転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0724話

 目の前にいる赤紫色の機体に、思わず舌打ちする。

 本当にこのアンノウン、どこにでも出て来るな。だが今の状況は、これまで何度も遭遇してきた時に比べて圧倒的に悪い。

 オズマを含む他の機体がいないから? いや、違う。俺1人でも十分以上にこの機体に勝つ事は出来る。だが、それも俺の操縦技術を最大限発揮出来ればこそだ。

 正直な話、悔しいがVF-25はこのアンノウンよりも性能的には負けている。それはVF-25の上位種的な存在であるVF-25Sでも同様だ。あるいはトルネードパックを装備していればそれなりに性能の差は縮まるのだが、現在トルネードパックはマクロス・クォーターにある。本来は空間倉庫に入れて持ってきたかったのだが、さすがに高価すぎて許可が下りなかったのだ。その代わりという訳ではないが、空間倉庫の中にアーマードパックが入ってはいるが……

 まさか、目の前にいるアンノウンに対してアーマードパックを装備するから時間をくれと言っても、向こうがそれを受け入れる筈も無い。

 そして何よりも……

 

「ちょ、ちょっとアクセル。あの機体、今攻撃してきたけど……敵なの?」

「ああ。アンノウンだ。ギャラクシー船団の救出や、バジュラの巣を確保した時にも襲ってきた。間違い無く敵だと判断しても構わない」

 

 そう、シェリルがここにいるという事だ。

 アイドルとして身体は鍛えているものの、それはあくまでもある程度でしかない。更に着ているパワードスーツは耐G性能もEX-ギアと比べて数段落ちる代物だ。

 こうなると知っていたら、EX-ギアが複数あるというので怪しまれても空間倉庫の中にある奴を使わせたんだが……

 つまり、俺本来の技術を発揮しようとすれば、それは当然シェリルの負担になる。それも洒落にならない程の。

 そうならないようにするには、極力機体を酷使しないように戦わなければならない訳だ。

 

「厄介だな」

「……大丈夫なの?」

 

 俺の呟きに、心配そうな声を掛けてくるシェリル。

 その声を聞き、確かに厄介ではあるがシェリルをこのままここで死なせる訳にはいかないという決意も露わにする。

 

「ま、何とかなるさ。最悪でもお前だけは何としても俺が守って見せる」

 

 そう、手段は幾つもある。まず最も簡単で、最も確実なのは目の前にいるアンノウンと戦いつつ海兵隊の下に向かうことだ。そうすれば、そこには間違い無く援軍が存在する。バジュラ相手には無理だと判断したが、それはあくまでも数の差故だ。幾ら高性能だとはいっても、アンノウン1機だけなら戦術次第でどうとでもなる。

 向こうが動こうとすると、その瞬間にガンポッドの銃口を向けて牽制。

 そんな行動をしながら考えを纏めていたのだが、やがて向こうもこの展開に焦れたのだろう。再び持っていた巨大なガンポッドをこちらへと向けてくる。

 

「シェリル、舌を噛まないようにしっかりと掴まって我慢してろよ!」

「え? きゃ、きゃあっ!?」

 

 ガウォークのままスラスターを噴射して空中に浮き、同時に向こうのビームが放たれるのと同時にこちらも回避しながらガンポッドのトリガーを引く。

 ビームと弾丸が交差し、次の瞬間には弾丸がアンノウンのいた場所を、ビームがVF-25Sのいた場所を貫く。

 本来であれば向こうの方が攻撃力に関しては圧倒的と言ってもいい。だが、恐らくは威力が大きい分隙が出来るのだろう。それを嫌ってか、アンノウンの巨大ガンポッドから放たれるビームは威力の低いビームのみだった。

 そんなビームだけに、威力はともかく連射性は高い。その連射性の高いビームを、俺はガウォークで回避しながら距離を離すようにして攻撃していく。

 今打てる手は回避のみ。これで少しは距離を取り、向こうがこちらを見失いやすい状況にでもなれば、まだどうにか出来る手段は残ってるんだが……いや、向こうの性能を知らない以上、ある意味で賭けに近いものがあるんだけどな。

 マクロス内の住宅街を疾走しながら、近くにあるビルへとガンポッドの弾丸を通り抜け様に撃っていく。すると当然そのビルは破壊されて砕け散り、地面に倒壊し……背後から追って来ているアンノウンへとその破片が降り注ぎ、向こうの追撃を妨害する。

 

「よし、今だ!」

 

 破片により一瞬だがアンノウンの速度が緩んだのを見計らい、より速度の出るファイターへと変形し、そのまま一気にアンノウンとの距離を取る。……が、追ってこない?

 

「アクセル。あのアンノウンとかっての、追ってこないわよ?」

 

 シェリルのその言葉を聞いた瞬間、殆ど反射的に機体を急上昇させていた。急激に掛かるGに背後でシェリルが苦悶の声を上げているが、それでも今は緊急回避をしなければいけなかった。何故なら……

 轟っ!

 一瞬前までVF-25Sの飛んでいた空間を、背後から放たれた極太のビームが貫いたのだから。

 やっぱりな。あのビルの残骸諸共にこっちを始末する気だったか。

 そして予想通りにあのビームが破壊し、吹き飛ばし、あるいは破片を消滅させた後を追うかのようにアンノウンの反応が追尾してくる。だが……今回、その選択は失敗だったな。

 先程放たれたビームは、ビルの残骸だけではなくマクロス内部にある建物の多くを破壊し、その破片を空中へと巻き上げている。つまり、今の状況で敵は俺の機体を発見しにくい訳で……それは同時に、俺が狙っていた好機でもあった。

 

「さて、効いてくれよ」

 

 空中に幾つも存在している破片に紛れるようにして劣化版ASRSを起動。これで向こうの探知性能次第ではこっちを見失ってくれる筈だが……

 ただ、それにしてもアンノウンの電子的性能がルカのRVF-25を下回っていることが前提だ。そうは思いつつも、俺はその辺の事をあまり心配はしていなかった。

 実際にアルトの試験の時、ルカは俺を見つけ出す事は出来無かった。そして幾らアンノウンの性能が良くても、さすがにレドームを装備したRVF-25程ではないと思っていた為だ。

 案の定……

 

「何で向こうはこっちを見つけられないの?」

 

 ガウォークに変形してビルの陰に隠れているVF-25Sを見つけた様子の無いアンノウンを眺め、シェリルが尋ねる。

 

「ステルス装置のおかげだよ。この機体はかなり強力なステルス装置を積んでいてな。その点に限って言えば純粋な機体性能はこの機体よりも上のアンノウンの数段上を行く」

 

 ……もっとも、これはあくまでもステルス装置のみに限った話だ。戦闘になれば、ノーマルのVF-25Sである俺に勝ち目は薄い。

 となると、ここから取れる手段はそう多くはない。

 1つ目は、アンノウンの隙を突いて攻撃する。撃破出来れば追撃の心配はいらないし、アンノウンの正体も判明するかもしれない。不安要素としては機体性能の差と、シェリルの存在か。

 2つ目はさっさとここから逃げ出す。ステルス装置がある以上、追ってこられる可能性は少ない。海兵隊の基地まで撤退に成功すれば戦力的には逆転する。だが、それでも確実とは言えず、追撃されれば勝ち目の低い戦いに突入する事になる。

 3つ目。このままここに隠れる。まさかアンノウンにしても、折角姿を眩ましたというのに逃げずにその場に残っているとは考えないだろう。灯台もと暗しというか、盲点を突いた選択肢だ。不安要素は2つ目と同じ。それと、ここがバジュラの巣である以上は、何が起こるか分からないといったところか。

 それらの選択肢を頭の中で考え、最終的に選んだのは3つ目の選択肢だった。

 俺だけなら1つ目、あるいは2つ目でもよかったのだが、何しろシェリルがいる以上は無茶できないしな。

 

「アクセル? どうするの?」

「取りあえず、上手い具合に向こうはこっちを見失っているらしいからな。このままやり過ごす」

「……大丈夫?」

「幸い、ステルスに関しては向こうよりも上だからな。ここで迂闊に動いて、奴の注意を引くのは避けたい」

「……ごめんね、あたしのせいで」

 

 自分の存在が原因で現在の状況を打破出来ないのを理解しているのだろう。ポツリとシェリルが呟く。

 

「気にするな。そもそも、お前を連れてくると判断したのは俺なんだからな。お前が悪い訳じゃ無い」

「でもっ!」

 

 更に言い募るシェリルだが、ここでシェリルに罪悪感を持たれるというのはちょっと面白く無い。それに、確かに打てる手は無いが、絶対確実に何も無いという訳では無いのだ。それこそ空間倉庫なり魔法なりを使えばこの程度はどうとでもなる。だが、それをしないのはあくまでも俺の都合である以上、俺にシェリルを責める資格はない。

 

「安心しろ。確かに消極策は俺の好みじゃないが、だからと言って、それを認められない程に懐は狭くないつもりだ。それこそ、シェリル1人を守れるくらいにはな」

「……馬鹿。本当に馬鹿なんだから」

 

 ポツリ、とシェリルが呟いたその瞬間。映像モニタの先で俺達の姿を探していた筈のアンノウンが、唐突にファイターへと変形してこの場所から去って行く。

 

「もう諦めたの? ……早くない?」

「ああ、明らかに諦めるのが早い」

 

 俺達が劣化ASRSを使って身を隠してから、まだ数分といったところだ。その程度の時間であのアンノウンが俺達を捜すのを諦めるか? 確かにあのアンノウンは今まで色々と不可解な動きでこっちを妨害してきた。それを思えば、あるいは無理もないかもしれないが……それでも、やはり疑問が残る。

 考えられる理由としては、この場所にいる必要がなくなった? あるいは、この場所にいても意味が無い?

 

「……まさか」

 

 脳裏を過ぎったのは、テムジンが運び出していた反応弾。一応はオゴダイが全てを元の保管庫に戻した筈だが、数をきちんと確認したかどうかは聞いていないし、あるいは保管庫から運び出した反応弾が全てトレーラーに乗せられて移動させられていない可能性もある。もしテムジン=グレイス=アンノウンと繋がっているとすれば……

 いや、だがグレイスにしてもシェリルが俺と行動を共にしているというのは知っている筈だ。なのに、それを切り捨てるような真似をするか?

 

「くそっ、今は考えている場合じゃない。とにかく行動に移すべきだな」

「ちょっとアクセル、どうするの?」

「一旦この艦から外に出るぞ。あのアンノウンがあっさりとここから去って行ったのは……」

 

 そこまで口に出した時、ゾクリと背筋に冷たいものを感じる。

 そう、いつも感じている念動力による危険の察知だ。危険、危険、危険。

 

「っ!? シェリルッ、しっかり掴まってろよ! 多少手荒い操縦になるが、このままだと危険だ!」

「分かったわ!」

 

 俺の声で、どれだけ逼迫している状況なのかを理解したのだろう。シェリルは短く返事をして後部シートで身体を動かないように固定して、更に俺のシートの後ろへと掴まる。

 それを確認し、ファイターの翼の下に装備されているガンポッドでマクロスの装甲を破壊して外へと脱出する。通常であれば、絶対に不可能だった方法。この10年近く風雨に晒され、植物や苔の侵食を受けていた為にある程度まで脆くなっていたからこそ出来た方法だ。

 そのままエンジンを全開にして、装甲に空いた穴から脱出する事に成功する。

 

「アクセル!」

 

 シェリルの驚愕の声と共に、背後が激しく輝く。まるで、マクロス全体が光り輝いているかのように。

 

「何が起きてるのかは分からないが、ギリギリ間に合ったか。で、アンノウンは」

 

 光り輝いているマクロスのデータを一応保存してから周囲の状況を探る。だが、アンノウンの姿はどこにもなく、ただ、背後のマクロスが光り輝いているだけだ。

 

「いない、どこに行った?」

 

 勿論、今の状況でアンノウンと戦うのは避けたいから個人的には嬉しいんだが……そんな風に思った時。

 

「アクセル!」

 

 再び背後から聞こえて来るシェリルの叫び。

 咄嗟にファイターの機首を返すと、映像モニタに映し出されたのはジャングルの中に崩れ落ちるといった表現がピッタリだったマクロスが光ながら浮かび上がり、次第に崩れ去っていく光景だった。

 そして土煙が消え去った後に残ったのは……

 

「バジュラ艦……か」

 

 マクロスの中に女王級と思われる存在がいた以上、おかしくないのかもしれない。

 だが、それはあくまでもバジュラ艦が1隻だけだった場合だ。

 しかし、今VF-25Sの映像モニタに映し出されているのは10隻以上のバジュラ艦の姿。

 

「バジュラの増え方か」

「ちょっと、どうするの? このままだとグレイス達が……」

 

 自分のマネージャーが心配なのだろう。思わずといった様子で心配の声を上げるシェリル。

 だが、その選択も悪くは無いか。ここにいるバジュラに対抗するのは幾ら何でも俺だけでは到底無理だし、それ以前にシェリルを乗せたままでは機体の性能を十分に発揮出来ないのだから、向こうに一旦シェリルを預けた方がいいのは間違い無い。

 だが……

 

「ア、ア、アクセル!?」

 

 三度シェリルの悲鳴のような声が響く。

 その声は、これまで聞いた中で最も切迫している声。

 そちらへと視線を向けた俺が見たのは、急激に広がっている黒い球体のような何かだった。

 いや、何かではない。VF-25Sのコンピュータの判断によれば、あの黒い球体はフォールドエネルギーによって生み出された疑似ブラックホール。その疑似ブラックホールが広がり、海兵隊の基地や戦艦をも飲み込んでいく。

 

「グレイスーッ!!」

 

 後ろでシェリルが叫ぶが、既にグレイス達は勿論、海兵隊の基地までもが疑似ブラックホールに飲み込まれている。しかもそれで収まることなく急激に膨張している疑似ブラックホールは、俺の方へと向かって迫る。

 

「ちぃっ!」

 

 慌てて機体の機首を返し、エンジンを全開にして距離を取ろうとするが、疑似ブラックホールの膨張は止まらずに、まるで星その物を飲み込むかのように広がって行く。

 そう、まるで星を喰らい尽くすかのように。

 

「グレイス……そんな、嘘、嘘よ!?」

 

 背後で思わず泣き叫ぶシェリルの声を聞きながらも、俺は必死に機体を飛ばしていた。この疑似ブラックホールから逃げる手段としては、衛星軌道上に置いてきたフォールドパックしか無いと判断して。

 もしフォールドパックまでもが疑似ブラックホールに飲み込まれてしまった場合、酸素を必要としない俺はともかく、シェリルが生き延びるのはほぼ不可能なのだから。

 そんな俺の願いが通じたのか、星その物が疑似ブラックホールに喰らい尽くされる前に何とか衛星軌道上にあるフォールドパックを発見。こちらに迫って来る疑似ブラックホールを横目に急いで装備し……その光景を目にする。即ち、複数のバジュラ母艦がフォールド空間を開いているのを。

 おい、まさか!?

 脳裏に嫌な予感が過ぎり、コンピュータでデフォールド先を計算。そこに表示されているのは……

 

「フロンティア船団だと!?」

「グレイス……そんな……」

 

 シェリルの泣き声を聞きながらも、フォールドパックの性能を考える。

 確かにフォールドパックはこれまでのものよりも高性能だが、それでもバジュラには及ばないだろう。ならば、バジュラの開いたフォールド空間を経由すればよいのだと。

 

「シェリル、掴まっていろよ!」

 

 シェリルに短く告げ、バジュラの開いたフォールド空間へと突入するのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:735
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:656

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