転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0712話

 大統領府での会議があった翌日。俺を含めたスカル小隊、そしてピクシー小隊の姿は宇宙空間にあった。昨日フロンティア政府から依頼された、バジュラの巣を探しているのだ。

 オズマの話によるとこの件を熱心に勧めてきたのはキノコだという話だから、あるいは何か裏があるのかもしれないとも思ったが……ただ、実際問題バジュラという存在を殆ど理解出来ていないというのは事実なので、それを知るにはいい機会と言えるだろう。

 ……小隊が万全であったなら、という但し書きが必要になるが。

 

『よし、ピクシー小隊が向こうからバジュラの巣を探しているから、早い者勝ちだぞ。班を2つに分ける。アルトとミハエル、俺とルカ、アクセルだ』

『了解』

 

 オズマの指示に全員が短く返事をし、スカル小隊が2つに別れて別々の方へと散っていく。俺とルカはオズマと共に行動をするが……

 

『オズマ隊長、いいんですか? アルト先輩とミシェル先輩を2人にして』

『後衛を信用出来ない前衛も、ビビって縮こまっている後衛も信用出来ん。ならそんな2人を纏めておくのがまだしもマシだろう。後はこれであの2人の仲が少しでも解消すればいいんだが……』

「何だかんだ言っても、結局はあの2人を思っての行動か。さすがに小隊長だな」

『おい、妙な勘違いをするなよ。俺は邪魔な奴等を一纏めにしただけでだな』

 

 そんな風に妙に偽悪的になっているオズマだったが、次の瞬間ルカからの通信でそれどころでは無くなる。

 

『っ!? オズマ隊長、アルト先輩とミシェル先輩が戦闘状態に入ったみたいです。シモンからの映像を回します!』

 

 その声と共に、俺の機体にもルカの使っているゴーストのうちの1機、シモンと名付けられた機体からの映像が送られて来る。

 その映像の中では、アルト機が戦闘をしている。だが、その相手は今回の目的でもあるバジュラ……では無く。

 

「あの時の、所属不明機……アンノウン!?」

 

 思わずそう声に出す。

 そう。映像の中では、VF-25に勝るとも劣らぬ程の軌道を描きつつ宇宙空間でドッグファイトを繰り広げていた。おまけに、赤いクァドラン・レアが宇宙空間を漂っている。あの色の機体は確かクランの機体だった筈だ。となると、あのアンノウンは実質1対3で優勢に戦闘を進めているのか?

 

『こっちにはアクセル君もいるので、一応念の為に向こうにシモンを向かわせていたんですが……クラン大尉があっという間に』

 

 ルカの心配そうな声。一応ルカもバジュラ艦の中であのアンノウンを見ている筈だが、意識が朦朧としていたせいかそこまで詳しく覚えていた訳じゃ無いらしい。

 にしても、あのアンノウン……右足を破壊してからまだそれ程の日数が経っていないってのに、もう元に戻っているとはな。……いや、あるいは別の機体に乗り換えたのか? 一瞬そうも考えたが、もしそうだとするのならフロンティア船団の近くにそれ程大きな犯罪結社なり秘密組織なりがあるという事になる。それを考えると、やっぱり修理したって方がまだ可能性は高いだろう。 とにかく……

 

「オズマ、救援に向かうが構わないな?」

『間に合うか?』

「伊達に高価で高性能なトルネードパックを装備しているって訳じゃ無いのを見せてやるよ」

『……そうだな、アクセルのトルネードパックなら間に合うか。俺のアーマードだと重すぎて間に合わないかもしれないからな。だが、こっちとしても一応応援には向かう。だからお前1人で奴を倒すとは考えなくてもいい。とにかく時間を稼ぐ事に専念しろ』

「了解した。ルカ、ゴーストで奴の牽制を頼む」

『分かりました! アクセル君、アルト先輩とミシェル先輩をお願いします!』

 

 ルカの声を聞きながら機首をアルト達のいる方へと返し、トルネードパックで追加されたエンジンを最大限に稼働させてその場から発進する。

 

「よりにもよってあっちに出るとはな。運が悪いと言うか何と言うか」

 

 トルネードパックで出せる最大限の加速を行いながらも、Gに関しては全く気にせず呟く。幸いまだISCは稼働していないが、それでも普通の人間ならかなりのGを受けている状態だ。もっともEX-ギアで耐G性能は上がっているから、それ以前のVFよりは大分マシなんだろうが。

 普段通りのアルトとミハエルなら、あの程度――というのはちょっと腕が良すぎるが――の敵と遭遇しても何とかなるだけの実力があるのは間違い無い。さっきのゴースト経由の映像を見る限りでは、個人としての能力では負けているが、それでも手が届かない程の差ではない。だが、今のあの2人は前日の誤射やそれに伴うやり取りの結果すこぶる仲が悪い。

 いつ自分を撃つんじゃないかと後ろに意識を向けながら敵に集中出来ていないアルトに、前日の誤射で縮こまっているミハエル。

 これで敵がアルトよりも腕の劣る相手ならこの状態でも何とかなったんだろうが……あいにくあのアンノウンはアルトよりも格上だ。近接戦闘にあまり適性の無いミハエルにしてみれば、近付かれた時点で終わりというレベルの。

 クランがまだ健在なら何とでもなったんだろうが、つくづく最初に落とされたのは痛かったな。いや、寧ろそれを理解しているからこそクランを一番最初に落としたのか?

 とにかく、アンノウンと激しいドッグファイトを繰り広げているアルトの集中を乱すのは不味いし、かと言ってクランは見ての通り生きているかどうかも分からない。となると……

 

「ミハエル、聞こえているな」

『ああ、勿論だ。で、お前さんがここに来たってことは俺は用済みって訳か?』

 

 確かにオズマの言っていた通り、妙に怖じ気づいているというか自虐的になってるな。

 

「残念だが、それは違う。アルトとの付き合いはお前の方が長いだろ? 俺が手を出すよりもお前がやった方がいい。そもそも、俺の機体は狙撃用じゃないしな」

 

 一応ビーム砲で狙撃の真似事は出来るし、命中させる自信もある。だが、それでも専用の機体では無い以上万全を期すという訳にはいかないし、何より……

 

「今のアルトに奴の相手はまだ無理だろ」

 

 そう。今も必死にアンノウンと渡り合っているアルトだが、実力はおろか機体性能ですら負けている。俺が変わらないと、下手をしたらこのままここで殉職という事になるだろう。

 にしても、フロンティア船団でも最新鋭機のVF-25よりも高性能なVFか。やっぱり大規模な組織なり何なりが後ろにいるのは間違い無いな。

 

『けど、俺は……』

「悪いが、今はお前の個人的な事情に構っていられる程に余裕は無い。泣き言なら後でお前の担当でもあるクランにでも言うんだな。俺が求めるのは過程じゃない、結果だ」

 

 それだけ告げ、ファイターのままスラスターを全開にしてドッグファイトを繰り広げているアルトの援護に駆け付けようとした、その時。

 

『ふっ、す、少し手厳しすぎないか?』

 

 クァドラン・レアの横を通り抜け様にそんな通信が聞こえて来る。

 取りあえずは無事だったらしいな。だが、今はお前に構っていられる程の余裕は無い。

 

「奴の担当はお前だろ? なら大人しく担当の者に任せるさ」

『そう言われてはな。……それよりも、あのアンノウンの目的はバジュラの巣だ。ここから少し離れた場所にある難破船』

 

 ……なるほど、アンノウンの目的はバジュラの巣の横取りか? いや、それにしては1機だけでS.M.Sに対抗するのは数の差で不可能だろう。実際問題こうして長引いて……おい待て。つまり……

 

「奴の目的は巣の横取りじゃなくて、巣の破壊?」

 

 そう、それならこっちが何機いても向こうは巣となっている難破船を破壊するだけで済むのだ。それを考えればそうおかしな話じゃない。ちっ、厄介な。

 

「アルト、ミハエル、聞いているな。奴の目的はバジュラの巣の破壊だと思われる。このまま俺がお前達の援軍として戦いに参加しても、隙を突かれて巣を破壊される恐れがあるから俺は巣の確保に移らせて貰う。……お前達だけでそのアンノウンの相手を出来るか?」

 

 アンノウンとドッグファイトを繰り広げているアルトの集中を乱したくはないが、それでもここは通信をしておくべきだろう。いざという時にこっちに頼られて、俺が手を出せないなんて風になったらそれこそ致命的だしな。

 

『任せろ! こいつくらい俺がどうにかしてみせる!』

 

 ファイターのままアンノウンの背後へと回り込み、そのままガンポッドを連射しながら叫ぶアルト。

 

『ちっ、確かに奴が1機だけで出て来た以上狙いは巣の破壊の可能性もあるか。分かった、こっちはいいからアクセルは巣の確保に専念しろ』

 

 苦い口調で呟くミハエル。

 この2人の連携は微妙に心配だが、それでも今はバジュラの巣の確保をするのが最優先だろう。キノコの指示通りに動くのは気に食わないが、敵の情報は戦う上で何よりも大事だ。

 

「分かった。ならそいつの相手は頼んだぞ」

 

 短く通信を返し、クランから指示された難破船の方へと向かう。

 その間もアンノウンとアルトは激しいドッグファイトを繰り広げていたが、俺の位置からでは既に狙撃による援護も出来ない。今出来るのは、この難破船を守り、少しでも移動させるだけ。

 幸い難破船とは言ってもそれ程大きくはない。トルネードパックを装備した俺の機体の推力があれば少しずつではあるが動かす事も可能だ。

 

「とは言っても、さすがにこの大きさの難破船をどうにかするのは厳しいな。早いところオズマ達が来てくれればいいんだが」

 

 ドッグファイトの現場から少しでも離れるように難破船を移動しながら呟く。オズマとルカが来れば、幾ら性能が高いアンノウンとは言っても1機でどうにかするのは不可能だ。VF-25より高性能の機体だとは言っても、突き抜けて高性能って訳じゃ無い。それぞれがほんの少しずつ上といった感じだしな。

 ただ、ISCに関して言えばVF-25の物よりもかなり性能が高いと言えるだろう。俺のような存在ならまだしも、普通の人間があのアンノウンのような動きに堪えられる筈も無いし。

 そんな風に考えている間にもアルトとアンノウンのドッグファイトは続いていき、アルトがバジュラ艦の時と同様にアンノウンの右足を破壊して機体を抑え込み……そこにミハエルのスナイパーライフルから弾丸が放たれる。その一撃は命中こそしなかったものの、近くを通りかかっただけである程度のダメージを与えたのだろう。そしてアンノウンはこれ以上の戦闘が無意味だと判断し、アルトの機体を振り切り、こちらへと……

 

「だよな、来ると思ってたよ!」

 

 その叫びと共にトルネードパックによって追加されたエンジンをフル稼働させ、スラスターを全開にして素早く難破船に……即ち、俺の方へと向かって近付いてくるアンノウンとの距離を詰める。

 

「愛、直撃!」

 

 精神コマンドの愛と直撃を使用し、機体上部にある2門のビーム砲のトリガーを引く!

 次の瞬間、一直線に伸びた2条のビームは、難破船に向かってガンポッドと呼ぶには不釣り合いな程の大きさのガンポッドを向けようとしていたアンノウンの右肩の周辺をその長大なガンポッド諸共に砕け散らせた。

 

「やったか!?」

 

 ある意味では、この一言がフラグだったのだろう。

 次の瞬間には、機体の右半身殆どが破壊されたというのに、強引にファイターへと変形。一瞬の躊躇いも無く戦場を離脱していく。

 

『アクセル、追うか!?』

「やめておけ、深追いは危険だ。敵が1機であるとも限らないしな」

 

 そうは言いつつ、敵が今逃げていったアンノウン1機だけだろうというのは半ば確信していた。機体の操縦の癖がバジュラ艦で戦った相手と殆ど同じだったからだ。

 だがバジュラ艦で右足を破壊したにも関わらず、それ程日数が経っていないのにもう完全に機体を修理しているのだ。背後にいる存在を考えれば、迂闊にちょっかいを出すのは危険だろう。

 

『そうだな、ここはアクセルの言葉が正しいだろう。アルト、今は抑えろ』

『……分かったよ、ミシェル』

「それよりもまずはクランの救助と何よりも、当初の目標でもあったバジュラの巣を……ん?」

 

 今、アルトがミハエルをミシェルと愛称で呼んでなかったか? つい先程まで険悪な様子だったというのに。

 恐らくはあの戦闘中で何らかのイベントでもあったんだろう。

 それより、回収すべき物はクランの機体やバジュラの巣の他にもまだある。俺の精神コマンドを使った攻撃で右半身を損傷したアンノウン。奴の持っていた巨大なガンポッドの残骸がその辺に漂っている筈だ。勿論そのまま使えたりする訳じゃ無いが、VF-25の持っている武器よりもかなり強力である以上、いずれ何らかの役に立つだろう。

 最悪、アンノウンの手掛かりとしてでも使えればいいし。

 

「とにかく、バジュラの巣を重視してオズマ達の到着を待つとしよう」

 

 ……そう言えば、あの難破船。俺が動かしても中からバジュラが出て来るような事は無かったが……本当にバジュラの巣なんだろうな?

 

「ま、任務は果たしたんだ。バジュラについて調べるのはフロンティア政府の方でやってくれるだろ」

 

 バジュラの巣、手に入れたのはいいものの……新たな災厄の元凶にならないといいんだけどな。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:660
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:641

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