転生とらぶる   作:青竹(移住)

787 / 4302
0748話

「これは……」

 

 グラス大統領が周囲を見回して唖然と呟く。

 まぁ、それはそうだろう。つい数秒前までは美星学園でバジュラと戦っていたというのに、俺の影に沈み込み、気が付けばバトルフロンティアへと向かう近道の入り口付近にある場所へと移動していたのだから。

 グラス大統領だけではなく、周囲からの説明を求める視線――シェリルも含めて――に小さく肩を竦めて口を開く。

 

「そうだな、簡単に言えば転移魔法、テレポート、瞬間移動……まぁ、好きに納得してくれ。勿論正確にはそれぞれ色々と違うところもあるが、結果としては同じだしな」

「魔法……? 魔法!?」

「いや、テレポートとかなら超能力なんじゃないか?」

 

 そんな風に言い合っているアルトやミハエル達、そして興味深そうにこちらを見ているルカをそのままにして、携帯を取り出しオズマへと連絡を入れる。バジュラの件で有耶無耶になってはいたが、そもそもグラス大統領が狙われる可能性を示唆して密かに護衛を頼んできたのはオズマなのだ。それを考えれば、こんな事態なだけに合流した方がいい。そう思っての連絡だったのだが……

 

「出ないな」

 

 呼び出し音は鳴るのだが、オズマは一向に出ない。となると……これは、向こうでも何か起きたのか?

 大統領の暗殺未遂。そしてオズマ達が探っていた人物を考えれば……

 

「全員、聞け。恐らくレオン・三島が何らかの行動を起こしている可能性が高い。もしそうである場合、まず真っ先に狙われるのは……」

 

 チラリと視線を向けると、グラス大統領が渋い顔で口を開く。

 

「なるほど、三島君の狙いは私という事か」

「現在考えられる可能性として最も高いのはそれだろうな。事実、バジュラが襲撃する寸前に狙撃銃を持っている暗殺者がVIP席にいる大統領を狙っていた」

「……つまり、ここからはバジュラ相手じゃなくて人間相手の戦闘になるかもしれないって訳だ。全く、色々と面倒事が起きるね」

「ミシェル、グチグチ言ってないで仕事をしろ。そもそも私達の雇用主はフロンティア船団、つまりはグラス大統領なのだぞ。そのクライアントを守らないでどうする!」

「はいはい、クラン大尉殿には敵いませんってね」

 

 溜息を吐きながらサブマシンガンを持ちながら肩を竦めるミハエル。

 にしても、こんな状況だというのに……いや、こんな状況だからこそなのか、全く俺の正体に関して詮索してこないな。まぁ、この辺俺としてはありがたいんだが。

 

「イチャつくのはその辺にしておけ。続きに関しては、俺達がいない場所で2人きりになってから頼む」

「おいっ、俺は別に……」

 

 何か文句のありそうなミハエルだったが、クランに視線を向けられると言葉を途切らせる。……ん? いつもならここでいらない一言を口にしてクランから制裁を食らっているんだが、今日は無いな。この2人の関係性に何かあったか?

 まぁ、それは後回しだ。今はとにかく……

 

「くれぐれも大統領の身の安全には気を付けてくれ。さて、行こうか」

「うむ、君達の戦闘力は十分に理解したからな。頼らせて貰おう」

 

 そう告げ、俺達は通路を進んで行く。周囲はシンとした静寂に包まれており、外での出来事がまるで嘘のようだ。そんな中を走って進みながらルカが声を掛けてくる。

 

「ねぇ、アクセル君。あの炎獣って言ったっけ? あれって放っておいても大丈夫なの? その、それこそ街の人達に対して危害を加えたりとかは」

 

 ルカにしても、見た目は子供でもさすがにスカル小隊のメンバーというだけはある。走りながら喋っていても、全く息が切れた様子が無いのだから。その点で言えば老人であるグラス大統領と、ランカ、ナナセの3人が少し遅れ気味であり、ペースをそっちに合わせているので若干ゆっくりになっていた。

 

「ああ、問題無い。転移前にも言ったが、炎獣はある程度自立的に判断出来るからな。俺が人間を襲えと言ったんならとにかく、今はバジュラを相手にして戦っていると思うぞ」

「……全く、魔法とか超能力とか、色々と不思議な事がありすぎだよ」

 

 ルカのぼやきを聞きつつ進む。

 実際俺は魔法を持っているし、念動力という超能力も持っているんだよな。その辺はまさにルカの言う通りな訳で。

 そんな風に進んでいると、やがて先頭を進んでいたアルトが声を出す。

 

「オートウォークだ。これで少しだけど早くなるぞ」

 

 アルトのその言葉を聞き、階段ではなく通路そのものがエスカレーターになっている道を見ながら、遅れ気味だった3名程が安堵の息を吐く。

 それを見ながら俺達はオートウォークへと乗り込み、走るのではなく歩き始め……

 

「お客さんのお出ましだ。皆、さっきも言ったようにくれぐれも気を抜くなよ」

 

 オートウォークの先に兵士を背後に従えたキノコの姿を見て、そう告げる。

 そんな俺の言葉に、サブマシンガンを持っている者達はいつでも撃てるように準備を整え、俺は全員を守るように1歩前へと出た。

 そんな俺達の様子を見ていたキノコだったが、こちらが10人に満たない人数なのに対して、向こうは20人近くと倍以上だ。この辺はさすがに如才ないと言うべきか。

 

「三島君、政府機能は全てバトルフロンティアに移した。以後はあそこで指揮を執る。……それにしても、随分と豪勢なお出迎えだね。何かあったのかな?」

「ええ、ちょっとした事件がありましてね」

「……事件?」

「ええ、とても……そう、とても痛ましい事件が」

 

 そんな風に会話をしながらも、オートウォークは進み続けて向こうとの距離が縮まっていく。さて、ここで馬脚を現すかどうか……

 

「具体的にはどのような事件なのか……聞かせて貰ってもいいかな?」

「はい。大統領がバジュラに襲われて死亡するという……そんな事件が!」

 

 その言葉と共に20人近い兵士が銃口をこちらへと向けてくる。それに対抗するかのように、アルト達もまたサブマシンガンの銃口を向ける。

 

「これは、どういう事かな三島君。こんな時にクーデターごっこをやっている場合かね?」

「ごっこ、ではなく……本当のクーデターですよ。以後のフロンティア船団は私にお任せ下さい」

 

 その言葉と共にキノコの手が振り下ろされ……同時に、兵士達の持っている銃から連続して弾丸が放たれる。だが……

 

「甘いな。俺がこちらについた時点でお前の負けは決定済みだ」

 

 キノコの真似をした訳では無いが、大きく手を振るいその軌跡をなぞるかのように炎が吹き上がる。それこそ、まさに炎の障壁とでも言うように。

 そして兵士達が放った弾丸は、その全てが炎の障壁により消滅する。この炎が普通の炎であれば弾丸が炎を貫通してこちらに致命的なダメージを与えたのだろうが、この炎は俺が生み出した炎。触れたもの全てを消滅……否、焼滅させる絶対の障壁だ。

 

「なっ、何が!? くそっ、撃て、撃てぇっ!」

 

 一瞬唖然としつつ、それでも再度射撃を命じるキノコ。それに従って兵士達も再び銃撃を開始する。だが、当然それらの弾丸は全てが炎の壁によって阻まれ、こちらには一切の被害が出ない。

 結果の出ない無駄な事と知りつつも銃撃を続けるキノコとその部下達。その様子を眺めながらグラス大統領へと視線を向ける。

 

「それで、こいつらはどうする? 全員殺してもいいのならすぐに処理するが?」

「いや、出来れば生かして捕らえて欲しい」

「……甘いな」

「確かに君にはそう思えるのかもしれない。だが、背後の事情を調べねばならないし、何よりもクーデターを企んだ者として処分されなければ、きちんとこの件に区切りが付かないのだ。それ故、殺すのではなく生かしたまま捕らえて欲しい」

 

 1歩も退かずにこちらへと視線を向けて来るグラス大統領。この状況でたじろいだ様子が無いのはさすがに大統領をやるだけの器があると言うべきか。

 小さく頷き、右腕を白炎と化して炎獣を生み出す。その数、およそ50匹程。ただし、その大きさは体長15cm程のクワガタのような形だ。

 そのまま空を飛び、炎の障壁をすり抜けてキノコとその私兵達へと襲い掛かって行く。

 

「くそっ、何だ、何なんだ、何なんだよお前達は一体!」

 

 私兵の1人が叫び声を上げながら必死に銃を撃つが、混乱している状態で銃弾が当たる筈も無く、その全てを回避しながら炎獣は飛び、兵士が構えている銃へと触れ……

 

「ぎゃああああああああっ!」

 

 その瞬間、実も蓋もない程の絶叫を上げる兵士。炎獣が触れた事により銃が溶け、兵士の手へと降りかかったのだ。

 兵士にしてみれば、まさにドロドロに焼けた鉄に触れたような感じだったのだろう。

 そして同じような悲鳴がそこかしこから聞こえて来る。

 まだ無事だった兵士も当然いたが、銃を持っていればどうなるのかを反射的に悟ったのだろう。咄嗟に銃を投げ捨てて背後へと逃亡を……

 

「させると思うか?」

 

 指を鳴らした次の瞬間、俺の影から伸びた数十本の影槍が次々に男達の手足に絡みつき、動きを拘束。同時に、何が起きたのか分からずに唖然としているキノコの眼前へと先端の尖った影槍を5本程突き付けて動きを止める。

 

「ば、馬鹿な……お前、お前は一体何者だ? 何故こんな真似が出来る? 私が手に入れた情報によれば、優れたパイロットではあってもこんな力を持っているなんて少しも……」

「さてな、とにかくグラス大統領も言っていたようにこれでクーデターごっこは終了だ。大人しく諦めろ。それとも……死ぬか?」

 

 その言葉と共に影槍の尖った先端がツプリとキノコの頬に浅く突き刺さり、一筋の血がこぼれ落ちる。

 

「アクセル君、もういい。彼を捕らえた以上は問題は無い」

「……だ、そうだ。良かったな、慈悲深い大統領で。……もっとも、お前の未来はもう無い。残りの人生は監獄の中で過ごすんだな」

「ふざけ……ふざけるなぁっ! 何故私がこのような場所で終わらなければならない! 皆が遊んでいた中で必死に勉強をしていたこの私が!」

「もういい、大人しく眠っていろ」

 

 溜息を吐き、瞬動を使用。一瞬でキノコの背後へと回り込み、首筋へと手刀を叩きこんで意識を奪う。

 その一撃に抵抗すら出来ずに床へと倒れ込むキノコ。

 同時に、指を鳴らして虫型の炎獣を消滅させる。

 

「さて、取りあえずそちらの希望通りに全員捕らえた訳だが。これからどうする?」

「勿論バトルフロンティアまで行く。こちらに入っている情報によると、アイランド1の中でバジュラが姿を現したのと同時に現在通常のバジュラも攻めてきているらしいので、それに対処をしなければならん。悪いが、君達もすぐにそちらへ向かって欲しい」

 

 ちっ、また厄介な時にやってきてくれるな。確かにスカル小隊のメンバーが全員戦闘に出られないのは不味い。おまけにピクシー小隊の隊長もここにいるしな。

 だが……

 

「俺達が戦闘で出撃するにしても……」

「お父様!」

 

 俺が最後まで言葉を発することなく、周囲へと響く声。

 その声のした方へと振り向くと、そこには声の持ち主であるキャサリンとオズマの姿があった。何故か驚愕した表情でこちらへと視線を向けている。

 

「おお、キャシー。無事だったか。私はアクセル君達のおかげで全く問題が無い。キャシーも無事なようでよかった」

「良かった……レオンがお父様を暗殺してクーデターを起こそうとしているって分かったんだけど……」

 

 親子が感動の再会をしている横では、オズマがこちらへと近づいて来て視線を俺へと向けて来る。

 

「アクセル、これは一体何があったんだ?」

「見ての通り、キノコがクーデターを企んで、それが失敗に終わっただけだ」

 

 気を失って倒れているキノコを眺めてそう答えると、オズマがどこか呆れた様に呟く。

 

「キノコって、お前……」

 

 オズマがこちらへと視線を向けているが、今はそれどころじゃないしな。とにかくフロンティア船団に攻めて来ているバジュラに対処しないと。

 だが、当然キノコとその一味を放って置く訳にもいかないしな。さて、どうしたものか。

 そんな風に考えていると、父親の無事を見て安堵したキャサリンがキノコとその兵隊達を縛り上げている影槍に気が付いたらしく、父親に質問していた。

 

「お父様、この……黒いロープのような物は一体? 軍部で開発したものですか?」

「いや、それはアクセル君の魔法で作り出されたものだ。影槍……とか言ったか」

「は? 魔法?」

「……魔法?」

 

 キャサリンが父親と俺を見比べ、オズマもオズマでポカンと俺へと視線を向けている。

 その様子に思わず苦笑を浮かべつつも頷く。

 

「ああ、俺の魔法だ。……ほら」

 

 呟き、右腕を白炎として猫と犬の炎獣を作って周囲を駆け回らせる。次に俺の影から先端の尖っていない影槍を数本出してオズマ達の前へと伸ばす。

 

「ご覧の通り、種も仕掛けもない正真正銘の魔法だ。……まぁ、この件に関しては外で起こっている騒動が終わったらしっかり説明してやるよ。だから」

 

 チラリ、と視線をグラス大統領へと向けると分かっていると頷く。

 

「うむ、ここは私に任せて君達はバジュラを何とかしてくれ。……君、悪いが人を呼んできてこの者達を牢屋にでも閉じ込めておくように。アクセル君、あの影槍とかいうのは?」

「残念だが、俺から離れてある程度時間が経てば消える。その前に収監しておくことを勧めるよ」

 

 俺の口の利き方にオズマが思わず何かを言い掛けるが、それをグラス大統領自らが止める。

 

「とにかく君達はバジュラの方を頼む。こちらはこちらで色々とやるべき事があるのでな。アクセル君に関しての詳しい話は、後日ということで。……それと、申し訳ないがアイランド1内に入っているバジュラをどうにかする為にランカ君に協力して貰わなければならないかもしれない。承知してくれるかな?」

「……了解しました。ランカが引き受けるようなら俺、いえ自分からは何もありません」

 

 オズマが頷き、それを見た俺が口を開く。

 

「よし、じゃあ移動するぞ。出撃組はこっちに集まれ」

「何? 集まれ?」

 

 オズマは訝しげに、その他のスカル小隊のメンバーとクランはまたかといった表情で近付いてくる。

 

「さて、じゃあ行くぞ」

 

 その言葉と共に指を鳴らし、俺達は再び影に沈み込んでいくのだった。

 ……尚、影のゲート初体験のオズマはさすがに驚きの声を上げていたが……まぁ、それはしょうがないだろう。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:5
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:1394
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:840

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。