転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0839話

 ゲートを飛び立ってから1時間程。既にシロガネの姿は北太平洋のアメリカ近海にまで移動していた。

 結局重光線級による狙撃は一切無かったのは、運が良かったのだろう。

 ちなみにシロガネはシャドウミラーの旗艦としてASRSやミラージュコロイドが装備されているのだが、現在は当然の如くそんな装備は使っておらず、通常状態のままで海上を飛んでいる。

 そんな状態で飛んでいる以上、既にアメリカ側でもこの艦をレーダー等で把握しているのだろう。アメリカの領海内ギリギリの位置には原子力空母、そしてお付きであろう10隻近い駆逐艦が既に待機してこちらを待ち構えているし、何よりも少し前から潜水艦と思しき反応がシロガネの後をついてきている。

 

「前方の原子力空母から通信が入りました」

 

 こちらが近づくのをこれ以上待ちきれなかったのか、あるいは元々の手順なのか。ともあれ、向こう側から通信を送ってきたのなら受けるのに否はない。

 シロガネの艦長席に座っているマリューの隣に立ち、報告をしてきた量産型Wへと頷く。

 ちなみに、国家の代表でもある俺が立ってマリューが座っているというのは普通なら考えられないんだが……まぁ、俺達シャドウミラーに常識を期待する方が間違っているだろう。

 

『こちらアメリカ海軍所属、ミニッツ級3番艦ドワイト・D・アイゼンハワーの艦長、ジョージ・トロメイア大佐。そちらはシャドウミラー所属のシロガネで間違いありませんか?』

 

 へぇ、てっきり横柄な態度を取ってくるのかと思ったが……通信モニタに映し出された50代程の白人の男は、ガッシリとした体格に見合わぬような丁寧な口調で敬礼をしてから尋ねてくる。

 オーストラリア国防軍のジョンも有能な軍人だったが、名前に『ジョ』が付く軍人は有能だったりするのか? ……まさかな。

 

「こちらシャドウミラー旗艦のシロガネ。俺はシャドウミラー代表のアクセル・アルマーだ。国連本部に呼ばれた為、ニューヨークへと向かっている。情報は伝わっている筈だな?」

 

 その言葉に、ジョージはほっと安堵の息を吐いてから笑みを浮かべて頷く。

 

『はい。アメリカ海軍はシロガネを歓迎します。ロサンゼルスまでは本艦がエスコートしますので、ごゆっくりとおくつろぎ下さい。尚、ロサンゼルスからは戦術機を積んだ輸送機がニューヨークまでエスコートします。……と言っておいてなんですが、そちらの方が随分と足が速そうですな。何しろ、空を飛んでいるのですから。正直、最初に見た時は自分の目を信じられませんでしたよ』

 

 強面の外見を裏切るような、人懐っこい笑みを浮かべるジョージ。

 なるほど、この人当たりの良さもこの艦が俺達との折衝に派遣された理由か。

 

「まあ、シャドウミラーの技術力の粋を集めて開発された艦だからな。それこそ、この艦だけでハイヴを陥落させるのはそう難しい話じゃない」

 

 正確にはイスルギ重工から受け取ったシロガネを改造したという形なのだが……まぁ、その辺に関してはわざわざ言わなくてもいいだろう。

 

『ほう? それはまた、随分と自信がありそうですね』

 

 俺が言い切ったその言葉に、ジョージは一瞬目を見開くとそう尋ねてくる。

 マブラヴ世界の人間にしてみれば、まさにBETAは最悪の存在と言ってもいい。その最悪の存在の巣を戦艦1隻で攻略出来ると言われれば、確かに驚くだろう。

 だが調べた限りでは、メインシャフトと呼ばれる巨大な縦穴の真下にハイヴの動力源でもある反応炉が存在しているとなっている。当然そんな弱点が剥き出しになっている場所だけに防御は非常に硬く、光線級がその穴から上を見張っているらしい。

 そこから突っ込んでいっても、光線級に狙い撃ちにされるだけだろう。……普通の戦術機であれば。

 だが、シロガネは違う。幾重ものバリアを身に纏っており、光線級のレーザーを無効化する事が可能なのだ。

 もっとも、迂闊に反応炉だけを壊してしまえば周辺にBETAが散らばり、逆に大量に被害が出る事になるだろうが。

 

「まぁ、そのうちに俺達シャドウミラーの実力を見せる事は出来るだろうな。安心してもいい。実力さえ発揮出来れば、BETAを倒すのはそう難しい話ではないさ」

 

 ……そう。妙な横槍が入ってきて、こちらの邪魔をしない限りは。

 

『ふふっ、なるほど。今回の国連総会はその件ですか。ともあれ、私としてはアクセル代表を始めとしたシャドウミラーの皆さんとお会いできた事を光栄に思います。それで、そのシロガネとか仰いましか。その艦の艦長はもしかして、そちらの綺麗なお嬢さんですかな?』

 

 お嬢さんか。一応シャドウミラーでは俺も含めて年長組なんだけどな。

 だが、50代だろうジョージにしてみれば、自分の半分程度しか生きていないマリューはお嬢さんな訳だ。

 まぁ、さすがにシャドウミラーの最年長でもあるエヴァ辺りには敵わないだろうが。

 

「シャドウミラー旗艦、シロガネの艦長マリュー・ラミアスです」

 

 ビシリと敬礼をするマリュー。

 ……ちなみに今更言うまでも無い事だが、基本的にシャドウミラー内部には階級というものは存在しない。無理矢理階級を当てはめるとすれば、代表でもある俺、技術班のレモン、実働班のコーネリアといったところか。

 何しろ兵隊というか数が必要なところではメギロート、そして今はイルメヤを出せるし、ちょっと手強い敵がいる場所には他の軍隊では立派にトップエース級の実力を持つ量産型Wとシャドウがいる。他の幹部達の役目は、それこそ量産型Wやシャドウで倒せない相手がいる時や、より戦果を稼ぐ為に出撃するといった具合だ。

 そもそも俺自身が突出して敵の戦列を乱すような攻撃方法をしている以上、どうこう言えないが。

 ともあれ、そんな理由でシャドウミラーのトップは俺、その下に技術班と実働班を纏めているレモンとコーネリアがいて、その下に他の幹部達が並んでいるといった構造になっている。

 

「こう見えて、他の世界では獅子奮迅の活躍をした艦の元艦長だから、技量については心配いらない」

『……ほう。他の世界の艦、ですか。随分と興味を惹かれる言葉ですね。出来れば是非聞かせて貰いたいのですが……残念ですが、そろそろ出発しないといけません。国連総会の方でも、アクセル代表やシャドウミラーの皆さんを待っていますしね』

「だろうな。こっちとしても勿論国連総会が目的でやって来たんだから、否は無い」

『またお話しする機会がありましたら、是非異世界の軍艦についてのお話を聞かせて貰えると助かります。……では、エスコートしますので、私達の艦隊に付いてきて下さい。その、随分とそちらの艦に比べると速度が遅いので、色々と大変でしょうが』

「何、構わないさ。別に速度を落としたところでどうこうって訳でも無いしな」

『では、ロサンゼルスまでの短い間ですが、アメリカの海の景色をお楽しみ下さい』

 

 その言葉と共に通信が切れ、早速とばかりに映像モニタに映し出されている原子力空母や他の軍艦が大きく弧を描くようにして航路を変えていく。

 

「それにしても……随分と人当たりが良かったですね。前もって読んだこの世界の情報から考えると、もっと高圧的な態度で来ると思いましたが」

 

 ブリッジの椅子に座っているコーネリアの横に立っていたギルフォードが、予想外だったと呟く。

 事実、それはブリッジにいる者の意見でもあったのだろう。皆がその意見に頷いていた。

 だがそれに待ったを掛けたのは、両手を腰の後ろで組んで立っていたレオン。

 

「人当たりの良い人物を選んだのは事実でしょうが、それでもあまり気を許さない方が良いかと。会話の中でもこちらの情報を少しでも探ろうとしていましたしね」

「そうなのか? 今の話を聞いていた限りだと、別にそんな風には感じられなかったけど」

 

 意外だ、という表情で呟くムウ。

 まぁ、この世界で覇権を握っているアメリカ軍で大佐にまで出世しているんだ。そう考えれば、確かに人がいいだけってことは有り得ないだろう。

 

「そう言えば、アメリカ海軍だと主力機はオーストラリアで性能試験をしていたF-18Eなのか?」

「恐らくそうでしょうけど、今は戦術機が出撃していないから分からないわね」

 

 ふと漏れた俺の呟きに、マリューが操作をして空母や軍艦をアップで映し出すが、確かに戦術機が甲板に上がっていたりする様子はない。

 

「向こうにしても、色々と難しいのではないか? 私達のような存在と行動を共にする以上、迂闊に戦術機を出撃させて何か間違いがあったら不味いだろうし」

「ふんっ、小賢しい真似をする」

 

 スレイの言葉を聞いていたイザークが吐き捨てるように呟く。

 基本、直情径行気味だからこの手のやり取りは好きになれないんだろう。

 ……原作とDESTINYだと、SEED終了後に最高評議会議員にまでなって、この手のやり取りにもある程度対応出来ていたんだがな。この歴史だとSEED終了後に真っ直ぐシャドウミラーへと入隊したから、多少成長したとは言っても気性はSEED時代のままなんだよな。

 もっともその代わりという訳では無いだろうが、パイロットとしてはSEED時代と比べると比較にならない程上がっているんだが。

 何だか、以前もこんな事を考えたような覚えがあるな。

 そんな風に内心で考えていると、ようやくドワイト・D・アイゼンハワーを始めとした軍艦が回頭し終え、進み始める。その速度は、この世界の艦としては十分に速い方なのだろうが、それでもやっぱりシロガネに慣れているとどうしても遅く感じられた。

 映像モニタに映し出されるその姿を見ながら、レモンへと声を掛ける。

 

「レモン、一応聞いておくが機体の状態は万全だな?」

「ええ、勿論全機問題無いわ。……けど、神経質過ぎない?」

「確かにな。この世界の者達もオーストラリア政府から私達の戦闘力は知らされている筈だ。まさかアクセルが以前言っていたように、本気で待ち伏せをするなんて事は無いと思うが?」

 

 俺とレモンの会話に、実働班の隊長でもあるコーネリアが口を挟む。

 まぁ、実際に戦闘になれば一番忙しくなるのは実働班なんだから、その辺が気になってもしょうがないが。

 そんなコーネリアの言葉に、俺はゆっくりと首を横に振る。

 

「いや、確かにコーネリアの言う通りなんだが……何か、妙に胸騒ぎのようなものを感じるんだよ」

 

 あるいは、念動力が何かを教えているのかもしれない。

 このパターンは結構珍しいが、それでもマブラヴ世界である以上はBETAが敵だと思いたいところだな。

 ある意味冗談でもあった、国連総会が囮だって可能性も無きにしも非ずだが。

 

「アクセルの嫌な予感は当たるからなぁ。出撃の準備は整えておいた方が良さそうだな」

「ふんっ、このような状況にも関わらず人間同士で争うとはな。……救いがたい」

 

 ムウの言葉を聞いたムラタが腰にぶら下げた日本刀の鞘へと手を伸ばして不機嫌そうに呟く。

 ……一応シロガネの中だから問題にはならないが、さすがに武器を持った状態で国連総会の方に顔を出す訳にはいかないだろう。

 まぁ、向こうで直接国連総会に出席するのは俺だけで、そのお付きとして外交担当のエザリアとレオンの2人がついてくる形になっていて、他の面々は参加するにしても映像モニタを通してだからいらない心配か。

 

「意外とアメリカ辺りにまたBETAの着陸ユニットが降ってくるとかだったりしてな」

 

 そう口にするが、実際そんな事は有り得ないだろう。現在はSHADOWと呼ばれている国連宇宙軍の防衛線が敷かれており、それが出来上がってからは基本的には着陸ユニットは宇宙で全て撃退されているのだから。

 まぁ、何らかの偶然が重なって着陸ユニットが落ちてきたとしても、俺達がいる以上は特に問題は無くBETAの殲滅は可能だろうが。

 そうなれば着陸ユニットに存在しているG元素を……いや、待て。もしかしてその着陸ユニットの所有権の問題でアメリカ辺りと敵対する事になるとかか?

 普通に考えれば、俺達という未知の勢力との協力体制を築くのが先だろうが、それを押さえてでもG元素を確保したいと思う奴がいる可能性はある。

 何しろ言葉通りに俺達は未知の勢力であり、どのような利益をアメリカにもたらすのかも未知数だ。それに対して、G元素は確実にアメリカの利益になるのだから。

 

「アクセル?」

 

 考えに沈み込んでいると、不意にレモンがこちらへと視線を向けてきた。

 いや、レモンだけではない。ブリッジにいる量産型W以外の全ての者がこちらへと視線を向けている。

 

「いや、何でも無い。ただ、色々な意味で今回のこの遠出は面白くなりそうだと思っただけだ」

 

 そう告げ、ゆっくりとシロガネを案内するように進むアメリカ軍の艦隊の後を追うのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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