転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0764話

 あの惑星に先行偵察をしたいという俺の言葉に、目を見開いて驚きの表情を浮かべるグラス大統領。その様子を見ながら、一瞬ブリッジクルーを見回す。俺の事情に関しては知らない者も何人かいるが、既に目の前にバジュラ本星と思われる惑星があるのだから、これ以上隠す必要も無いだろう。

 

「俺が現在乗っている機体、YF-29は高度なステルス機能がある。運動性や機動性も高い。そして何よりも現在このフロンティア船団にあるVFの中で最も高性能な機体でもある。それを考えれば、俺が先行偵察に向かうというのはおかしくないと思うが?」

「駄目です!」

 

 俺の言葉に待ったを掛けたのは、突然ブリッジに入ってきたルカの声だ。その後ろにはミハエルとクラン、そしてピクシー小隊の残り2人の姿もある。

 どこからこの話を……いや、ルカの持ってるルートからだろうな。

 

「確かにYF-29は、VF-25のオプションパックで性能の実証試験をした新型ステルスが搭載されていますし、それがこれまでのVFのステルスより格段に能力が上だというのも事実です。……ですが、それはあくまでもレーダーやカメラ、電波といったものに対するステルスであって、実際に生身の目で敵を確認しているバジュラには効果があるとは思えません! いえ、思えませんじゃなくて確実に効果が無い筈です」

 

 確かにな。新型ステルス装置だとは言っても、その実L.A.Iが俺の提供したソルプレッサから何とか解析出来た劣化版ASRS……いや、ASRSというよりはASRSの技術で模倣可能な場所だけを何とか模倣して作りあげたステルス装置だ。本物のASRSであればこちらから攻撃するような真似をしなければ肉眼でも判別出来なくなっているが、YF-29に搭載されているステルス装置では当然そんな真似は出来ない。

 ……いや、バジュラの場合は本物のASRSでも判別するかもしれないけどな。

 

『アクセル君、ルカ君はこう言っているが?』

 

 グラス大統領も気持ち的には俺ではなくルカの方に傾いているらしい。

 まぁ、ルカの話を聞く限りではステルスの効果が無いと思われる以上、腕の立つパイロットは手元に残しておきたいのだろう。

 だが、俺はここで引き下がる訳にはいかない。それ故に、こちらとしても最大の手札を切らせて貰おうか。

 

「大統領、よく聞いてくれ。あの惑星に俺が降下する事が出来れば、直ちにゲートを設置する。そしてゲートを設置してホワイトスターと繋がれば、楽にバジュラを滅ぼす事が出来る戦力を連れてくる事が出来る。……どうだ? フロンティア船団としても、これまでの幾度かのバジュラの襲撃で環境や資源的に色々と不味い事になっているんだろう? 今なら、俺やシャドウミラーの戦力があればあの惑星に移住出来るぞ?」

 

 俺の言葉に、数人が訝しげな視線を向けて来る。シャドウミラーの……そして、俺の実力を知らない者達だ。

 

『いや、だが……それは……』

 

 そんなブリッジクルーの面々とは逆に、グラス大統領の方は困惑した表情を浮かべてこちらへと視線を向けていた。……まぁ、いきなりこんな事を言われればそうなっても当然か。

 なら、ここで更に一押し。

 

「ランカが捕まっている事を考えれば、シェリルがいるとは言ってもこれからのバジュラとの戦いは厳しくなるだろう。なら、ここでバジュラの巣であろう本星を叩くのもいいんじゃないか? それに、内部から俺達シャドウミラーが、外からフロンティア船団の戦力が同時に攻撃を仕掛ければ、圧倒的有利に戦闘を進められるのは分かると思うが?」

 

 不安要素としては、やはりメギロートか。外見が虫型なので、バジュラと勘違いされて攻撃される可能性がありそうだが……まぁ、無人機であると考えれば致命的ではないだろう。

 

「どうだ? このままではフロンティア船団も資源的に決して完全とは言えないだろう。なら、俺達シャドウミラーの協力を得てこのバジュラ本星を手にしてみないか?」

『……少し考えさせて欲しい。他の者と相談する時間も必要だ。幾ら大統領とは言っても、フロンティア船団の命運が掛かっている決定だけに即答は出来んよ』

「了解した。なら、良い返事を期待しているよ。正直な話、俺としてはこのチャンスを逃すつもりはない。もしどうしてもそちらが乗らないのなら、こっちで勝手に動くということも覚悟しておいて欲しい」

『それは、脅迫かね?』

「まさか。ただ単純に俺と、そしてシャドウミラーはフロンティア船団が動こうが動くまいが、あのバジュラ本星を攻めるのに変わりは無いと連絡しているだけだ。そして当然、俺達があのバジュラ本星を攻略したら……そちらとしても、色々と厳しくなるんじゃないか? まさか他人が苦労して得た果実を横から何もしないで寄こせ、とは言えないだろう?」

『そもそも、君を出撃させないという手段もあるが?』

 

 この辺はさすがにフロンティア船団を治めている大統領といったところだろう。年齢に見合わぬ鋭い視線を俺へと向けてくる。だが……

 

「それこそ、本気になった俺を止められるとでも?」

 

 右手が白炎と化し、鳥の炎獣が数十匹作られ、マクロスクォーターのブリッジ内を飛び回る。

 

「きゃっ、きゃあっ!」

「何よこれは!?」

「何なんですかー」

 

 ブリッジ3人娘のそんな悲鳴を聞きながら。

 

『……分かった。こちらでも前向きに対応しよう。事実、君の……君達の力を借りられるというのは僥倖以外のなにものでもないのだから』

「ああ、そうしてくれ。明日だ。……明日の昼までは返事を待つ。それまでに決断出来ないようなら、こちらも独自に動かせて貰う」

 

 その言葉に頷き、通信が終わる。恐らく時間が無い以上すぐにでも新統合軍の司令官達と相談しに行ったのだろう。

 そんな風に思いながら周囲を見回すと、当然と言うべきかやはりどこか責める視線で俺を見つめている者達が……いない? いや、勿論若干困ったというような表情を浮かべている者は多いのだが、グラス大統領を半ば脅すような言動をしたり、あるいはバジュラ本星に向かう時に使うだろうYF-29の事を思って難しい顔をしている者はいる。だが、明確に俺の独断専行とも言える行動を責めるような者は殆どいなかった。

 最も厳しいのが、やはり父親を半ば脅された形になったキャサリンだろう。ブリッジにいるメンバーの中では唯一責めるような視線を俺に向けている。

 

「取りあえず、アクセル。この炎の鳥を何とかしてくれ」

「ん? ああ、そうだな」

 

 ミハエルの言葉に頷き指をパチンッと鳴らすと、次の瞬間にはブリッジ中を飛び回っていた鳥の炎獣は全てが炎の粉となり、消え去っていく。

 ある意味では花火の如く見事な散り際に、最初は驚いていたブリッジクルーが思わず溜息を漏らす。それは同時に、俺の事を知っている他の面々にしても同様だった。

 

「あの、艦長。今のは一体……それに、アクセル大尉は……」

 

 モニカの質問に、ジェフリーがこちらへと視線を向ける。

 それを受け止め、小さく頷く。

 さすがに炎獣を見せてしまった以上、今の俺が何でも無いただのパイロットだと言っても誰も信じる筈がない。

 それに、この場にいる面子の中でもブリッジクルー以外は既に俺がどんな存在なのかを知っているのだ。なら、ここで無理に隠し通す必要も無いだろう。

 そう判断し、ボビー、モニカ、ミーナ、ラムの4人に俺がどのような存在なのかを教えて、証拠として幾らかの魔法を見せる事になるのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル、お帰りなさい。何があったの?」

 

 影のゲートを使って部屋に転移してきた俺を見たシェリルが、そう声を掛けてくる。

 まだライブから戻っていないかとも思ったのだが、さすがにもう少しで日付が変わる時間ともなれば今日のライブは終わって解放されたのか。

 薄らとシェリルの言葉に滲んでいる心配さを思えば、あるいは朝起きた時、既にいなかった俺の事を心配していたのかもしれない。

 

「ああ、ちょっと色々とな」

 

 呟き、シェリルに渡された冷たい烏龍茶の入ったコップを口へと運んでから、改めて視線をシェリルへと向ける。

 

「シェリル、ランカの居場所が分かった」

「っ!? ランカちゃんはどこに?」

「バジュラ本星と思われる位置の近くからランカのフォールド波が発信されているのを新統合軍が感知した。正確に言えば、そのフォールド波を辿っていった結果バジュラ本星と思われる惑星を発見したというのが正しいんだけどな」

「……何で? グレイスが何か企んでいたとしても、自分からバジュラ本星に出向くなんて真似は……」

「さて、その辺は俺にはちょっと分からない。ただ、遠目から見た限りではバジュラ本星には海も空気もある惑星に見えた。つまり、俺達が移住しても問題無い惑星にな」

「それで、どうするの?」

「ランカを取り戻すという理由もあるが、そんな惑星があるのならゲートを設置してホワイトスターに移動出来るようになるから、俺としても丁度いい。そうなれば、恐らくシェリルの身体に関しても治療の可能性が出て来る」

 

 俺の言葉を聞き、目を驚きで見開くシェリル。

 だが、すぐに不思議そうな表情を浮かべて口を開く。

 

「けどゲートの設置をするとなると、当然アクセルがその惑星に降下する必要があるのよね?」

「そうだな。空間倉庫の中に入っているゲートシステムを使う必要があるし」

「じゃあ、バジュラの本星を攻めるのはフロンティア船団だけでやるの?」

 

 やっぱりこの質問が来たか。ゲートを設置するとなると、当然それを疑問に思うというのは予想していた。そして、質問に対する答えも。

 シェリルの言葉に小さく首を振り、そっと抱き寄せて耳元で口を開く。

 

「明日の午後、俺は先行偵察の名目で出撃してYF-29でバジュラ本星に降下する予定だ。そしてゲートを設置して、すぐにシャドウミラーの軍勢をこのマクロス世界に呼び込む。その後は、内と外からの同時攻撃でバジュラ共を一気に叩く」

「危険よ!」

 

 抱きしめていた俺を引き離すようにして、シェリルがそう叫ぶ。

 その瞳に浮かんでいるのは心の底から俺に対する心配のみ。

 

「大丈夫だよ。忘れたのか? 俺には物理攻撃は通用しないし、何よりも俺自身は宇宙空間でも生身で活動出来るんだ。YF-29でバジュラ本星の近くまで辿り着けさえすれば、機体が破壊されたとしても全く問題は無い。それに、これでも俺は現在S.M.Sのエースパイロットなんだぞ? バジュラが幾ら出てこようとも、俺にしてみれば問題無いさ。だから安心しろ。シェリル、お前の病気は必ず俺が……いや、俺達シャドウミラーが治してみせる」

「あたしの為にアクセルが危険な目に遭うなんて、そんなの……」

 

 シェリルの瞳からこぼれ落ちる涙を片手で拭い、安心させるようにそっと抱きしめる。

 

「言っただろ? 俺にとってはこの程度危険でも何でも無いって」

「……本当に?」

「ああ」

 

 濡れた瞳でこっちを見てくるシェリルの唇をそっと塞ぐ。

 安心させる意味を込めて、俺が決して死なないとその心と体に刻みつける為に。

 そのままそっとシェリルを抱きしめ、寝室へとシェリル諸共に影のゲートを使って転移するのだった。

 

 

 

 

 

「……ね、アクセル」

「ん? どうした?」

 

 俺の腕の中でシェリルがこちらを見上げてくる。

 その瞳に映っているのは決意の光。

 

「アクセルがバジュラ本星に行くのなら、あたしはS.M.Sでアクセルの援護をするわ」

「まだ大統領が俺と行動を共にすると決断した訳じゃないんだぞ? それこそ、君子危うきに近寄らずと考えてバジュラ本星に向かわない可能性もある」

 

 シェリルに向かってそう告げるが、それに対する返事はいつものように首筋へと軽く噛みつくというものだった。……実はマオ・ノームの血以外にも、エヴァ辺りの血を引いてないだろな?

 そんなシェリルの癖を思いつつ、ストロベリーブロンドの髪をそっと撫でる。

 

「嘘言わないの。グラス大統領はそれなりに目端の利く政治家よ。そんな人が、アクセルが率いているシャドウミラーの協力を得られるという好機を逃す訳ないでしょ。まず間違い無く乗ってくるわ」

「……俺としては、シェリルにはあまり前線に出て欲しくないんだけどな」

「もう、今更何を言ってるの? そもそも、掠われたランカちゃんの代わりにあたしが歌うっていうのは、前から決まってた事でしょ? それが、バジュラ本星でのライブになるだけの話よ」

 

 確かにそれは事実だ。だが……

 

「その話は俺のシャドウミラーという戦力を使えない状態でのものだろ? 俺がバジュラ本星に辿り着けば、その時点でシェリルの歌が無くても勝敗は決まったようなものなんだ」

「ふふっ、あまり馬鹿言わないの。アクセルがあたしを守っているのと同じように、あたしにもアクセルを守らせなさい」

 

 そう告げ、シェリルは俺にのしかかってきて俺の唇を自分の唇で塞ぎ、そのまま啄むようなキスを幾度も繰り返す。

 

「あたしはシェリル。シェリル・ノームなのよ。男に守られているだけの女じゃないんだから」

 

 その言葉と共に再び唇を重ね深くキスをし、俺もまたシェリルを強く抱きしめるのだった。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:725
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:1394
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:984

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