転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0064話

「プランEFの実行?」

 

 ギャンランドのブリッジでヴィンデルに問い返す。

 ハンスとの衝撃の出会いから1ヶ月。この1ヶ月で反乱が始まってからこちらが占拠した基地や連邦施設の7割程を奪還されてしまった。

 ベーオウルブズやクライウルブズ等の活躍もあるが、やはり1番の問題は連邦の数だ。こちらの部隊が量産型Wを使用しているとは言え、連邦軍との数の差を縮めるのはさすがに限度がある。まるで雲霞の如く湧いてくるのだから。

 この1ヶ月の間で100機近くの戦力が失われており、反乱開始当初から考えると20%近くの戦力が失われている。

 特にトライロバイト級5番艦のブルーランドがクライウルブズの攻撃で大破してしまったのは非常に痛い。

 また、ベーオウルブズが頻繁に戦場に出てくるようになったのもこちらが不利になっている大きな要因だろう。敵味方諸共に攻撃してくるとは言え、シャドウミラーと連邦軍じゃ保持している機体数が違う。ベーオウルブズに撃破された機体が双方10機ずつだとしても、総合的に受けているダメージの割合はこちらの方が大きいのだ。

 そんな現状、ヴィンデルの言っているプランEFに関しては確かに考える余地があるだろう。

 

「ああ、現在の状態は徐々にこちらが不利になってきている。故に最後の手段として考えていたプランEFの実行を考えている。ただ、これはあくまでも保険だ。明日行われる予定の大規模会戦の結果次第ではプランEFを実行する必要が無くなるかもしれん」

 

 ヨーロッパで徐々に追い詰められているシャドウミラー。その不利な状況を一挙に覆すべく一大反攻作戦を実行する方向で計画が進められている。

 

「シャドウミラーの特殊処理班である俺がその戦いには出撃しないでいいのか?」

「確かにグロウセイヴァーは戦力として非常に大きい。だが、テスラ研確保の重要度を考えると、やはりそちらへと専念して貰いたい」

「テスラ研制圧に使用可能な戦力は?」

「トライロバイト級でも戦力になる1~3番艦はこちらで使用させてもらう。アクセルは4番艦のアークランドを使用してくれ」

 

 トロイエ隊との戦闘で中破ともいえる状態になってしまったアークランド。その後修理されたのだが、さすがに時間や資材が足りなかった為武装の修復を諦め、純粋に輸送船として使用されている。

 確かに占領するのがテスラ研のみだというのなら、戦力として使えるトライロバイト級はこちらに置いておくのが正しいだろう。

 このまま原作通りに進んだ場合はラウル達エクサランスチーム、テスラ研近隣の連邦軍、そして何よりデュミナスと戦闘になる可能性があるが、そこは連れていった戦力でどうにか対応するしかない。

 

「それと、W16とW17、バリソン隊を連れていって構わん」

「バリソン隊も? いいのか?」

「戦力として使えるトライロバイト級を渡せないしな。それに今回のテスラ研占領は絶対に失敗出来ない作戦だ。頼んだぞ」

「分かった。ちなみに量産型Wはどのくらい連れていってもいいんだ?」

「そうだな、20人程ならそちらに回せる。それでどうにかやりくりしてくれ。それとこちらの作戦が成功するにしても失敗するにしても、折角テスラ研を占領するんだ。あそこで開発中の使えそうな機体や装備は出来るだけ接収しておいてくれ」

「ああ、そっちも了解だ。じゃあ早速出発するとしよう」

 

 ヴィンデルに軽く敬礼をし、ブリッジを出る。

 そのまま格納庫へと移動し、バリソン、エキドナ、ラミアへと招集をかけた。

 

「アクセル、どうしたんだ?」

「ヴィンデルから新たな命令が下った。俺達4人と量産型W20人でテスラ研へと向かう事になる」

「テスラ研へ? しかし、もうすぐ大規模な反攻作戦を行うんだろう? 構わないのか?」

「ああ、その反攻作戦に破れた時の為の保険だ。プランEFの話は以前聞いただろう?」

 

 信用出来ると判断された隊長格にはヴィンデルがプランEFに関してを教えている。もっとも、平行世界へ一時的に撤退。そこで戦力を蓄えてこの世界に戻ってくるというこの作戦は半ば冗談だと思っている者もいるようだが。アギュイエウス、リュケイオス、そしてレモンの事を知っている者にとっては、そんな笑い話で済むものではなく、限りなく本気の作戦である事を理解していた。

 

「ああ、平行世界に転移するとかいう、あの」

 

 バリソンもレモンの事を知らない訳じゃないので、すぐに納得する。

 エキドナとラミアにとっては、レモンは産みの親なのでそもそも疑いすらしないだろう。

 

「量産型Wは20人連れていく。移動手段はアークランドになるからすぐに準備してくれ。それ程時間に余裕がある訳じゃないから、準備が出来次第出発する」

「アクセルさん、ちょっといいですか?」

 

 話に割り込んできたのは、整備員の1人だった。

 

「どうした?」

「ヴィンデル大佐からの連絡で、量産型Wに量産型アシュセイヴァー4機の使用を許可するとの事です」

「……本当か?」

 

 量産型アシュセイヴァーは、グロウセイヴァーの基になったアシュセイヴァーの量産型であり、性能も最新量産機であるエルアインスよりも高い。コストの関係かソードブレイカーは装備されていないが、それ以外の性能はアシュセイヴァーと変わらない。

 うちの部隊にある程度の数はあるが、基本的にバリソンやマルティン等のような部隊長向けの指揮官機やエース機扱いだ。それを量産型Wにも配備するという事は。

 

「ヴィンデルの奴、本気だな」

 

 思わず言葉を漏らす。

 だが、それを聞いていたバリソンは真剣な表情で頷き、俺に同意している。

 エキドナとラミアは特に表情を変える事なくいつも通りだが。

 

「分かった。なら俺達の機体をアークランドへ搬入してくれ」

「はい、すぐに取りかかります」

 

 整備員は足早に去っていった。

 

 

 

 

 

 アークランドのブリッジにあるモニタに、テスラ研の姿が映し出されている。

 ステルス・シェードを展開している為、こちらの動きには気が付いていないようだ。

 

「あれが、テスラ研か」

「ああ、そう言えばバリソンは来た事無かったか」

 

 バリソンの声にそう返事を返す。

 俺はアギュイエウスの開発に関わったレモンに会いに来たりしていたので、中の様子なんかもそれなりに理解している。俺がテスラ研制圧に選ばれたのは恐らくその辺にも理由があるのだろう。

 

「そろそろ機体に乗り込んで、いつでも出撃出来るようにしておけ」

 

 ブリッジにいる面々へと声をかけ、俺も格納庫へと向かう。

 今回の編成は、俺、バリソン、エキドナ、ラミアの4人にそれぞれ量産型Wが5人ずつとなっている。量産型Wのうち、量産型アシュセイヴァーへ搭乗しているのが各隊に1人ずつで、他はエルアインスに搭乗となっている。

 グロウセイヴァーへと搭乗し、出撃の合図を待っている間に軽い打ち合わせをする。

 

「バリソン、俺とお前の隊はテスラ研から出てくる迎撃部隊の相手だ」

「了解」

「W16、W17、お前達は迎撃部隊をある程度減らしたらテスラ研内部へと潜入して制圧しろ。尚、研究者の中には投降してくる者がいるかもしれないが、そいつらは保護しておくように。俺達にとって、テスラ研の研究者は喉から手が出る程欲しい人材だからな。反撃してくるような相手は無力化する事になるだろうが、なるべく殺さないようにしろ」

 

 エキドナとラミアの了解、という声が重なって返事をしてくるがそこにバリソンから待ったがかかった。

 

「うちのやり方にしちゃ随分と甘くないか?」

「殺してしまうと、こちらに協力しようとする奴でも反感を持って意地でも協力しない、なんて事になりそうだからな」

 

 普通の人間なら同僚が殺されて脅されたらあっさりとこちらの言う事を聞くのだが、なにせここは変人と天才の集まる事で名高いテスラ研だ。そんな普通の反応はしないと思っていいだろう。

 

「だが」

 

 なおも言いつのってくるバリソンだが、ヴィンデルからの命令にあるこのテスラ研にあるもので使えそうなものを接収するという任務を考えると、どうしてもある程度は研究員の助力が必要だ。

 その辺を話すと、不承不承だが納得したらしく引き下がってくれた。

 

「隊長、テスラ研にこちらの存在が気が付かれたようです。防衛部隊が出てきました」

「数は?」

「量産型ゲシュペンストMk-Ⅱが6機のみです」

「は?」

 

 その間の抜けたような声は、俺の口から出たものだったろうか。あるいは、バリソンかもしれない。エキドナやラミアでない事は確実だろうが。

 っと、いかん。ぼけっとしてる場合じゃないな。

 

「後続はいるか?」

「いえ、その6機のみです」

「……アクセル、罠だと思うか?」

 

 バリソンが尋ねてくるが、技術の最高峰とも言えるテスラ研を危険に晒してまで罠を仕掛けるというのはちょっと想像出来ない。

 そもそも、テスラ研自体が開発している機体なんかもある筈なのに、それらが迎撃に出てくる様子も一切無いのはどういう事だ?

 

「いや、テスラ研程の重要施設を囮にするとは思えん。恐らく何らかの突発的な事態か何か起こったんだろう」

「じゃあ、このまま当初の予想通りに?」

「いや、敵が6機のみなら予定を前倒しにする。W16、W17。お前達2人の隊は敵機を無視してそのままテスラ研へ突入しろ。敵機は俺とバリソンで受け持つ」

「了解しました」

 

 Wナンバーズ2人が同時に頷く。何かこの2人、最近妙にテンポが合ってるんだよな。

 

「敵機はたったの6機だが、目標はテスラ研だ。何があるか分からないから油断せずに十分注意しろよ。出撃!」

 

 アークランドの格納庫から、24機の機体が順番に射出されていく。最初は俺とバリソンの隊。テスラ研の占領を目標にしているエキドナとラミアは後回しだ。

 

「グロウセイヴァー、アクセル・アルマー、出るぞ!」

 

 射出された俺は、空を飛びテスラ研へと向かいながら、先に射出されたバリソン隊の機体をモニタで確認する。

 いた。まずは牽制という事か、ガン・レイピアやG・レールガンを撃っている。

 だが、次の瞬間に起きた出来事に目を見張る。なんと敵機がバリソンの放った牽制のガン・レイピアに胴体を貫かれて爆散したのだ。

 

「……」

 

 思わず無言でモニタを眺める。

 バリソン隊と、俺の下に配属された量産型Wの攻撃で次々と沈んでいく敵機。

 そして命令通りにそんな様子を横目にテスラ研へと突っ込んでいくエキドナとラミアの小隊。

 こうしてテスラ研から出てきた迎撃機は全滅し、十数分後にはエキドナからテスラ研占領完了の連絡が入ってきた。


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