転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0858話

 お互いに握手をしていたレモンと夕呼は、小さく笑みを浮かべて手を離す。

 そして最初に口を開いたのは夕呼だった。

 

「へぇ、シャドウミラーの技術班を、ね。それは興味深いわね。良ければ、後でちょっと話をさせて貰えないかしら。異世界の技術には色々と興味があるし」

「そう……ね。私としてもこの世界の技術については知らない事もあるでしょうし、別に構わないわよ?」

 

 やはりお互いに色々と気が合ったのだろう。戦術機が乗せられているトレーラー3台が貨物船から港へと運び込まれている間にも話を続けている。

 そして、トレーラーが運び込まれると赤いF-4J改の外部スピーカーから声が聞こえてくる。

 

『香月副司令、トレーラーを港に運び込みましたが以後はどうすれば?』

 

 女の声だが、どこか硬質な印象を与える声だな。いや、この場合は一片の好意も含まれていないからこそか。

 

「ん? ああ、そうね。……レモン、トレーラーはどこに運べばいいかしら?」

「アクセル、お願い出来る?」

「ああ。……トレーラーも一緒に貰ってもいいんだよな?」

 

 レモンの言葉に夕呼へと確認すると、問題無いと頷く。

 それを確認してから、トレーラーを運転している軍人へと声を掛ける。

 

「トレーラーはそのままそこに置いて、運転手は降りてくれ。後はこっちで引き受ける」

「いや、けど……」

 

 その言葉に何かを言い返しそうになった運転手だったが、赤いF-4J改の方からこちらの言う通りにしろと再び外部スピーカーで言われると大人しく降りる。

 それを確認してから、トレーラーに手を触れ次々に空間倉庫の中へと収納していく。

 目の前で起きたその光景には驚いたのだろう。運転手達が唖然とした表情をこちらへと向けていた。

 F-4J改の方も全機が動きを止めているところを見れば、恐らくは同様なのだろう。

 

「……コーヒーだけかと思ったら、戦術機も……今のも魔法って奴?」

「ちょっと違うけど……まぁ、似たようなものね」

 

 そんな中、夕呼は驚きよりも興味深そうな視線を俺へと送り、小さく笑みすら浮かべてレモンと会話をしている。

 さて、夕呼の相手はレモンに任せるとして、ストライクダガーを……そう思った時、不意に赤いF-4J改のコックピットが開き、1人のパイロットが降りてくる。

 緑のロングヘアーに、鋭い目つき。歩きながら懐から取り出した眼鏡を掛け、こちらへと近づいてくる。

 にしても、本当に戦術機のパイロットスーツは色々な意味で刺激的だな。ボディラインが露わになっており、日本人にしては起伏に富んだそのラインが目を惹き付ける。

 

「初めまして、アクセル・アルマー代表。私は帝国斯衛軍の月詠真耶中尉と申します」

 

 ビシリと敬礼をしながら告げてくる女……いや、月詠中尉。

 だが、その目や口調には夕呼に対するものと同様に好意の類は一切含まれてはいない。寧ろ非常に不本意だといった雰囲気さえ発している。

 それとこちらに対する強い警戒があるが……まぁ、これに関してはな。BETAという存在と接している以上、俺達シャドウミラーに対して不審を抱く気持ちは分からないでも無い。

 ともあれ、この月詠という女があの機体の護衛に付いてくれたのは色々と助かった以上礼は言っておく方がいいか。

 

「月詠中尉、機体の護衛ご苦労だった」

「いえ。上からの命令ですので。……ですが、もしよろしければ一言よろしいでしょか?」

「構わない。何だ?」

「飛鳥計画というのは斯衛軍の中でも非常に力を入れている計画です。斑鳩家にまで手を回させてその計画の機体を手に入れ、どうするおつもりなのか聞かせて貰えれば幸いです。……まさかどこか他の国に流したりは……」

「ないわよ、そんなの」

 

 月詠の質問に言葉を返したのは、俺ではなく、レモンでもなく、夕呼だった。

 小さく溜息を吐きながら肩を竦めた夕呼は、顔を前で手を軽く振っている。

 

「大体月詠中尉だってシャドウミラーのアラビア半島での戦いの映像は見たんでしょ? なら、シャドウミラーの技術があたし達を大きく引き離しているってのは十分知ってる筈だと思うけど?」

「はい、それは勿論知っています。ですが、それでは何故この方達は飛鳥計画や不知火に目を付けたのでしょう? 彼等の技術力が私達を大きく上回っているのなら、そのような事をする必要は無いのでは? 考えられるとすれば、この世界の他の国に対するカードとして……」

「ないない。そもそも、他の国に対するカードだっていうなら食料とか他の世界の兵器とかで十分でしょ」

「では、何故!」

「そうね。この世界の技術を検証する為……というのが、一番あり得そうなんだけど。違う?」

 

 チラリ、と視線を向けながら尋ねてくる夕呼に、レモンは笑みを浮かべて口を開く。

 

「そうね、否定はしないわ。どちらかと言えば研究用という意味が強いのは事実よ」

「……研究用、ですか」

 

 呟き、目に一瞬だけ不満そうな光を浮かべるもすぐに小さく頷く。

 

「それが日本帝国の為になるのであれば、私はこれ以上何も言いません。……ですが、この飛鳥計画に関しては多くの人々が日本の為にと力を結集している機体なのです。それをお忘れ無きよう」

「ふーん、日本帝国の為に……ね。どちらかと言えば自分達の見栄の為じゃないの?」

 

 レモンの口から出たその言葉に、月詠の眦が釣り上げられる。

 

「我等日本帝国を愚弄するおつもりで? 幾らシャドウミラー方と言えども……」

 

 鋭い眼差しでレモンを睨み据える月詠だったが、数々の化け物とすら言える敵と渡り合ってきたレモンを怯ませるには多少力が足りなかったらしい。

 一応月詠の身体からは怒気が吹き出ているのだが、バジュラクィーン、修羅王、ダークブレイン、そして何よりもネオ・グランゾンを操るシュウと比べれば虎と子猫どころの話ではない。

 

「そうでしょう? 1つの国の中で全く違う2種類の機体を開発するのは、正直どうかと思うわよ?」

「それは……」

「はいはい、そこまでそこまで。月詠中尉、今回はシャドウミラーと手打ちをする為に来たってのを忘れないでちょうだい。そもそも、貴方を煌武院家から派遣して貰ったのは斑鳩家ばかりに今回の件で利益を与えない為なのよ? その辺を理解した上で言葉を選んでちょうだい。アクセル達の機嫌を損ねて今回の取引が駄目になったら、それは煌武院家のせいになるんだから。レモンも、斯衛軍の人達はプライドが高いんだからあまり挑発しないの」

 

 ……いや、確かに手打ちをする為に来たってのは事実だが、その原因を作ったのはお前なんだがな?

 夕呼の言葉に思わずそう突っ込みたくなるのを我慢しながら、先程から何度か出てきている斑鳩家と煌武院家という名前を頭に残す。夕呼との関係を思えば、そのうち会う事があるだろうしな。

 ともあれ、これ以上いざこざが起こらないうちにと空間倉庫のリストを脳裏へと展開する。

 選択するのはストライクダガー。

 次の瞬間には、俺達の横に戦術機に比べると圧倒的にシンプルな形をしたMSが立っていた。

 手にはビームライフルとシールドを持ち、背中にはビームサーベルを1本。

 それと頭部の左側にはバルカン砲のイーゲルシュテルン。

 外見としてはシンプルだが、能力的には戦術機数十機分……いや、下手をすれば100機分にも匹敵するかもしれない機体。

 何しろ、武器がビームライフルだというのが大きい。BETAとの戦いでは戦術機のメインウェポンでもある36mmなんかとは比較にならない程の威力を持つ筈だ。

 それ以前に、イーゲルシュテルンでさえ75mmなんだよな。この辺は恐らくBETAの数に対応する為、少しでも継戦能力を高める為の苦肉の策なんだろうが。

 シールドにしても、光線級のレーザーをある程度の時間防ぐ事は可能な筈だ。

 

「アクセル、いいの?」

 

 チラリとレモンがストライクダガーに視線を向けながら尋ねてくるが、それに頷く。

 現在マブラヴ世界に売っている兵器はガン・ルゥとリニアガン・タンクの2種類のみ。その2種類に比べると、ストライクダガーは性能も武器も圧倒的に上であり、ナチュラルが操縦するように作られている為に、パイロット適性に関しても戦術機に比べると圧倒的に難易度が低い。

 ある意味では日本帝国を贔屓しているとも取られかねないが、実際夕呼がクリアした条件はそれに値すると思っている。

 現在日本で使用されている第3世代戦術機のTYPE94を2機に、飛鳥計画の試作機を1機。ある意味無茶だと自分でも思っていた内容を達成したのだから。

 

「ねぇ、アクセル。何だかこうしてみると弱そうに見えるんだけど」

 

 だが、夕呼本人はそんな風に尋ねてくる。

 そんな様子に苦笑を浮かべつつ口を開く。

 

「確かにこの機体は基になった機体の量産型の、更に量産型というちょっとふざけた経歴を持っている機体だが……」

 

 そこまで口にすると、月詠の俺を睨む視線が強くなる。

 斯衛軍の最新鋭機を受け取っておいて、渡すのがそんな機体なのかと。

 だが、月詠が口を開くのを制するように説明を続ける。

 

「そんな機体だが、恐らくこの世界の戦術機で現在この機体に勝る性能を持つ機体は存在しない。何よりも、この機体が持つ武器はBETAに対して圧倒的な性能を有する筈だ。夕呼、月詠。お前達も俺達と関係している以上はアラビア半島での防衛戦を見た筈だな? その戦闘で俺達が使っていた武器にビーム兵器があったのは見ていただろう。この機体は威力こそ俺達が使っている物より低いが、それでもビーム兵器を持っている」

 

 その言葉に2人から不満そうな表情が消え、驚愕で見開かれるのを眺めながら言葉を続ける。

 

「まず、あの機体が持っているライフルがビームライフルだ。そのビームは当然実弾とは比べものにならない程の威力を誇っている。例えば突撃級の装甲殻はあっさりと貫通するだろうな。それと背中にはビームサーベルがある。これは実体のある剣とは違い、刃こぼれの類は存在しない」

 

 特に近接戦闘を好む傾向にある日本帝国としては、ジンの重斬刀に関しても食いつきが非常に良かったが、それにもましてビームサーベルは垂涎の的の筈だ。……まぁ、サーベルの形とかに不満はあるかもしれないが、それを言うのなら戦術機が使っている長刀だって日本刀には見えないしな。

 シシオウブレードを見慣れているからこその意見かもしれないが。

 

「勿論何の欠点が無い訳でもない。ビームライフルにしろビームサーベルにしろ、そのエネルギー源は機体のバッテリーから取っている。つまり、ビームライフルやビームサーベルを使いすぎると機体本体が動かなくなる。もしこの機体をBETA戦で使うというのなら、その辺を冷静に判断する能力があるパイロットが必要になるだろうな」

 

 シャドウミラー製のビーム兵器との大きな違いはそこだ。

 ビームサーベルの類はともかく、基本的にビームライフルは特定の固定武装のような例を除いて機体のエネルギーを消費しない。

 特にバッテリーで動いている戦術機に関しては、この点で大きなマイナスポイントになるだろう。だが、それでも射程はともかく威力でなら重光線級のレーザーすら超えるビームライフルは、この世界の者にとっては非常に魅力的なのは間違いないだろう。

 

「頭部にあるバルカンも口径で言えば75mmだから、この世界の突撃砲よりも威力は上だしな」

「……凄いじゃない。凄い、凄い、凄いわよこれ! アクセル、これ本当にあたしにくれるのね!」

 

 ストライクダガーを貰えるというのを理解した夕呼が狂喜とすら言えるような態度を示す。勿論科学者である以上、純粋に戦力として喜んだ訳では無いだろう。幾ら戦術機に比べて性能が高いと言っても、所詮は1機でしかない。あるいはシャドウ並の性能があれば話は別だが……

 いや、その場合はわざわざ譲渡はしなかっただろうな。

 ともあれ夕呼が喜んでいるのは、純粋に未知の技術を入手出来るからか。ストライクダガーを解析して、少しでもSEED世界の技術を採り入れようとするのだろう。

 もっとも、飛鳥計画の機体やTYPE94を2機こっちに引き渡したのを思えば、当然斯衛や帝国軍と共同で管理する事になるんだろうが。

 そのまま喜んでいる夕呼は、何を思ったか俺へと手を伸ばし、その唇が俺の唇へと重ねられる。

 幾度となく重ねられ、仕舞いには顔中へとキスの嵐を振らせる。

 いや、嬉しくないかと言われれば嬉しいんだがな。

 そして、何故かその様子を笑みを浮かべながら眺めているレモンと、目を見開いている月詠、キョトンした表情の社。

 そのまま数分程、キス乱舞ともいえるような事をされた結果、俺の顔は口紅に塗れた感じになっていた。

 

「ふっふふふ……良かったじゃない、アクセル。あんな美人にキスしてもらえて」

「……せめて嫉妬しながら言って欲しいものだな」

 

 空間倉庫から出したタオルと水で顔を拭きながら、面白がっているレモンへと告げる。

 

「何を言ってるのかしら。こんな事で嫉妬しているようだと、アクセルの恋人なんて務まる訳がないでしょ?」

「……一応言っておくけど、あたしの性別識別圏内は年上よ?」

 

 そう告げる夕呼。

 ぱっと見だと俺やレモンは夕呼と同年であり、決して向こうの言う年上には見えない。

 だが……それはあくまでも俺の外見から判断した内容でしかない。

 

「あら、それじゃあアクセルも十分に夕呼の射程範囲内じゃない。こう見えて、アクセルは夕呼よりも年上よ?」

「……え?」

 

 信じられないとばかりに視線を向けてくる夕呼。ついでにキス乱舞から逃れる為に距離を取っていた社と、教育上に悪いとばかりに目隠しをしていた月詠も驚きの視線をこちらへと向けてくる。

 

「確かにそうだな。魔法球の中に入っていた時間や、他の世界での時差を考えると恐らく夕呼よりも年上だろうな。とは言っても10歳も20歳も離れている訳じゃないが」

「と、年上?」

「ま、色々とあったんだよこれでも」

 

 レモンにしろ、時の指輪の効果で容姿が変わっていないが夕呼と比べれば年上だろう。

 ともあれ、その後も色々と話をしながらその日の取引は無事終わることになる。

 尚、ストライクダガーの説明書や各種データ、あるいはバッテリーの予備や充電装置の類に関しては、後日渡す事になった。

 最初は不満そうだった月詠にしても、ストライクダガーの大まかな性能を聞けばある程度の納得をしたのだから、恐らく日本帝国に戻ってもどうにかなるんだろう。

 ああ、それとレモンが夕呼に通信機を渡していたんだが……まぁ、ホットライン的な意味ではありなんだろう。日本帝国はBETAとの最前線に近いし、そっちの情報網も必要だ。

 

 

 

 

 

 ……そして、何故か俺は社に妙に懐かれる事になった。

 

「ばいばい」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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