転生とらぶる   作:青竹(移住)

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前回から暫くスレイ回が続きます。


0607話

「アクセル、これはどうだ? その、似合うか?」

 

 街で売っていた中華風の赤い髪飾りをつけて俺に見せてくるスレイ。

 

「そうだな……悪くないと思う。スレイの髪の色が青だからな。赤が良く映えているぞ」

「そ、そうか。……店主、これをくれ」

「はいよ。いや、良かったねお嬢ちゃん。彼氏に褒めて貰えて」

 

 洪古から渡された活動資金から髪飾りの代金を支払うと、店主が笑みを浮かべながらそう告げてくる。年の頃は俺やスレイよりも5歳程年上か。慣れた様子で声を掛けてくるが、次の瞬間にはスレイが俺と恋人に間違われた羞恥で顔を真っ赤にして否定する。

 

「ばっ、馬鹿を言うな。私はだな……」

「スレイ、そんな言葉にいちいち反応していたら身が持たないぞ」

「う、う、う、うるさい! 大体お前も、何でそうやって平然としていられるんだ。少しはこう、照れたりしてもいいんじゃないか!?」

「実際の関係はともかく、こうして2人で街中を歩いているんだから恋人同士に見られても仕方ないだろう。いちいち大袈裟に騒ぐから、かえって面白がられるんじゃないか?」

 

 そう告げた俺の言葉に、何故か露店の店主は呆れた様な視線を向けてくる。次いで、スレイの方へと同情するような視線を向け……

 

「お嬢ちゃんも相方がこんなに鈍いと苦労するね」

「わ、私は別にそんな苦労なんて無い! 無いったら無いんだ! アクセルが言ってるように、私と奴は別に特別な関係じゃないんだからな!」

「あー……そうか。こっちの嬢ちゃんもか。まぁ、いいさ。悪い事を言ったみたいだな。なら、詫び代わりに忠告を1つ」

「……忠告?」

「ああ。ここは天下の洛陽だから問題無いけど、あんたらみたいにあからさまにこの国の人間じゃないって奴は地方に行くと嫌な目に遭う可能性が高い。だからあまり地方には出掛けない方がいいと思うぞ。もっとも、インド軍区みたいな場所まで行けば容姿とかはあまり関係ないんだろうが」

「……なるほど。忠告、感謝する」

 

 スレイが払った髪飾りの代金の他に情報料代わりに少しだけ金を渡し、スレイと共に露店の前から移動する。まだ顔を赤くして俺を睨んでいるスレイだが、あのままあそこにいて目立つ訳にいかないというのも理解しているのだろう。

 ……そう。露店の店主が言っていたように、俺とスレイが今いるのは中華連邦の首都でもある洛陽だったりする。もちろん観光とかで来ている訳では無い。目前に迫った建国の時に備えた工作活動の一環だ。

 この洛陽は首都というだけあって、当然数多くのKMFがすぐ側の基地に存在している。その他にも、ライノセラスのような陸上戦艦のような物もある。今回の目的はその陸上戦艦を鹵獲する事だ。シャドウミラーとしてはメギロートやPTのような戦力の派遣はともかく、母艦で提供出来る物がない。いや、あるにはあるのだ。俺がSEED世界のアラスカ基地から盗んだ輸送艦とかが一応。だがそれらはMSで数機、それよりも遥かに小さいKMFでも、1隻に10機前後積み込めるかどうかだろう。さらにガン・ルゥが主戦力である以上は空挺降下のような真似が出来る訳も無く……かといって、シロガネに関しては改修に手間取っているので決起の時には間に合うかどうかが正直微妙だ。

 そうなると、やはりライノセラスのような地上戦艦が必要になってくる訳だ。そして中華連邦には標準的な地上戦艦のロンダンと、旗艦として使われる大型の地上戦艦ターロンダンの2種類がある。

 ……まぁ、性能的に考えるとOGs世界のライノセラスとは比べものにならない程に低いし、更には現在のブリタニアにはアヴァロンを始めとする空中戦艦の類もある。それらを考えると力不足ではあるのだが、かと言ってイスルギ重工辺りにライノセラスを頼むのも難しい。

 何しろライノセラスは非常に巨大だ。そうなると当然建設すると目立つ。ケネス辺りにイスルギ重工に対する攻撃材料……否、口撃材料を与える事になるし、何よりも今日頼んで明日すぐに完成する訳でも無い。在庫があればそれを買い取ればいいんだが……DC残党やらノイエDC辺りが象徴的な意味合いとして使ってるらしいしな。

 

「ん? あそこだな」

 

 歩いていて見えてきた店に、思わず呟く。そこは星刻の部下との待ち合わせをしている場所だ。ロンダンやダーロンダンがどこにあるのかを調べて貰っている訳だが……

 

「おい、そろそろ機嫌を直せよ」

 

 どこかツンとした顔で、俺の方へと意地でも視線を向けてこないようにしているスレイへと声を掛ける。

 

「ふんっ、別に私は怒ってなどいない。そもそも何故私が怒る必要がある?」

「……まぁ、確かに」

 

 敢えて言うとするなら、俺と恋人と間違われたのがそれ程不快だったのか?

 まぁ、スレイはブラコンで今までフィリオ一筋といっても良かっただけに、俺やレモン、コーネリア、マリューとの関係に対して良い感情を抱いていないのは知ってるが。

 

「なら、せめて普通にしていろ、普通に。お前みたいな美人が不機嫌そうにして俺の隣を歩いているといらない注目を受けるだろ」

「び、美人!?」

「ん? ああ。お前は美人だろう? スタイルも鍛えているせいか文句無しだし」

「ばっ、ばばば、馬鹿な事を言うな!? 思ってもいないくせに!」

 

 再び顔を真っ赤に染めて怒り出すスレイだったが、これ以上相手にして騒がれてもいらない注目を受けるだけだと判断して、そのまま強引に驚く程細い腰を抱いて目的の店へと向かう。

 

「どこを触っているアクセルお前は!?」

 

 混乱の為か、息継ぎも無しで騒ぎつつ腕の中でジタバタと暴れているスレイの腰を抱きかかえ、俺は目標の店の中へと入っていく。

 

「いらっしゃい」

「待ち合わせをしているんだが」

「どなたとでしょう」

「星の刻の印を持つ相手とだな」

「……奥の個室でお待ちですので、どうぞ」

 

 店主と短いやり取りをし、そのまま指示された個室へと向かう。

 

「アクセル、今の会話は……」

 

 ようやく落ち着いたのか、俺の腕の中から脱出したスレイの言葉に無言で頷く。

 

「ああ。あの店主も星刻の組織の一員だ」

「……なるほど。どうやら星刻という男の手は予想以上に長いようだな」

「だろうな。戦闘能力ならともかく、純粋に政治的な能力で言えば俺とは比べものにならない程に上だろうよ」

「そうか? 私から見ても、アクセルは十分以上に良くやっていると思うが。イスルギ重工での交渉とか」

 

 個室へと向かう途中の通路を歩きながら小さく首を振る。

 

「あの交渉に関しては、色々と反則的な方法を使っているからな」

「反則的な方法?」

「ああ。それが何なのかは言わないが……だが魔法という存在や、あるいは俺達の世界に存在しない機体の提供という裏技があったのは事実だな」

 

 当然反則的な方法――鵬法璽――については口にしない。正直、俺自身他人の意志を強制的に縛るというのは好んでいないというのもあるし、ここでそれを口走ってどこからどう他の者に知られるかもしれない可能性を考えると、迂闊に口に出せる内容では無い。

 そんな風に考えつつ、通路を進み通路の一番奥にある個室の扉をノックする。

 すると次の瞬間数cm程度だけ扉が開き、次の瞬間にはその隙間からこちらを観察するような視線が向けられていた。

 そんな視線を受けながら、洪古から受け取った指輪を見せる。

 

「……待っていた。入ってくれ」

 

 それでようやく俺を信用する気になったのだろう。扉が一旦閉められ、チェーンか何かを外す音がして再び扉が開かれた。

 そこで改めて連絡員である男の顔を確認出来たのだが、見た感じでは大体30代程の中年の男だった。体型として見る限りではヒョロリとしており、とても軍人には見えない。

 そんな風に思いながら部屋の中へと入ると、テーブルの上には幾つかの中華料理が載っている。

 

「食ってくれ。話はそれからだ」

 

 そんな男の言葉に勧められ、まずはとばかりに皿の上に乗っていた肉まんに手を伸ばすが……

 

「……」

 

 思わず眉を顰める。不味くはない。決して不味くはないんだが、それでも美味いとは言えない味。少なくてもネギま世界で食べた四葉の作った超包子の肉まんと比べると雲泥の差だ。隣を見ると、回鍋肉を口に運んでいたスレイも微かに眉を顰めているのが見える。

 

「……あまり美味くないだろう?」

 

 そんな俺達の様子に、声を掛けてくる男に無言で頷く。本来なら美味いとお世辞でも言わないといけないんだろうが、男自身が分かっているとでも言うように頷いていた為だ。

 

「そうだな、正直いまいちだ」

「ふっ、正直な人だ。だが、これでもここの料理は大分マシでね。そもそも材料の質が悪いのを、料理人の腕で何とか補っている感じなんだよ」

「……何でそこまで材料の質が悪い?」

「決まっている。大宦官の奴等が必要以上に取り立てているからさ。それでもこの洛陽はまだ首都だから食うのに困らない程度の食べ物はあるが……星刻様の支持者が多い地方では、餓死者が出る事も少なくないそうだ」

「……なるほど。まぁ、星刻と俺達の計画が上手く進めば多少はマシになるだろう」

 

 もっとも、この洛陽は俺達が切り取る予定の地域ではないから、逆に今までよりも生活が苦しくなる可能性もあるが。

 いや、どのみち俺達が国土を切り取れば確実に鎮圧するために軍を送ってくる。その軍を撃破していけばいずれこの洛陽も……

 

「その為には、まず大宦官共に従う軍の戦力を少しでも減らさないとな」

 

 俺の呟きに男が頷き、1枚のデータディスクをこちらへと渡してくる。

 

「今回の目標であるロンダンやターロンダンが収められている周辺の地図や警備状況、配備されているKMFの位置だ。星刻様から指示された内容については大体網羅していると思う。ただし、あくまでもこの情報は俺が入手したものだ。いつ大宦官が気紛れに出した指示で変更になるか分からないというのだけは覚えておいてくれ」

「……大宦官とやらは別に軍事の専門家でもないんだろう? なのに口を出してくるのか?」

 

 八宝菜を食べていたレンゲの動きを止めて呟くスレイ。その言葉に男は苦々しげな表情をして小さく頷く。

 

「ああ。どうやら自分達の権力をひけらかしたいらしくてな。よくとんでもない命令をされる時があるよ。例えばKMFで街周辺の警備をするために後の部隊に引き継ぐのは無駄が多いから1日中休み無しで警備していろとかな」

「何だ、その無意味な指示は」

 

 基本的に人間の集中力というのは長時間は持たない。本気の集中力という意味では数分が限度である。もちろん警備にそれ程の集中力が必要無いとはいっても、丸1日休み無しで警備をしろというのは無茶としか言いようがないだろう。そしてエナジーフィラーが切れて動かなく……いや、警備で機体を動かさないのなら何とかなるのか?

 

「だから言っただろう? 自分の権力を見せつける為に無意味な命令をしてくる事もある、と」

「……なるほど」

「もっとも、そんな奴等だからこそ大宦官と繋がっている上の方はともかく、軍部の下の方はこっちに協力してくれるんだが。その情報もそんな奴等から回ってきたものが大きいな」

 

 俺の手元にあるデータディスクを見ながら、呟く男の言葉に頷きながら口を開く。

 

「こっちが動く為に最低1人はある程度の地位にいる奴が必要になるんだが……そっちはどうなっている?」

 

 俺の空間倉庫は生命体を収納する事が出来ない。つまり、ロンダンやターロンダンの中に中華連邦の軍人が残っていると収納は不可能な訳だ。その為、どうにかして内部の人間を全て外に出さないといけないんだが……

 

「問題無い。こちらに引き込む事に成功したのがいる。それなりの地位にいる奴だから、兵隊なら命令に従うだろう。もっとも、基地指令とかが出て来ると怪しいが。ただ、注意点としてロンダンを奪って脱出する時にそいつも連れていって欲しい。それがこちらに協力する条件だからな」

「……仲間を見捨てると?」

 

 スレイの呆れた様な言葉に、男は眉を顰めて首を左右に振る。

 

「まぁ、あんたらにはそう見えるかもしれないが、そいつは家族が地方にいるんだよ。だからこそ、星刻様が今回立つのはその家族の為になると信じている訳だ。言っておくが、自分の地位や権力だけを欲して軍に入るという奴はそれ程多くないぞ。どちらかと言えば自分が食う為に……そして、家族を飢えさせない為にって奴が多い」

「なるほど。私の勘ぐり過ぎだったようだな。すまない」

「いや、気にしないでくれ。実際に大宦官に擦り寄っているような奴もいるのは事実だ。端から見てそう思われても仕方ないさ」

 

 こうして必要なデータを手に入れた俺達は、いまいち美味くない食事を終えてその場で別れるのだった。……さて、明日はいよいよ地上戦艦の奪取だ。スレイやメギロートにも頑張ってもらわらないとな。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:0
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???

撃墜数:509

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