転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0746話

「え? バジュラ? どこに? って言うか、もうバジュラはこのフロンティア船団の近くにはいないんでしょ?」

「でも、今確かにあいつがバジュラがどうこうって言ってたよな?」

「ああ、俺も聞いた。っていうか、あいつ今とんでもないジャンプしてあそこまで移動しなかったか? ……ランカちゃんのコンサートを楽しみにしすぎていて疲れたのか?」

 

 そんな声がグラス大統領の側に着地した俺の耳へと聞こえて来る。だが、俺はそんな声に答えている余裕は無かった。俺に出来るのはただ1つだけ。即ち。

 

「グラス大統領。至急避難を。バジュラがこの船団内に侵入……」

 

 そこまで告げて、ふと気が付く。俺の視線の先でたった今大統領を狙っていた狙撃手を殺したのはバジュラだ。それは間違い無い。だが、その姿は俺が良く見知っている機動兵隊バジュラや重兵隊バジュラとは違い過ぎる。大きさにして人間と同程度。そして、俺はその姿がどのような存在なのかを知っていた。実際にガリア4にあったマクロス級グローバルの研究室で見ているのだから。

 つまりあのバジュラは幼生体。となると、当然その幼生体がフロンティア船団に潜入してきたという訳では無いだろう。それが意味しているのは……

 

「バジュラがフロンティア船団内で繁殖している?」

「なっ!? 馬鹿な! そんな事ある筈が!?」

 

 俺の呟きに大統領が答えるが、それ以外に説明のしようがない。そして何よりも。

 

「大統領、至急避難を! このままではここは……ちぃっ!」

 

 俺の言葉が最後まで続く事無く、どこからともなくバジュラが姿を現す。それも1匹や2匹、10匹、20匹といった規模じゃない。数百匹、下手をしたら数千匹にも及ぼうかという数のバジュラの群れだ。

 せめてもの救いはその全てが幼生体であり、お馴染みの機動兵隊バジュラや重兵隊バジュラではないといったところか。あんな奴等がフロンティア船団内から現れれば、どうしようもなくなる。

 こちらへと目を付けてやって来たバジュラの幼生体に視線を向け、懐からS.M.Sの支給品でもある拳銃を取り出して瞬時に狙いを付けてトリガーを引く。

 1発、2発、3発。3連射された弾丸は全てが直立するカブトガニのようにも思える幼生体へと命中し、やがて力尽きて地面へと墜落していく。

 だが、所詮は1匹。焼け石に水でしかない。

 

「大統領!」

「駄目だ! 今からここを脱出しても車まで辿り着けん!」

 

 俺の言葉に、ボディーガードの男がこちらへと向かってくるバジュラの幼生体目掛けて銃を撃ちながら叫ぶ。

 ちっ、確かにそれは事実か。実際、VIP席の下は既に観客達が逃げ惑って騒ぎになっており、この中を掻き分けて車のある場所に向かうのは相当の労力が必要だ。バジュラに狙われながら、更に混乱している連中を掻き分けて脱出する為に車に辿り着いたとしても、幼生体の時点で生体兵器としてある程度完成しているバジュラだ。触角の部分から放たれるエネルギー弾や、尾が刃になっているのを考えれば……

 となると、ここで防衛戦を行った方がまだ大統領を守りきれる可能性は高い。

 近付いてくるバジュラを拳銃で牽制しつつ、近くの様子を……シェリル!?

 人混みの流れに逆らうかのようにこちらへと向かって来ているシェリルの姿。その姿を確認すると、近くのボディーガードへと視線を向けて声を掛ける。

 

「数秒だけ頼む」

「ん? ……分かった。すぐに戻って来いよ」

 

 俺の視線を追って、理由を悟ったのだろう。小さく頷くボディーガード。その姿を見てから、拳銃を撃ちつつVIP席から飛び下りてシェリルの隣へと着地。

 

「アクセル!」

「話は後でな。今はちょっと大人しくしててくれ」

 

 素早くシェリルを横抱きにして、そのまま再び跳躍する。数秒後には、俺の姿は再びVIP席にあった。

 

「……何者だ、お前? いや、まぁ今は助かるというか、頼もしいとかしか言えないが」

 

 シェリルを抱えたまま跳躍したのを見ていたのだろう。唖然とした声で呟きつつも、ボディーガードは拳銃を使ってバジュラの幼生体へと銃弾を撃ち込んでいく。

 必死に応戦はしているものの、持っているのが拳銃程度という事もあって中々バジュラには当たらないし、1発2発程度では余程当たりどころが良く無ければ効果は発揮しない。

 ちっ、しょうがない。こんな場所で躊躇って、結局こっちに被害が出たら洒落にならないか。

 周囲の様子を咄嗟に判断し、脳裏に空間倉庫のリストを表示。取りあえず弾幕を張るという意味合いもあって、サブマシンガンを10挺程取り出す。

 

「これを使え! 使い慣れないかもしれないが、あの数を相手に拳銃だと殆ど意味が無い! 弾幕を張れるこっちの方がこの場では有効だ!」

「あ、ああ。けどお前どこからこれだけのサブマシンガンを? それにこのサブマシンガン、見た事がない種類なんだが」

「詳しい話は後だ。生き残りたいのなら、今はいらない事を考えないで、とにかく撃て」

「っ!? アクセル、あたしも貰うわよ。……このおっ!」

 

 空間倉庫から取り出して床に置かれたサブマシンガンを手にとって銃口をバジュラへと向けるシェリル。そのまま素早く安全装置を外してトリガーを引く。

 ガガガガガガガガッ! と轟音のような銃声を立てながら放たれる無数の弾丸は、こちらへと近づいて来ているバジュラを次々に撃ち抜き、地上へと墜落させていく。

 銀河の妖精、銃を取るって言っても……ちょっと馴染み過ぎじゃないか? いや、確かあの撮影の時に銃の練習もしてたし、標的にかなりの頻度で当たってはいたが……まさかこうまでサブマシンガンを使いこなすとはな。

 予想外のシェリルの実力に驚きつつも、空間倉庫の中からサブマシンガンではなく通常のマシンガンを2挺取り出す。

 1人で扱う事を目的としたサブマシンガンでは無く、個人で使う事を考慮されていない、いわゆる重機関銃である。15歳という外見年齢の俺の身長よりも長い銃身を持つ重機関銃。普通なら複数人で使う重機関銃も、混沌精霊である俺にしてみれば片手で振り回すのもそう難しくは無い。そのままサブマシンガンで弾幕を張りながらも唖然としつつこちらを見ているボディーガードと、素早く周囲を見回して状況を把握してたグラス大統領の視線を無視して両手で1挺ずつ重機関銃を持ち上げ……トリガーを引く。

 サブマシンガンの放つ発射音とは比べものにならない程の発射音と威力。放たれる弾丸はバジュラを貫くのではなく、当たる端から爆散させていく。

 本来重機関銃と言うのは汎用機関銃が流行して既に廃れている分野だ。特に取り回しの難しさが致命的だったのだが、俺は見ての通りこの程度の重さは苦でもないし、シャドウミラーの主戦力でもある量産型Wもこの程度の重さは問題にしない。

 それ故、技術班がシャドウミラー隊員用として作り出したのがこの重機関銃だった。……もっとも、威力が高い分弾切れも早いんだけどな。

 

「アクセル、待たせたな……っておいおいおいおい。何か凄い武器を持ってるな」

 

 ミハエルがEX-ギアを身につけたまま、クランを横抱きにしながらこちらへと近付いてくる。

 

「アクセル! お前、その武器一体どうしたんだよ!?」

 

 アルトがEX-ギアを身につけたまま、こちらもランカを横抱きにしてこちらへとやって来る。

 

「アクセル君! これからどうしますか!?」

 

 ルカもまた同様に、以前何度か見た覚えのある眼鏡を掛けた少女の手を引っ張りながらこっちへとやってくる。

 ……皆が皆、女連れとか……いやまぁ、シェリルを連れている俺が言える事じゃないんだけどな。

 

「いいから、とにかく迎撃の準備を整えろ。武器はそこに落ちているサブマシンガンを使え。敵の数が数だから、こっちも手数が多くないと押し切られるぞ! それとランカとそっちの眼鏡の女は弾切れになった奴にこれを渡せ!」

 

 そう告げ、サブマシンガンの弾倉の入ったケースを空間倉庫から取り出して足で蹴って滑らせる。

 

「今お前どこからその弾倉を取り出した! って言うか、その空間に空いてる穴は……」

「詳しい話はこの場をどうにかしたら説明してやるから、とにかく今は行動に移せ!」

 

 空間倉庫の穴に思わず叫んできたアルトに叫び返して、手に持っている重機関銃2丁をフルに稼働させたまま振り回す。放たれた弾丸は俺の射撃の数値や命中の数値、ガンファイトLv.9の効果によって、ほぼ全てが外れる事無くバジュラの幼生体に命中するや否や爆散させていく。

 それでも次から次に湧いて出て来る大量のバジュラ。確かに虫に近い生物だけど、ここまで似て無くてもいいものを。

 

「せめてもの救いは幼生体だけだったって事だな! これで機動兵隊バジュラや重兵隊バジュラなんかが出て来てたら、洒落にもならん!」

「いえ、違います。このバジュラは幼生体じゃありませんよ」

 

 俺の近くで大統領を囲むように位置取ってサブマシンガンを撃っていたルカが、バジュラを撃ち落としながらそう告げてくる。

 

「幼生体じゃない?」

「はい、幼生体は手の平に乗る程度の大きさしかありません」

 

 そこまで呟き、何故かランカの方へと一瞬だけ視線を向けるルカ。だが、すぐに言葉を続ける。

 

「このバジュラは幼生体が羽化や脱皮をしてなる第2形態と呼ばれているものです。この状態のまま大きくなると、アクセル君が言ってた機動兵隊バジュラや重兵隊バジュラになります」

 

 なるほど、幼生体の段階が幾つかに分かれているタイプなのか。

 納得しつつも、その情報に関しては今はそれ程重要でも無く、とにかくバジュラを1匹でも多く仕留めるべく弾丸を吐き出していく。

 

「ああっ、そんな……」

 

 悲痛な声に視線を向けると、そこでは眼鏡を掛けた女が口を手で覆いながら目を見開いている。その視線の先では、大統領の護衛として配備されていたのだろうデストロイドがバジュラの集団に襲われて地面に倒れ込み、身動きが出来ないまま一方的に攻撃されているところだった。

 まるでゾウに群がる蟻だな。もっとも、あそこまで大きさの差はないけど。

 けど……この状況はちょっと不味い。いや、ちょっとどころじゃなく不味い。

 

「おいっ、アクセル! 不味いぞ! 俺達がバジュラを集中的に倒しているからか、奴等がこっちに戦力を集中し始めている!」

 

 俺と同じ事を感じたのだろう。ミハエルが両手に構えた2挺のサブマシンガンでバジュラを次々に撃破しつつ叫んで来る。

 本来であればサブマシンガンを両手で持つというのは難しい。いや、普通のサブマシンガンなら可能かもしれないが、このサブマシンガンはシャドウミラーの主力でもある量産型Wが使うように設計されたものだ。その分威力は保証付きだが、サブマシンガンとして考えると相当な重量がある。

 勿論EX-ギアを装備しているからこそ両手にそれぞれ持てるんだろうが。

 だからといって、アルトやルカがやっている2挺では命中力がそれ程高くなく、完全に弾幕と化しているのを考えると、やはり射撃に対しての才能は高いんだよな。

 尚、一応俺と同階級の大尉であるクランは、マイクローンの状態でEX-ギアも無しでは1挺で限界なのか、シェリルと同様に両手でサブマシンガンを保持して弾幕を張っている。

 

「とにかく撃ちまくれ! この数に襲われたら洒落にもならない。近づけさせるな!」

 

 くそっ、確かにこうして見ていると周辺にいるバジュラがこっちに集まってきているのが分かる。そのおかげでランカのライブに来ていた客達の被害は予想よりもかなり少なく……っ!? そうか、奴等の狙いはランカか!?

 本来であれば、ランカに歌って貰うのがベストなんだろう。バジュラに対する効果については折り紙付きなのだから。だが……

 

「ランカさん、大丈夫、大丈夫です」

「ナナちゃん、私……私……歌わなきゃいけないのに、でも……」

 

 人の死を、それこそ目の前で自分のライブを見に来てくれた観客達が次々に殺されていくのを見て脅えている今のランカはそれを出来ない。いや、やろうとはしているようだが、身体が言う事を聞かないといったところか。

 

「くそっ、このままじゃマジで不味いぞ! 俺達だけじゃない、美星学園にいる一般人も含めて全滅だ!」

 

 焦ったアルトの声。サブマシンガンで弾幕を張りつつも、その声から強く焦りを感じさせているのはやはりランカが原因なのだろう。

 

「けどどうするってんだ!? ここに俺達の機体があれば多少はマシだろうが、それでも多勢に無勢だ。理由は分からないが、こうしてサブマシンガンがあるだけでも存外の幸運……ちっ、弾切れだ。ナナセ!」

「あ、はい! これです!」

 

 ミハエルの言葉に眼鏡の少女――ナナセと言うらしい――が弾倉を渡す。

 それを皮切りにしてボディーガードやアルト、ルカ達も順に弾切れになっては弾倉を交換していく。

 最悪なのは、こっちに向かったバジュラが次々にやられているせいか、余計にこちらに向かって来るバジュラが増えているということだ。

 新たにこちらへと向かって来るバジュラへと向かって重機関銃の銃口を向けるが……

 

「ちっ!」

 

 舌打ちをして、弾切れになった重機関銃を地面に投げ出す。

 くそっ、不味い。非常に不味い。これ以上無い程に不味い。敵の個体は弱いが、群れで攻めて来てる分だけ質が悪い。状況を一変させられる奥の手もあるが……

 チラリ、とシェリルへと視線を向ける。俺の恋人であるシェリルをこんな場所で死なせる訳には絶対にいかない。そして、どこかと連絡をしているグラス大統領もまた同様に。

 

「……しょうがない、か」

 

 周囲の状況を見て、覚悟を決める。この状況を何とか出来るのは俺だけなのだから。

 本来であればシェリル以外に見せる事は考えていなかったこの力。どうせやるのなら、全てを見せてやろう。迂闊に中途半端な力を見せつけてキノコに下手なチョッカイをかけられるよりも、最初から圧倒的な力を見せつけ、俺に対して迂闊な真似を出来ないようにする。

 

「全員、聞け。これから何があろうとも驚くな。俺は敵じゃない。それだけ覚えておけ」

 

 そんな俺の言葉に、サブマシンガンを撃っている者達全員が疑問の目を向けて来る。ただ1人、俺が何をやろうとしているのかを悟ったシェリルを除いて。

 

「駄目よ、アクセル!」

 

 サブマシンガンをその場に放り出し、俺に駆け寄ってきて服を掴みながら叫ぶシェリル。

 その手をそっと外し、まだ何かを言おうとしたシェリルの唇を俺の唇で塞ぐ。

 

「悪いな、お前が死ぬというのはどうやら俺には許容出来ないらしい」

「……アクセル……」

 

 瞳の端に流れる涙を舐め取り、シェリルを背にして1歩前に出る。そう、バジュラのいる方向へと。

 

「おいっ、アクセルッ! 何をするつもりだ!? こっちに戻ってこい!」

 

 叫ぶミハエルの言葉を背中に聞きながらも、1歩、2歩と飛んでいるバジュラの方へと近寄っていく。そして俺が前に出たことで出来た弾幕の薄い場所を突き、1匹のバジュラが尾の刃で俺に斬り付けんとする。

 俺の頭部目掛けて振るわれた刃。だが、俺はそれを回避する事無くその身で受け止め……背後から聞こえてきたシェリル以外の悲鳴をBGMに、刃は俺の身体に傷1つ付けられずにすり抜ける。周囲に散っているのは俺の身体を形成している白炎の欠片。すぐさま刃の通り過ぎた場所の白炎が再び結集して俺の身体を形成する。

 

「……え?」

 

 果たして背後から聞こえてきたのは誰の声だろう。それを聞き流しつつ、攻撃を外したバジュラに向けて一言呟く。

 

『紅き焔』

 

 その瞬間、バジュラは突如現れた炎により焼き尽くされ、数秒と経たずに炭と化す。

 白炎の状態になった手から生み出される幾多もの炎獣。獅子、虎、鳥、ドラゴン、グリフォン、ペガサス、ユニコーン。約100匹近い炎獣がバジュラへと襲い掛かって行く。

 炎獣の戦いを見ながら俺は白炎を身体全体に纏い、背からは翼が、側頭部と額からは天を突くかのような3本の角が、後頭部からは側頭部の角の下を通るようにして前方へと伸びている角が、腰からは竜尾が、そして俺の身体のベースは20代のものへと変化する。

 即ち……

 

「改めて自己紹介といこうか。混沌精霊のアクセル・アルマーだ」

 

 不思議と戦場の中で、俺のその声は響き渡るのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:1310
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:734
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:771

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