転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0815話

 マクロス世界のミュートスにある、シャドウミラーの都市タンタシオン。そこから少し離れた場所に、現在は大規模なステージが作られていた。

 シェリルが最初にフロンティア船団にやって来た時にライブを行った会場よりも大きく、しかも派手な仕掛けが多く作られている会場。現在、その会場には大量の観客達が集まってきている。

 いや、それどころかライブ会場として作られた建物の中に入りきれない程の人数が集まっており、現在は建物の外でチケットを買えなかった者達の姿すらもある。

 

「そんな所でどうしたんだい?」

 

 建物の窓から外を見ている俺の背中へと掛けられる声。

 そちらへと視線を向けると、そこには眼鏡を掛けた柔らかな印象を与える人物が存在していた。……否、普段なら柔らかな印象を与える人物と表現するのが正しいのだろうが、今は目をキラキラさせてかなりアグレッシブな様子だ。

 そこにはかつての病弱だった時の残滓は、既に一欠片すらも残っていない。

 フィリオ・プレスティ。俺の恋人でもあるスレイの兄であり、AMを開発した天才技術者の1人で、テスラ・ドライブの研究に関してはレモンに勝るとも劣らぬ能力を持っている。

 ……いや、寧ろテスラ・ドライブでフィリオと渡り合い、PS装甲でマリューと渡り合い、KMFでロイドに、エナジーウィングでセシルと互角以上に渡り合い、T-LINKシステムや重力関係の技術を高いレベルで実現させ、各種機体を開発、設計しと。今のシャドウミラーの根幹を築き上げたレモンが凄すぎるのか。

 ビアンがマリオンに持ってはいけない才能を持っていた男みたいな感じで表現されていたが、実働班以上に戦闘をこなせる能力を持つレモンは、色々な意味で既にビアンを超えていそうな気がする。

 劣っているところがあるとすれば、DCを組織したカリスマ性か?

 ふとそんな事を思いつつ、こちらに視線を向けているフィリオに小さく肩を竦める。

 

「いや、今回のライブにもの凄い客が来ていると思ってな。外ではチケットを取れなかった客の姿が溢れているぞ」

「それはしょうがないさ。彼女は色々な意味でこの世界でも注目を浴びているからね。その彼女がシャドウミラーに移籍して初めてのライブだ。それを考えれば、これだけの人数が集まるのはそう不思議な事じゃないよ」

 

 そう言いつつ、フィリオは笑みを浮かべている。

 自信に満ちた笑み、あるいは自分の実力がどれだけ通用するかを試したい笑みといったところか。

 

「今回のライブでは、かなり協力したらしいな」

「協力と言うか、どちらかと言えばこのマクロス世界のライブで使われている技術を勉強させて貰ったってのが大きいかな」

 

 マクロス世界から俺が戻り、どのような世界かを説明した時からフィリオは目を輝かせ、この世界でライブの時に使われている技術に興味を持っていた。それはギャラクシーネットで見た過去のシェリルやランカのライブ映像を見て収まるどころかよりその興奮具合は高まっていった。

 そしてシャドウミラー所属としてシェリルのライブが開かれると発表された時は、自ら率先してこっちに来てその技術を取得すべく活動していたのだ。

 その成果が今こうして明らかになっているのだから、喜ぶのも無理はないか。

 

「このライブの企画をしていた者にとっては万々歳って結果だな」

「まぁ、それは当然だね。元々彼女自体がもの凄い人気を誇っていたんだ。それが異世界の国家に移籍する事になってから初めてのライブだからね。銀河中からこのタンタシオンへと観客がやって来ているよ」

 

 もっとも、そのドサクサに紛れて都市の方に強引に入り込んで騒ぎを起こそうとしている者も出てきているから、量産型Wは色々と大忙しらしいけどな。

 それに……

 タッタッタ、という軽い足音と共にこちらへと向けられている稚拙な殺気。それを感知し、俺の背後を見て驚愕の表情を浮かべているフィリオを見ながら、そのまま軽く横へ移動し、同時に一瞬前まで俺のいた空間に刃物が突き出される。

 刃物を持っている腕を握り、技ではなく力で強引に引き上げて床へと叩きつける。

 一本背負い……と呼ぶのも恥ずかしいレベルの投げ技だが、それ故に床に叩きつけられた男は背中を強打し、激しく咳き込む。

 

「ア、アクセル!? これは一体……」

 

 ナイフを手に持った男を取り押さえている俺に向かって、恐る恐ると尋ねてくるフィリオ。

 

「何、別にそう難しい話じゃない。俺がシェリルと付き合っているのが気にくわない奴だろうな」

「と、と、当然だ! シェリルは僕の……僕のものなのに! 僕と一緒に幸せな家庭を築いて、それで子供を何人もつくって丘の上に小さな家を作って……それで、そして!」

「分かったから寝てろ」

 

 そのまま首筋へと手刀を入れて意識を奪う。

 

「ま、いわゆるストーカーって奴だな。以前に行われた移籍の記者会見で、シェリルと俺が付き合っていると発言したのが許せなかったんだろうな。何日か前からこの手の者が出てきているんだよ」

 

 何だかんだ言いつつ、襲われたのはこれで数回目だ。最初は何故襲われたのかも分からなかったが、事情聴取すればすぐに判明した。

 この類の奴等は、シェリルの記者会見があってからずっと俺を付け狙っていたらしい。

 だが、幸か不幸か俺はあれ以降マクロス世界では表舞台に出ていなかった。

 いや、新統合政府や新統合軍と顔合わせをしたり、あるいはシャドウミラーと新統合軍の機体が演習を行った交流会、ニヴルヘイムのお披露目とそれなりに活動してはいたんだが、この手の奴等が姿を現したのは今回のシェリルのライブが初めてだった。

 こいつらから聞き出した話によると、俺がシャドウミラーの力を使って嫌がるシェリルを力尽くで従わせているという認識らしい。

 もし本当にそんな事態になっていたとしても、あのシェリルが大人しく相手の言う事を聞くだけだとは思えないんだがな。

 シェリルの本性を知らないからか? ……いや、元々シェリルはマスコミに出る時に多少の猫は被っていても、シェリル・ノームを隠すような真似はしていなかった。となると、やはりこいつらの妄想が強すぎたんだろう。

 そう判断しつつ、会場の警備をしている量産型Wを通信で呼んで、気絶した男を引き渡す。

 

「コンサートが終わったら、新統合政府に連絡して引き取って貰え」

「了解しました」

 

 これでまた新統合政府は俺達に強く出られない理由が出来た訳だ。

 普通ならこの程度の事で何を……みたいな風に言いそうだが、この件に関して圧倒的に主導権を握っているのはこっちだし、何よりこの世界で必要な技術に関しては既に粗方入手済みでもある。

 シェリルの事や、S.M.Sといった面子を思えば色々と思うところが無いでもないが、現在の俺はあくまでもシャドウミラーのアクセル・アルマーだ。不利益になると分かっている世界と交流を持とうとは思っていない。

 ……まぁ、この程度でどうこうしようとは思わないが、それでも新統合政府にすればシャドウミラーに負い目が出来たのは事実だろう。

 

「さて、取りあえずこっちの件は片付いた。また新しく来るかもしれないが、今はライブの準備に集中した方がいいぞ」

「君は相変わらず、色々な意味で……いや、何でも無い。そうだね、今は彼女のライブの成功に全力を尽くそう。これからの彼女の活動の為にもね」

 

 どこか呆れたような溜息を吐くフィリオに、ふと気になって尋ねる。

 

「ちなみに収益の方はどうなっている?」

 

 一応このライブもチケットやら物品販売やらをやっているのだが、それでどれだけの利益が出ているのかが気になったのだ。

 別にシャドウミラーとしては直接的な利益が出なくても、シェリルのライブは宣伝効果やら何やらで表に出ない面での利益が色々とあるのは事実だ。だが、だからと言って赤字だというのは色々と外聞が悪い。

 だが、そんな俺の不安はフィリオの次の言葉が払拭する。

 

「問題無いよ。シェリルがシャドウミラーに所属してから初めてのライブという事もあって、かなりの客が集まっているからね。……それよりも、ほら。もう少しでライブが始まるんだから、歌姫様に会ってきたらどうだい? 彼女もライブが始まる前に君と会えばリラックスして歌えるだろうし」

「シェリルに限って緊張するって事は無いと思うけどな。……ただまぁ、確かに会っておくのも悪くないか」

「ふふっ、素直じゃないねぇ」

 

 笑みを含んだフィリオからの言葉を聞き流し、そのまま影のゲートを作ってそこへと身を沈めていく。

 そして次の瞬間には、シェリルの控え室の中にある影から俺はその姿を現していた。

 

「きゃあっ! ……ちょっと、驚かせないでよね」

 

 控え室の中にある鏡の前で1人座って集中していたシェリルは、俺が影から出てくる光景を鏡越しに見て驚きの声を上げる。

 

「……どうやら問題なさそうだな」

「何よ、問題って。このあたしがライブ前に何か問題があったとでもいうの?」

「別にそこまで心配していた訳じゃないさ。何しろ、シェリル・ノームなんだからな」

 

 そんな俺の言葉が意表を突いたのだろう。一瞬惚けたような表情を浮かべつつも、すぐにその口元には笑みが浮かぶ。

 

「ふふん、そうよ。あたしはシェリル。シェリル・ノームなんだから、ライブでミスをする筈が無いじゃない」

「だと思ったからな。別に励ましに来た訳じゃない。ただ単純に俺がお前に会いたくなっただけだ」

 

 そう口にすると、薄らとシェリルの頬が赤く染まる。

 

「な、何よ。不意打ちとか卑怯じゃない」

 

 頬を赤らめて視線を逸らすシェリルへ改めて視線を向けると、着ているステージ衣装はシェリルの豊かな曲線を描くボディラインを強調している扇情的なものであり、ある意味でセクシーさを売り出しているシェリルらしいと言えばらしい衣装だ。

 

「な、何よ。この衣装、何か変?」

「いや、いつも通りにシェリルはいい女だよ」

「ふふん、そうでしょ。ちなみにこの衣装は歌に合わせて次々に変化するようになっているんだから」

「ああ、なるほど」

 

 ライブ技術の1つなのだろう。

 俺が知ってる限りだと、それを反映させるには白い衣装を着ていなきゃいけなかった筈だが、その辺は技術の進歩なんだろうな。特にフィリオ辺りなんかはその辺の技術に関して熱心に研究してそうだし。

 もっともフィリオの正直な気持ちとしてはフェアリオンを見れば明らかなように、どちらかと言えばシェリルよりもランカ派なんだろうが。

 

「どうやらいい感じで歌えそうだな」

「勿論よ。何て言ったって、シャドウミラーに所属してから初めてのライブなんですもの。思う存分歌ってみせるわ」

「……そうか、なら俺もそれを舞台袖から見せて貰うとするよ」

「そうしなさい。……ね、アクセル」

 

 化粧台の前から立ち上がり、こちらへと近寄ってくるシェリル。

 その様子に首を傾げながらも、次の言葉を待つ。

 

「その……ちょっとしたおまじないよ」

 

 そっと手が伸ばされ、俺の頬へと触れ……次の瞬間にはシェリルの唇が俺の唇を塞ぎ、そのまま体重を俺へと預けてくる。

 扇情的なステージ衣装が押しつけられ、その柔らかな身体を抱きしめつつ深い口付けを行う。

 そのまま1分程が経過し……

 

「シェリルさん、そろそろ準備……えっと……その……すいません、でもそろそろ時間ですのでそういうのは取りあえずライブが終わってからお願いします!」

 

 シェリルを呼びに来た女のスタッフが、顔を真っ赤にしながらそう告げて部屋を出て行く。

 

「ふふっ、ちょっと目に毒だったかしら?」

 

 小さく笑いながら俺から離れていくシェリル。お互いの間に透明の橋が作り出されたが、それはすぐにハンカチで拭き取られる。

 そして化粧台に戻り口紅を塗り直すと、小さく手を振って控え室を出て行く。

 ドアを開けた瞬間、先程飛び込んできたスタッフの女が顔を真っ赤にしながら俺の方に視線を向けていたが……まぁ、シェリルと付き合っていれば、ある意味では慣れた光景でもある。

 

「じゃあね、アクセル。あたしの歌をしっかりと聴くのよ」

 

 最後に小さくウィンクをして、部屋を出て行く。

 俺もその後を追おうと思い……ふと、気がつく。

 先程のキスが終わった後でシェリルは口紅を塗り直していた。それは即ち、塗り直さなきゃいけなくなった訳で……

 嫌な予感がして化粧台の鏡で確認すると、そこには予想通りの光景が広がっていた。

 なるほど。スタッフの女が俺を見て顔を赤くしていたのは、キスシーンを見たのもあるが口紅の問題もあったか。

 取りあえずベットリとついている口紅を落としてから控え室を出て、ステージの方へと。

 既にそこは暗くなっており、いつシェリルが出てきてもいいように準備万端整っていた。

 そして、俺の姿を確認したのだろう。一瞬目が合ったシェリルが小さく頷くと、そのままステージ上へと移動する。

 

『あたしの歌を聴けぇーっ!』

 

 いつものバサラをオマージュした台詞を叫び、そのまま1曲目の歌へと入るのを、ゆっくりと眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 尚、結局ライブ後もシェリルを返せとばかりに襲いかかってきたストーカーをもう数人確保する事になる。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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