転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0831話

 居住区画にある俺の家から影のゲートを使って移動した結果、俺の姿は5分と掛からずホワイトスターからマブラヴ世界へとやってきていた。

 そんな俺を出迎えたのは量産型W。こちらに向かっているという戦術機に対抗する為なのだろう、既にメギロートとイルメヤがそれぞれ10機ずつにシャドウ5機が起動しており、いざという時になればすぐにでも戦闘が可能な状態になっている。

 そんな機体へと視線を向け、量産型Wや無人機に対する命令を変更する。

 

「敵の撃破から生け捕りに命令を変更だ。生け捕りに関してはなるべく機体を壊さないようにしたいから、イルメヤのスパイダーネットを使え」

 

 パイロットに関しては、交渉の材料として返還してもいいだろう。だが、戦術機については、こちらの物とさせて貰う。

 出掛けに今回の話を聞いていたレモンに念を押されたからな。

 もっとも、戦術機は技術レベル的に俺達が欲するような技術は殆ど無いだろうから、一通り調べたら例の如く技術班の倉庫に仕舞い込まれる事になるだろうが。

 ともあれ、命令が下れば自意識の無い量産型Wやメギロート、イルメヤの戦闘用AIは何か言い募る事も無く、すぐに行動へと移る。

 この辺は人間の兵士を使っている他の軍隊よりも有利な要素だよな。

 そんな風に考えていると、ようやく目当ての戦術機部隊が姿を現す。

 ご丁寧な事に、F-15CとF-18が12機ずつという組み分けだ。

 現役で動いている第2世代の戦術機が得られるというのは、技術班にとって嬉しい限りだろう。

 もっとも、どうせならF-4辺りも欲しかったと言うかもしれないが。

 他にも戦術機は色々と機種が多いだけに、欲を言えば限度が無い。

 日本で開発されたという、世界初の実戦配備型第3世代戦術機を欲していないだけ、まだマシか。

 もっとも中国が最前線となっている現在、日本は色々と物入りだ。シャドウミラーがこの世界と貿易を開始すれば、当然日本との関係も深まるだろう。

 その時なら上手くいけば世界初の実戦配備型第3世代戦術機、不知火を得る事が出来るかもしれないな。

 匍匐飛行というよりは、跳躍を繰り返して戦術機がゲートから少し離れた位置に着地する。

 同時に、指揮車と思われる車の姿も確認出来た。

 さて、何を言ってくるのか……そういう意味では、ちょっと楽しみだな。

 

『シャドウミラーに告げる。我々オーストラリア国防軍はお前達の存在を危険視している。BETAと同様の存在として脅威になるのではないかと。それが違うというのなら、シャドウミラーの持っている全ての技術を無条件でこちらに引き渡す事を要求する』

 

 ……いや、何を言ってくるのかを楽しみにしてはいたんだが、これはさすがに予想外。

 まさかこんな意見が本気で取り入れられるとは思ってないだろうが。

 

「俺が直接返事をする。ただし、俺の合図があったら攻撃を仕掛けろ。さっきも言ったように殺さず生け捕りにしろ。機体の方もなるべく傷を付けない方向でな。それとこれから行われるやり取りを映像に残しておけ」

「了解しました!」

 

 敬礼をする量産型Wをその場に残して前へと1歩出る。

 

「シャドウミラー代表の、アクセル・アルマーだ。現在俺達シャドウミラーはオーストラリアという国家との交渉の前段階に入っている。これはその交渉を台無しにする行為だが、それを理解した上での行動か?」

『交渉という行為はお互いが対等の立場でやるべき事だ。異世界人であるお前達シャドウミラーとの間でやるべき事では無い!』

 

 指揮車から聞こえてくる怒鳴り声。

 何だ? 何か怒らせるような事を言ったか?

 まぁ、それはともかく向こうから決定的な言質をとることにしよう。

 

「では、オーストラリア政府は俺達シャドウミラーとの交渉を打ち切るという考えであると思ってもいいんだな?」

『当然だ。お前達のような得体の知れない相手との交渉をする訳がない。それより大人しくこちらに降伏し、シャドウミラーの持っている技術、資金、資源、人材、土地の全てをオーストラリアへと無条件に譲渡する事を命令する』

「……ほう。命令ときたか」

 

 決定的言質は取った。いや、予想以上の言質と言ってもいいだろう。それを映像に残したのだから、この戯れ言にこれ以上付き合う暇もないだろう。

 

「もういい。聞くに堪えないし、見るにも堪えない。お前等のような相手とまともに会話出来ると思ったのが間違いだった」

『何っ!? 貴様、オーストラリアを愚弄する気か!?』

「オーストラリアじゃなくて、お前を愚弄したんだがな。それが分からないんだから、どうしようもない。……やれ」

 

 その言葉と共に、10機のイルメヤからスパイダーネットが放たれる。

 技術班の力により、動きを止めるだけでは無く簡単な切断力すらも与えられたスパイダーネットだったが、今回はあくまでも敵機の鹵獲が最優先だ。その為、特にその切断力を発揮するような事も無く、F-15CやF-18の手足に絡まり、あるいは巻き付き動けない状態にする。

 勿論全機がその攻撃を食らった訳ではない。それなりに腕利きのパイロットもいたのか、数機程は後方へと跳躍してスパイダーネットを回避する事に成功している。

 だが、向こうが銃口をこちらへと向けようとしたその瞬間、イルメヤの攻撃と同時に空中を飛んでいたメギロートが襲い掛かった。

 サークルレーザーの類を使っていないのは、戦闘用AIが俺の命令をしっかりと認識している証だろう。

 そのまま速度にのってメギロートが突っ込み、体当たりを食らわせ……あ、F-15Cの下半身が完全に砕け散った。想像以上に脆いな。

 下半身が砕けたF-15Cの横では、今の一撃を見て敵の脆さを実感したのだろう。F-18へとメギロートが上空から足を広げながら襲いかかり、地面へと押さえつけている。

 F-18にしても押さえつけられたままでたまるかと、持っている銃口を何とか自分の上にいるメギロートへと向けようとするのだが、その手をメギロートの足が押さえつけ、それ以上動く事は出来ない。

 だが、次の瞬間にはキキキキンッといった金属が周囲に響く。

 何とか一連の襲撃から逃れた――より正確には標的にされなかった――F-15Cが持っていた突撃砲を仲間の機体を押さえ込んでいるメギロートへと向かって撃ち放ったのだ。

 だが、その全ての弾丸がメギロートの装甲に弾かれる。

 ……演習ではペイント弾だったから分からなかったが、至近距離でメギロートにダメージを与えられない程度の威力しかないとはな。

 いやまぁ、確かにメギロートも他世界の技術を得るごとにバージョンアップしていっている。

 重量子ビーム砲のテストをした時のように外見は変わっていないが、機体性能そのものは俺達がホワイトスターを拠点とした時に比べて比較にならない程高くなっているのだ。

 ……技術班の暴走の結果、とも言えるが。

 

『ええいっ、何をしている! 異世界人如きを相手に手こずるとは、それでも貴様等は栄えあるオーストラリア国防軍の軍人か!』

 

 一方的に押されている状態だからだろう、指揮車から怒鳴り声が聞こえてくる。

 あまりの劣勢に外部スピーカーのスイッチが入ったままなのにも気が付いていないらしい。

 向こうにしてみればこの展開は完全に誤算なのだろうが、こっちにしてみればある意味では当然の流れだ。

 さて、仕上げに掛かるとしよう。

 

「シャドウ部隊、出ろ」

 

 その言葉に、量産型Wの操縦しているシャドウ5機が前に出る。

 シャドウミラーの主力量産機として高い性能を得ている機体だ。何しろ、スペック上で考えればヒリュウ改やハガネが使用しているカスタム機と比べても勝るとも劣らずといった性能を持っている。

 パイロットの量産型Wにしても、レモンの研究の成果としてその辺のエースパイロットを陵駕する操縦技術を備えているしな。

 

『っ!? 撃て、撃てぇっ! 奴等を自由に動かすな! 所詮F-4のような装甲重視の機体だ。第2世代機でなら楽に撃破出来る筈だ!』

 

 シャドウが動き出したことにより、指揮車から聞こえてくる声が一層の騒がしさを増す。

 その声に、まだ何とか動ける機体が必死になって手に持った突撃銃の銃口をシャドウに向けてトリガーを引くが……その全てはシャドウの装甲にすら届かず、数m程手前でG・テリトリーに受け止められる。

 

『ば、馬鹿な……何だ、貴様等一体何をしたあぁっ!』

 

 既に叫び声と言うよりは奇声とでも表現すべき声。

 シャドウミラーの機体がバリアの類を装備しているのは、演習前にはっきりと見せているんだがな。

 違いと言えば、サラマンダーはEフィールドなのに対し、シャドウはG・テリトリーだということか。

 ともあれ、混乱した声を発している指揮車だが、その周囲では何とか無事だった残り数機の戦術機へとG・テリトリーを展開しながらシャドウが進み出る。

 1歩1歩歩くのでは無く、テスラ・ドライブを起動させて軽やかに舞い上がって空を飛ぶ。

 その機動性と運動性は、指揮車の男が告げた装甲重視の機体と言われたのを覆すかのような素早い動きだ。

 F-15CやF-18と比べても圧倒的な速度で近づき、運動性や機動力を高めたが故に脆くなった戦術機の機体を壊さないようにそっと掴む。

 それでもいつ壊れてもおかしくない程に機体は軋む音を周囲に響かせており、もし普通のパイロットがシャドウを操縦していたら、恐らくは戦術機の手足がポキリと折れていたのは間違いないだろう。

 こうして全機が動きを押さえつけられて身動きが出来なくなったのを横目に、俺は戦場の中へと足を進める。

 幾ら既に戦術機全機が取り押さえられているとは言っても、普通の人間であれば正気だとは思えないような行動。

 だが、それは物理攻撃を無効化する混沌精霊の俺には当て嵌まらない。

 そのまま指揮車へと向かって歩き続け、やがて向こうでも近づいてきている俺に気が付いたのだろう。再び指揮車から笑い声が響き渡る。

 

『くけっ、くけけけけけけっ、驕ったな。組織の長が生身で戦場に出てくるとは! 確かにこの戦いはこちらの負けだろう。だが、それもお前をここで倒せば帳消しだ!』

 

 その言葉と共に、指揮車に備え付けられている重機関砲の砲口がこちらへと向けられ……次の瞬間、耳をつんざくような音と共に無数の弾丸が俺に浴びせられる。

 それを特に何か行動を起こさないままに受け止める俺。

 向こうにしてみれば、恐らくは千載一遇のチャンスと感じたのだろうが……放たれた弾丸は、その全てが俺の身体を貫いていく。

 

『ひっ、ひひひひひ……ひ?』

 

 その様子を見て、笑い声を上げようとしたのだろうが、砕かれた俺の身体が白炎と化して元に戻ったのに気が付いたのだろう。訝しげに笑いを止める。

 

「残念だったな。俺に物理攻撃は無意味だよ」

 

 笑みを浮かべてそう告げながら、俺の姿は既に指揮車の前にあった。

 

『ばっ、馬鹿な!? 貴様、一体何をした!』

「さてな。残念ながら敵にそれを教えてやる程に俺は親切心を持っている訳じゃないんでな」

 

 呟き、パチンッと指を鳴らすと俺の影から影槍が飛び出て指揮車を切り刻む。

 一瞬にして数百もの部品に姿を変えた指揮車は、それでも内部にいた5人程の人員は無傷のままだ。

 

「さて、この馬鹿騒ぎを巻き起こした馬鹿はどいつだ?」

 

 その言葉に、4人の視線が1人へと向けられる。

 ……ああ、どこか聞き覚えがある声だと思ったら、こいつだったのか。

 そこにいたのは、俺がゲートを設置した時にその防衛は自分達に任せろと言っていた中佐だった。あの時とは言葉遣いが全然違うので顔が結びつかなかった。

 だが、なるほど。確かにこの男はアメリカとの関わりが濃厚だと俺の目から見ても明らかだった。それならこんな騒ぎを起こしたのも理解出来る。

 だからといって、戦術機を24機も動かせる権限があるというのは……これもまた、アメリカが後ろ盾になっているからだろうな。

 もっとも、いざとなればあっさりと切り捨てられそうな、悪く言えば道具でしかない扱いにも思えるが。

 

「き、貴様! 俺にこんな事をしてただで済むと思っているのか!」

「さて、どうだろうな。……ともあれ、お前を操っている人形遣いがどこにいるのかはともかく、現在のお前の所属はあくまでもオーストラリア国防軍だ。なら、今後の交渉に関しての手駒になってもらうか」

「なっ!」

 

 そう告げた途端、再びわめき声を上げそうだったので、先端の尖っていない影槍で鳩尾を突いて気を失わせる。

 

「お前達は大人しくして、こっちに無駄な面倒を掛けるなよ?」

 

 その言葉に、指揮車に乗っていた他の軍人が無言で何度も頷くのを見ながら、量産型Wの方へと視線を向ける。

 

「戦術機のパイロットを引きずり出せ。ただし、戦術機は技術班に引き渡すから、傷を付けるなよ」

「了解しました」

 

 量産型Wが戦術機のコックピットからパイロットを引きずり出しているのを見ていると、こちらへと向かってくる車を1台発見する。

 1台……となると、今回の弁明の件だろう。さて、交渉はどうなるのやら。

 量産型Wへと、ホワイトスターで待機しているエザリアとレオンをこっちに転移するように告げ、車が近づいて来るのを眺めるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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