転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0777話

 まず最初に戦端を切り、戦いの開始を告げたのはグレイスの率いるバジュラの攻撃。ただし再び俺に防がれるのを恐れたのか、今回は重量子ビームでは無く無数のビームを連射するという攻撃方法。それも、ビームを放ったのはクイーンだけでは無い。こちらへと向かってきている、グレイスに支配されている白い体色のバジュラの集団もだ。

 グレイスにしてみれば、先程自分で言ったようにバジュラは虫けら……良く言っても使える道具くらいにしか思っていないのだろう。俺達へ向かって攻撃を仕掛けているバジュラの中でも、10匹を超える数が女王級の放ったビームに飲み込まれ、消滅していく。

 

『くそっ、あの女、バジュラを平気で殺しやがって!』

 

 バジュラから放たれている攻撃を回避に専念しつつ、アルトの吐き捨てるような声が聞こえてくる。

 もっとも、クイーンを操るグレイスに攻撃されているのがあくまでもこっちだけ――シロガネには操られているバジュラが攻撃を仕掛けているが――なのは、シャドウミラーを率いる身としてはそう悪くないだろう。ニーズヘッグのスペックを最大限に発揮した事で、先程のクイーンの一撃は無傷でやり過ごしたが、念動力の無いシロガネ辺りは一撃で撃破される……というような事は無いにしろ、それで機体に命中する前に攻撃を無力化するというのはまず無理だろう。

 もっとも、シロガネの装甲自体はニーズヘッグと比べものにならない程に厚いのも事実。それを考えれば、命中しても小破程度で済むかもしれないが。

 

『アクセル、どうするんだよ!』

「こっちに攻めてきているバジュラをどうにかしつつ、クイーンをどうにかすればいいんだろう? それ程難しい話じゃない」

『どうにかって……殺すとかは無しだって分かってるよな!』

 

 不穏な物を感じたのか、思わずといった様子で告げてくるアルト。

 ……確かに、バジュラが悪意で俺達を攻撃してきた訳では無く、寧ろ正体不明の集団の中にいたランカを助けに来たというのを聞かされると、無意味に殺したくは無いというのは分かる。だが……

 

「分かっているのか? 操られているとは言え……いや、操られているからこそ、敵を殺さずに済ませるというのは難しいと」

『けど!』

 

 更に何かを言い募ろうとしたアルトだったが、丁度その時に声が割り込んでくる。

 

『なら、バジュラに関してはあたしとランカちゃんに任せなさい!』

 

 声の聞こえてきた方へと視線を向けると、そこでは少し前まで不治の病だったとは思えない程に元気な笑みを浮かべているシェリルの姿。その隣には決意を込めた視線でこちらを見ているランカの姿と、そのランカの近くを飛んでいる小型のバジュラの姿。

 何を狙っているのか。それはシェリルとランカという時点で大体分かった。恐らく先程の、グレイスに洗脳されていたバジュラを元に戻したのと同じ事をするつもりなのだろう。勿論俺としても異存は無い。敵の戦力が減ってくれるのなら歓迎だし、バジュラに対して色々と思うところはあっても、とにかく今はこっちに敵対する意思がない以上はこちらから攻撃を仕掛ける必要は無いのだから。

 だが……

 

「出来るのか? 一度グレイスの洗脳を解除して、元に戻しているのを見られているだろう? 向こうも、こっちにそんな手段があるのを承知の上でバジュラを出してきたのを思えば、対抗手段を有しているのは間違いないと思うが」

『ふふんっ、あたしを誰だと思っているの? あたしはシェリル、シェリル・ノームよ! その程度の障害なんか吹っ飛ばしてやるわ!』

 

 いつものシェリルらしい自信に満ちた口調を聞き、思わず口元に小さな笑みを浮かべる。そうだな、これでこそシェリルだ。いや、V型感染症の症状が出ていた時に比べると、よりシェリルらしいか。

 マクロス・クォーターへと通信つなぎ、ジェフリーの方へと視線を向ける。向こうでも当然俺とシェリルの話については傍受していたのだろう。無言で小さく頷いてくる。

 こっちに任せる、か。なら……

 

「頼む、お前の歌で無駄な犠牲を無くして俺達を勝利に導いてくれ」

『分かったわ。……だから、アクセル。ちゃんとあたしのところに戻ってきなさいよね。あんたの恋人達とはきちんと話をつけないといけないんだから』

 

 その言葉に、マクロス・クォーターと繋がっている画面でボビーが口笛を吹き、キャサリンが呆れたような表情で溜息を吐き、モニカ、ラム、ミーナの3人娘は興味深げな視線をこちらへと送っている。

 ちなみにシェリルの横ではランカが妙な想像をしたのだろう。顔を真っ赤に染めながら何故かチラチラとアルトへと視線を向けていた。

 オズマとブレラが微妙に不機嫌そうな表情を浮かべているのは、決して俺の気のせいでは無いだろう。

 そんなこんなで作戦は決まり、シェリルとランカが歌い始めた曲をバックにしながら敵の攻撃を回避し、クイーンへと向かっていく。

 新統合軍、S.M.S、そしてシャドウミラー。その全ての部隊がクイーンへと進路を取る。

 当然グレイスとしてもバジュラを使って反撃させるのだが、そこにシェリルとランカの歌声が響いてはバジュラの洗脳を解除しようとする。勿論グレイスもそうはさせじと再び洗脳しようとして、バジュラの体色は白に変わったり元に戻ったりと、まるで点滅しているかのように数秒、数瞬ごとに変わる。

 バジュラにとっては色々と身体に悪そうな気もするが、それでもグレイスに操られているよりはマシだろう。

 グレイスがどのような手段を使ってバジュラを操っているのかは分からないが、それでも強制力はそれ程高くないと言うべきか。あるいは、シェリルとランカの歌の力がそれだけ強いのか。

 シェリルが持っているフォールドクォーツの力も影響しているのかもしれない。

 とにかく、こちらに攻撃を仕掛けようとする殆どのバジュラは歌の力により洗脳状態と素の状態を行ったり来たりしていた。中にはより強力に操られているバジュラもいるが、それに関しては俺達が攻撃するよりも早く、元に戻ったバジュラが押さえ込みに行っている。

 ……ただし、歌の影響範囲の問題なのかどうかは分からないが、シロガネがいる方では元に戻ったバジュラの数は明らかに少ない。

 まぁ、アルトの話によればバジュラは相手の存在をフォールド波のやり取り……即ち、フォールド細菌の有無で判別しているらしい。それを思えば、フォールド細菌の持ち主が2人揃っているこっちでより歌の効果が大きくなるのは当然だろう。

 

『おのれ……だが、私に攻撃は通じないと思い知れ!』

 

 女王級からグレイスの言葉が響き、バリア――ルカの言葉が正しければ次元断層シールド――を展開する。

 そして、接近しているVFや戦艦からミサイルやビームが放たれるが、その全てを完全に防ぎきる。確かにオズマの放った反応弾4発を何の被害も無く防いだんだから、この程度の防御力は当然か。

 ……俺がいなければ、だがな。フロンティア船団でも、新統合軍でも、S.M.Sでも……そして、シャドウミラーですら俺以外には使えない、この攻撃。

 

「直撃」

 

 精神コマンドの直撃を使い、ヒュドラ後方に装備されているメガ・バスターキャノンの砲口を女王級へと向け。

 

『あははははは。無駄よ無駄。神の如き力を持つこの私には一切の攻撃は通用しないの』

 

 自分に砲口を向けているニーズヘッグに気がついたのだろう。嘲弄するようにそう告げてくる。だが……

 

「先程同様、その自信……俺が撃ち砕く! メガ・バスターキャノン、発射!」

 

 その言葉と共にトリガーが引かれ、砲口から放たれる巨大なビーム。もっとも、確かに巨大ではあるが、女王級が放った重量子ビームに比べるとその太さは段違いではある。だが……メガ・バスターキャノンの砲口から放たれたビームは、次元断層シールドに弾かれもせず、あっさりとすり抜けてその巨大な身体へと命中する。

 

『ば、馬鹿な!? 一体何が……アクセル・アルマー、一体何をしたあぁっ!』

 

 その巨体を考えれば、与えたダメージはそう多くは無かったのだろう。だが、それでも自分が絶対の守護に守られており、こちらからの攻撃は一切食らわないと思い込んでいただけに、グレイスの動揺は酷かった。いや、いっそ醜悪だとすら言ってもいいだろう。

 

「ふんっ、この程度の攻撃を防げもしないで神気取りか? お前は神じゃなくて、その防御の薄さを表す意味でも紙の方がお似合いだよ」

『貴様っ、貴様あぁぁぁぁぁっ!』

 

 轟っ!

 

 俺のその言葉が余程癪に障ったのか、再び放たれる2発の巨大な重量子ビーム。だが、それが狙ったのは俺では無く……

 

『馬鹿め。確かに貴様にはこの攻撃は効果が無かっただろう。だが……貴様以外はどうかな!?』

 

 クイーンから放たれた重量子ビームは、片方はバトル・フロンティアへと。そしてもう片方は……シロガネ!?

 ちっ、また面倒な真似を!

 思わず舌打ちをした、その瞬間。バトル・フロンティア周辺にいたバジュラと、シロガネ周辺にいたバジュラが自らの身を投げ出すかのように重量子ビームの前に飛び出てくる。

 そして放たれた重量子ビームを身を張って防ぎ、1匹、また1匹と瞬時に消滅していく。そして重量子ビームが消えたその後……残っているのは、完全に無傷のバトル・フロンティアと、数が少なかったのでバジュラは全て消滅したが、その代わりにEフィールド、G・テリトリー、ビームコートによって装甲に軽い焦げ目がついた程度のシロガネの姿だった。

 バジュラが身を捨ててでもこちらの守った? そう思った次の瞬間、生き残ったバジュラが前に出て次元断層シールドへと接触し、巨大な円を描くように何匹ものバジュラが並んで干渉。そこへと穴を開ける。

 これは……

 

『アクセル、今よ! 長くは持たないわ!』

 

 バジュラにそうするように指示を出したのか、あるいはバジュラからフォールド波によって今のうちにどうにかしろと指示されたのか。どのみち、俺のやるべき事は決まっていた。

 

「アルト!」

『ああ!』

『俺も行くぞ!』

『奴には俺を支配した代償を払わせなければな!』

 

 アルトに声を掛けると、それに続くかのようにオズマ、ブレラまでもが俺の後に続いて穴の開いた次元断層シールドへと向かう。

 バジュラによって作られた、強行型のマクロス・クォーターですら内部に入れるような大きさの穴からニーズヘッグ、VF-25F、VF-25S、VF-27の4機が突っ込んでいき、他のS.M.Sの戦力や新統合軍の戦力も俺達の後に続くようにして突っ込んでくる。

 クイーンや、近くに配置している影響か、まだグレイスに支配されている白いバジュラから無数に飛んでくる弾丸やビーム。それらの攻撃をヒュドラのスラスターやエナジーウィングを使って小刻みに回避しつつ、クイーンへと向かって突き進んでいく。

 

『何故分からないの!? これが人類進化の究極の姿だというのに!』

 

 通信から聞こえてくる、切羽詰まったようなグレイスの声。ここまで追い込まれ、ようやくクイーンを支配したとしても、それは絶対ではないと理解したのだろう。

 

「確かに人類進化の道かもしれないな。だが、バジュラを支配し、利用し、更にはフロンティア船団まで巻き込んだ。その時点でそんなお題目に意味は無い。そして何よりも……お前のミスは、俺と敵対した事だ!」

 

 放たれた生体ミサイルをジャマーを使ってあらぬ方向へと逸らし、距離を縮め……瞬間、T-LINKシステムでこちらに対する2つの殺気とすら呼べないような敵意を感知する。その敵意を感知した瞬間には既にT-LINKシステムを通してヒュドラを動かし、前方左右に内蔵されているランツェ・カノーネを放ち一撃で撃破する。

 2機のVF-27の爆発を後方へと置き去りにし、そのまま女王級との距離が更に縮まってきたところでブレラからの通信が入る。

 

『聞け! 狙うのはクイーンの頭だ! バジュラの心は、頭ではなく腹にある! そしてグレイス・オコナーはクイーンの頭部を乗っ取っている!』

『腹!?』

『……そうか!』

「なるほど」

『この……虫けら共がぁっ!』

 

 アルト、オズマ、俺の3人が頷きを返し、その通信を聞いていたのだろう。苛立たしげなグレイスの言葉が周囲へと響き渡る。

 その言葉と共に、再び現れるVF-27。その数10機。ちっ、どこまでもしぶとい!

 T-LINKシステムによりヒュドラを操作して攻撃しようとした、その時。

 

『行けぇっ、アクセル! ここは俺達に任せろ! お前は奴を、グレイスを討てぇっ!』

 

 叫び声と共に、散会するオズマ機と、それに続くアルト機、ブレラ機。

 確かにこの場で時間を消費する意味は無いか。

 一瞬で判断し、VF-27はそのままオズマ達に任せて女王級目がけて突き進む。

 ツイン・ドライブを全開にし、常人ではISCがあっても瞬時に意識を失い、そして命を失う程のG。それを全く意に介せず速度を上げ……やがて目標でもあるクイーンの姿が見えてくる。

 頭部……なるほど、ならあの細い首から分断すればいいな。

 

「っと、往生際が悪いんだよ!」

 

 これ以上は近づかせまいとして振るわれる女王級の腕を掻い潜り、その大振りをした一撃が逆に俺へと決定的なチャンスを与える。

 

「アダマン・ハルパー、モード・ランス! 加速、直撃!」

 

 その言葉と共に、スライムで作られている大鎌が巨大な馬上槍へと姿を変える。そして使用された精神コマンドによりニーズヘッグが出せる速度は極限まで上がり……それは同時に、馬上槍での攻撃力へと転化される。

 ズンッ!

 そんな衝撃を一瞬だけ感じ、気がついた時には既にニーズヘッグの姿はクイーンの首を貫通し、女王級の頭部は身体から切り離されてバジュラ本星の方へと落ちていくところだった。

 ここで決めるっ!

 ヒュドラのスラスターとエナジーウィングを使って機体を強引に反転させT-LINKシステムによって狙いを付ける。

 ランツェ・カノーネ、T.T.キャノン、メガバスターキャノン、ブラックホール・ランチャー、ヒュドラに装備されているビーム砲系18門、腹部拡散ビーム砲、エナジーウィング。その全ての照準をクイーン頭部に付け……

 

「愛、直撃」

 

 精神コマンドを発動させた、その時。間違いなく映像モニタ越しに女王級と一体化している醜いグレイスと視線が合った。何かを訴えるかのような、その表情。だが、お前はここで消えろ。

 

「食らえ、フルバースト!」

 

 その言葉と共に、ニーズヘッグからまさに雨霰といった具合に幾つものビームや重力波砲、刃状のエネルギー体といった具合に飛んでいき……瞬時にクイーンの頭部をグレイス・オコナーごと文字通りの意味で消滅させるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:1405
格闘:278
射撃:298
技量:288
防御:288
回避:318
命中:338
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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