転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0688話

「まさかこんな場所で着替える羽目になるとは思わなかったな」

 

 シェリルのコンサート会場近くにある公園にて、EX-ギアに着替えながらそう呟く。

 だが、すぐに俺の横にいたミハエルからの突っ込みが入る。

 

「いや、話を逸らすなよ。お前とシェリルがどんな関係なのかをキリキリ喋って貰おうか」

「別にシェリルとは面識無いぞ?」

 

 一応俺が面識があるのはシェリーだし……と言う事にしておこう。でないと、どんな面倒臭い出来事になるか分からないしな。

 だが、迫って来るミハエルに、黒人の男の方もそんなので誤魔化される筈は無く、EX-ギアに着替えもせずに俺の方へと迫って来る。

 

「大体、もし俺がシェリルと面識があったらどうするつもりなんだ?」

「そんなのは決まっているだろう。勿論シェリルを紹介して貰うに決まっている」

 

 当然とばかりにそう告げる黒人の男の言葉にミハエルが頷き、ルカも興味深そうな視線をこっちへと送ってくる。

 そんな中、アルトは興味無いとばかりに溜息を吐き、持っていた雑誌へと目を通していた。

 

「ほら、とにかく着替えて準備だろ。このまま遅刻なんかしたりしたら、それこそシェリルに対する印象が悪くなるぞ」

 

 そう告げた途端、急いでEX-ギアを身につけていく3人。この辺、現金だよな。

 そんな風に思いつつ、俺もまたEX-ギアの入っているケースを展開して身につけていく。

 だが、そんな中でアルトだけは相変わらず雑誌へと視線を向けているのみで、EX-ギアを身につける様子は無い。

 

「アルト、どうしたんだ?」

「ん? ああ、いや、ちょっとな」

 

 俺の問い掛けに生返事をしつつ、それでも雑誌から視線を逸らす事無く熱心に記事へと目を通している。

 何だ? 何か面白い記事でも載っているのか?

 そんな風に思いつつアルトの後ろから記事を覗き込んでみると、そこに載っていたのは1人の男の写真だった。厳めしい顔付きをしており、ポニーテール……というよりはチョンマゲと表現した方が正しいような髪型の初老の男だ。

 

「誰だ、これ?」

「え? うわぁっ! な、何でもねえよ。アクセルには関係無い!」

 

 叫び、慌てたように雑誌のページを閉じるアルト。

 雑誌が閉じられる一瞬前に、早乙女云々と書かれていたのが見えたのを考えると、恐らくアルトの祖父か父親といったところだろう。さっきルカが言った歌舞伎の特集でもしてたのか?

 

「おいアルト、早く着替えろよ。アクセルも、そろそろ行くぞ!」

 

 既に着替え終え、EX-ギアの調子を見ていたミハエルの声が響く。

 その声を聞いて我に返ったのだろう。慌ててEX-ギアを身につけていくアルトだったが、時間も押しているという事で、取りあえず俺達は先にコンサート会場へと戻る事になる。

 

「アルト、着替え終わったらすぐに来いよ。リハーサルやら何やら、あるいは安全確認とかその辺の打ち合わせもしないといけないからな」

「分かってるさ。けど、どのみち今回のアクロバット飛行はアクセルが入った為に安全性重視だろ? なら問題無いって」

 

 ミハエルの言葉にアルトがそう言葉を返しているのを見ながら、微妙に何とかなるというその態度が気になる。無茶な行動をしないといいんだけどな。

 

「そうだな、期待しているぞアルト姫」

 

 ミハエルも、そんなアルトに対して何か思うところがあったのだろう。どこかからかうようにして短くそう告げ……

 

「ミハエル、手前っ!」

 

 当然の如く、自らの女顔を気にしているらしいアルトは怒り心頭になる。

 

「あはははは。演技を決める権利があるのは、リーダーである俺だからな。悔しかったら次の試験で俺を上回ってみろよ、万年2位のアルト姫」

 

 再度姫と口に出し、その事でアルトの顔が怒り、あるいは羞恥で赤くなるのを見て思わず溜息を吐く。

 

「ミハエル、相手の嫌がる事をしてやるな。アルトもすぐ頭に血が上る癖を直せよ。そんなんで空を自由に飛ぶとかは無理だぞ」

「……はぁ、こんな子供に説教されるとか」

「アルト、お前も墜ちたもんだな」

「いや、お前もだぞミハエル!」

 

 そんな風にやり取りをしつつ、アルト以外の全員がEX-ギアの調整を終わり準備を整える。

 

「ほら、アルト先輩も早くEX-ギアを付けて下さいよ。コンサート会場の方にもちょっと急がないといけないんですから」

「あ? ああ、そうだな。取りあえず先に行っててくれ。こっちはこっちで着替えたらすぐに後を追いかけるから」

「うーん、そうですね。確かにこのまま全員が遅れていくと向こうの印象が悪くなるかもしれません。それに……」

 

 そこまで呟き、チラリと俺へと視線を向けるルカ。

 

「シェリルお気に入りのアクセル君が遅れたりしたら、向こうから何を言われるか分かったものじゃないですしね」

「……はぁ、別に俺はシェリルのお気に入りなんて訳じゃ……大体銀河の妖精のお気に入りなら更衣室の1つくらい与えられてもいいだろう?」

「ほらほら、いいから行くぞアクセル。お気に入り云々はともかくとして、シェリルのライブで空いてる場所なんかは無いんだからしょうがないだろ。それとも何か? シェリルと一緒に着替えたかったとか? いやまぁ、俺としてはそれでも全然構わないけどな」

 

 そんなミハエルの冗談じみた言葉に、黒人の男が笑みを浮かべて頷く。

 いやまぁ、確かにシェリルと同じ場所で着替え云々ってのは確かにあり得ないけどな。

 

「ミハエル先輩も冗談はその辺にして、行きますよ!」

 

 そう告げ、その場に俺達を置いてEX-ギアの足に埋まっているローラーを使いながら道を進んでいくルカ。

 その様子を苦笑して見ていたミハエルもまた、後を追うように進んで行く。

 

「じゃ、俺も先に行かせて貰うぞ。遅れるなよ」

「ああ、時間までには間に合わせるから気にするな。先に行っててくれ」

 

 アルトのその声を背中に受けながら、俺も又ミハエル達の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

「じゃ、飛行プランはこの通りで。決して危険度の高い内容にはしないようにしてくれよ。くれぐれも飛ぶ時に遅刻とかはしないようにな。シェリル相手にそんな真似をしたら、こっちがどうなる事か」

「はい、分かりました。きちんとこちらのプランの内容に沿ってやりますので安心して下さい」

 

 アルトの方へと視線を向けて念を押すようにそう告げてくるスタッフにミハエルが愛想笑いを浮かべて頷き、それで満足したのかスタッフの男は去って行く。

 その後ろ姿を見送り、こっちへと振り向いたミハエルだったが、ふと怪訝な表情を浮かべる。その視線の先にいるのはアルト。先程、少しどころか大幅に遅れてきたせいでスタッフの男に嫌味を言われ、どこかふて腐れた表情を浮かべていた。

 

「アルト、今のスタッフの言い方はどうかと思うが、実際にお前がかなり遅れてやって来たのは事実だ。ただでさえ、今回はアクセルというある意味でイレギュラーな存在が入っているから色々と綱渡り気味な要素があるってのに、これ以上のトラブルはごめんだぜ?」

「ああ、分かってるよ。けど、迷子を案内していたんだからしょうがないだろ」

「……ま、アルトにも春が来たって事で取りあえず今回は大目に見といてやるが……」

「おい、ミハエルッ!」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべたミハエルに叫ぶアルト。そんな2人を落ち着かせるべくルカが声を掛け、それぞれが自分の飛ぶ方向や位置を確認しつつ用意されたランチャーカタパルトへと散っていく。

 ランチャーカタパルトから見えるコンサートホールの中は、既に大量の人がこれでもかとばかりに押し込められている。当然そんな訳はないだろうが、フロンティア船団中の住民がここに集まったんじゃないかってくらいの集客率だ。

 いやまぁ、コンサートホールの大きさ的にそんな事がある筈無いんだがな。

 そんな風に考えている間にも徐々に時間が過ぎて行き……やがて、シェリルの姿が舞台の上に現れる。

 着ている服はどこか軍人風の物にも見えるが、これは特殊なインナーを着ており、それに舞台演出で即座に着ている衣装を変える事が出来るというものになっていた。

 この辺の技術は俺達にも無いし、どこの世界にもないから是非入手しておきたい物ではあるよな。

 そう考えた瞬間、コンサートホールの中の明かりが一斉に消え、シェリルの周囲のみが明るく輝く。

 

「あたしの歌を聴けぇっ!」

 

 その言葉と共にシェリルのライブが始まり、俺達はランチャーカタパルトで射出されて予定通りのコースを飛ぶ。

 そしてEX-ギアの背中から放出されている色つきの煙幕。赤、青、黄、緑、紫といったそれらの煙幕が、俺達の飛んだ軌跡に沿って吹き出されていく。

 同時に、歌っているシェリルの衣装が様々に代わり、更には舞台その物も氷の水晶のような物が無数に存在したりと次々に姿そのものを変えていく。

 それを見た観客達の歓声が増し、さらに興奮してテンションが上がって行っているのがここからでも見えた。

 ……なる程、確かにこういう場面を経験した事は無いが、何と言うか一体感とかそういうのは感じられるな。今まで他人の視線を集めた時と言えば、大抵が記者会見の場だったり、あるいは戦闘時のやり取りだったりしたのを思えば新鮮だよな。

 そんな中、飛んでいる状況でふと目に入ってきたのは俺の予想外の光景だった。

 俺達以外の黒人の男が、緊張のあまりだろう。どこか顔を引き攣らせているのが目に入ってきたのだ。

 咄嗟に通信機のスイッチを入れてミハエルに連絡を取る。

 

「ミハエル、右翼の一番端の男……えっと、名前はちょっと忘れたが、かなり緊張しているぞ。このままだと危険だから一旦下げた方が良くないか?」

 

 空中をクルクルと回転しながらも、視線だけは右翼の一番端にいる男へと向けながらそう告げる。

 

『は? お前、この状態で人の顔まで見えるとか……いや、まぁ、いい。おい、大丈夫か? ……駄目だ、聞こえてないな。アルト、隣のお前が面倒を見てやれ』

『ちょっ、待てよ。俺がか!? 今この状況で……うわああああああっ』

 

 案の定と言うべきか、あるいはタイミングが悪いと言うべきか。

 アルトがそう返事をした途端に右翼の男が急速に左へと寄っていき、アルトと接触する……寸前、アルトが何とか身体を捻って正面からぶつかるのは回避する。だが、完全に衝突を回避出来る事は出来ずに、EX-ギア同士がぶつかって反発するように弾け合い、バックパックについている翼が一部欠け、その衝撃でアルトがシェリルの方へと向かって一直線に突き進む。

 

「ちぃっ! 加速!」

 

 現状ではとてもではないがシェリルとアルトの接触に間に合わないと判断し、精神コマンドの加速を使用。そのまま飛行ユニットを全開にしながら下から回り込むようにして移動していく。

 

「きゃっ!」

 

 そんな悲鳴と共にステージから落下したシェリル。アルトは予想外の接触事故で体勢を立て直すのに必死で、とてもではないがシェリルに構っている余裕は無い。

 

『アクセル!』

「分かってる!」

 

 通信機から聞こえてきた切迫したミハエルの言葉に短く答え、精神コマンドの加速を使い、更には虚空瞬動を使って速度を更に増加させながらシェリルの落下方向へと突っ込んでいく。

 だが、それでもまだシェリルの落ちる方が早い。ならっ!

 

「っ!?」

 

 一瞬だけ念動力を使い、シェリルの落下速度を端から見ている限りでは分からない程度に緩める。本当に僅かな差ではあるが、俺にとってはその程度の時間があれば十分だった。

 シェリルの真下に回り込む事に成功し、そのまま両手を広げて落下してくるシェリルをゆっくりと受け止める。

 瞬間、フワリとシェリルから香ってきた汗と香水の混じり合った濃厚な女の匂いと、成熟した女の柔らかさを感じていた。

 

「無事か?」

 

 一瞬だけ感じたソレを努めて無視し、腕の中にいるシェリルへと声を掛けるが、返ってきたのは強い意志の籠もった光。

 

「このまま飛んで!」

 

 どうやら無事らしい。そして自分の仕事にプライドを持っているか。

 

「了解した。落ちないようにしっかりと掴まってろよ?」

 

 そんな俺の言葉を聞きながらも逆に挑発的な視線で一瞥し、そのままポンとマイクを持っていない方の手で俺の胸を叩く。同時に腕の中で強張っていたシェリルの身体がゆっくりと緊張が解れるように力が抜けていく。

 どうやら墜落のショックは無いみたいだな。

 その様子に安堵しながら、シェリルを抱いたまま観客席の真上を飛行する。

 

『全機、アクセルのフォローを』

 

 ミハエルの指示もあり、アルトや緊張のあまり衝突事故を起こした黒人の男もようやく落ち着いたのか……いや、あれだけの事故を起こしておいて落ち着くってのもなんだけどな。

 とにかく俺の腕の中でシェリルは歌い続け、俺はその様子をこのコンサートホールの中にいる誰よりも近くで見る幸運に恵まれたのだった。

 ……そう、避難警報が流れるまでは。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:255
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:560

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