転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0853話

 夕呼が一心不乱にコーヒーを飲みきり、更にお代わりを要求されて同じ缶コーヒーを2本飲まれ、さらにお土産とばかりに10本程持っていかれた。

 ……いやまぁ、紅茶派の俺としてはコーヒーを何本やってもいいんだけどな。

 ただ、フェイトやバルトフェルドと合わせたら色々と意気投合してコーヒー派閥が広がりそうではある。

 紅茶派がネギと俺の2人だけだと劣勢になるのは間違いない。

 いっそOGs世界からユウキとレーツェルを援軍として呼ぶか?

 もっとも、シャドウミラーの中では俺の影響か基本的にコーヒーよりも紅茶を好む者が多い。それを考えれば、まだ紅茶派閥の方が勢力は大きいと言えるんだろうが……

 そんな馬鹿な事を考えていると、缶コーヒーを会議室のテーブルの横へと移動させた夕呼が改めて口を開く。

 

「さて、あたしがこうして面会を申し込んだのは、貴方達シャドウミラーの話を聞いておきたかったからよ。今はまだ貴方達の事はそれ程一般に広まっていないけど、アラビア半島であれだけやらかしたのを思えば、シャドウミラーの件が広がるのは時間の問題よ。そうなれば間違いなく騒がしくなるから、今のうちにね」

「何とも自分勝手だな」

「あら? お褒めの言葉ありがとう。……で、まずは最初にこれを聞きたいんだけど……貴方達シャドウミラーは、本当にこの世界に対して侵略の意思がないの?」

「当然だろう? そもそも、何を求めてこんな滅びる寸前の世界を侵略するんだ? それは確かにG元素とかいうのは多少魅力的ではあるが、あくまでもそれだけだ」

 

 そう告げた、その時。先程の……俺が会議室に入ってきた時に感じたのと同じような感覚が俺の中へと入り込んでくる。

 何だこれは? やはり念動力持ちか? だが、こうも不躾に俺の中に入ってくるとは……身の程を知れ!

 念動力を発動し、俺の中に入ってきている何かへと干渉する。イメージ的にはハッキングを受けているコンピュータから逆にハッキングを仕返すといった感じか。

 ただし、ハッキングであればデータを抜き出されるといった内容で済むが、今回俺が行ったのは念動力を使ったカウンターだ。それも、ただの念能力者では無い。念動力レベルが10の俺の念動力を用いた、だ。

 俺の内部に絡みついてきている何かを遡り、そのまま何かを発している者の中へと侵入していく。反射的に向こうが忌避感を抱き、あるいは恐怖を抱きながらこちらを拒絶するが、相手の内部に入られるというのを自分が行っている以上、そうされる覚悟もあるんだろう?

 撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ。

 ルルーシュの台詞だが、それは真実でもある。

 相手の中に踏み込んでいく念動力を徐々に強くしていくと、混乱し、半ば恐慌状態へと陥っているのが分かった。

 拒絶。黒のイメージ。そんな風に感じるが、黒というのは混沌精霊である俺にとっては親しみの強い色だ。それが相手にとって決定的なものとなる。

 黒を経由して侵入した俺の念動力が、相手へと到達し……その瞬間、俺は思わず念動力を弱めた。

 手加減をしようとした訳では無い。ただ、俺の念動力が侵入した相手が予想以上に弱かったからだ。

 例えるのなら、紙コップにプールの水全てを注ごうとしているような、そんな感触。

 もしここで俺が念動力を弱めていなければ、恐らくこの相手は良くて植物状態、最悪頭部破裂とかで死んでいただろう。

 ともあれ咄嗟に手加減はしたが、人間以上である俺の存在を相手が受け入れる事が出来る筈がなく……プツリと向こうの意識が遮断するのが念動力越しに感じ取れ、同時に精神的な繋がりも切れる。

 咄嗟に念動力を弱めたのだから、さすがに死にはしていないのは間違いない。恐らくは気絶したのだろう。

 瞬間、隣の部屋からドサ、という何かが床へと崩れ落ちる音が聞こえる。

 だが、それは混沌精霊であり五感が通常の人間とは比べものにならない程に鋭い俺だから気がつけた事であり、当然俺の前にいる夕呼は全くそれに気が付いていない。

 いや、何らかの手段でこっちのやり取りを隣に聞かせたりしている以上は、恐らくそう遠くない内に気がつくんだろうが。

 ともあれ、まさかこの世界にも超能力者がいるというのは色々な意味でおどろきだったな。

 そんな風に考えていると、目に浮かべた不信の色を隠そうとしても隠しきれていない様子で夕呼が俺へと向かって口を開く。

 

「……どうしたのかしら? この世界に対する侵略行為の意思の有無を聞いてるんだけど、答えて貰えないの?」

「そうだな、それに答えてもいいが……それよりも、いいのか?」

「何が、かしら?」

「この会議室の隣の部屋にいる誰かさんは、既に気を失っているぞ?」

 

 その一言が放たれた効果は絶大だった。

 夕呼の表情が見て分かる程にさっと強張ったのだ。

 

「……霞に何をしたの?」

「それは俺の台詞だと思うがな。人の頭の中を読む、か。確かに確実に相手の考えている事を知りたいのならそれも良かったんだろうが、下手を打ったな。これで俺の国連軍、ひいては日本に対する感情はある意味で決定的なものになった」

 

 自分でも理解出来る程の冷たい声と、視線。

 一瞬だけ顔色を変えた夕呼だったが、それでも退かずに言葉を続けたのは立派だと言うべきだろう。

 それなりの地位にいる人物としては、ある意味当然かもしれないが。

 

「……」

 

 数秒だけ沈黙し、やがて考えが纏まったのか口を開く。

 

「今回の件はあたしが独断でやった事よ。国連も日本も関係ない」

「さて、どうだろうな? それを信じられるかと言えば正直微妙だ。下の者がやった事の責任は上の者が取る。それはある意味で当然だろう? ……さて、隣にいる相手に何をしたのかだったな」

 

 暗に国連と日本に対して今回の件の責任を追及させて貰う。そう告げてから、向こうが何かを言う前に言葉を続ける。

 にしても、霞とか言ったか。その名前から考えるに、俺に干渉してきたあの超能力者は女なんだろうな。

 

「ちょっと話が変わるが、面白い事を教えてやろう。かつて俺達がいた、今のシャドウミラーの原型が出来た世界。その世界には機体を動かすのにT-LINKシステムと言うのがあってな。それを使うにはテレキネシスαパルスが必要なんだよ。……つまり、こういうのが、な」

 

 その言葉と共に念動力を発動し、夕呼が机の上に何本か置いていた缶コーヒーの缶を持ち上げ、会議室の中を自由に動かす。

 

「それは……」

 

 驚愕のあまり、目を見開く夕呼。

 

「そう、いわゆる超能力だ。もっとも、俺の場合はサイコキネシスの方に特化している感じだが。だからと言って、他の奴が俺に干渉しようとしたのを理解出来ない程じゃない。……さて、俺が何を言いたいのか分かるな? お前は手を誤った。それも決定的にだ。何を狙ったのかは分からないが、それでもお前のミスはこれ以上ない程に決定的と言ってもいい」

 

 それだけを告げ、席を立つ。

 

「俺達が機動兵器を使っているから、超能力の類には疎いと思ったのか? まさか、そんな事はないよな。俺達シャドウミラーが、いわゆる魔法を使うというのは既に情報として流れている筈だ。それとも、まさか魔法と超能力は違うから認識出来ないとでも? ……相手を信じられない奴を、こちらとしても信じるわけにはいかない。悪いが日本に対してはシャドウミラーとしての対応は重要度を数段下げさせて貰う。同時に、警戒度は上げさせて貰うがな」

 

 最後通告とばかりにそれだけを告げ、会議室を出るべくその場を後にし……

 

「待ちなさい!」

 

 ある意味、悲鳴のような声に足を止める。

 

「待って、お願いだから待ってちょうだい。……確かに今回の件はこっちが悪かった。謝罪をさせてもらうわ。けど、それを理由として日本に対してペナルティを与えるのはやめてちょうだい」

 

 言い募ってくる夕呼だが、それに向けるのは冷たい目だ。

 

「後悔するくらいなら、最初からしなければ良かっただろう」

「……生憎と、あたしは人の話をあっさりと信じられる程におめでたくはないのよ」

「別にそれはいい。人の話を信じられないというのはお前の勝手だからな。だが、自らの選択の結果も当然受け入れて貰う。それも当然だろう?」

 

 そう告げ、用件はそれだけだとばかりに会議室を後にする。

 正直な話、俺としては言葉程に怒っている訳ではない。だが、お互いの立場を理解していないかのようなその行動は、これから付き合っていく上でかなり危なっかしい。

 少なくても、信頼出来る相手……とはとてもではないが言えないだろう。

 

「じゃあな。折角の会談がこんな事になって……」

 

 そこまで告げた時だった。何を思ったのか、ハイヒールの音をコツコツとさせながら俺と扉の間へと立ちはだかる。

 

「どうした? もうお前に出来る事は何も無い。お前の賭けは失敗したんだ。そこを退け」

「……まだよ。聞いた話によると、アクセルはかなりの女好きらしいわね。実際、以前のニューヨークで行われたパーティでも2人も女を連れ込んでたし」

「……まぁ、それは否定出来ないな」

 

 俺個人としてはそんなに女好きというつもりはないのだが、それでも5人も恋人がいて、更に後1年半程経てばそこにあやか達4人も加わるのだ。さすがにその状況で女好きではないとは言えないだろう。

 

「なら……今回の件に対する償いは、あたしの身体でどうかしら?」

 

 そう告げて白衣を脱ぎ、国連軍の制服を脱いでいく。

 その下に着ているインナーシャツにうっすらと透けて見える赤い下着。

 ……あるいは、最初から身体で俺を籠絡する気だったのか。

 だが、幾ら女好きだとは言っても、俺に好意を抱いていない相手が義務感から抱いて欲しいと言われて、はいそうですかと抱ける筈もない。

 勿論夕呼が非常に魅力的な女であるというのは事実だし、向こうが心から望むのなら、恐らく俺の心は動いていただろう。

 だが、それはあくまでも向こうからの好意があってこそだ。

 

「確かにお前は非常に魅力的だ。けど、俺自身に好意を抱いていない相手を抱く気にはなれないな」

「あら? 何だかんだ言っても、女に手が早いんじゃないの? 一応、これでも外見に関してはちょっと自信があるんだけど?」

 

 そう告げ、インナーシャツを脱ぎ去る夕呼。

 真っ赤な下着が目に眩しい。

 だが……なるほど。見ただけでもこの夕呼という女のプライドが高いのは理解出来る。その高いプライドを自ら踏みにじってでも、自らの行為の責任は自分自身で取るか。

 例えそれが自分の国に対する愛国心からのものであるとしても、あるいはそれ以外の何かだとしても、自らの行為の責任を他人に押しつけることをしないというのは好印象だ。

 だが、このまま何の咎も無しで放逐する訳には……いや、待て。そうか、そう言えばこの前レモンからの報告で日本帝国に関しては面白い内容があったな。

 素早く計算して、十分にシャドウミラーの利益になると判断し、床に置いている白衣を念動力で手元に引き寄せ、そっと夕呼の肩へと掛ける。

 白い肌と赤い下着の艶めかしさが若干薄れるも、夕呼自身は何のつもりだとばかり俺へと視線を向けていた。

 

「一月だ。一月以内に日本帝国軍の第3世代戦術機、TSF-TYPE94……不知火とか言ったか? それを2機寄越せ。それと、飛鳥計画とかいうのがあるらしいな。しかも既に試作機の完成も間近だとか。そのデータ各種を俺達に提供しろ。そうすれば、今回の件は無かった事にしてやる」

「待って! 不知火はともかく、飛鳥計画の方は幾ら何でも無理よ!」

「ほう? 横浜の魔女と言われているお前でもか? 大体、何の苦労も無く今回の件を水に流せる訳がないだろう。言っておくが、シャドウミラーとしては十分以上に譲歩しているんだがな。……いいか、一月だ。一月後にこれらの品が俺達に届けられていない場合、日本帝国はシャドウミラーの交流国としては一番下に変更させて貰う」

 

 それだけを告げ、上半身を赤い下着と白衣だけという目の毒な夕呼をその場に残し、今度こそドアへと手を伸ばし……

 飴と鞭にしても、鞭が強すぎるか。

 ふと、そんな事が脳裏を過ぎる。

 それに今の条件でも相当厳しいんだから、ここで更に厳しい条件と、それに付随する飴を付け加えておくか。

 

「少しでもやる気を出させる為に、条件をもう1つ付けてやろう。こっちはあくまでも達成出来ればという事になるが、先の条件に加えて飛鳥計画で現在作られている試作機が何機かある筈だな? その中の1機でもいい。シャドウミラーに譲渡するように働きかけろ。もしそれが成功するようなら、日本帝国を国交を結ぶ国の中でもオーストラリアに次ぐ重要度に認識してやる」

 

 その言葉に、白衣をたなびかせながら俺の方を振り向く夕呼。

 ちょっとサービスしすぎかとは思うが、第3世代機を作る事の出来る技術力を持っている国ならシャドウミラーとして関係を深めても損は無い。

 それに、現在最前線でもある中国のすぐ近くにあるという立地も俺達から見れば素晴らしいからな。

 ともあれ、言うべき事は全て言った。後は夕呼がどう動くかだ。この危機を好機とするのならそれもよし、何も出来ずに一月後を迎えるのなら、それもまた良し。

 

「ああ、そうそう。お前の知りたかった答えを教えてやる。俺達にこの世界を侵略するような気は一切無い。それは事実だ」

 

 それだけを告げ、扉を開けて部屋を出る。

 そのまま出口へと向かっていった俺の背に、椅子や机に対する衝撃音が聞こえてくるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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