

「ファントムッ」

 

 エルアインスに突撃する前に後方で待機していた16機のファントムがレーザーを放つ。それもバラバラではなく、16のレーザー光がエルアインスの下半身1ヶ所に集中するように。

 そして同時にアダマン・ハルパーを鞭状態にして近距離からのオールレンジ攻撃。

 

「沈めっ!」

 

 水銀の鞭はキロノ大尉のエルアインスの両腕と頭を斬り裂いた。

 チラリとエキドナの方を確認すると、ちょうどそこでもガーリオンの最後の1機を無力化に成功している。

 俺が突撃してからほんの数秒。だが、限りなく濃い数秒だった。

 落下していくエルアインスを受け止め、通信を送る。

 

「キロノ大尉、約束は守ってもらうぞ」

「……了解した」


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