転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0744話

「ほらアクセル、行くわよ! 折角のお祭りなんだから、少しは楽しみましょ」

 

 人混みで溢れている中、シェリルが俺の手を引っ張りながら街中を進んで行く。

 シェリルはいつも通り帽子の中にストロベリーブロンドの髪をしまい込み、顔には大きめのサングラスの変装姿だ。その姿のまま、しっかりと組んだ俺の腕を引っ張るようにしているのだ。

 ……こうなると腕を組んでいると言うよりは、関節技で腕を極められているといったような感じに見えないことも無いよな。

 腕で潰されているグニュリとした柔らかい存在を感じつつ内心で呟く。

 

「あ、ねえ。あれちょっと美味しそうじゃない?」

「あれ? ……ああ、また懐かしいものを」

 

 シェリルの視線の先にあるのは、綿飴を作っている屋台だった。まぁ、バジュラの攻撃を殆ど受けていないとは言っても、最初に襲撃してきた時はそれなりに被害が出たし、更には前回の緊急に行われた超長距離フォールドだ。それを考えれば物資の統制モードには達していなくても、あまり無理は出来無いと言うのが事実なんだろう。……多分。

 あるいは純粋にあの屋台の店主が綿飴を売りたかっただけなのかもしれないが。

 どっちにしろ、綿飴は専用の機械とザラメがあれば作れるし、その専用の機械にしたってそう難しいものじゃない。いざとなれば素人でもちょっと工夫すれば作れる程度の代物だしな。

 

「ほら、凄いわ。白くてフワフワで、まるで雲みたい!」

「……ん? 綿飴を食べた事が無いのか?」

「綿飴って言うの? ギャラクシーじゃ見た事無いわ。と言うか、ギャラクシーだと屋台とかは無かったしね。少なくてもあたしは初めて見るわ」

 

 そう告げ、少し寂しそうな表情を浮かべるシェリル。色々と嫌な思い出も多いギャラクシーだが、それでもシェリルにとっては故郷なんだろう。

 そんな風に考え、今度は先程の仕返しとばかりに組んでいる腕を引っ張って屋台へと向かって進んで行く。

 

「綿飴1つくれ」

「あいよ。いやぁ、カップルで仲がいいねぇ。ほら、ちょっとおまけしておいたから2人で仲良く食べな!」

 

 40代程の男に金を払い、割り箸に巻き付けられた綿飴を受け取る。

 ビニールの袋に入れて売っている綿飴もあるのだが、この屋台では割り箸に巻き付けているらしい。

 

「ほら、折角だし食べろよ」

「……いいの? あたし1人で食べて」

 

 自分だけが渡された綿飴にシェリルが首を傾げて尋ねてくるが、そもそも綿飴を1人で食べきるのは結構厳しいものがある。……少なくても俺は。いやまぁ、混沌精霊なんだから多少無理をすれば食えるんだろうが。

 

「んー……そうね。なら、はい。どうせだから店主が言ってたように2人で食べましょ。こんなに多いと、さすがにあたし1人で食べきるのは無理でしょうし」

 

 確かに、ザラメを少量しか使ってないのに綿飴というのは量が多い。いやまぁ、だからこそ綿飴って言うんだろうけどな。実際には砂糖を食ってるようなもんだし。

 ただまぁ、一口、二口くらいなら……

 

「そうだな、なら少しだけ貰うか」

 

 シェリルの持っている綿飴に食いつき、一口食べる。

 口の中に広がるのは圧倒的な甘さ。ただひたすらに甘さ。とにかく甘さ。

 ……やっぱり少し食うだけならともかく、1人で1つ食うってのはさすがに厳しい。味が単調というか、なんというか。

 シェリルににしてもそれは同じだったのか、最初の内はともかく食べ続けているとやがて目に見えて食べる速度が落ちてくる。

 

「うーん、ちょっとこれ苦手かも。最初はいいんだけど、ずっと同じ味ってのが」

「だろ? まぁ、これも祭の醍醐味と言えば醍醐味なんだろうけどな」

 

 3分の1まで減った綿飴を、半ば強引に俺の口の中に押し込んで食い尽くす。

 その後は口の中が甘くなってしまったということで焼きそばを食べたり、あるいはホットドッグを食べたりする。

 にしても、ソース焼きそばがあったのはちょっと驚きだ。本場の中華料理だと焼きそばと言えば基本的には炒めた麺の上に餡を乗せるというものだ。分かりにくければ中華丼の餡と言えば分かりやすいだろう。つまり、ソース焼きそばというのは日本独自の料理な訳で……いやまぁ、マクロスの成立過程を考えれば日本人の勢力が強くなるのはしょうがないんだけどな。アタリア島に墜落したマクロスの調査は日本人が主になってやってて、統合戦争で世界中が殺し合っていた時も日本人はそんなの関係無いとばかりにマクロスの調査をやっていたって話だし。

 その結果、新統合軍やら政府やらには日系の人が多くなったらしい。

 ……まぁ、それでもここまで年月が経てばそれも残滓といっていいような状況になってるんだろうけどな。

 とにかく、そんなこんなで昨日に引き続きシェリルと一緒にデートをしながら街中を歩いていると、やがてパレードの時間になる。

 周囲の者達も皆がパレードを見に向かい、当然俺とシェリルもまたそちらへと向かう。

 そんな状態でパレードを見ていると、やがて車に乗ったグラス大統領が……

 

「あれ? ねぇ、ランカちゃんは?」

「……確かにいないな」

 

 シェリルが呟いた通り、視線の先にいるのは車に乗ってゆっくりと道路を移動しているグラス大統領のみだ。いや、正確にはその護衛と思しき者達も車に乗ってはいるが、ランカの姿はどこにもない。

 

「病気か何かかしら……? でも、そんな事なら病気の為に休養しますとか連絡するわよね? そもそも、そういう事態になったらパレードそのものが中止でしょうし。となると、何らかの急なアクシデントとか?」

「どうなんだろうな。ランカに何かあってパレードに参加出来ないとなると、グラス大統領も色々と忙しくなりそうだけど、そんな様子も無い。……ちょっと待ってくれ」

 

 シェリルと組んでいる腕を一旦解き、携帯でオズマへと連絡を入れる。

 

『もしもし、アクセルか? どうした?』

「オズマ、今ちょっといいか? ランカの事で話があるんだが」

『ランカの事で? ……ああ、構わない。こっちもそろそろアクセルに連絡しようと思ってたからな。ある意味では丁度良かった』

「俺に? いやまぁ、そっちの話は後回しだ。とにかく今パレードを見てるんだが、そのパレードにランカの姿が無い。病気か何かか?」

『いや、俺は何も聞いていないな。となると、何か別の理由がある筈だが……』

「このパレードはランカの為というだけじゃなくて、フロンティア船団全員にとっても重要なものなのは分かってるだろ? それにランカがいないと、色々と不味いぞ」

『……ああ。分かってる。その辺は後できちんとランカに話を聞くよ』

「とりあえず病気とか事故とかじゃないんだな? その辺、シェリルがちょっと心配してるんだけど」

『ああ、その心配は無い筈だ。……それよりもこっちの話に移ってもいいか?』

 

 なんだ? 微妙に切羽詰まってるような声の感じだが……調査の件で何か進展でもあったのか?

 

「ああ、構わない。で、そっちの用件は?」

『こっちで調べた限りだと、まだ確定はしていないが三島の野郎は何かとんでもない事を企んでるらしい』

「とんでもない事? 具体的には?」

『それは……いや、まだこれ以上口に出すのはやめておく。色々とデリケートな問題だから、迂闊に口に出す訳にもいかなくてな。もう少し情報をきちんと洗って判明したら知らせるよ。とにかくそっちでパレードを見てるってんなら丁度いい。密かにでもいいから、グラス大統領の護衛をしてくれ』

 

 ……護衛? おい、ちょっと待て。この話の流れでグラス大統領の護衛をしろってことは、つまり何か? キノコはグラス大統領を暗殺でもするつもりか?

 いや、確かにこのタイミングでその選択を取るというのは悪くないのかもしれない。バジュラの脅威は無くなったんだろうから、直近の危険が何かあるという訳でもない。グラス大統領が何者かに暗殺されて後釜を決める選挙を行うとしたら、補佐官としてグラス大統領を支えてきたキノコはこれ以上ない程の人材だ。最有力候補と言ってもいい。

 

「分かった。何が起きてもすぐに対応出来るように注意しておく。そっちからグラス大統領に連絡はつかないのか?」

『連絡は取ろうとしているが、どうやら三島の手の者が動いているようだ。こっちでも一応手を打ってはいるが……』

 

 ちっ、後手に回っているな。

 

「向こうにオズマ達が動いているのを気が付かれているのか?」

『どうだろうな。……ただ、俺とキャシーに監視の人員がいるのを思えば、恐らく確信はしてないが怪しんでいる……ってところだと思う』

「そうか、気を付けろよ。生身だとお前はそれ程強くないんだから」

『抜かせ。本気でやれば、お前とだって渡り合ってみせるさ』

「ほう? なら、今回の件が終わったら一勝負といこうか。ただし、そこまで言うからには、負けた方が食事を奢る程度のことはして貰うぞ? 勿論満足するまでな」

『なっ!? おい、ちょっ!』

「よし、決まりだな。グラス大統領の護衛は任せろ。何があってもどうにかしてみせるさ。折角の友好的な相手だしな」

『ちょっ、待……』

 

 オズマの言葉を最後まで聞く事無く携帯を切る。

 よし、取りあえずはこれで賭けは成立っと。後は……

 携帯を仕舞いながら、シェリルの方へと近付いていく。

 

「どうだったの? 何か急用?」

 

 そう尋ねてくるシェリル。

 いつもと変わらぬ表情だが、その表情がどこか強がっていると見抜けるようになったのは、一週間程度ではあってもシェリルと共に暮らして同じ時間を過ごしているからなのだろう。

 そんなシェリルの気分転換も含めた今日の祭見物だったのだが、さすがにグラス大統領の暗殺と比べられる筈も無い。

 

「ああ、ちょっとな」

「じゃあ、このままここで別行動?」

 

 シェリルのその言葉に、少し考える。

 確かに効率だけで考えればそれがベストだろう。だが俺が1人で動いているとなると、向こうがこちらを警戒する可能性もある。それを考えれば、シェリルと共に行動した方がいいのは確実だ。

 そうなるとシェリルも危険な目に遭うかもしれないが、俺がいる時点でシェリルの安全は保証されているのも同然だしな。

 その辺の事を説明してから、尋ねる。

 

「で、どうする? 俺と一緒に来るか、あるいは1人で見て回るか」

「アクセルと一緒に行くに決まってるでしょ。わざわざ聞くまでも無い事ね」

 

 俺の問いに、一瞬の躊躇すらなく答えるシェリル。

 

「少しは迷ったらどうだ?」

「何言ってるのよ。何が起きるのか分からないけど、アクセルと一緒にいるのが一番安全に決まってるでしょ」

 

 当然とばかりに言われたその言葉に、俺は苦笑を浮かべるしかない。

 結局そのままシェリルと2人で、グラス大統領のパレードをしている車を追うかのように進んで行ったところで……

 

「止まれ。怪しい動きを……ん? お前は確かS.M.Sの……」

 

 黒服の男が俺の肩に手を掛け、その厳つい顔が驚きに見開かれる。

 俺の事を知っているとなると、恐らくは以前にグラス大統領のボディーガードとして行動している時に俺と遭遇したのだろう。となると、バジュラの巣を確保する時か、あるいはガリア4から帰還した後でS.M.Sまで来た時か。

 そんなボディーガードの男が、若干不審そうな表情を浮かべて口を開く。

 

「何だってお前がグラス大統領の後をつけるような真似をしているんだ?」

「うちの上司からのお達しでな。どうやらこのパレードの中でグラス大統領を狙う……かもしれないって話が出ている。一応念の為だ。そっちにも連絡をしたいと言ってたけど、色々と邪魔が入っているらしい」

 

 それだけで俺の言いたい事は大体理解したのだろう。表情を厳しく引き締め、素早くどこかへと通信を送って指示を出す。

 

「忠告には感謝するが、こちらも護衛が本職だ。以後の護衛はこちらに任せて貰う」

「こっちも一応上司から言われてるんでな。お互いに不干渉って事でどうだ? 勿論何か情報が上がってきたらそっちには知らせる」

「……好きにしろ」

 

 数秒程考え、やがて諦めたのかそれだけを短く告げると人混みの中へと消えて行く。

 それを見送り、俺もまたシェリルを連れながらゆっくりとパレードをしているグラス大統領の車を追うのだった。

 

 

 

 

 

 そしてパレードは終わり、そのまま時間は過ぎ……やがて、今回の目玉である美星学園でのランカのライブが始まる事になる。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:1115
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:732

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