転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0730話

 俺の秘密を知っているオズマ、ジェフリーとの3人だけの会議が終わり、2階級昇進の辞令と大尉の階級章を貰おうとしてオズマの部屋に向かおうとしていた俺が携帯で呼び出されたのは、会議をしたブリーフィングルームだった。

 どんな理由かは分からないが、それでもさすがに大統領が来ていると言われては断る訳にもいかない。いや、寧ろ俺としては大統領と直接接する機会があるというのは幸運だったと言えるだろう。

 

「失礼します」

 

 短く敬礼し、ブリーフィングルームの中に入る。そこにいたのは、俺がここに来る理由になったグラス大統領とジェフリーの2人のみだ。グラス大統領の娘でS.M.Sに出向しているキャサリンの姿も無ければ、大統領補佐官のキノコの姿も無い。正真正銘2人だけだった。

 その大統領は、部屋に入ってきた俺を見て笑みを浮かべて座っていた椅子から立ち上がる。

 

「おお、君がアクセル・アルマー少尉か。君のおかげでフロンティア船団は助かった。こうしてS.M.Sに来たのも、君に直接お礼を言いたかったからなのだよ」

 

 少尉……いやまぁ、まだ辞令も貰ってないし階級章も少尉のままだから特に問題は無いか。にしても、俺に感謝を言う為にわざわざ?

 

「大統領ともあろう人がわざわざ俺に会う為にここまで来たのですか? そこまで感謝されるような覚えは無いんですが」

「っ!?」

 

 俺の口から出た言葉を聞いたジェフリーが小さく息を呑むのが分かる。

 まぁ、今まで敬語とかは意図的に使ってこなかったしな。戦闘時ならともかく、S.M.Sは基本的に規律が緩い。更に言えば、俺の生身での強さやらVFの操縦技術はそれなりに知られている為か、口の利き方に文句を言ってくる奴はいない。

 この辺、腕が全てだってところなんだろうな。ジェフリーとかオズマは最初に会った時から普通に話していたし。

 そんな俺とジェフリーの様子は全く目に入っていない様子で、グラス大統領は俺の手を握って感謝を伝えてくる。

 

「何を言ってるのかね。アクセル少尉がバジュラの戦術行動の可能性を教えてくれたからこそ、前もって対応の準備は出来ていたのだ。もしそれが無ければ、恐らくフロンティア船団もバジュラの攻撃で莫大な被害を受けていただろう。環境艦やアイランド1に攻撃を加えられ、空気や水、その他諸々に被害が出ていた場合は統制モードを発令しなければいけなかったかもしれんのだ。それを思えば、私が直接礼を言いに来るくらいはそう大した事ではないさ」

 

 これは、本気で感謝しているのか? いや、勿論それはそれでいい。実際に感謝を表せる政治家というのはそれ程多くないからな。それを思えば、グラス大統領は十分に人が良いと言えるのだろう。

 問題は人が良い=有能ではないという事か。こういう風に頭を下げているのに対しても、見る人が見れば大統領としての権威が……とかなるだろうしな。

 もっとも、人として見れば信頼出来る人物であるのは間違い無い。それを考えると、いずれホワイトスターとのゲートが設置出来た場合に付き合っていく対象としては問題無いんだよな。

 

「大統領、その辺で。……それよりも、アクセル少尉に先程の話を」

「ん? そうか。……コホン、では本題に入らせて貰おう」

「本題?」

「うむ。勿論私が君に感謝しているというのは事実だ。だが、それでも大統領という立場にある者が君に礼を言う為だけにわざわざここまで来る訳にはいかないのだよ。……ジェフリー艦長」

「はい。アクセル少尉、彼女の……君が怪しいと思っているグレイス・オコナーについて説明して欲しい」

 

 ……なるほど。そっちが本命か。いや、勿論先程俺に礼を言ってきたのも本音での言葉ではあったのだろうが。

 不思議と大統領がここにいる理由を納得してから口を開く。

 

「グレイス・オコナー。最初に自分が彼女の様子が気になったのは、ギャラクシー船団救出作戦の様子をインプラント処理された彼女がアイランド1の中にいながらほぼリアルタイムで見ていたと聞いたからです」

 

 正確には念動力による、ある意味で本能的なものが最初にあったのだが……さすがにそれを告げる訳にもいかないだろう。

 

「確かにインプラントはこのフロンティア船団では違法だが……それだけでかね?」

「勿論当時は怪しいと言うよりは……そうですね、微妙な違和感とも言うべきものでした。明確に怪しいと感じたのは今回のガリア4の件があったからです。特にガリア4で反乱を起こしたテムジン。シェリル・ノームの護衛として何度か奴と会話する機会がありましたが、自分が奴に抱いたイメージは癇癪を起こしている子供がそのまま大きくなっただけといった感じでした。そんな相手が、反乱を起こした直後にギャラクシーネットに声明を発表するとは思えません。それを思うと、奴の裏に誰かがいるのではないかと思ったんです」

 

 俺の説明を聞きながら、それだけでは色々と厳しいと判断しているのだろう。グラス大統領の顔は年齢を重ねた皺以外にも、微かに眉が顰められている。

 

「それと、テムジンはガリア4に保管されていた反応弾をどこかに運びだそうとしていました。威力を考えるとテムジンが反応弾を自分の物にしたいというのは分かりますが、それをどこかに運び出すというのはちょっと違和感がありますね」

「確かにあの反乱については色々と腑に落ちない点もあった。アクセル少尉の話を聞く限りでは、それをグレイス・オコナーが主導したと考えているようだが……何故だと思うかね?」

 

 問い掛けてくるグラス大統領の言葉に、小さく首を振る。

 

「明確な目的までは分かりません。ですが、ガリア4に存在していたマクロス級グローバルの内部にあった研究所のコンピュータのデータが完全に消去されていた事、これまでに何度もS.M.Sの活動を妨害してきたアンノウン、更にはそのアンノウンが第33海兵部隊に見つからぬままにガリア4に潜んでいて、バジュラの調査をしている時には襲撃すらされています。そしてフォールド断層でガリア4が消滅した時、偶然グレイス・オコナーを救助して戦場に乱入してきた……これらはどれに関しても明確な証拠はありませんが、状況証拠としては十分すぎるかと」

 

 ジェフリーが俺の言葉に頷き、言葉を続ける。

 

「大統領、1つお聞かせ願いたい。アクセル少尉の話にも出て来たアンノウン。ギャラクシー船団の救出時、バジュラの巣の確保時、そして今回のガリア4でバジュラの情報を探っているアクセル少尉に対しての攻撃。明らかにアンノウンはフロンティア船団に敵対しています。ですが、フロンティア政府はアンノウンをギャラクシー船団の生き残りとして確保する事にしたと聞いています。何故でしょうか?」

「三島補佐官の提案によるものだ。確かにこれまでに彼……君達の言うアンノウンは我々に敵対行動を取ってきた。だが、彼の使っていた機体が君達S.M.Sで試験運用しているVF-25よりも性能が上なのは理解出来るだろう? その技術を得る為に、敢えてこれまでの敵対行動を不問にしたと聞いている」

「三島補佐官……ですか」

 

 大統領の口から出た言葉に、思わずそう言い返す。

 あのキノコがアンノウンを取り込むのに問題無しとして動いていたのは、ある意味で納得は出来る。野心を燻らせているあの男にとっては、VF-25よりも高性能な機体というのは、さぞ美味そうな餌に見えたのだろう。

 

「ん? アクセル少尉。どうかしたのかね?」

「……大統領、1つお聞きします。先程も言ったように、S.M.Sはこれまで幾度かアンノウンと砲火を交えています。その結果、少なからずアンノウンのパーツを入手してますが、その殆どを政府に接収されています。……そう、新統合軍ではなく政府に。これは大統領の指示でしょうか?」

「……何? 本当かね? 少なくても私にはその辺の情報が上ってきていないが?」

 

 なるほど。どうやら映像データやアンノウンのパーツを奪っていったのはキノコの独断だったらしい。これでキノコが独自に動いて何かを企んでいるのは決定と言ってもいいか? いや、さすがにまだそこまでは言い切れないか。あるいは報告書の中に紛れ込ませた状態で提出して誤魔化しているといった可能性もある。だが、これはグレイスの件とは違って状況証拠だけという訳じゃ無い。明確に証拠が残っている。

 大統領の言葉を聞いていたジェフリーもまた、小さく眉を顰めて口を開く。

 

「大統領、その人物は本当に信用出来るのですかな? 話を聞いている限りでは、とてもそうとは思えませんが」

「……だが、彼にはバジュラの件を全権委任してあった。確かにその情報を私に知らせなかったのは問題だが、それだけで信用出来ないという訳にもいかないだろう。それに……」

 

 チラリ、とジェフリーの方へと視線を向けてから言葉を続ける。

 

「彼はビルラー氏との連絡役でもある。そんな彼を、多少連絡に不備があったからといって信用出来ないと判断する訳にもいかないだろう」

「ビルラー氏の……そうですか」

 

 リチャード・ビルラーといえば、S.M.Sのオーナーでもありグラス大統領の有力な後見人でもあるゼントラーディだ。確かにその連絡役……言い換えれば、手の者を明確な理由も無しに免職する訳にはいかないだろう。

 となると……

 俺と同じ事を思ったのだろう。ジェフリーは一瞬黙り込んでから口を開く。

 

「罷免できないにしても、彼を信用しすぎるのは止めておいた方がいいでしょう。アクセル少尉の話やこれまでの彼の行動を考えると、いずれ尻尾を出すかもしれませんからね」

「……アクセル少尉はどう思うかね?」

 

 大統領の問い掛けに、小さく頷いて答える。

 

「アンノウンの機体解析に関して言えば、VF-25を開発したL.A.Iに戦場で損傷して残していったパーツの解析を任せていればスムーズに事は進んだでしょう。あるいは、ギャラクシーで作られたVFだというのもすぐに判明したかもしれません。ですが、彼はそれをしなかった。理由は分かりませんが、明らかに彼の介入の為にフロンティア船団にとって不利な要素となったのは事実です」

 

 そう、アンノウンの件を隠したかったのか、あるいはそこに使われている技術を自分で独占したかったのか。はたまたそれ以外の目的があったのか。それは分からないが、あのキノコの行動がフロンティア船団に対して明確に不利益をもたらしたのは事実だった。

 

「これまでの経緯を踏まえれば、三島首席補佐官は信用は出来ても信頼は出来ないかと」

 

 能力的にはあの若さで首席補佐官になっているのだから、間違い無く優秀なのだろう。だからこそ、信用……信じて用いる事は出来ても、信頼……信じて頼る事は出来無いと判断する。

 

「……そうか。分かった。確かに彼の態度は色々と問題があるだろうな。これからは彼を信じすぎるのは止めておこう」

「それがいいかと。ただし、彼がビルラー氏との連絡役であるのを考えると……」

 

 ジェフリーの念の為、と告げられた言葉にグラス大統領は頷く。

 

「勿論分かっている。私の心配をしてくれて嬉しく思うよ」

「そうですか、なら安心ですな。私としてはフロンティア船団の大統領はグラス大統領が相応しいと思ってますので、精々頑張ってもらいませんとな」

「くっくっく。一応私も年寄りなんだがね。あまり扱き使わんで欲しいものだ」

「何、大統領はまだまだお若いですよ」

 

 ジェフリーとグラス大統領がお互いに笑みを浮かべてやり取りする。

 さすがに年寄り同士の話に入るのもどうかと思い、そのまま黙って見ていたのだが……不意にお互いに何かを理解し合ったかのように笑みを治め、グラス大統領が床に置かれているバジュラの標本へと視線を向ける。

 

「アクセル少尉、これがガリア4から持ち帰ったという?」

「そうです。ガリア4で、その……」

 

 言ってもいいのかとジェフリーに視線を向けるが、その質問にジェフリーは無言で頷く。

 

「スカル小隊の隊長オズマ・リー少佐の義理の妹であるランカ・リーの両親と思われる人物の研究所から持ってきた物です」

「よくこれ程の大きさの物を持って来られたな。これが……なるほど。だが……」

「グラス大統領?」

 

 グラス大統領の様子を不審に思ったのかジェフリーがそう尋ねが、すぐに何でも無いとばかりに首を振って口を開く。

 

「いや、何でも無い。……それにしても、ランカ・リーか。報告ではあの調査団の生き残りだという話は聞いていたが……どうやら何かあるようだな。ジェフリー艦長、オズマ少佐に近い内にランカ・リーを呼び出すことになるかもしれないと言っておいて欲しい」

「気は進みませんが、現状を打破出来るかもしれない鍵ともなれば……しょうがないでしょうな。ただし! 彼女に対しての非人道的な対応は一切しないと約束して下さるのが条件です」

「勿論だ。私としても年若い少女を相手にそのような真似はしたくないからな」

 

 大まかな話はこれで終わり、後は10分程雑談をして大統領は帰っていくのだった。

 ……色々と動き出しているようだな。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:905
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:690

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