転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0591話

「……以前」

 

 手紙の置かれているテーブルを目にしながら、ポツリとギルフォードが口を開く。

 

「以前、とある戦場でダールトン将軍が言った事がある。『姫様のいる場所が我等の国だ』と。そして、私もそれには全面的に同意している」

「確かに。あれは確かエリア18での出来事でしたか」

 

 懐かしそうにクラウディオが頷く。

 そう言えば、確かに原作でそんなシーンがあったな。

 

「故に、ブリタニアと姫様。そのどちらかを選べと言われたのなら……私は迷う事無く姫様を選ぼう」

 

 そう告げ、ギルフォードはテーブルの上に置かれている手紙へと手を伸ばし……躊躇せずに封を切る。

 

「……」

 

 そのまま無言で数枚の手紙へと目を通すのを、俺はじっと見守っていた。ここで何かを言う程に野暮ではないつもりだし、あの手紙にどんな内容が書かれているのかというのも、大方は予想しているしな。

 

「……ふぅ」

 

 部屋の中が沈黙に包まれる事、5分程。何度か手紙を読み直したギルフォードは、そっとその手紙を隣に座っていたクラウディオへと手渡す。

 そのままクラウディオが手紙へと目を通している間、再び部屋の中は沈黙に包まれた。

 

「建国、ですか」

 

 ポツリと。手紙を読み終わったクラウディオが口に出す。

 

「コーネリア殿下の視野は、既にブリタニアやこの世界だけではなく、平行世界にまで向かっているのですね」

「そうだな。この短期間で姫様は驚くべき成長をなさっておられる。これに関しては、アクセルやシャドウミラーとか言ったか。そこの者達に感謝をせねばならないだろうな」

「こっちにも利があっての行動だ。それに……」

 

 これを言うのは憚られるが、コーネリアの下に……そして、シャドウミラーに所属する以上はどうしても知られるだろう事になる。

 

「それに?」

 

 先を促すギルフォードの言葉に、意を決して口を開く。

 

「今のコーネリアは、俺の魂の伴侶。その1人だ」

「そうか、それは……待て。『1人』だと? それではまるで何人もお前の恋人がいるような……」

「そうだ。今の俺はコーネリアの他にも2人、恋人がいる。俺、コーネリア、そしてその恋人2人がシャドウミラーの最高幹部と言ってもいいだろう」

 

 そう告げた瞬間、ギルフォードの拳が振りかぶられ……次の瞬間、俺とギルフォードの間にあったテーブルが吹き飛ばされ、その拳が俺の頬へと命中する。

 本来であれば混沌精霊である俺に物理攻撃は一切通用しない。だが、この拳を避けるというのは、即ち友人でもあるギルフォードの意志を正面から受け止めないという事を意味している。それに恋人が3人もいるというのは、そしてこれからも増える可能性があるというのは、常識で考えれば明らかにおかしな事なのだ。コーネリアに絶対の忠誠を誓ったギルフォードが、その事実をそう簡単に許す事が出来無いというのは理解していた。その為、俺はギルフォードの拳を正面から受け止める。

 左頬に感じる衝撃。その衝撃を受けながらも、俺は微動だにせず視線をギルフォードの方へと向ける。

 

「アクセル……お前が姫様の部下であった時から、姫様がお前に惹かれているというのは分かっていた。お互いの身分が違うという事は理解していたが、それでも私はお前と姫様が付き合う事になればいいと思っていたさ。だが……だが! だからといって姫様の他に恋人を……しかも、複数人作るだと!? お前は姫様を、何だと思っている!」

 

 ギルフォードの口から放たれる怒声。それはこの部屋が防音でなければ、恐らく店の者が何があったのかと部屋の様子を見に来かねない程の大声だった。

 普段冷静沈着なギルフォードであるだけに、その怒りがどれ程のものなのかは容易に想像出来る。だがそれでも、俺は殴られた左頬をそっと撫でてから口を開く。

 

「コーネリアは、俺の愛するべき女の1人。さっきも言ったが、魂の伴侶の1人だ」

「ならば何故姫様以外にも恋人が存在している!」

「俺の気が多い事に関しては言い訳はしない。だが、俺がコーネリアを愛しているというのも紛れも無い事実。そうでなければ、魂の伴侶として求めたりはしないし、何よりも今の関係はコーネリア自身も受け入れている」

 

 ピクリ、とギルフォードの頬が動く。

 

「コーネリア様も受け入れている、と?」

「ああ。どうしても信用出来ないのなら、今度コーネリアに直接聞いてみるといい。そうすればはっきりするだろう」

 

 その一言でようやく怒りがある程度は解けたのか、深く溜息を吐きながら倒してしまったテーブルを元へと戻す。

 それでも完全に怒りが収まった訳でないというのは、ギルフォードの怒りの深さを物語っていたのだろう。

 

「ふぅ。……この話に関しては、後日コーネリア様に直接尋ねて、それからこちらの態度を決めさせて貰う」

「そうしてくれ」

「……それにしても魂の伴侶、ですか。また大袈裟な名前ですね」

 

 クラウディオが先程テーブルを倒した時に床に転がった布巾やら何やらを元に戻しながら尋ねてくるが、俺はその言葉に首を左右に振って、否定する。

 

「別に大袈裟でも何でも無いさ。今のコーネリアを含めて俺の恋人3人は全てが時の指輪という魔法のある世界で得たマジックアイテムを指に嵌めている。この指輪の効果は、装着している者を時の外に置くという物で……そうだな、分かりやすく言えば不老になるという効果を持っている」

 

 ピタリ。その言葉を聞いた途端、ギルフォードとクラウディオ2人の動きが止まる。

 

「不老……それはつまり、姫様はもう死なない、あるいは死ねないという事か?」

「いや。ギルフォードの言葉は惜しいが、今も言ったように不老でしかない。決して不老不死ではない。その為に年齢は今のまま変わることは無いが、怪我で致命傷を受ければ死ぬ」

「何故そんな道具を姫様に?」

「決まっているだろう。俺も不老だからだ。他にも時差の問題とか色々とあるが、最も大きい理由はそこだな」

「……アクセルさんも時の指輪というのを付けているんですか?」

 

 俺とギルフォードの話を聞いていたクラウディオがそう尋ねてくるが、小さく首を振る。

 

「俺の場合はちょっと違う。……さっき魔法のある世界があると言ったと思うが、そこでとある魔法を使って……いや、使いすぎてな。人間より上位の存在に生まれかわってしまったんだよ」

 

 呟き、右腕全てを白炎へと変える。腕の形をとった炎がユラユラと揺れる様子に、2人は唖然とした顔を俺へと向けている。

 

「混沌精霊。それが今の俺の種族名だ。特徴としては物理攻撃は一切効果が無いってことだな。クラウディオ、俺に何か投げ付けてみろ」

「……いいんですか?」

「ああ」

「では、失礼します」

 

 一言断り、懐から取り出したペンを素早く俺へと向けて投げ付けてくる。

 いや、それは投げ付けるというよりは投擲すると表現した方が正しいだろう。もし俺が普通の人間だったとしたら、恐らくペン先が皮膚に突き刺さっていた程の一撃だ。だが……

 

「え!?」

 

 俺の身体を通り抜け、そのまま壁へとペン先が突き刺さったのを見て驚愕の表情を浮かべるクラウディオ。そしてそれはギルフォードもまた同様だった。

 にしても、壁に突き刺さる速度と威力でペンを投げるとか。……実はギルフォードに負けないくらいに俺に対して怒っていたりするんだろうか。

 まぁ、それはともかく。

 

「ご覧の通り、今の俺はこんな状態だ。……さて、取りあえず俺に関しての情報はこれでいいだろう。お前達は俺達に協力してくれると考えてもいいのか?」

「もちろんだ。私は姫様の騎士なのだから」

「私も同様です。グラストンナイツはコーネリア殿下の為の部隊です」

「よし。それならまずは……ギルフォード、中華連邦にいる黎星刻という人物がどこにいるのかを調べてくれ。恐らく近い内に大宦官と共にエリア11に来るか、あるいは既にもう来ていると思うが」

「分かった」

「クラウディオ、お前は他のグラストンナイツのメンバーに今聞いた話をして、出来れば全員こっちに引き込んでくれ」

「任せて下さい」

 

 俺の言葉に2人が頷くが、不意にギルフォードが俺へと視線を向けて口を開く。

 

「中華連邦の人物を捜せという事は、その新国家は中華連邦の領内に作るのか?」

「そうだな。それに、先程も言ったユーフェミアの虐殺宣言に関しての秘密も中華連邦に眠っている」

「待て! するとあの出来事は中華連邦が起こしたと!?」

 

 勢い込んでくるギルフォードに、無言で首を左右に振る。

 

「いや、その勢力は中華連邦内に潜んでいるだけだ。何人かの協力者はいるかもしれないが、基本的に中華連邦は関係無い筈だ」

「……では、どこが?」

「それは今はまだ言えない」

 

 さすがにブリタニア皇帝の直轄云々というのを、今のギルフォードに言う訳にはいかないだろう。もっとも、そんな事件を起こせるような集団はそうそう無い。中華連邦、EU、そして……ブリタニア。恐らく薄々は察しているんだろう。

 

「他にも、一応は建国予定の国がどういう存在になるのかを教えてもいいが……聞いていくか?」

「もちろんだ。姫様が建国するというのだから、どのような国になるのかは是非聞かせてくれ」

 

 ギルフォードに続き、クラウディオもまた頷き、改めて椅子へと座り直す。

 

「言っておくが、別にコーネリアの国って訳じゃないぞ? その国は俺やコーネリアにしてみれば、あくまでもシャドウミラーの出先機関を置く為に作る国だ。もちろんその国を影から操るとか、そんな風には考えていないが……」

 

 色々と考えた結果、理想としてはオーブのように自力でもある程度の判断や戦力を持っている国というのが望ましいという事になった。そして俺達シャドウミラーはその国の同盟者、あるいは後ろ盾といった風な立場が望ましい。でなければ、国の運営でこっちも忙しくなりそうだしな。シャドウミラーの最大の弱点でもある人材不足を考えると、こっちから人手を出すのは遠慮したい。

 もちろん量産型Wを使ってもいいのなら人材は無制限だが、まさかあの不気味なヘルメットを被った奴等を派遣する訳にはいかないしな。

 それでいてサクラダイトを一定量確保する為には、この世界に対する一定以上の影響力を保持する必要もある。

 

「では、その国は誰がトップに立つというのだ?」

「国の象徴として現在の中華連邦の天子。そして表向きの代表としてオデュッセウス。国を実質的に動かすのは、お前に頼んだ黎星刻という人物だ」

「オデュッセウス殿下はともかく、黎星刻というのはそこまでの人物なのか?」

「ああ。文官、武官、その両方でこの世界トップクラスの人物だ。だが、この人物が心酔しているのが天子でな。その為に実際には権力の無い、この国の象徴として天子を迎え入れようとしている訳だ。オデュッセウスに関して言えば、その人柄が広く知られていて好意的な人物が多いからな」

「……戦力に関してはどうする? 今のアクセルの話を聞く限りでは、基本的には中華連邦の人材を主に使うらしいが、ガン・ルゥではブリタニアに勝つ事は不可能だぞ」

 

 実際にキュウシュウ戦役を含めて俺がこの世界にいる時に幾度となくガン・ルゥと戦ってきただけに、ギルフォードのその言葉には重みがあった。

 

「出来れば、お前に軍を統括して欲しいんだが……無理だろう?」

「当然だ。私は姫様の騎士なのだから。この件が終わったらシャドウミラーに所属させて貰おうと思うが……構わないか?」

「お前程の腕利きならこっちとしても大歓迎だよ。だが、機体はKMF以外となる。何しろ、機体性能差が激しすぎるからな」

「……そうなのか?」

「ああ。俺が以前乗っていたランドリオンとガーリオン。あの2機が完全に時代遅れの産物だと言えば分かるか? ランスロットで最低限の性能だと思ってくれればいい」

「……」

 

 さすがにそこまでの技術格差は予想外だったのか、思わず沈黙するギルフォードとクラウディオ。

 

「何しろ、シャドウミラーが大量生産出来る無人機が大体そのくらいの性能だからな。もちろんそれは純粋な機体性能であって、パイロットの技術で覆る事もある。だが、考えてくれ。ランスロットと同レベルの性能を持った無人機が……それも枢木スザク程の操縦技術は無いにしても、かなり高性能なAIが操る機体が100機、500機、あるいは1000機と群れで襲い掛かって来る光景を」

「……地獄、ですね」

 

 クラウディオが真っ青な顔をして呟く。

 

「分かってくれればいい。それとこんな話をしておいてなんだが、出来ればグラストンナイツには新しく作る国家の軍隊に入って貰いたい。幾ら何でも、全機が無人機では話にならないしな。その無人機を操る人間というのは必要だ」

「すぐには返事を出来ません。政庁に戻って他の皆に相談してみたいと思います」

「ああ、そうしてくれ。……さて、大まかな話はこれで終わりだ。色々とまだ教えていない事もあるが、それに関してはこれから徐々にだな。まずはそれぞれに頼んだ事柄をしっかりと頼む。特にギルフォード、お前に頼んだ黎星刻との接触は可及的速やかに頼む」

 

 こうして、俺達のギアス世界で新国家を作りあげるための暗躍が始まる。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:0
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:509

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