転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0790話

 会議室の中に入り、お互い席に着く。

 基本的にフロンティア政府側とシャドウミラー側が向かい合う形になっており、こちらからは俺、エザリア、シェリルの3人のみだが、フロンティア政府側はグラス大統領やキャサリンを含めて10人程の人数が揃っている。

 会議室の外には、当然の如くお馴染みの黒服の姿もあった。見覚えのある顔の護衛も幾つか混ざっており、こちらに軽く黙礼をしていたのが印象的だった。

 考えてみれば、この黒服達とはランカのライブの時に一緒に行動し、あるいは1人だけだがシェリルに大統領からの協力要請があった時の奴もいたしな。

 ともあれ、この場にいるのは俺達とフロンティア政府の面々だけだ。そんな中でそれぞれの机の上に封を開けられていないペットボトルのお茶が置かれている。

 

「さて、まずは昨日のバジュラの戦いを無事に終えられたことを喜ぶと共に、多大なる戦果を上げて私達の援護をしてくれたシャドウミラーの皆さんに感謝をしたいと思う」

 

 そう告げ、頭を下げるグラス大統領。

 まぁ、実際問題俺達がいないままだと、バジュラやギャラクシー船団の戦力を相手にするのは厳しかっただろうしな。最終的に勝てたとしても、恐らくは大きな損害を受けていたのは間違いないだろう。

 

「気にしないで下さい。こちらとしてもアクセルを救助するという目的もありましたし、そちらがアクセルから聞いているかどうかは分かりませんが、私達シャドウミラーは多くの異世界と行き来しており、同時に貿易もしています。その対象となるかもしれないこの世界の人達を助けられたのは、シャドウミラーとしても僥倖でした。……ただし」

「うむ、何事も無償でとはいかないというのは分かっておる。幸い、この会議自体はあくまでも交渉の前段階における、非公式なものだ。議事録についてもお互いに記録するというのは承知している」

 

 呟くグラス大統領が見ているのは、エザリアがいつの間にかテーブルに置いて作動させていた機械。恐らくは、議事録をとる……と言うよりも映像として保存しておく為のものだろう。

 まぁ、これまで似たような事を何度もやってきた俺達と違って、向こうは初めての経験だ。

 ……もっとも、ゼントラーディやプロトデビルン、そして今回のバジュラのような未知の相手とは幾度となく接触してきたと考えれば、他の世界よりはまだマシなのだが。そんな風に考えている間にもエザリアとグラス大統領、あるいは他の政治家との間で話し合いが始まっていく。

 やはり最大の問題は異世界という存在についてどうするか、という事か。

 

「それと、これは地球や新統合軍本部からの要望なのだが、彼等に魔法を見せてやって貰えないだろうか?」

「……なるほど」

 

 グラス大統領のその言葉に、チラリとこちらへ視線を向けてくるエザリア。

 まぁ、基本的にはシャドウミラーで魔法が得意な面子は限られているしな。フェイトは火星でテラフォーミングをやっているし、エヴァに至っては面倒くさがるのは間違いない。……一応魔法顧問という扱いの筈なのだが。

 ただ本人がやる気になったとしても、このマクロス世界では魔法を使うのに大量の魔力を消費する。それを思えば、エザリアの俺がやった方がいいという判断は正しいんだろう。

 

「こちらとしては問題無い。何なら今からでも構わないが?」

「いえ、さすがにそれは向こうの方でも準備が整っていないので、後日改めてという事でお願いします。この世界の者にとって、魔法というのは空想上の産物でしかありませんでした。それ故、もし本当に魔法があるのだとしたら一刻も早く自分の目で確認したいことでしょう。恐らく近いうちにお願いすると思います」

 

 そう告げ、安堵の息を吐くグラス大統領。……この様子だと相当せっつかれていたんだろうな。元々フォールドやらプロトカルチャーやらその他諸々、この世界にも魔法染みた存在はあると思うんだが……やはり本物の魔法となると違うんだろう。

 

「では、その件についてはそちらからの要求があり次第、アクセル代表を派遣するという事で構いませんね?」

「ええ、お願いします」

「それと、そうだな。俺達シャドウミラーと条約の締結なりなんなりをするというのなら、いずれ公の席で俺達が出る事も必要になるだろう? その時にも魔法を使ってみせるのが一番手っ取り早いだろうな」

 

 そもそも魔法云々はともかく、この世界の兵器とはまるで違うPTを始めとする機動兵器を使っているのは新統合軍に知られているんだ。そうなれば、末端からギャラクシーネットに情報が漏れていてもおかしくないしな。

 

「そうして貰えると助かります。私達との条約が結ばれたら是非とも」

「そうだな、ギアス世界の時のように俺の召喚獣でも呼び出してみせるか」

「ギアス世界?」

 

 そう口を開いたのは、少し離れた場所に座っていた別の政治家。興味深そうにこちらへと視線を向けている。

 

「ああ、俺達が一番最近国交を結んだ世界だ。その世界でも世界中に俺達シャドウミラーの存在を知らせる時に、グリフィンドラゴンという召喚獣を会見の場で召喚して見せてな。これが結構好評だった訳だ」

 

 良いにしろ悪いにしろ、な。

 

「その、グリフィンドラゴンというのは一体? 俗に言うグリフォンのようなものなのですか?」

 

 また別の政治家がしてきた質問に、小さく頷く。

 

「分かりやすく言えば、グリフォンとドラゴンのハーフみたいなものと思ってくれ」

「グリフォンとドラゴンのハーフ!? それは興味深い! ……アクセル代表、もしよろしければ今から私達だけにでも魔法を見せて……」

「やめないか!」

 

 余程ファンタジーに興味があるのだろう。グリフィンドラゴンについて尋ねてきていた政治家が身を乗り出してそう言ってくるのを、グラス大統領が鋭い声で叱咤する。

 

「ですが、大統領……」

「ここは非公式とは言えこれからのこの世界とシャドウミラーの今後を決める場だ。軽はずみな言動は慎みたまえ」

 

 その言葉に肩を落とす政治家。

 ただ、まぁ……

 

「グラス大統領。まぁ、その政治家の言っている事も一理はある。これからの俺達シャドウミラーとマクロス世界の関係を決めるのに、俺達の特異な点でもある魔法をフロンティア政府の政治家が見たことがないってのも問題だろう。何しろ、もし国交を持つ事が出来れば、お互いに1つの惑星の上で共存するんだ。つまり、フロンティア政府は俺達シャドウミラーの最も親しい隣人となる」

「だが、アクセル代表……」

 

 チラリ、と隣に座っているエザリアへと視線を向けると、小さく頷きを返される。

 エザリアにしても、ここで魔法を見せておくのは有益だと判断したのだろう。シェリルも面白そうな表情を浮かべてこちらを見ているし。

 

「ま、お近づきの印のデモンストレーションだから、あまり難しく考える必要は無い。……とは言え、そうだな。魔法にも色々とあるが……やっぱりこれが一番分かりやすいだろうな」

 

 呟き、その部屋にいる皆の注目を集めながら右手を上げ、次の瞬間には腕そのものが純白の炎へと変わる。同時に、その炎から生み出された小鳥やリス、子犬、子猫といった炎獣達が会議室の中を走り回り、あるいは飛び回っていた。

 

『おおおおおおおおお』

 

 政治家達の驚愕の声を聞きながら、次に先端の尖っていない影槍を20本程作り出して政治家達の前へと移動させる。

 

「こ、これは……手品とかそういうトリックではなくて、本物だ……ア、ア、アクセル代表。この炎の獣には触れてもいいかね?」

「問題無い。温度は30℃程度だから、触れても火傷するような事はない」

「アクセル代表、この黒い棒は一体?」

「それは操影術という魔法の1種で、影を自由自在に操るという基本的なものだ。影槍という名前通り、本来先端は尖らせて敵を貫いたり、あるいは斬り裂いたりするんだが、今回はこういう場なのでその形状にさせて貰った。勿論触れても何の問題も無い」

 

 その言葉を聞き、政治家達が恐る恐る近くにいる子猫や子犬、リスといった炎獣へと指を伸ばしては、暖かい炎の温度に驚きの声を上げている。

 

「すまないね、アクセル代表」

「別に気にはしていないさ。さっきも言った通りフロンティア政府は俺達にとって最も親しい友人になるんだろうし」

 

 グラス大統領に言葉を返しながら指をパチンッと鳴らす。

 すると次の瞬間には全ての炎獣が白い炎となって消えていった。同時に影槍に関しても俺の影に戻ってその姿を消す。

 目の前で消えた炎獣や影槍に残念そうな表情を浮かべつつ、それでも実際に魔法をその目で見て実感した為だろう。

 最初に俺に魔法を見せて欲しいと言った政治家が、目を輝かせて座っていた席から身を乗り出す。

 

「いや、アクセル代表。魔法が実在するのを直接この目で確認出来たのは素晴らしいです。……ちなみに、魔法というのは習得するのに何か特殊な才能が必要なんでしょうか?」

 

 その問いに、再びグラス大統領が口を開こうとするが、それを目で制してから質問に答える。

 

「そうだな、基本的には誰でも習得が可能な技術だ。ただし、ある一定以上になる為には才能が必要になってくるからな」

「つまり、この世界の住人でも魔法を習得出来ると?」

「恐らくは問題無いだろう。ただ、注意が必要なのはこの世界、俺達はマクロス世界と呼称しているが、このマクロス世界で魔法を使うには通常よりも多くの魔力が必要とされる。俺達シャドウミラーが交流を持っている世界の中ではトップクラスにな」

「それは……そうですか……」

 

 余程に今の言葉がショックだったのだろう。政治家の表情は自分が魔法を使えるかもしれないという喜びから一転して、落ち込む。

 

「君達、それくらいにしておきたまえ。今回は非公式とは言ってもシャドウミラーとの交渉の場なのだ。あまり失態を見せないで欲しい」

「すいません、大統領」

 

 政治家達が頭を下げ、話題が一新されて再び交渉へと話が戻される。

 

「それで、まず第1にだが……君達シャドウミラーが要求しているのはアクセル代表が以前言っていた内容と変わらないと考えてもいいかね?」

 

 グラス大統領の言葉に、エザリアは頷く。

 既にエザリアとは大筋でこちらの希望については話してある。それ故に戸惑う事無く頷いたのだろう。

 

「ええ、既に聞いています。シャドウミラーとしての要求は、都市を1つ作れる程度の土地と、資源各種。……ただ、これに1つ付け加えて欲しい物があるのですが」

「……それは?」

「実は昨日の戦闘終了後に、とある人物を確保しまして。その人物に関する全ての権利をこちらへと譲渡して欲しいのです」

「……とある人物?」

 

 誰の事なのかは分からないのだろう。数秒程考え込んだグラス大統領だったが、やがてエザリアに向かって問い掛ける。

 

「それは誰の事か聞いてもいいかな?」

「レオン・三島」

 

 エザリアがその名前を口にした瞬間、間違いなく先程までは俺の魔法を見て和やかな雰囲気だった会議室の中の空気が緊張で張り詰める。

 

「彼が……生きていたと? それも、そちらで確保していたというのかね?」

 

 俺の方へと視線を向けて尋ねてくるグラス大統領に頷く。

 

「ああ、グレイスに捕まっていたらしいが、どうやら逃げ出したらしくてな。昨日の戦闘終了後にシャトル諸共に確保した」

 

 レオンに関しては、既にエザリアが会ってシャドウミラーの為に働くという承諾の返事を貰っている。

 まぁ、マクロス世界に渡されれば待っているのは良くて終身刑、最悪死刑なんだから、多少の縛りはあれども行動の自由が約束されているシャドウミラーを選択するというのはある意味で当たり前だろう。

 とは言っても、まだ鵬法璽は使っていない。取りあえず今の忙しさがどうにかなるまでは軟禁させて貰うつもりだが。

 ただ、父親を殺されそうになったり、あるいは自分の元婚約者だった相手としては無視出来ない話であり……

 

「……アクセル大尉っ! 貴方は自分が何を言っているのか分かっているの!」

 

 会議室の中に、キャサリンの怒声が響く。

 

「キャシー!」

「っ!? ……失礼しました」

 

 グラス大統領の叱責に、我に返って頭を下げるキャサリン。

 

「いや、気にする必要は無い。だが、俺達とフロンティア政府の間ではまだ条約も何も結ばれてはいない。当然、犯罪者の引き渡し云々についてもな。なら、こっちが捕まえた男をこちらで処理するのは間違っているか?」

「……いや」

 

 あるいは、俺がS.M.Sのパイロットとして活動していれば話は別だっただろう。だが、あの時の俺は既にシャドウミラーの代表として活動していたのだ。

 

「安心しろ、別に無罪放免でどうにかするつもりはない。いや、ある意味では終身刑よりも厳しい処分かもしれないぞ」

「……何を?」

「魔法を使った絶対の契約を結ぶ。この契約を結んだ場合、どのような手段を使ってもそれを破る事は出来なくなる」

「それは……」

 

 魔法という存在に目を輝かせていた政治家が、思わず息を呑む。

 魔法が夢やメルヘンといった要素だけでは無いのを理解したといったところか。

 

「済まないが、それについては即答しかねる。新統合政府本部と相談の上、後日改めて返答したい」

「ああ、そうしてくれ。それまで奴の身柄はこちらで預かっておく」

 

 それからも1時間程話し合いは続き、最後には何とかレオンの件で妙になった空気も元に戻ってその日の交渉は取りあえず無事に終わるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:1405
格闘:278
射撃:298
技量:288
防御:288
回避:318
命中:338
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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