転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0738話

 異星生物研究所の件があった翌日、俺は何故かグリフィスパークの丘に呼び出されていた。昨日の戦闘の件で報告書を書いて出しに行ったら、午後にここに来いと言われたんだが……

 

「で、何だってこんな場所に俺をわざわざ呼び出したんだ? それも、オズマだけじゃなく……」

 

 声を掛けつつ、市街地が見下ろせる高台にいるオズマともう1人の人物へと視線を向ける。赤い髪をバンダナで留めている褐色の肌の女を。即ち……

 

「カナリアまで一緒になって」

「こんな場所まで急に呼び出して悪かったな。お前に色々と話しておかないといけない事があったんだ。けど、街中だとインプラント処理をしているグレイスに関しては筒抜けになりかねん。それこそ、S.M.Sの中でもな」

「なるほど、そっち関係か。それなら確かにここまで念を入れるのも理解出来るか。……で、結局何の話なんだ?」

「色々とあるが、まずは俺の件からだな。フロンティア船団が超長距離フォールドをするってのはニュースとかで見てもう知ってるな?」

「ああ。何でも統制モードにはならないけど、色々とバーゲンやら何やらで騒がしくなってるよ」

 

 そんな俺の台詞に笑みを浮かべるオズマ。その隣では、カナリアもまた何かを思い出すかのように口元に笑みを浮かべている。

 

「まぁ、バジュラとの戦闘では予想外にフロンティア船団は被害を受けていないからな。実際、酷い被害を受けたと言えば一番最初にバジュラが襲ってきた時の市街戦だけだろうし。もしあれ以降もフロンティア船団に被害が出ていれば、恐らくは統制モードが発動されていただろう。それこそ、第2次資源統制モードどころか、第3次、第4次、第5次になっていた可能性もある。それを思えば統制モードにならないだけ御の字だろうよ」

 

 小さく肩を竦めるオズマだったが、その口元に浮かんでいた笑みを消して真面目な表情で言葉を続ける。

 

「で、ここからは本題その1だ。これは軍のとある筋から下りてきた機密情報なんだが、バジュラは反応エンジンやフォールド波に惹かれる習性があるらしい。そんな奴等が周囲にいる中で超長距離フォールドなんて真似をしようものならどうなるか。……言わなくても分かるな?」

「……おい。それはまさか……こっちが逃げようとしてもバジュラが追いかけてくるって事か?」

「ああ。そして三島補佐官やグレイス・オコナーはその対処にランカを使うつもりだ」

 

 なるほど、下りてきた情報ってのは恐らくはキャサリンからか。昨日のランカのコンサートの後で寄りを戻したって話だしな。

 まぁ、それはともかくとして。

 

「ランカの件について俺にどうしろと? 正直こう言うのも何だが、俺はランカと殆ど親しくないぞ? 会った事自体数回しかないし」

「分かっている。それにランカの件については別に頼む奴がいるから、基本的にはそいつに任せるつもりだ。正直に言えば戦力的な意味でも、ランカの近くにいるのがブレラという意味でもお前に任せるのが安心なのは間違い無いんだが、確かにアクセルとランカはそれ程親しくないからな。それに……正直、お前はそれどころじゃ無くなりそうだし」

 

 憂鬱そうに溜息を吐くオズマの様子に訝しげなものを感じて尋ねるが、小さく首を振って誤魔化される。

 それにしても、ランカの件を別に頼む奴か。普通に考えればアルトなんだろうが……ランカとアルトの関係を知ったのか? いやまぁ、関係って言っても実際そんなに深い関係って訳じゃ無くて、その1歩手前って事だろうが。

 そんな風な俺の考えを見透かした訳でもないのだろうが、どこかジト目でこちらを見ているオズマ。

 やがて、小さく溜息を吐いてから視線を隣で黙って話を聞いていたカナリアへと向ける。

 ……そう言えば、ここまでの話なら確かにカナリアがここに来る必要は無かったよな? てっきりランカの件で一緒に来たのかと思ったが、そっちに関してだと俺はあくまでも保険的な意味合いみたいな扱いだし。

 

「オズマの話が終わったようだから、次は私からだ。正直に言えば、アクセルにここに来て貰ったのはこれが本命だと言ってもいい。……これを覚えているな?」

 

 そう告げられて手渡されたのは見覚えのある薬だった。そう、それはカナリアに分析を頼んだ、シェリルの飲んでいた薬。

 それをここで出すという事は……

 

「分析が終わったのか?」

「そうだ。ここ最近は色々と忙しかったから、どうしても後回しになってしまった。済まなかったな」

「いや、構わない。それで、どういった薬だったか分かったんだろ?」

「……ああ」

 

 頷き、オズマの方へと視線を向けるカナリア。

 その様子に一瞬疑問を抱いたが、俺が何かを言う前にカナリアが口を開く。

 

「この薬の正式名称は639WITCHCRAFT。ある感染症の対症療法薬として期待されている薬だ。だが、副作用として嘔吐や発熱があるし、根治性は期待出来ない。あくまでも症状を緩和するだけの薬だ」

「……何?」

 

 カナリアの言葉に、ガリア4へと向かう時の一連のシェリルの様子が脳裏を過ぎる。てっきり風邪か何かだと思っていたあの症状。つまり、あれはその感染症によるものだった?

 だが、そんな俺の内心の疑問は関係無いとでも言うようにカナリアの説明は続く。

 

「V型感染症。この名前に聞き覚えがあるんだろう?」

「V型感染症? 確か映画の撮影の時の……」

 

 そう、確かヒュドラが感染して凶暴化し、アルトとランカを襲った原因がそんな病名だった筈だ。だが、その病気に感染した疑いのあるヒュドラは全て処分された筈だ。

 

「正解だが、ちょっと違う。……ここからは色々と衝撃が大きくなるが、それでも聞くか?」

 

 念を押すかのようなカナリアの問い掛けに頷くと、小脇に抱えていた小型のコンピュータの画面を俺の方に見せる。

 ……って、おい。インプラント処理をしたグレイスへの対策として俺達はこのグリフィスパークの丘で会っているんだろうに。なのに、何故わざわざコンピュータを持ってきているんだ?

 そんな俺の疑問が顔に浮かんでいたのだろう。カナリアは笑みを浮かべて口を開く。

 

「安心しろ。このコンピュータは完全にスタンドアローンで、内部的にも手を入れてある。ネットワーク機能はそもそも存在すらしていない」

「……なるほど」

 

 確かにそもそもネットワーク機能が無ければ、インプラントされている者がどうしようとしても手の出しようがないか。

 そんな風に考えながらコンピュータの画面へと目を向けると、そこには『COSMO NATURE』と書かれた画面が映し出され、画面の下にはその記事が作られたのが2047年11月。つまりは12年前である事を示している。……だが、次の画面に移り変わった次の瞬間に思わず息を呑む事になる。

 画面に映し出された1枚の写真。そこにはこの論文を書いたと思われる3人の女の姿があった。それはいい。だが、問題は……

 

「グレイス・オコナーだと!?」

 

 そう、その執筆者3人で映っている写真のうち、左側にいる女は紛れも無く俺の知っているグレイス・オコナー以外の何者でもなかった。

 

「それだけじゃない。論文の執筆者は第117大規模調査船団プロジェクトリーダー、マオ・ノーム」

「マオ・ノーム!?」

「そう、お前も知っての通り鳥の人に出て来た本人だ」

 

 マオ・ノーム。ゼントラーディによって地球が1度壊滅させられたというのに、生き残っていたのか? ……待て。マオ・ノームにシェリル・ノーム。となると、この一致は偶然なのか? 少し前まではマオ・ノームは地球で死んだと思っていたから、名字の一致はあくまでも偶然だと思っていた。しかしマオ・ノームが生きていて、更にそのマオ・ノームと共同研究者であったグレイス・オコナー。これを偶然の一致で片付けるには無理がありすぎる。

 

「そして……これだ」

 

 呟き、カナリアがコンピュータを操作して、別の映像を映し出す。そこに映し出されていたのは、10歳前後の少女が治療を受けていると思しき映像だった。そして、その幼い少女には見覚えのある人物の面影があり、その名を口に出そうとしたその瞬間。

 パキッという音が後ろから聞こえて来る。

 反射的に構えながら振り向いた俺の視線の先にいたのは……

 

「ふっ、ふふっ……どうやらグレイスの言った事は本当だったみたいね……」

 

 近くにある木へと寄り掛かるようにして呟くその声。それが誰なのかはすぐに分かった。何故なら、今までその人物の子供の頃の姿を見ていたのだから。

 

「シェリルッ!」

 

 呟き、寄り掛かっていた木から地面に倒れ込みそうになったシェリルを瞬動を使って受け止める。

 

「V型感染症、か。……アクセルには、知られたく……無かったんだけど、ね」

「お前、この熱は……」

 

 地面に倒れ込みそうになったシェリルを受け止めた俺の腕には、熱い程の体温を感じる。間違い無く熱が……先程のカナリアの説明が真実だとすれば、V型感染症を抑える為の薬の副作用だろう。

 今にもその瞳から涙がこぼれ落ちそうになりながら、そこまでが限界だったのだろう。そのまま俺の腕の中で意識を失う。

 

「シェリル……こんな体調で無茶な真似を。カナリア!」

 

 そっとその涙を拭い、発熱による身体の熱さにカナリアの名前を呼ぶ。

 だが、俺の視線を受けたカナリアはそっと首を横に振る。

 

「その症状はさっきも言ったV型感染症の対症薬によるものだ。残念だが私に出来るのは暖かくしてベッドで横になって貰うことくらいしかない」

「……アクセル、宿舎にシェリルを入れる事を許可する。お前の部屋に連れて行って眠らせてやれ。本来なら病院や医務室なんかに連れていくのが最善なんだろうが、グレイス・オコナーという存在がいるとなるとそれも難しいだろう」

 

 確かにインプラント処理をしているグレイスに、そのグレイスの手足となって動いているほぼサイボーグと言ってもいいブレラがいる事を考えれば、素手でブレラに対抗出来る俺が一緒にいるのがベスト、か。

 

「了解した。すぐにS.M.Sに戻る」

 

 オズマに頷き、そのままシェリルを横抱きにしてグリフィスパークの丘を後にする。

 シェリルがいる以上、幾ら急いでいるとは言っても影のゲートは使用出来ない。まず確実にグレイスの目が光っていると考えて動いた方がいい。

 さすがにこのままシェリルを横抱きにして電車やらバスに乗るのは自殺行為なので、近くの店で適当に買った帽子を被せて適当に変装させ、そのままタクシーでS.M.Sの宿舎まで戻る。

 中に入る時に警備の兵から色々言われるかと思っていたのだが、幸い既にオズマから連絡がいっていたのだろう。特に何も言われずに――冷やかすような視線は向けられたが――宿舎に入る事に成功する。

 そのまま俺の部屋まで行き、以前のようにベッドへと寝かしつけた。

 ……汗を掻いてる以上は服を脱がせた方がいいんだろうが、さすがにそんな真似は出来ない。かといって誰かを呼ぶってのもシェリルがここにいるってのを知られるのは色々と不味いだろうし。

 

「しょうがない、か」

 

 結局は以前と同じように毛布を数枚掛けてやり、汗を掻いたら拭いてやりシェリルが気が付くのを待つ。

 TV等を付けるでもなく、部屋の中にはシェリルの荒い吐息だけが聞こえていた。

 そんなシェリルの世話をすること、数時間。ようやく呼吸が落ち着き、汗も掻かなくなってきて……不意にシェリルの目が開き、ベッドの隣に椅子を持ってきて本を読んでいた俺に視線が向けられる。

 

「気が付いたか」

「……ええ。またアクセルに助けられたわね」

 

 呟き、その瞬間シェリルの目から涙がこぼれ落ちたのを、そっとシェリルの汗を拭いていたタオルでその涙を拭きながら口を開く。

 

「何故泣く?」

 

 勿論自分がV型感染症に罹っていたという事や、グレイスの件を知ってしまった以上は涙を流しても不思議ではない。幾らシェリルが強いとは言っても、何にも負けない程に強いという訳では無いのだから。

 だが、今シェリルが流した涙はそのようなものではないように思える。だからこそ尋ねたのだ。

 

「アクセルに……あたしの病気の事を知られたく無かったからよ」

「俺に?」

「ええ。誰に同情されたとしても、あるいは哀れまれたとしても……それでも、アクセルには、アクセルにだけはそんな目で見られたくなかったの」

「シェリル……」

「ふふっ、お笑いよね。いつもはシェリルですって顔をしてるのに、実はこんな気持ちを隠していたなんて。……でも、それでも……あたしは、アクセルにだけはありのままのあたしを見て欲しかったのよ。……軽蔑した?」

「そんな訳が無いだろ。それも含めてシェリルなんだからな」

「アクセル……もう、本当に馬鹿なんだから」

 

 瞳に涙を貯めつつも、それでも口元に小さく浮かべる笑み。

 俺はその涙を指で拭いつつ……そっとシェリルの頬へと手を触れ、その唇に自分の唇を重ねようとして……

 

「駄目っ!」

 

 シェリルが俺を突き放すようにして顔を背ける。

 

「駄目なのよ、アクセル。あたしの病気を忘れたの? V型感染症は血液、体液型感染なのよ。あたしとキスなんかしたら……」

 

 言い掛けたシェリルの頬に再び手を伸ばし、驚きで身体を固めたシェリルの唇へと半ば強引に自分の唇を重ねる。

 一瞬驚きに目を見開いたシェリルだったが、それ以上は何も言わずにそっと目を閉じ、そのまま1分程熱烈な口付けを交わしてからそっと離れた。

 俺とシェリルの唇の間に銀糸が繋がり、シェリルはそれを見て頬を赤く染めて呟く。

 

「……馬鹿よ、アクセル。V型感染症に感染しても知らないんだからね」

「問題無いさ。……そうだな、お前には話しておくべきだろう。いや、俺が聞いて貰いたいというのが正しいか」

「アクセル?」

 

 幸い、この部屋にあるカメラは映像モニタだけだ。後は俺とシェリルのカメラのスイッチを切ればグレイスにこの部屋の中身を覗かれる事はない。

 

「シェリル、携帯は?」

「え? 病院にあるけど……」

「そうか」

 

 シェリルの言葉に頷き、俺の携帯をスイッチを切ってからタオルで包み込んで隣部屋の隅へ。映像モニタも手動でスイッチを切り、完全に外部と隔絶してからベッドで俺が何しているのか意味が分からないといった風に見ているシェリルへと向かって口を開く。

 

「そうだな、この場合はやっぱりこの台詞がベストか。『僕は、僕の秘密を今明かそう』ってな」

「え? 秘密?」

 

 ベッドで上半身を起こしているシェリルの隣に座り、自分の身の上を語るべく口を開くのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:1055
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:720

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