転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0687話

 シェリルのライブで行うアクロバット飛行のメンバーと顔を合わせて数日。いよいよシェリルのライブの日がやって来た。

 

「うわ、さすがに凄い人混みだな」

 

 ミハエル達と合流する為にコンサート会場の近くまで移動したのだが、俺の視界に入っているのは人、人、人。とにかく無数の人混みだった。

 どこからこれ程集まってきたのかと思ったが、次の瞬間にはすぐにフロンティア船団中から集まってきたのだと納得する。

 そう言えば、昨日、一昨日辺りからTVはシェリルの特集をこれでもかとばかりにやってたからな。もっとも、シェリルがフロンティア船団に到着した時にも取材は凄かったらしいが。

 

「今日は色々と忙しくなりそうだな」

 

 人混みを見ながら呟く。

 勿論ライブでのアクロバット飛行もそうだが、ようやくL.A.Iで行われていたVF-25Sの各種調整が終わってS.M.Sの方へと搬入されたというのもあるので、そっちの方も見ておかないといけない。一応シミュレーターで確認している以上はそれ程神経質になる事は無いという話だが、やっぱりその辺の確認はしっかりとしておきたい。

 これがレモン率いるシャドウミラーの技術班なら、今までずっと一緒にやってきているのでそれ程心配はいらないのだろうが、L.A.Iなんて企業は殆ど知らない。それこそ、この世界に転移してきてからの日数程度しか知らないのだ。そうなれば、当然その技術力やら何やらを最初から完全に信頼出来る訳が無いのは確かだろう。それはVF-25を開発した実績とかは全く関係無く、純粋に俺の問題だ。

 しかもここは恐らく俺の知らないマクロスの世界。そうなると、兵器開発会社――ルカに言わせれば総合機械メーカーらしいんだが、俺からしてみればそう変わらない感じだ――のL.A.Iが何らかの重要な役目を負うだろうというのは容易に予測出来る。

 それがせめて主人公側の企業ならまだいいが、もし敵側の企業だったりしたら……いや、考え過ぎか。

 小さく首を振り、まずは人混みを掻き分けながら移動してミハエル達との合流場所へと向かう。

 まずはEX-ギアを装着しない状況で1度コンサートの関係者に挨拶するんだったな。

 

「にしても……人混みに酔いそうだ」

 

 大量にいる人混みを掻き分けながら移動していると、どうしても人混みに酔いそうになる。

 いっそ影のゲートを使って移動してやろうかとも思ったが、さすがにそれは自重する。

 折角俺の異常性をあまり知られないように行動しているのに、まさか人混みを移動するのが面倒臭いからという理由で自分の能力を周囲に……オズマやジェフリーに知らせる訳にもいかないしな。

 そんなこんなでようやくミハエル達と合流し、スタッフ達の集まっている楽屋裏へと移動する。

 

「で、その挨拶云々ってのはまだ掛かるのか?」

「そうだな、責任者の人は今ちょっと忙しいらしいからここでちょっと待ってろって話だ。……って事で、お前達はここで待ってろよ」

「お前はどうするんだよ?」

 

 そんな俺の問い掛けに、笑みを浮かべながら周囲を見回す。

 

「蝶は蜜を求めて花から花に渡り歩くのさ」

「……ようはナンパですね。ミシェル先輩らしいと言うか、何と言うか」

 

 俺の隣で話を聞いていたルカが溜息混じりにそう告げる。

 

「ふふん、俺はナナセ一筋の誰かさんとは違うからな」

「ナナセ?」

 

 聞き覚えない名前に尋ねると、ミハエルが意地の悪い笑みを浮かべつつルカの方へと視線を向け……

 

「ちょっ、ミシェル先輩! いいです、分かりましたから花でも華でも鼻でも行って下さい!」

「悪いね、頼りにしてるぜ」

 

 そう言い、早速とばかりに少し離れた場所にいる数人の派手な衣装を着ている女達へと声を掛けるミシェル。

 そんな様子を見ながら、ルカは溜息を吐く。

 

「全く、これからシェリル・ノームのライブで飛ぶっていうのに……あの心臓の強さは羨ましいような、羨ましくないような」

「そうだな、取りあえず……」

「アクセル君?」

 

 ポケットから取り出した携帯を操作している俺を見て尋ねてくるルカに、何でも無いと首を振ってメールを送信を完了する。

 送信先はミハエルの担当でもあるクランだ。このライブが終わったらさぞ賑やかな事になるだろう。

 

「はぁ、アクセル君も……わざわざ騒ぎを起こさないで下さいよ。知りませんよ? あの2人の喧嘩に巻き込まれても」

「ミハエルの担当はあいつだからな。しっかり担当者に働いてもらわないと」

「僕も巻き込まれそうで微妙に不安なんですけど」

 

 溜息を吐いたルカが、俺達から少し離れた場所で1人雑誌を読んでいるアルトに気が付き、近付いていく。

 

「アルト先輩もミシェル先輩と同じく落ち着いてますね」

「ん? いや、そうでもないぞ。けど、あいつを見ていれば緊張してくるのが馬鹿馬鹿しくなってくるのは間違い無いしな」

 

 小さく肩を竦めながら女を口説いているミハエルを眺めるアルト。

 

「全くだ。本当にあの度胸は分けて欲しいな」

 

 アルトの側で、こちらはどこか羨ましそうにミハエルを見ていた黒人の男……えっと、名前は何って言ったか。とにかく俺、ルカ、ミハエル、アルト以外のアクロバット飛行のチームメンバーが溜息を吐く。

 

「結局自分の実力を出せばいいだけだろ」

「アルト先輩、本当に落ち着いてるなぁ。これってやっぱり家業の歌舞伎で……あ」

 

 そこまで口にしたルカが、自分を睨みつけているアルトに気が付く。

 にしても、歌舞伎? ……まさか日本の伝統芸能がこんな場所でまだ生き残っていたとはな。確か、初代のマクロスでゼントラーディに地球を滅茶苦茶にされて、その手の伝統芸能は殆どが失われたと聞いたが……ある意味しぶといというか、さすがというか。

 江戸時代の火事の時に、ウナギ屋が店が燃えているのに真っ先にタレを持ち出したってのを以前何かで見たか読んだかした覚えがあるが、そんな感じで歌舞伎も生き残ったのかもしれないな。

 

「ルーカー!」

 

 だが、アルト本人としてはその辺の事は言われたくなかったらしい。どこか凄むような目付きでルカへと食って掛かり、肝心のルカは冷や汗を滲ませながら何かを誤魔化すような笑みを浮かべている。

 

「そんなに怒ることもないだろ?」

「うるせえっ! お前に何が分かるってんだ!」

 

 余程に触れられたくない事なのか、アルトがそう叫び……次の瞬間我に返ったかのように舌打ちして視線を逸らしながら座り込む。

 その様子に一瞬だけ気まずい雰囲気が広がったのだが、数秒後には周囲にざわめきが響き渡り、あらぬ方向へと視線を集める。

 

「何だ?」

「ちょっ、あれ、ほら。シェリルですよシェリル!」

 

 アルトの訝しげな声に、ルカの興奮した声が返す。

 その視線の先には、確かにこれまでにも何度かTVで見たシェリルの姿があった。マネージャーらしき青紫の髪の女もTVで見た事が……ん? 魔力や気を殆ど感じない? あぁ、いや。そう言えばシェリルの故郷でもあるマクロスギャラクシーはサイボーグとかが一般的だったのか。ボディガードとしての役目も考えれば、おかしくない……のか?

 微妙に違和感があったが、次の人物へと視線を向ける。そこには新統合軍の制服を着た女の仕官の姿があった。他にもシェリルのお付きだろう複数の人々が周囲に群がっている。

 

「確かにこうして見ると、それっぽいカリスマがあるな」

「ですよね、さすが銀河の妖精と呼ばれているだけはありますよ! アクセル君もそう思わない?」

「うーん……ん? ああ、そうだな。確かに雰囲気はあるよな」

「アクセル君?」

 

 アルトに興奮したように話していたルカだったが、シェリルを見て首を傾げている俺へと向かって訝しげに尋ねる。

 

「いや、何だろうな。ちょっとした既視感が……」

「あ、もしかしてフロンティア船団に来る前にシェリルの生ライブを見たことがあったり?」

「そういう事じゃ無いんだが」

 

 そもそも、この世界に来たのは純粋に事故なんだから、そんな事がある筈がない。だが、それにしてもこの既視感はなんだ?

 

「アクセル君?」

「いや、何でも……」

 

 ルカの言葉にそう答えた時だった。まるでそのルカの声が聞こえてでもいたかのように、不意にシェリルがこっちを見る。

 俺と視線が合ったその瞬間、シェリルの整った顔が驚愕に見開かれるも、次の瞬間にはすぐにその驚愕を消す。

 一瞬だったとは言っても、皆の注目を浴びているシェリルだ。当然その様子に気が付いた者はいたのだろう。そして、シェリルの視線の先を追うようにして俺達が注目を浴びる。

 

「うわ、何か落ち着かないな」

 

 アルトの隣にいた黒人の男がそう呟き、ルカが苦笑を浮かべたまま頷く。

 そんな2人とは逆に、アルトの方は視線を集めるのに慣れているとでもいうように気にした様子も無く澄ました顔をしていた。

 ……黒人の男の方はともかく、ルカはL.A.Iで技術開発部特別顧問なんて役職があるんだから、この程度の視線を集めるのはそう珍しくもないだろうに。

 そんな風に思っていると、このままの状況では収まりが付かないと思ったのだろう。シェリルがマネージャーや護衛と思しき軍人を引き連れながらこっちへと近付いてくる。

 その様子を見て、女を口説いている状況ではないと理解したのだろう。ミハエルが急いでこっちに走ってきているのが見えた。

 まぁ、ミハエルがこのアクロバット飛行のリーダーだし、当然と言えば当然か。

 

「ミス・シェリル。何か私達に御用でしょうか?」

「あら? 貴方は?」

「私は今回のアクロバット飛行を行うチームリーダーのミハエル・ブランといいます」

 

 アクロバット飛行。その言葉を聞いた瞬間、シェリルの眉がピクリと動く。

 その表情は、明らかに機嫌を損ねたように見えた。

 

「貴方達、学生よね?」

「ええ、そうですね。美星学園航宙科のパイロット養成コースの者です」

 

 ミハエルがシェリルにそう答えた瞬間、間違い無くシェリルの視線が俺へと向けられる。

 

「そこの子達も美星学園の生徒なのかしら?」

「ええ」

「……全員?」

 

 明らかに俺へと視線を向けながらミハエルへと尋ねているシェリル。

 その様子からは、どう考えてもシェリルの注目を受けているのが俺であるのは間違い無いんだが……何でだ?

 シェリルが俺へと視線を向けているのに気が付いたミハエルが、若干躊躇いながらも小さく首を横に振る。

 

「いえ、その、彼だけは違います。参加メンバーだった人物が怪我をしてしまい、その代役として彼に協力して貰っています」

「へぇ、そう。でも本職じゃないのなら、危なくないのかしら?」

 

 俺を心配するような事を言っているのだが、何故かシェリルの口元には微笑が浮かんでいる。……この悪戯っぽい微笑、確かにどこかで見たような気がするんだがな。やっぱり気のせいか? まぁ、俺がこの世界の女と出会うなんてS.M.Sのピクシー小隊の面々や、ブリッジクルー以外では……あ、いや。待て。目の前で笑っているこの女の雰囲気は……シェリル、シェリル……シェリー!?

 あの時に俺にシェリルのライブチケットをくれたのは、本人だった? だが、そう考えると確かに辻褄は合う。自分のライブのチケットなら、確かに予備を持っていてもおかしくないし、何よりも今目の前でどこか悪戯っぽい笑みを浮かべているその様子は、間違い無くシェリーとして俺に接していた時に浮かべていたものと同じ笑みだ。

 

「大丈夫です。腕に関しては1流ですから」

 

 そんな俺とシェリー……否、シェリルの様子を見ながらも、それでも話を続ける辺り、ミハエルもさすがと言うべきだろう。

 だが、人の注目が集まっているこの状況でシェリーなんて口に出来る訳も無いしな。

 

「そう? でも本職じゃないんだから、危険な演技はやめてね?」

「ええ。連携が上手く取れないので、今回は安全性重視のものになっています」

「そ。ならいいわ。……くれぐれも事故を起こさないようにね」

「はい」

 

 シェリルの念押しに笑みを浮かべてミハエルが頷き、その場で踵を返し……そのまま最後に俺へと笑みを含んだ流し目で一瞥を送り、シェリルは去って行く。

 その後を追っていくマネージャーと軍人の女がどこか俺に怪しげな視線を向けていたが……まぁ、これに関しては無理も無いだろう。全く見知らぬ他人をシェリルが気にしているんだから。

 

「おいおいおいおい、何だよお前。シェリルと知り合い? いや、まさかそんな筈は無いか。じゃあ、シェリルの趣味が年下だったのか?」

 

 黒人の男が興奮した様子で問い掛けてくる言葉に小さく肩を竦め、今回の件の責任者をようやく見つけて近付いていくミハエルの後ろ姿を見送るのだった。

 ……全く、本当に色々と退屈させてくれない世界だな。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:255
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:560

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