転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0776話

 どのような手段で操っているのかは分からないが、グレイスの操っているクイーンが放った攻撃は、ニーズヘッグの幾重にも存在しているバリアを破る事は出来なかった。

 もっとも、こうして何でも無いといった顔をしてはいるが、先程の攻撃はテスラ・ドライブを使って展開されたEフィールドを貫き、恐らくスパロボOGs世界の中でも最高性能を誇るだろうグラビコン・システムによって張られたG・テリトリーをも突破し、T-LINKシステムにフルコンタクトして念動力を全開にし、更にはT-LINKフレームの能力を限界近くまで発揮して張られた念動フィールドでようやく攻撃を防いだのだ。ニーズヘッグ自体は先程言ったように、基本的には回避性能を重視した機体……いわゆるリアル系の機体だ。あれだけの攻撃をもしまともに食らっていれば、恐らくかなりのダメージを受けていたのは間違いない。T-LINKフレームの効果でもあるPS装甲は残念ながら実弾兵器にしか効果が無いしな。

 それを思えば、さすがにグレイスが神と称するだけの力はあったのだろう。

 そんな風に思いつつ、天井知らずに上がっている士気を更に上げる為、再びオープンチャンネルを開く。

 口を開く前に、一瞬だけアルトのVF-25Fと通信を繋げて目配せをする。その背後に乗っているランカをマクロス・クォーターに置いてこいと。

 何しろ、後ろにVFパイロットでもない相手……それも、EX-ギアすらも身につけていない相手を乗せたままでは、いざ戦闘になったとしても足手まといにしかならない。

 故に、俺がこうしてグレイスに対する挑発やら、味方の士気向上の為に行動している間にランカを運んでこいと視線で合図した訳だ。

 アルトもすぐにそれは理解したのだろう。無言で小さく頷くと、素早く機首を返してマクロス・クォーターの方へと移動していく。

 その後ろ姿を確認してから口を開く。

 

「この戦場にいる全ての者よ。今のを見て分かったと思うが、グレイス・オコナーが神を名乗ったとしても、それは所詮偽物の神……偽神でしかない。臆するな。お前達の背後には奴の攻撃を正面から受け止めても完膚なきまでに防ぎ、尚無傷の俺がいる。シャドウミラーの武を象徴するこの俺、アクセル・アルマーが。そして嘲笑する虐殺者の異名を持つ、ニーズヘッグが。故に、征け。お前達の故郷でもあるフロンティア船団をバジュラを使って襲撃させ、家族を、恋人を、友を、隣人の命を奪ったグレイス・オコナーを、そしてギャラクシー船団の濁った野望を打ち砕く為に!」

 

 そこまでを告げ、数秒の静寂が満ち……

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

 先程の、俺が無傷で女王級の攻撃を受けきった時と同様……否、それ以上の喚声が通信を通して聞こえてきた。

 

『ふざけ、ふざけるなぁぁっ! 私が、私達がこの日を迎える為にどれだけの労力を払ってきたと思っている! それを……それを!』

 

 グレイスの負け惜しみとも言える声が周囲に響き、だがそれが余計にこの周辺の新統合軍やS.M.Sといった者達の士気を高める事になる。

 ……まぁ、無理も無い。自分達がどうやっても勝てないと思っていた相手が負け惜しみを言っているのだから。それを思えば、こちらの士気が上がるのも無理は無いだろう。

 

『ふっ、ふふふ……ふふふふふふ。いいでしょう。確かに私の攻撃は通じなかった。それは認めよう。だが……そこにいる全ての者がこの神の一撃をどうにか出来る訳では無いというのも事実。いえ、寧ろ先の一撃を防げたのはその機体だっただからこそ。ならば……我が下僕達よ、その牙と爪を持ちて奴等を血の海に沈めてあげなさい!』

 

 グレイスのその声と共に、再び無数に姿を現すバジュラ。その全てが体色をグレイスに洗脳されている証とも言える白へと変えている。

 ちっ、確かに俺以外の者がバジュラの数に対抗するのは難しい。何よりゴーストV9やVF-27に関してもまだ少数ながら残っている。……となると、いよいよこの騒ぎを収めるにはバジュラの全てを操っている存在、グレイス・オコナーを滅ぼすのがベスト、か。

 バジュラと戦うなと言っていたランカやアルトには悪いが……

 そう、思った時だった。

 

『抱きしめて、銀河の……果てまで!』

『あたしの歌を聴けぇっ!』

 

 そんな声が周辺宙域へと響き渡ったのだ。

 慌てて声の聞こえてきた方の様子を映像モニタへと映し出すと、そこにはランカとシェリルの姿が。それもランカはともかく、シェリルは先程の衝撃波で倒れていたとは思えない程に元気であり、まるでV型感染症の影響すらも無いかのように……

 次の瞬間、驚愕を込めたルカの声が響く。

 

『そんな、馬鹿な!?』

「どうしたっ!」

『シェリルさんの歌からランカさんと同等の……いえ、それ以上のフォールド波が出ています!』

「……何?」

 

 どうなっている? 元々シェリルのフォールド波はランカには遠く及ばない程度の出力しか無かった。それをフォールドクォーツの力を使ってどうにかフォールド波の出力を増幅していた筈だが……

 想定外の出来事に再びシェリルの方へと視線を向けるが、そこでシェリルはランカと並んで共に歌を歌い続けている。先程吹き飛ばされた衝撃も、そしてV型感染症による影響すらも感じさせずに。

 そんな俺とルカの混乱に対して口を挟んできたのはアルトだった。

 

『アクセル、もう問題無い。シェリルは既にV型感染症からは完全に回復した』

「……どういう事だ?」

 

 突然のアルトの言葉に、思わず問い返す。

 シェリルのV型感染症はある程度薬で対応しており、その薬の副作用も俺との関係でどうにか抑え込んでいた。だが、結局その薬はこれ以上の症状を悪化させないという意味であって、病気を治療に向かわせるという方法ではない。

 だからこそ、俺はホワイトスターへの通路とも言えるゲートを設置するべく半ば強引に今回の作戦に着手したのだ。だが、それが治った?

 

『ああ。ランカの歌の力で、脳に達していた細菌を腸に移動させる事に成功した。今のシェリルは病気の類は全く存在しない健康体だ!』

「……そうか……」

 

 アルトがランカの件で言っている以上、それは事実なのだろう。こんな事で嘘をつくような奴ではないし、そもそもそんな真似をしても何の意味も無い。となると、やはりシェリルは既に健康体になったと考えてもいい。

 

『けど、アルト先輩! 何でシェリルさんからランカさんよりも強いフォールド波が検出されているんですか?』

「フォールドクォーツの力だろう」

 

 ルカに答えたのは、アルトではなく俺。そもそも、シェリルは元々フォールドクォーツでフォールド波を増幅していたのだ。そして、今のシェリルはフォールド波そのものがランカと同等レベルになっている。これは恐らく細菌が脳から腸に移動したおかげなんだろうが……とにかく、その同等になったフォールド波+フォールドクォーツの力で、結果的にランカよりも高いフォールド波を出せるようになったのだろう。

 

『ああ、なるほど!』

 

 そして、2人の歌の力はすぐに証明される事になる。グレイスに従い、こちらへと攻撃を加えようとしていた白いバジュラ達が、元の体色へと戻っていったのだ。

 つまり、グレイスが操っている女王級の支配から抜け出したという事になる。

 更に、そのバジュラ達はまるでバトル・フロンティアやS.M.Sの戦力を守るかのように行動を始め、白い体色のバジュラへと襲いかかり、あるいはそれらの攻撃からVFや戦艦を守ったりといった行動を取り始めた。

 

『バジュラが……そんな……』

 

 誰かが呟いた、そんな声が通信に乗って聞こえてくる。これまで散々フロンティア船団に対して襲撃を掛けてきたバジュラがこちらを守っているのだから当然だろう。

 そして、シェリルの方へと改めて視線を向け……ランカのすぐ近くに1匹のバジュラが存在しているのを見て、思わず納得する。

 周囲に存在している他のバジュラに比べると一回り程小さいバジュラだが、そのバジュラもまた同様にシェリルとランカを守るような位置にいるのだ。

 白い重兵隊バジュラがこちらへと向かって攻撃しようと背中の砲身を向けようとしているのを、通常の機動兵隊バジュラが10匹程集まってその動きを止め、強引にどこかへと連れて行く。そんな光景は戦場のいたる場所で行われていた。

 

『これに関してはランカから聞いた話だが、バジュラというのはフォールドネットワークで繋がっていて、1つの意識のような物が根底にあるらしい。で、そんなバジュラ達にしてみれば、俺達人間は1つの群れの筈なのに全く統一された行動を取っていなかった。それで不審に思ったらしい。で、そんな不審な群れの中に自分達の仲間がいる事に気がついた』

『おい、それってもしかして……』

 

 アルトの言葉に、ミハエルがそう告げる。

 そう、もしも俺の脳裏を過ぎったのが事実だとするのなら、俺達は全く無意味としか言いようのない戦いをしていた事になる。

 それを理解しているのだろう。オープンチャンネルで流れているアルトの言葉に、誰もが言葉を挟まず黙って聞いている。

 俺もまたアルトの言葉を聞きながら、何故かこちらに向かって攻撃してくる様子の無いクイーンの……否、グレイスの様子に小さく眉を顰めるが、今の状況はこちらが有利なだけに様子見の段階だ。

 同時に、シロガネから出撃した部隊もまた行動を止めている。コーネリアを始めとした幹部の連中もアルトの話に耳を傾けているのか。

 

『そうだ。最初にバジュラがフロンティア船団に攻撃を仕掛けてきたのは、そんな不審な集団の中から唯一感じる自分達の仲間……即ち、ランカを助け出す為だった』

 

 その言葉は決定的だった。本来であれば、俺達とバジュラは全く戦う必要が無かった相手であり、即ち一連の戦いは……

 

『そんな……じゃあ、私達は……』

 

 そう呟いたのはマクロス・クォーターのブリッジクルーでもあるラムの声。自らの戦ってきた根拠の根底が崩された事による衝撃は相当なものだったのだろう。

 

『だが、そのおかげでバジュラはシェリルの存在を知った。ランカと同じく、フォールド細菌を体内に宿しているシェリルを。そこで初めてバジュラは人間が自分達とは違い、1人1人が個別の意思を持っているという事を理解したんだ。そしてランカを通じて、俺達人間がどのような存在なのかを知っていった……』

 

 アルトの声に従うように、ランカやシェリルの側にいるバジュラが尻尾を振ったのは俺の見間違いだろうか。

 

『とにかく、ランカとシェリルのおかげでバジュラは自分達と人間の違いを明確に理解し、知ろうとした。……その結果がこれだ。本来であれば、バジュラ全てが戦闘を止めて人間と手を取り合う……とまではいかなくても、無意味な戦闘をせずに済んだ筈なのに……そこに奴が、あの女が……』

「グレイス・オコナー」

 

 ポツリと呟いた俺の言葉に、映像モニタ越しに頷くアルト。

 EX-ギアのヘルメット越しではあるが、その表情に浮かんでいるのは苛立たしげなものだ。

 

「そう怒るな。今はやるべき事は分かっているんだろ? なら、それを成せばいいだけだ」

『……ああ、そうだな。俺は奴を、グレイス・オコナーからバジュラを解放する!』

 

 自らの決意を込めてそう叫んだ、その時。まるで堪えきれないとでもいうような笑い声が響き渡る。

 

『あははははははは。黙って聞いていれば、何をふざけたことを。この虫共と仲良く共存? そんな事が出来る筈が無いでしょう? いえ、私が許さない。バジュラを支配する神である、この私が!』

 

 哄笑しながら叫ぶグレイス。同時に、クイーンの周辺には幾つもの……それこそ数十、数百といった数の、白い体色のバジュラがデフォールドしてくる。

 ちっ、こっちが話している間に全く動きを見せなかったのは、この準備をしていたからか。相変わらず如才ない。

 

『アクセル・アルマー。確かに貴方のようなイレギュラーを計算に入れていなかったのは私のミスかもしれない。けど、それも所詮は誤差範囲でしか無いという事を教えて上げましょう! さぁ、行くのよ! 神に逆らう愚かなる者達に対し、神罰を与える為に!』

 

 フォールド波による通信が周辺一帯へと響く。

 同時に、こちらへと向かってくる白いバジュラ。……ただし、その半数程はクイーンからも、そして俺達からも離れた場所にいるシャドウミラーの部隊へと向かっていく。

 それを止めようとする通常のバジュラ達。

 シェリルとランカの歌が流れる中、俺もまたオープンチャンネルを開きながら口を開く。

 

「シャドウミラー各機、神を僭称する者に己の分というものを教えてやれ。この俺、アクセル・アルマーの名の下に!」

 

 こうして、マクロス世界での最後の戦いの幕が切って落とされる。




アクセル・アルマー
LV:41
PP:1390
格闘:274
射撃:294
技量:284
防御:284
回避:314
命中:334
SP:1394
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1113

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