転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0690話

「ちっ、随分と押し込まれているな」

 

 宇宙へと出撃したVF-25Sトルネードパックのコックピットの中で周囲を見回しながら思わず舌打ちする。

 出撃前に聞いた情報だと、戦場はフロンティア船団から見て大分前方だった筈だ。しかし、既にミサイルの爆発光や新統合軍の主力機でもあるVF-171が爆散する光景がこれでもかとばかりに周囲に広がっている。

 そう、フロンティア船団のすぐ側に、だ。

 

「とにかく一旦押し返さないとどうにもならないな。スカルリーダー、聞こえているか?」

『何だ! こっちは今忙しいんだ!』

 

 その声と共に通信越しに聞こえて来る戦闘音。

 どうやら本当に忙しいらしいが……

 

「こっちにも指示をくれ。フロンティア船団に近付く敵を迎撃していけばいいのか?」

『ああ、そうしろ! ミシェルやルカもいるんだな!? お前が前衛、ミシェルがバックアップ、ルカはバジュラ共の情報を少しでも集めながらアクセルのフォローだ』

 

 ま、それが無難と言えば無難か。

 

「了解した。ミハエル、ルカ、聞こえていたな?」

『聞こえてたけど、何でお前が指揮を執ってる形になっているんだ?』

「別にそのつもりは……ちっ、来たか! 2人とも、オズマの指示通りに動くぞ!」

『しょうがないな、分かったよ』

『はい、僕も了解です』

 

 その返事を聞き、機体のスラスターを徐々に吹かして機体を加速させていく。確かにエンジンが合計6つもあるだけに、その加速度や機体の運動性能は高い。その分普通のパイロットには扱い辛いのかもしれないが、俺にとってはそうでもない。

 ……いや、6つのエンジンで無理矢理機動性を上げているという意味では扱いにくいと言えるのかもしれないが、それでもこれまでのVF-25Sよりはある程度マシになっている。

 そんな風に考えていると、俺を敵だと見定めたのだろう。VF-171を撃破したバジュラ数匹、あるいは数機――取りあえず数匹と呼称――がこちらへと向かって突っ込んできた。

 

「まずはこれから!」

 

 機体上部に装備されている2門のビーム砲で狙いを付け……今だ!

 トリガーを引き、放たれた2条のビームはこちらに近づいて来ていた中の3匹がそのビームをまともに受けて消滅する。

 

『ナイスだアクセル!』

 

 俺の一撃で編隊が乱れたバジュラに向け、その混乱した隙を逃さんとミハエルのVF-25Gが専用のスナイパーライフルで1匹のバジュラを撃ち抜いた。

 その様子を横目で確認し、ファイター状態のままでガンポッドを連射しながらバジュラの群れの中へと突っ込んでいく。

 

『おい、馬鹿! ちょっと褒めたらすぐこれだ。敵に突っ込むなら、せめてバックアップに一言告げてからにしろ』

 

 ぼやくようなミハエルの声が聞こえて来るが、それを流しつつルカへと通信を送る。

 

「バジュラの情報はどうだ!?」

『それなりといったところですね。とにかく今は情報収集も大事ですが、敵の数を減らす事を考えないと』

「そうだ……なっ!」

 

 急速に迫ってきた数匹の小型バジュラから放たれる弾丸を回避しながら、こちらもガンポッドを斉射。敵の攻撃を回避しながらこちらの攻撃のみは命中するといった風に戦場をコントロールしつつ、何とかこちらの弾丸を回避したバジュラを連装ビーム砲で撃ち抜いていく。

 そして敵の数が5匹に減った頃、俺達と戦っても勝ち目は無いと判断したのか、あるいは他のバジュラと合流しようというのか、俺達の前から撤退していった。

 追撃を掛ける事も出来たが、今の俺達の最優先事項はフロンティア船団の護衛だ。そうなればまず大事なのは、敵の殲滅ではなく新統合軍の防衛線を抜け出てきたバジュラを始末する事か、この付近で危機に陥っている新統合軍の機体を救助して少しでもこちらの戦力を減らさずに敵を迎撃する事だろう。

 

「ルカ、この付近で危険な小隊はいるか?」

『はい、アクエリアス小隊が既に残り2機まで減っています。他にも幾つかピンチの小隊がありますが、ここが一番危険度が高いかと』

 

 まるで俺の質問を理解していたかのように言葉を返してくるルカ。この辺はさすが電子戦型の機体ってだけはあるな。

 にしてもアクエリアス小隊? 確か俺が以前模擬戦で戦った小隊だったと思うが……

 

『とにかく、そっちが危険なら手を出しておいた方がいいだろうな。PMCとしては雇い主の機嫌を取っておくのも大事だろうし』

 

 ミハエルのその言葉に俺も異論は無いので、そのまま3機揃ってアクエリアス小隊が戦闘を繰り広げられている場所へと向かって行く。

 すると30秒もしないうちにアクエリアス小隊のマーカーを出しているVF-171が……あ、1機バジュラに撃破された。

 

『こちらS.M.Sスカル小隊、アクエリアス小隊聞こえていますか? ここは僕達が引き受けますので、一旦後退して戦力の再編をして下さい』

 

 電子戦機を使っているルカからのフォールド通信が聞こえ、次の瞬間には残った1機のVF-171からの通信が聞こえて来る。

 

『た、助かる! 悪いがここは任せた!』

 

 全ての僚機が撃破され、自分だけになったのが余程に恐ろしかったのだろう。それだけを告げるとさっさと後方へと戻って行く。

 

『おいおい、幾ら何でもあっさりと後退しすぎじゃないか?』

「無理も無い。新統合軍のVFパイロットは基本的には腕利きがいないしな。VF-171は確かに初心者用の機体かもしれないが、性能は悪く無い。それでもパイロットの技量次第では……っと!」

 

 呆れたようなミハエルの呟きに返事をしていると、先程のアクエリアス小隊と戦っていたバジュラがこっちへとミサイルを撃ってきた。

 そのミサイルをガンポッドを使って迎撃し、トリガーを引き続けて弾丸でバジュラを貫く。

 基本的にこの戦場ではという但し書きが必要だが、こうして見る限りではバジュラは頭部が金槌のような形をしており、全長はVFよりも多少大きいのが殆どだ。

 こうして見ると、頭部の特徴からハンマーヘッドシャークに似ているな。もちろんハンマーヘッドシャークは宇宙で泳ぐような真似をしないし、体内で弾丸やミサイルを作ったりも出来ないんだが。

 

「よし、1匹撃破。ミハエル!」

『言われなくても分かっている!』

 

 ガンポッドの攻撃で周囲に散っていったバジュラを狙い、鋭く一条の光が宇宙を走って貫く。この辺のセンスの良さは射撃に自信を持っているだけはあるな。

 その後もミハエルが牽制し、俺が仕留め、あるいは逆に俺が連装ビーム砲を突っ込みながらバジュラの編隊を乱しつつ、その中心部分でガンポッドやレーザー機銃を連射して仕留め、そこから運良く逃れた機体をミハエルが狙い撃つといった形で戦場は推移していく。尚、ルカに関しては全体的に俺達のサポートをしてくれている。いわゆる、痒い所に手が届く的な感じで。

 そんな風にしてアクエリアス小隊を半ば全滅させたバジュラを全滅させた後、とある光景が目に入ってきた。

 

「おい、ルカ! アイランド1の方!」

『え!? ……あぁっ!』

 

 アイランド1の上空部にバジュラが1匹陣取っており、腕を叩きつけてバリアを破壊しようとしているのだ。

 しかもそのバジュラの姿は、俺達がこれまで戦ってきたハンマーヘッド型のバジュラではない。身長は通常のバジュラの2倍近くあり体表は赤く足が6本。背中からはまるで砲身のような部分が……

 

「おいおい、マジかよ」

 

 砲身みたいなではなく、歴とした砲身だったらしい。しかもミサイルとか大砲とかではなく、ビームらしきものを放ちバリアを破壊。同時にアイランド1の中へと侵入していった。更には、そのすぐ後ろを追ってギリアムの乗ったVF-25Fがバジュラが作り出した穴の中から突入していく。

 

「俺達も……」

 

 だが、勿論フロンティア船団としては穴が開いたままにしておく筈も無く、俺が後に続くと言葉に出す前に何らかのシステムが働き穴の部分を塞いでしまう。

 舌打ちしながら、アイランド1の方へと向かいつつオズマへと通信を繋げる。

 

「オズマ。聞こえているか、オズマ」

『何だ!』

「たった今、俺達の目の前で赤くてでかいバジュラがアイランド1の中に突入していった。そのすぐ後をギリアムのVF-25Fが追っていったが、俺達はどうする?」

『俺もアイランド1に向かってはいるが、そっちに向かうには少し時間が掛かる。くたばれ虫共っ!』

 

 俺達と通信をしている間にも戦闘が繰り広げられているのだろう。爆発音がフォールド通信越しに聞こえて来る。

 

『だが、この場で全機アイランド1の中に……ん? いや、ちょっと待て。援軍が来たからこっちは何とかなりそうだ。お前達は全機アイランド1に突入しろ』

『援軍って、隊長。新統合軍の奴等は当てになりませんよ?』

 

 ミハエルのその言葉は、もし新統合軍の軍人が聞いていれば頭に血を上らせる程に怒ったかもしれない。だが、実際に時間稼ぎ程度の活躍しかしてないのは事実であり、バジュラを撃破しているVFの数は驚く程少ない。撃破している者達にしても、3機、4機、5機掛かりといった感じでバジュラ1匹をようやく撃破しているような状況なのだから。

 ……俺と模擬戦をしたアクエリアス小隊はともかく、新統合軍全体がこんな状況だったというのはさすがに予想外だな。

 だがそんな俺の感想とは裏腹に、通信から聞こえてきたのは喜びの色が混ざった声だった。

 

『違う、新統合軍の奴等じゃない。ラビット1、カナリアだ。これでこっちの火力の心配は必要無くなったというのは分かったな? お前等は急いでアイランド1の中へと向かってギリアムを援護しろ!』

 

 なるほど、カナリアか。

 軍医とパイロットを兼任しているカナリアの機体はケーニッヒモンスターだ。機動性に関して言えばVFの足下にも及ばないが、純粋な火力では逆にVFが足下にも及ばない。しかもカナリアの操縦する機体はVFのように飛行形態もあるので、機動力に関しても通常のデストロイドよりは随分とマシだろう。

 

「了解した。なら俺達はアイランド1に突入してギリアムの援護に向かう」

『ああ、そうしろ。……アクセル、あの赤いバジュラはかなり厄介だ。頼んだぞ』

 

 映像モニタに映し出されているオズマの強い意志の込められた視線に頷き、機首をアイランド1の方へと向ける。

 

『ミシェル、ルカ、取りあえず指揮権をアクセルに預ける。お前達はアクセルの指示に従ってアイランド1に突入。ギリアムの援護をしろ。尚、ギリアムと合流後は指揮権はアクセルからギリアムに移譲だ。行けっ!』

 

 その言葉と共にオズマからの通信は一旦途切れる。恐らくカナリアと合流してこちらへと向かって来ているバジュラの相手に忙しいのだろう。

 

『って事だが、どうする? 臨時小隊長さん』

 

 どこか皮肉な口調で声を掛けて来たミハエルだが、俺がやるべき事は決まっている。

 

「アイランド1に突入してギリアムの援護だ。さすがにバリアを破壊してとはいかないから、少し遠回りになるけどな」

『そうですね。ちょっと計算してみましたが、このルートで進めば効率よくアイランド1の中に入れるかと』

 

 ルカからの通信と共に送られて来たデータは、混戦となっているこの宙域を縫うように移動しつつ、アイランド1の中へと入っていくのに最も最適と思われるルートが示されていた。

 ……さすが電子戦用の機体だな。いや、この辺はルカ自身の能力も影響してるんだろうが。葉加瀨辺りと気が合うかもしれないな。……そう言えば今が15歳となると葉加瀨達よりも俺やルカは同い年、あるいは年下といったところなのか。

 そんな風に考えながらもミハエルとルカへと通信を送る。

 

「よし、じゃあそのルートで行くぞ。戦闘は極力回避して、アイランド1の中に入るのを最優先に。俺達が遅れれば遅れただけバジュラによる街中の被害は大きくなるからな」

『そうだな、その辺は臨時の小隊長に任せるさ』

『僕達なら大丈夫ですって。それよりも早く行きましょう!』

 

 ミハエルとルカの言葉に頷き、早速とばかりにルカの指示したルートを通って進んで行く。宣言通りに戦闘は極力控え、最大限の速度で――オプションパックの違いで他の2機に合わせざるを得なかったが――戦闘宙域を潜り抜け、アイランド1の中へと入った俺達が見たのは……

 

「ギリアムッ!」

 

 赤いバジュラの手の中でまるで玩具のようにEX-ギアごと握りつぶされ、地面へと大量の血を垂れ流しているギリアムと思しき者の姿だった……




アクセル・アルマー
LV:41
PP:370
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:583

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