転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0827話

 G元素。その単語が出た瞬間、リトラスの表情が驚愕に歪み、次いでその黒人特有の浅黒い肌を真っ赤に染めて口を開ける。

 

「バソールト副長官! G元素については!」

 

 だが、クリメナはそんなリトラスの怒声を何でも無いかのように受け流して、口を開く。

 

「落ち着け、リトラス大将。この件についてはきちんと首相から許可を貰っている」

「首相から、ですか? こちらにその件を口止めしてきたのも、首相なのですが」

 

 そんな2人の話を聞きながら内心で納得する。 

 どうやらG元素ってのは余程に貴重な代物らしい。で、それを俺に知られる事を首相がリトラスに対しては口止めしていたが、何故かクリメナに関しては話す事を許可した、と。

 まぁ、大体の予想は出来る。最初は俺達がそのG元素欲しさにこの世界に対して侵略行為をしないかどうかを危惧したのだろう。実際、BETAだけで人類がここまで追い詰められている以上、ここで2正面作戦をやるなんて事になったら絶望的だろうしな。

 けど、俺がこの世界に対して消極的だという情報を得て、別に侵略目的では無いと判断したからこそ、取引材料としてそのG元素とやらを持ち出した。……恐らくそんなところだろう。

 多分トロニウムやサクラダイト、フォールドクォーツのようなこの世界特有の物質か何かだろうが……

 昨日調べたコンピュータにもこの辺の情報が無かった事を考えると、この国の軍隊は中々に腕が立つし、行動も素早いらしい。

 あるいはレモンやマリュー、キラやルカ辺りならデータに潜り込んで隠された秘密を見たりも出来たかもしれないが。

 

「ですが、G元素を含めたBETAの鹵獲品に対してはバンクーバー協定が!」

「悪いが、この件に関してここで君と話すつもりはない。後で時間を取ろう」

「……承知しました」

 

 リトラスが不承不承といった感じで頷くのを確認すると、クリメナが改めて俺の方へと視線を向けて口を開く。

 

「さて、君達が私達の世界に魅力を感じていないのは、魅力的な資源や技術が無いからという事だった。だが、G元素というのはどうかね?」

 

 身を乗り出して尋ねてくるクリメナに、そっと首を横に振る。

 

「残念ながら、そのG元素ってのが何を意味しているのか分からないんでな。出来ればその辺から説明してくれ」

「……そう言えばそうだな、話の結論を急ぎすぎた。G元素というのは、BETA由来の元素だ。少なくても、この地球上では人類が未発見の元素だよ。どうかね? 君達にとって、このG元素というのは魅力は無いかな?」

「BETA由来の元素、か」

 

 まさにバジュラとフォールドクォーツと同じ関係だな。となると……

 

「もしかして、G元素ってのはBETAの体内に存在しているのか?」

 

 俺の口から、ある意味で当然の疑問が出る。

 だが、それを聞いたクリメナとリトラスの2人は意表を突かれたといった表情を浮かべてこちらを見返す。……違うのか?

 

「体内? いや、G元素があるのはハイヴの奥深く、通称アトリエと呼ばれている場所だ」

「ハイヴの奥深くか。……昨日調べた限りでは、この世界でハイヴの攻略に成功した例は無いとなっていたが? どこからそのG元素とやらの情報を得たんだ?」

 

 言外に俺達の協力を得る為のブラフじゃないのか。そう口にするが、目の前にいる2人は首を横に振ってそれを否定する。

 

「確かにハイヴそのものの攻略は出来ていないが、ハイヴになる前、着陸ユニットの状態の時にはその例外ではない」

「……カナダか」

 

 確か、カナダに落下した着陸ユニットを、アメリカは核兵器を大量に投入して撃破していた筈だ。結果的にカナダの半分が人の住めない地域になったが、光線級の出現でBETAに一方的に押されている中国の件を見ていたのだから、ある意味で英断と表する事が出来るだろう。

 そして、その着陸ユニットを調べて得る事が出来たのがG元素だった訳か。

 もっとも、そのG元素というのが実際に存在していればの話だが。

 

「なるほど、話は分かった。ならゲートを設置した後でその現物を幾らか貰おうか。そのG元素とやらが、俺達にとって魅力的なものかどうかを確認させて貰う」

 

 これで話は決まったか? そう思って告げた言葉だったのだが、クリメナの首は横に振られる。

 

「残念ながら、G元素は非常に貴重なものだ。現在地球上にあるほぼ全てはアメリカが確保しているし、それ以外に豊富にあるだろうG元素は全てハイヴの中にある」

「……それはつまり、そのG元素とやらを俺達が欲するのならその辺にあるハイヴを攻略するしかない、と?」

「いや。どこにでもある訳では無い。G元素が貯蔵されている場所、通称アトリエに関しては、フェイズ5以降のハイヴにしか無いと言われている」

「……ほう」

 

 昨日調べた限りでは、地球上にある最大のハイヴは中国の喀什にあるオリジナルハイヴと呼ばれているフェイズ6だ。それの1つ下のフェイズ5を俺達の力を使って攻略しようという訳か。

 そう考えると、恐らく政府にG元素が無いというのも恐らくは嘘だろうな。この世界のオーストラリアは、海に囲まれた環境のおかげでBETAに襲われる事無く広大な土地の多くを農地に変えて食料を輸出している。つまり、アメリカに次ぐ世界第2位の勢力を持っていると言ってもいいのだから、サンプルの類として多少は持っていてもおかしくはない。

 まぁ、向こうにしてもそう簡単に俺達を引き込む為の切り札を使うわけにはいかないか。

 しかし、G元素か。確かに未知の元素というのには興味が惹かれるし、恐らく技術班がそれを知ればこの世界に対しての交流にも賛成する可能性は非常に高い。

 だが、問題はバジュラと違ってBETAの体内にG元素を持っておらず、フェイズ5以降のハイヴにあるアトリエという場所に行くしか無いという事か。

 地球にあるオリジナルハイヴがフェイズ6である事を考えると、この世界の者にとってはそれがベストなんだろうな。

 

「……あ」

 

 そこまで考え、ふと思い違いに気が付く。

 そもそも、アメリカはどこでG元素を手に入れた? フェイズ5以降のハイヴを攻略したから? 否、BETAの着陸ユニットからだ。つまりBETAの着陸ユニットというのは、どれ程の量かは知らないが内部にG元素を詰め込んだ状態で地球に向かって撃ち出されているのだろう。となると、別にハイヴを攻略しなくても地球に飛んできている着陸ユニットを確保すればG元素は確保出来るのでは?

 

「どうかしたのかね?」

 

 先程の呟きに小さく眉を動かしたクリメナの言葉に、小さく首を横に振る。

 これに関しては、まだ話さない方がいいだろう。この世界にとっては、恐らく非常に不都合な行動なのだから。

 

「いや、何でも無い。ともかく、そっちからの提案については了解した。まだ確実にとは言えないが、恐らくはこの世界と交流を持つことになる可能性は高い」

 

 その言葉を聞き、思わずといった様子で安堵の息を吐くクリメナ。

 恐らく、上司から必ず俺の協力を引き出すように命じられていたのだろう。

 ……まぁ、昨日の演習の結果を考えれば、それは別に不思議でも何でも無いが。

 クリメナの苦労を思いつつ、言葉を続ける。

 

「それで、さっきも言ったがゲートを設置するにはある程度の空間が必要だ。それと、こっちでの足場として、この基地程度の広さの敷地は欲しい」

「そちらに関しては既に話を付けてある。ここから30km程離れた場所に荒野がある。将来的にはそこも農地にする予定だったのだが、君達の協力が得られるというのなら、その計画は白紙に戻しても構わないと上では判断している」

 

 なるほど、そうやって恩に着せてくるか。

 もっとも、オーストラリアが提供出来るものはその敷地とG元素を含めたこの世界の情報くらいしかないのだから、どうにか有利に立ち回ろうと考えても無理はない。

 ああ、でも人が余っているならネギま世界の火星に放り込むというのも、ありと言えばありかもしれないな。

 もっとも、この世界だと火星にはフェイズ9のハイヴがあるから、平行世界の火星だと言っても忌避感は強そうだが……要検討ってところか。

 

「そっちの言い分は分かった。なら早速ゲートを設置したいんだが、どうする? さすがに俺達だけって訳にはいかないだろ?」

「当然だ。政府や軍の方からも何人か出させて貰う。別に危険は無いのだろう?」

「ああ。ゲートがホワイトスターにあるリュケイオスと同期する際に多少眩しく光るくらいだな」

「……了解した。どのみちシャドウミラーについては既にアメリカに知られているのは間違いない。多少強引だが、向こうが行動を起こすよりも前に既成事実を作っておくのに越した事は無いからな」

「アメリカとの関係は悪いのか? 俺がコンピュータでデータを見た限りでは特にそんな風には書かれていなかったが」

 

 勿論国と国の問題である以上、完全に手を取り合って……とはいかないだろう。だが、既に人類存亡の危機と言ってもいい程に追い詰められているこの状況にも関わらず、国家間で激しくやり合うってのは……正直、交流をするかどうかが決まっていない状態では大きなマイナスだ。

 そんな俺の言葉に不穏なものを感じたのだろう。クリメナの隣で俺達のやり取りを聞いていたリトラスが口を開く。

 

「確かにアメリカとの仲は決して良くは無いが、その理由の大部分はBETAとの戦いの後を見越した国家戦略を採っているアメリカにあると私は思っている」

「……まぁ、国としては将来を見据えるのも当然なのだろうが、今やるべき事ではないよな」

 

 リトラスの言葉にそう言葉を返しつつも、さすがにここで一方の話だけを聞いて判断する訳にはいかない。アメリカにはアメリカの言い分もあるだろうし。

 もっとも、その辺については俺よりも外交の専門家に任せるべきだろう。エザリア、あるいはレオン辺りに。

 ともあれ、オーストラリア政府の考えは大体理解した。ホワイトスターとのゲートを自国内に設置して、シャドウミラーとの関係でアメリカを大きく突き放したいというのが狙いだろう。

 確かにオーストラリアは世界第2位の強国ではあるが、それでも全ての面でアメリカには及ばない。ダントツのトップを走っているのがアメリカで、2位のオーストラリアは大きく遅れを取っている状態なのだから。

 

「うむ。勿論私達も座してそれを待つ気は無い」

 

 呟き、クリメナはリトラスの方へと視線を向ける。

 その視線に無言で頷くリトラスは、部屋の隅にある通信機を使うとどこかへと連絡を取った。

 一言、二言ですぐに通信を終えたリトラスは、クリメナに無言で頷く。

 

「どうやらこちらの方でも準備は出来たようだ。アクセル代表が良ければ、早速そのゲートとやらを設置する作業に取り掛かって貰いたいのだが。構わないかね?」

「随分と準備がいい事だな。ああ、勿論俺はいつでもいい」

「ふふっ、それは当然だろう。君達シャドウミラーは良くも悪くもこの世界に激動を巻き起こす中心的な存在になると私は思っているし、それはオーストラリア政府、国防軍共に共通の認識なのだよ。そのような相手をこちらの都合で待たせるのは申し訳ないのでね」

 

 ふんっ、狸め。

 まぁ、外務省の副局長ともなればこの程度の腹芸当然なんだろう。

 ともあれ、既に準備が整っているというのなら俺としてもありがたい。

 クリメナの言葉に頷き、善は急げとばかりに会議室を後にする。

 ……善かどうかは、非常に微妙だが。

 いや、BETAに苦しめられているこの世界の住人にしてみれば善という扱いになるんだろうけどな。

 

 

 

 

 

 基地から車で出発してから1時間程。さすがに政治家20人程に、リトラスのような将官5人程、そして護衛の軍人達を運ぶのに何台も車を用意する訳にはいかず、バスでの移動となっている。

 さすがに俺は別の車に乗ってそのバスの後をついて行ってるのだが。

 向こうにしても、他国の代表……それも、間違いなく自分達よりも上の力を持っている相手とは迂闊に接触出来ないらしい。

 昨日の演習はちょっと刺激的過ぎたか?

 そんな風に考えながら、俺達を跳躍しながら追ってきている機体へと視線を向ける。

 さすがに政治家の護衛というべきか、F-18が10機程。

 一応危機管理という意味で首相の姿が無いが、それでもこのバスがテロリスト辺りに破壊でもされれば、恐らくオーストラリアという国の政治は混乱するだろう。

 まぁ、俺がいる以上そんな真似をさせるつもりはないが。

 ともあれそんな状態で進み続け、更に1時間程掛けて、荒野へと到着する。

 文字通りに一面の荒野であり、周囲一帯には何も無い。

 確かにここは俺達の基地にするとすれば丁度いい場所だろうが……ここを農地にする予定だったと聞かされても、首を傾げざるを得なかった。

 

「アクセル代表、ではお願いする」

 

 クリメナの言葉に頷き、その場に全員の視線を感じつつ空間倉庫からゲートを取り出す。

 その瞬間、周囲の政治家が軍人達から驚愕の声が上がるが、既に慣れているので気にせずゲートを起動する。

 コンテナが展開して中から機械の塊が現れ、リュケイオスとのリンクが終了したのを見計らって通信装置を起動させと、そこに現れたのはレモン。

 

『あらあら、今回は随分と早かったのね』

 

 そしてレモンの背後には、コーネリア、マリュー、スレイ、シェリルに、従者組と呼ばれているあやか達の姿もある。

 ……向こうでは時間的に殆ど経過していないのか?

 そんな風に思いつつ、存外の幸運に口元へと笑みを浮かべるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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